高輪には大好きな階段がまだある。
高輪のS字型階段 下部正確には、港区高輪4-14と品川区北品川6-2の境界にある階段。清泉女子大学がある島津山と東側の高輪台の間にある谷道から、東へ社宅の石垣沿いを逆S字型に上る階段である。
妙なのは、途中がひどく狭いこと。最初のカーブを曲がると、行き止まりかと思うような景色になる。だが不思議なことに、この隙間を通って上り下りする人は意外に多い。
U字型溝の上を歩いて上る
この道は道路とはみなされていないのだろうか? せめて溝に蓋をしてくれれば歩きやすいのだが、十年経っても様子はほとんど変わらない。この区間には街灯もないので、夜はかなり歩きづらいだろう。酔って歩いたら足を踏み外して溝にはまるに違いない。ひどく狭いので、すれ違いも大変だ。溝に落ちないように気をつけながら、石垣側かフェンス側に身を寄せてすれ違うしかない。雨が降っていたら、傘を閉じて濡れるしかない。
だが、この溝とひどい狭さがこの道を特徴づけていて、とても魅力的なものにしている。広くて歩きやすい階段ならいくらでもあるし、都会では安全を求めて狭い道は次第になくなっている。そのような趨勢の中で、この狭い抜け道は特殊なものとなり、知る人ぞ知る印象的なものになっている。
カーブを描く階段上部
狭い区間を抜けると上の方はカーブした緩やかな階段になっている。古くからある階段でこのように美しいカーブを描いているものは少ないのではないだろうか。全体としてはちゃんとした形をしているのだが、一段一段のステップは、大谷石だったりセメントモルタルだったりとばらばらでやや不整形だ。段差もほとんどなく坂道のようでもある。左側の石垣は最初の方では砂岩だが、上の方では大谷石が使われている。
小雨降る階段はひっそりと静かだった。
大谷石とコンクリートでできたステップは、老朽化してひび割れ、あちこちから雑草が顔を出している。道端の方は苔むしていて、雨に濡れてしっとりと柔らかくなっている。経年変化して、時間の経過の痕跡を残す階段は見ていて飽きない。周辺の景色とも馴染んで、落ち着いた風景を創っている。
Photo 2006.03.10
#階段・坂 港区 #路地 #雨