いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

カローラは前世紀の遺物か

2009年02月17日 | 自動車

 都合で代車のカローラ(アクシオ)に乗る機会がありました。7-8年前に故障したヴェントの代わりに借りて乗って以来です。せっかくなのでドライブした感想など。

 走行距離17,000kmちょっとなので新車の香りも抜けないのが普通ですが、このクルマはタバコ臭くて弱りました。「喫煙ご遠慮下さい」との札が貼ってあるにも関わらず、あてつけのように内装に焦げが作ってありました。外に出てみるとホイールキャップがかなり削れています。こちら側はグッドイヤー、反対側はトーヨーだったのも奇妙で、かなり荒く乗られていることがわかります。

 このクラスのセダンはほとんど若い人に売れず、オーナーは高齢化しているようです。お爺さん向きのクルマにしてはランプの造形など近代的で、なかなかおしゃれです。全体の形はやぼったいので、ワンポイント装飾のついたゴルフウェアみたいな感じですね。まさしくお爺さん用。

 バンパーに見えるような小さな傷が何箇所かにありました。ボディのプレスや成形したバンパー、ランプなどの工作精度は非常に高く、トヨタはこれをもって「プレスが波打ってるドイツの高級車よりも品質は高い」などと言っていたこともあります。

 もちろんプレスの精度やプラスチック部品の精度だけで品質が決まるはずはなく、これは単にトヨタがプレス面の平滑さを最優先した結果に過ぎません。カローラより基本部分の工作精度がずっと高いはずの新幹線やジェット機でも外板はよく見ればわずかにうねっていて、こうした精密機器でも(強度に関係のない)外板のうねりなんてたいして気にしていないことがわかります。

 航空機グレードの品質の高いアルミ合金は硬くて成形しにくいし、圧力や温度の変化である程度変形することを前提にしているため、わざわざ無駄なコストを使ってまで面をきれいに出さないだけのことですね。航空機ではないにしても、ドイツ車をプレスする人の関心は外板の強度と組み付け精度にあって、それに関係のない表面のわずかなうねりには興味がなかったのでしょう。これも最近は気を遣うようになったらしく、トヨタ車とほとんど区別できなくなっています。

 ナンバープレート左上の小突起はバックモニターのカメラです。2006年10月にモデルチェンジしたカローラ現行モデルからは全車に標準装備という思い切ったことをしています。カローラのユーザーは高齢者が多いので、この手の装備には需要があるのでしょう。

 バックモニターの画面はナビと兼用で、ギアをバックに入れると切り替わります。ちょっと使ってみましたけど、視野が狭くてほぼ真後ろしか見えないため、車庫入れにはあまり役に立ちません。カローラはミニバンと違って後方視界がいいので、首が普通に回る人ならこの程度のバックモニターはいらないと思います。最新のアラウンドビューモニターマルチビューカメラシステムなら全体像が掴めるので多くの人に役立つのでしょうが、まだ標準装備できる値段ではありません。

 簡単で間違えようのないエアコンスイッチはいいと思います。高級車ほどボタンが増えてわかりにくくなるのは不合理です。

 このクラスのセダンにジグザグゲートが必要なのでしょうかね?カタログを見ると、いつの間にかカローラもCVTになっているようです。しかし走らせてみると、発進で急に飛び出す特性に加えて、低速域で速度を落とすと過剰なエンジンブレーキが掛かる設定になっており、無段変速とは逆に変速の段数が少ないような錯覚を抱きました。市街地を走っていると、加減速のたびに「ぐいん、ぐきん」と予想しにくい速度変化があり、加えて足回りのダンピング不足からピッチングが誘発され、決して快適なクルマと言えませんでした。トヨタの看板であるカローラにしてこの完成度の低さは何だろう、と疑問に思ったほどです。スロットルの設定も問題なのでしょうが、少なくともこのCVTはいただけません。

 カローラのターゲットである地方のお年寄りはマニュアルに慣れていますから、現行カローラを買われるならマニュアルをお奨めしたいと思います。私の義父も最後のクルマはカローラのマニュアルでした。動力性能は全く不足を感じないので、丘陵や山岳地帯でも大きな不満は出ないでしょう。

 乗り心地は昔に比べればやや固くなった感じがしますが、それは本質的な問題ではありません。トヨタの場合、固いとか柔らかいとか言う前に無駄な動きが多く、姿勢が安定しない悪癖は相変わらずです。人間が走ることを考えてみて下さい。脚力のあるスポーツマンは大きな衝撃に強いですが、細かい走路の凸凹にもうまく対応するでしょう?カローラのサスは寄る年波に勝てないお爺さんの脚という感じで、固いと言うより動きが渋いと思います。少しばかりの路面のうねりでも吸収できずによろける様は、いかなる基準でも褒められません。

 とてもシンプルなメーター。原付スクーターと変わりません。これで不便はありませんが、もう少しオーナーの気持ちになって欲しいですね。トヨタは今まで膨大なデザイン資産の蓄積があるはずですから、例えば昔のクラウンのインテリアをモチーフにカローラを作るようなこともできるはずです。この手法はベンツなどが得意にしていて、昔からのファンに好評だそうです。若い頃クラウンに乗っていたとか、欲しかったけど買えなかったという年配のお客に喜ばれると思うんですが。

 それにしてもトヨタは、操縦性と乗り心地についてきちんと考え直すべきです。戦後、トヨタが国内市場を押さえた原動力になったのはタクシー用の車両で、そこではダンパーなんて安くて長持ちすれば良かったのでしょうが、高速道路すらなかった時代の操縦性や乗り心地を21世紀に持ち込むなどどうかしてます。

 クルマに興味のない人(つまりクルマを評価できない人)が最大の顧客層であるトヨタにとって、操縦性や乗り心地を根本から変えてしまうのは冒険ですが、「カローラ」の名前だけで買ってくれる昔からの顧客層は年毎に減っています。乗用車の市場そのものが縮小していく昨今、販売店のマンパワーに頼ったコストの高い販売手法も長くは続けられないでしょう。トヨタももう少し誰にでもわかるクルマ作りができないと、国内市場ですら決して磐石ではないと思います。
コメント
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