いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

まとまらないコピーワンス緩和

2007年07月18日 | たまには意見表明
 さて、当面は村井純さんの音頭取りで「コピー回数緩和、ただし孫コピーなし」で合意するのかと思われていたデジタルビデオレコーダーの仕様が、また混乱してきました。著作権者の団体が総出で緊急声明を発表しJEITAを批判、というのですから穏やかではありません。相当に強い態度に出ています。

 JEITAというのはテレビやレコーダーなどの機器を作っているメーカーの団体ですね。総務省の情報通信審議会を巡って著作権者団体とJEITAの対立が鮮明になってきました。総務省や文化庁は、組織されていない一般エンドユーザーなど相手にもしてくれませんから、著作権者団体と互角に渡り合える最大の交渉相手がこのJEITAです。

 デジタル放送の暗号化やコピーワンスで著作権者団体に大幅に譲歩したメーカー団体が、今度は著作権者団体と折り合おうとしないのですね。もし著作権者団体が、「今度も強気に出れば有意な交渉になるだろう」と期待しているのなら当て外れです。視聴者の多くに十分な情報がなかったコピーワンス導入時と違って、今の視聴者はコピーワンスの不便を散々味わっていますし、外国の状況もわかっていますから。

 メーカーの事情は簡単です。デジタルテレビもレコーダーも売れていませんから。そりゃ少しずつは売れていますよ。でも古くなったのを更新するという消極的な需要が主体であり、地上デジタル導入時にメーカーが期待したような積極的な消費行動には繋がっていません。メーカー団体にしてみれば、「コピーワンスで多少不便になっても、デジタル化の高画質の魅力で高額商品が売れる」と読んだからこそ著作権者団体に大幅譲歩してコピーワンスで手を打ったのです。それが売れないのですから、今度こそは小出しの緩和策では納得できないでしょう。メーカーの声は消費者の声でもあります。

 そう考えると、この「緊急声明」とやらの独善的な調子が目に付きます。「JEITAはコピーワンスの見直しを望んでいないのでは」なんて、寝ぼけるのもいい加減にしましょう。視聴者に宣戦布告をしたのは誰だったのでしょうか?「海賊版は“海賊版業者”が作るものというのは過去の話。デジタル機器に詳しい若年層も増え、一部の不届き者の愚行でなく、だれしもができうるものだ。」という日本音楽事業者協会(JAME)の「視聴者性悪説」には気分が悪くなります。理屈としては正しくても、もう少し言い方というものがあると思います。コンテンツの対価を支払っている一般視聴者について、「顧客」という概念はないのでしょうか?

 このJAMEというのは感心するほどがめつい団体で、HDDなど汎用のストレージからも補償金を、という運動の先頭に立っています。コンテンツのお陰で機器が売れるのだから、メーカーがコンテンツホルダーに補償金を支払うのは当然なんだそうです。それじゃ、機器のお陰でコンテンツが売れるのだから、JAMEは売り上げの一部を機器メーカーに補償してはどうですか?JAMEは「世の中は持ちつ持たれつ」ということが全くわかっていないようです。有料コンテンツをコピーしていないHDDにも課金なんて、ともかくHDDがそこにあればカネが取れるとでも思っているのでしょうか?これでは暴力団の「みかじめ料」と変わりません。

 芸団協の「たとえ製品がラインに乗った後だとしても、必要とあれば見直さなければ」という言い方は、もうメーカーに喧嘩を売っているとしか聞こえませんね。レコーダーを買うたびに録画回数の制限が違うなんてことになれば、市場はこの上なく混乱します。誰も新製品なんか買いませんよ。レコーダーやディスクが売れて、応分の録画補償金が欲しいならアメリカ並にコピーフリーにするか、せめてJEITA案のEPNにならなければ整合性がありません。EPNならコピーワンス機でも内部のソフトウェア(ファームウェアと言うらしいです)書き換えで対応できるものが多いそうなので、既にコピーワンス機を買ってしまった視聴者を救済するにはEPNが最も合理的なのです。

 地上デジタル普及を急ぐ総務省の意向を受けて、とりあえずは決着と見えた仕様もまだ動く可能性があり、それにつれて製品の発売もずれ込むことが予想されます。私は編集のできないコピー回数緩和なんて有難くないので、緩和対応機が発売になったら、昔のVHSダビング用に在庫処分のコピーワンス機でも狙おうと思っていたのですが、どうやらお預けになりそうです。まあ、地上デジタルの普及が遅れるのは一向に構いませんが。

 それにしても実感するのが、「一度譲歩した後に取り戻すのは至難」という昔からの真理ですね。著作権者団体のような利権団体を相手にする際は、譲れば譲るほど新しい権益にしがみ付く人が増えるので、次の交渉ではより一層の譲歩を迫られます。今にしてみればメーカー団体が最初に譲歩し過ぎたのは大きな誤りでした。外交にしても、予算配分にしても、これと同じような交渉失敗をして既得権を作ってしまう例が多いのではないでしょうか。
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「ETCからお金を取って地デジを整備しよう」

2007年07月18日 | たまには意見表明
 私は基本的にノンポリなので、「たまには意見表明」と言うほどにしか政治関係に興味を持つことはないのですが、最近は総務省がいろいろやってくれるので、呑気に構えていられなくなりました。今度はETCに利用料が掛かるという読売新聞の記事です。

 地上波テレビ放送の地上デジタルへの強引な切り替えは明らかに拙速であり、これまでも放送局の陰に隠れてコピーガードを導入するなど、視聴者不在で政策が進んできました。地上波放送のデジタル転換には膨大な予算が必要なのですが、どこから予算を捻出するのかと思ったら、今度はETC利用者に負担させようと思っているらしいです。これが確かな情報だと言うのは、こともあろうに経済産業省が噛みついているから。いくら縦割り行政で「隣は何をする人ぞ」のお役人社会でも、これだけ不合理なことをされては黙っていられないというところです。

 ETCの電波利用料については3年前にも話題になっているのですが、この時は総務省の係官がのらりくらりとかわしています。汚いですねー。「徴収しない」と言い切らずに、「(今のところ)徴収案の非対象である」などとごまかして、その舌の根も乾かない3年後に具体的な政策になって出てくるんですから。

 まだ具体化してないって?そんなはずはない。役人同士でお互いの思考経路を熟知している経済産業省からクレームが付いたのが何よりの手掛かりです。一般国民が抗議したところで、「そんな話は出ていない」とはぐらかし、根回しが済んで実行段階になってから「もう決まったこと」と利権者以外を門前払いするいつもの手口でしょう。

 手続き的なことはともかく、ETC利用者への電波利用料課金が不合理なのは、微弱電波であり帯域を占有するわけではないという3年前の総務省自身の説明に加えて、ETC利用者は、現在総務省が巨費を投じて整備している地上デジタル放送の直接の受益者ではないからです。電波帯域の占有に適正なコスト意識が必要などと言っていますが、それなら最大の受益者である放送局の電波利用料が法外に安く、電波利用料のほとんどが携帯電話から徴収されている不公平をどう説明するのでしょう。

 このような「取れるところから取る」「利益はファミリーで山分け」式の発想がまだまだ温存されていることに国民は怒りを表明するべきです。放送事業者間の競争を排して弱小地方放送局をそのまま温存する、古い「護送船団方式」は電波行政を亡霊のように支配しており、全国ネットのプログラムをわざわざコストが高くカバーエリアの狭い地上波で送信する仕組みは、彼らの「電波利権」を継承するためのものです。このために携帯電話やETCの利用者が上納金を出すいわれはありません。ETCの電波利用料徴収に反対します。
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