いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

船乗りになる

2007年06月01日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 また極楽息子(大)のために図書館で借りた絵本です。話は単純で、船乗りに憧れる男の子、チム(本当の発音はティムに近いでしょう)が貨物船に隠れて乗り込み、洋上で見つかって「しょうがねえな」とそのまま下働きになったのはいいが、運悪く嵐で船が沈み、老船長と共に救出されて九死に一生を得るという冒険譚。

 古い本ですから、まだ少年とも言えないような子供がそのまま船で受け入れられるなど、さすがに今読むと無理な設定だと思いますが、それだけに命からがらの冒険にもかかわらずどこか親しみやすい雰囲気があります。こんな物語も悪くありません。

 さて景気が回復して海運業が見直されていますが、日本では船員になる人が深刻なほど不足しているのだそうで、つまり船乗りになろうという子供が少ないのです。仕方がないので、もう随分前から船員の多くがフィリピンなど東南アジアの人に取って代わられ、日本人が残っていた船長や航海士と言った高級船員にも外国人が進出しているのだそうです。

 私の子供の頃には、外国航路の船長さんは、国際線のパイロットなどと並んで尊敬の対象、羨ましい職業としてテレビドラマやアニメに出てきたような気がします。「ひみつのアッコちゃん」のパパが船長という設定じゃなかったかな。それに比べると、今は確かに登場回数が減っています。

 一般の人が大きな船に接する機会と言えば、外国航路ではありませんがフェリーボートだったと思います。ところが北海道連絡船も本四連絡線も、かなりの便が国策であるトンネルや橋に取って代わられました。旅行をする時に大きな船に乗る、という体験が遠のいてしまったのです。これでは子供にとって憧れの対象にはなりません。

 長い海運不況でテレビへの広告が減ったこともあるでしょう。でも「シーレーンを確保する必要がある」などと政府が論議しても、商船の運航そのものに日本人が責任を負えなくなってしまったら、かなり危ない状況になるような気がします。何ヶ月も海の上で滞在するなど特殊な世界なので、誰でも勤まるわけではないでしょうが、もう少し認知されてもいいと思います。フェリーの大半を表舞台から引き下ろしてしまった政府は、埋め合わせに子供が船と親しめるような企画を考えるべきじゃないでしょうか。
コメント
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