都市徘徊blog

徒然まちあるき日記

西早稲田キャンパス 4

2012-06-28 | 新宿区  

 54号館は内部が大幅にリニューアルされていた。

54号館1F   Google Map
Photo 2012.6.4

 耐震補強のため、黒っぽく見えている既存の柱に密着させる形で、やや白い新しい柱が追加された。以前は壁面や天井面には木製の吸音ボードが張られていたが、それが明るい色の新しいパネルに張り替えられたり、塗装がしなおされた。直管の蛍光灯がむき出しで付いていた天井はパネルが張られてダウンライトになり、階段部分などはLEDの間接照明になった。階段下には作り付けのゴミ箱、壁には給水器が設置され、トイレもリフォームされたようだ。以前の床は黒いリノタイルだったが、現在は滑り止めがついた黒いシートで、この部分の印象は大きくは変わっていない。しかし天井や壁と照明が変わったことで、全体の印象はかなり変わった。

54号館2F
Photo 2012.6.4

 正直言って薄汚い感じだったのが、それなりに瀟洒になったのは良いことなのだろう。ただ、以前のコンクリート打ち放しで無骨でやや薄暗い空間には、モダニズム建築特有のクールというかドライな良さがあったように思う。いわゆるお化粧を施したことでフレンドリーで優しい空間にはなったのだが、一方で、これでどうだっ!という凄みのようなものが薄れてしまったようにも感じる。昔の様子を懐かしむセンチメンタルな気分であって、現在の学生にとってはどーでも良いことなのかもしれないが・・・。

#古い建物 新宿区  #新しい建物 新宿区  #早稲田大学 
#大学  #屋内階段  #安東勝男 
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西早稲田キャンパス 3

2012-06-18 | 新宿区  
65号館(左)と55号館(右)の間に架けられたブリッジ
Photo 2012.6.4

 55号館と65号館の間には2F部分にブリッジが架けられた。2Fどうしを繋いでいるが、55号館の方が65号館より高さがやや低いため、橋は緩いスロープになっている。

 55号館ができた当初から、65号館、更には56号館、57号館へ2階レベルで移動できるようになっていれば便利だしおもしろいのにと思っていたが、ようやくそれが完成。キャンパス内の建物の2階部分を「日」の字(もしくは8の字)に連結するペデストリアンデッキ・サーキュレーションが完成したことになる。

 しかし、橋を渡った先の65号館は化学系の研究室があったりするため、入館にはナンバーキーによる解錠が必要。結局、関係者以外はこの空間構造的な特色を十分に味わうことが出来ないのがちと残念。

55号館から、65号館(右)へのブリッジと56号館(左)
Photo 2012.6.4

 西早稲田キャンパス(旧大久保・理工学部キャンパス)建設当初からの建物はコンクリート打ち放しだが、壁面を守るため、順次、塗装が行われてきた。その際、なぜか透明塗料ではなく、銀色(光沢のあるネズミ色?)の塗装が採用されたため、最近は西早稲田キャンパスの多くの建物が銀色になっている。

 ただし、金属系のパネルが銀色に光り輝いているのではなく、どうしても「銀色のペンキが塗られたコンクリート」の質感になる。ペンキを厚く塗ったのか、コーナー部などのエッジが効いていない感じにもなり、正直言って、ややボテッとした感じだ。プラモデルなどで、メタリック塗料を厚塗りしてしまったときのようでもあり、モッサリした感じに見えてしまうのはやや残念。光沢のない明るいグレーとか白の方が良かったのではないかと、外野は勝手に思う。

 56号館と65号館は、65号館の建設時から各階で繋がっているが、ここでは両者の高さが半分ずつずれており、渡り廊下の途中で必ず階段を上り下りするようになっている。おもしろい構造ではあるが、バリアフリーではないし、実は結構わかりづらい。

#古い建物 新宿区  #新しい建物 新宿区  #早稲田大学 
#安東勝男  #大学  #橋 
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西早稲田キャンパス 2

2012-06-15 | 新宿区  

 西早稲田キャンパスには時々行っているのだが、最近はいつも55号館が中心で、他の建物はあまりよく見ていなかった。で、改めて眺めてみると、いろいろな部分がここ2、3年でちょっとずつ変化しているのだった。

51号館1F   Google Map
建設年:1967(昭和42)
設計 :安藤勝男
構造 :RC+SRC
階数 :18F+B2F
Photo 2012.6.4

 1Fの玄関扉がいつのまにかガラス張りの自動扉(タッチ式)になっていた。昔は観音開きのごつい扉で、冬場などはばたーんと大きな音を立てて閉まってしまうことも多かった。ただ変更後も風除室はなし。また、2階のペデストリアンデッキに面した扉は以前のまま。

58号館
Photo 2012.6.4

 58号館には耐震補強のために大きな控壁が東西両側に造られていた。大学の校舎など多くの人が使う建物では耐震補強は重要なことだが、昔の様子を知っていると、ごつい控壁には驚かされる。

57号館
Photo 2012.6.4

 57号館は目立たない場所でいつのまにか補強が行われていたようだ。見た感じの印象で、なんとなく重厚な感じになったなぁと感じていたのだが、昔の写真と比較したら、ファサード面に4列ある縦の帯状の壁が以前より厚くなっていた。あからさまに分からないような形で補強ができるかどうかは、構造技術者の腕の見せ所なのかもしれない。

56号館
Photo 2012.6.4

 56号館は窓の内側で補強を行っているようだ。X字型にブレースを入れれば簡単だが、それだといかにも補強しましたという感じになる。そこで、市松型のH型鉄板を窓枠部分に嵌め込んでいる。知らない人が見れば、窓まわりの謎のデザインのようにも見えるかもしれない。

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早稲田大学 52号館・53号館・54号館 5

2010-07-23 | 新宿区  

■双曲放物面シェルの屋上出口

53号館・54号館の屋上
Photo 2010.3.19

 52~54号館の屋上の中央には屋上出口があるが、その上屋の形はちょっと変わった形をしている。

 下の階から上ってくる階段が互い違いであるため、屋上には二つの三角形が飛び出すのだが、それらを双曲放物面(Hyperbolic paraboloid)という曲面をしたコンクリートシェルで覆っている。

53号館4F渡り廊下から、52号館の屋上出口
Photo 2008.4.21

 現在は屋上へは出られないようになっていて、直接触れることができない。ただ、私が学生の頃は53号館の4階渡り廊下から、3階建ての52号館の屋上へ行くことができた。天気の良い昼休みなどに、この馬の背のような屋根の上でひなたぼっこをしている学生もいた。

 なかなか美しい曲面をしているが、コンクリートでこのやや複雑なシェルを造るのは結構大変だったのではないだろうか。ただそれだけに、型枠を外してきれいにできているのを見た時は、さぞかしうれしかっただろうな。

大阪大学大学院情報科学研究科双曲放物面2
#早稲田大学  #大学  #古い建物 新宿区  #安東勝男 
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早稲田大学 52号館・53号館・54号館 4

2010-07-20 | 新宿区  

■ルーバー

53号館 西面のルーバー
Photo 2010.2.25

 冬期になると、日差しが大きく傾き、部屋の奥の方まで直射日光が差し込むことになるため、北側以外の窓には部分的にルーバーが設置されている。全面を覆ってしまうのではなく、特に問題になりそうな高さにのみ設置されていて、夏場の換気や、視線を妨げないよう、細かく工夫がされているようだ。最初のうちは、ルーバーなんてものを知らなかったので、なんだこりゃと思ったものだが、実際に太陽光を遮断している様子を見て理解できたのだった。

#早稲田大学  #大学  #古い建物 新宿区  #安東勝男 
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早稲田大学 52号館・53号館・54号館 3

2010-07-17 | 新宿区  

■五角形の教室空間
 以前にも出したが、以下の図のように52~54号館の建物は、正方形を4分割して十字型の通路を作り、中央に45°向きが回った階段室が造られていて、教室は正方形のひとつの角をカットしたような五角形になっている。

52号館1F 平面図 (右端は53号館、上はキャンパス中庭)

 黒板はその斜辺の部分にあり、当然、座席はその方向を向くので、残りの辺とは座席は斜めの位置関係になる。部屋の形に応じて前列から横並びの座席数が異なるので、両端部の座席は非常に変則的である。52号館のような大きな教室では、両端部の座席では黒板を見るにはかなり斜めに視線を送らねばならない。また、端の方の席は壇上の教師からの死角になりやすかった。

 だが、授業を受けていると、建築的には案外、合理的な教室のようにも思われた。

52号館101教室 教室後方から前方(2枚の画像を合成、Click:891*405pixel)
Photo 2001.10.11
52号館101教室 教室前方から後方(2枚の画像を合成、Click:946*405pixel)
Photo 2001.10.11

 授業を受ける際は、基本的に窓を背にして後方から光が差し込むので、前方が眩しいことはない。また、学生は窓外があまり見えないので、割合集中できる(ハズ)。一方、先生は窓の方を向いて授業ができるので気持ちがよい。

 全教室が角部屋になっているので、二方向に窓が大きく開く。このため風通しは比較的良い。2000年頃まで冷房は無かったが、それほど問題ではなかったような気がする。だいたい真夏は授業がない。ただ、近年の液晶プロジェクターを用いる授業では、部屋を暗くしてカーテンを閉め切ってしまう。すると換気ができなくなり、蒸し暑くなる。それもあってか、最近はエアコンが各部屋に取り付けられている。

 古い建物なので、照明は間接光ではなくむき出しの蛍光灯。前方から後方にL字型に配列されているのが印象的。個別の明るさコントロールはできないが、大きな教室ではエリア別にスイッチが別れていて、OHPやプロジェクターの使用や、窓際と黒板付近の照度差の解消などへの配慮が一応されている。

 

■耐力壁

52号館101教室入口付近
Photo 2001.10.11

 教室前方の壁面は分厚い鉄筋コンクリートになっている。とりわけ、そこに穿たれた出入口扉の周囲は盛り上がるように厚くされている。これは扉穴を開けることで、壁の耐力性能が落ちることを避けるために、穴で生じた損失分を補うべく周囲の壁を厚くして強化しているのだそうだ。

 52~54号館は、教室前方の4組の壁が中心になって、建物を支えているという。
 建物中央付近に十字型に入った壁が芯のような役割を果たし、そこから教室の床が花びらのように広がる構造で造られているため、四隅の柱はどちらかというと補助的な役割となっている。中央部にどっしりした壁と柱があるので、窓際には柱が少なくてもよく、教室後方には角以外に柱がない。教室前方の壁とは対照的に、後方には大きな開口部(窓)が確保されている。

 教室の天井の梁を見ても、前方の壁付近では梁背(梁の厚さ・高さ)が高く、離れるにつれて梁背が低くなっている。半ば片持ち梁のようにして、床(天井)の重さを前方の壁に集めるようにしていることがわかる。

53号館 北側ファサード
Photo 2008.3.4

 外部から見ても、中央の壁に近い部分の梁は高さ(梁背)が高く太いが、四隅の方では細くなっている。

#早稲田大学  #大学  #古い建物 新宿区  #安東勝男 
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早稲田大学 52号館・53号館・54号館 2

2010-06-15 | 新宿区  

 52号館から54号館は、ちょっと変わった平面をしている。

52号館1F 平面図 (右端は53号館、上はキャンパス中庭)

 上図からも分かるように、通路部分が十字形をしていて、正方形の建物四隅に教室がある。階段は建物中央に、対角線に沿って配され、どちらからも上り下りできる構造。全ての教室は、建物中央側が前になっており、学生は窓を背にして授業を受けることになる。

52号館1F ホール・階段室
Photo 2008.3.4

 各建物の入口は地味だが、中に入ると二つの階段が互い違いに並ぶ階段室になっている。学生への通知などが張り出される掲示板もあり、広くはないがホール空間になっていて、ちょっとした溜まりスペースにもなっている。

53号館3F 階段室
Photo 2008.4.21

 中央の階段を中心にして対称型をなしていることから、階段室にいると自分がいまどちらを向いているのかが分からなくなることが多い。このため、52号館の304教室などといわれた時に、階段を3階まで上がってから、どちらへ行けば良いのか、一瞬考えてしまう。3棟の真ん中にある53号館の場合、どちらへ行けば52号館なのか分からず、反対に向かって54号館に行きかけてしまうこともあった。日中であれば、扉などから垣間見える中庭や日の光の様子で向きが分かるのだが、雨の日や夜間は、慣れていてもしばしば混乱することがあった。

 ただ、ちょっと歩けばすぐ気づくことなので、それはあまり大問題ではなかった。むしろ、変な建物だよねぇ的な面白さの方が大きかった。入試の時に初めて入室してからずっと印象的な建物であり、卒業後、最近は訪れることもほとんどなくなったが、未だに記憶に残る空間である。他の大学をそれほど知っているわけではないが、このような教室空間を持つ建物は他にはあまりないのではないだろうか。その意味で、非常に個性的な教室空間を持つ魅力的な建物だと思う。

 昭和40年代の低層校舎なので、エレベーターは設置されていない。これは後々、バリアフリー面で問題となってくるが、当時の状況からすると仕方なかったのだろう。上層階へは校舎中央のこの二重螺旋的な階段か、隣接する校舎を結ぶ渡り廊下に造られた外階段で上るようになっている。いろいろなところに階段があって、どの方角から来ても比較的容易に階段に辿り着ける機能的なレイアウトになっている。

#早稲田大学  #大学  #古い建物 新宿区 
#屋内階段  #安東勝男 
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早稲田大学 52号館・53号館・54号館 1

2010-06-12 | 新宿区  
手前から奥へ、54号館、53号館、52号館
早稲田大学 52号館:RC3F+B1F、53・54号館:RC4F+B1F
所在地:新宿区大久保3-4-1
建設年:1967(昭和42)
Photo 2008.3.4

 西早稲田キャンパス(旧大久保キャンパス)で、一般教養の講義や語学の授業が行われるのは、キャンパス東南側に並ぶ52~54号館の建物である。52号館は約200人を収容できる教室がある3階建てで、学科単位での授業が可能である。53、54号館はそれよりひとまわり平面形が小さい4階建てで、40~100人程度を収容する教室が並び、選択科目の授業や、語学の授業などが行われている。

55号館から52~54号館
手前から奥へ54号館、53号館、52号館、屋上にある三角形の突出部は階段室。遠方の高層ビルは新宿新都心
Photo 2008.4.21
大久保キャンパス建物配置図(2006年頃・上が北) Google Map

 正方形の建物が東西に並び、階段が付属した渡り廊下で各階が接続している。

52号館(右)と53号館(左)の間のドライエリアと、渡り廊下・外階段
Photo 2008.3.4
3F渡り廊下から53号館と54号館(右)の間のドライエリア
Photo 2008.4.21

 建物周囲にはドライエリアがあり、地階にも自然光が差し込むようになっている。地階は理工学図書館、学生読書室、EE教室などとして利用されている。

#早稲田大学  #大学  #古い建物 新宿区  #屋内階段 
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早稲田大学51号館 2

2009-10-07 | 新宿区  
早稲田大学51号館 屋上
所在地:新宿区大久保3-4-1
建設年:1967(昭和42)
構造 :RC+SRC
階数 :18F・地下2F・塔屋2F
設計者:安東勝男
Photo 1988.8.24

 私が学生だった頃(20年近く前)は、51号館の屋上に出ることができた。18Fから階段を上って鉄製の扉を開けると、何もない屋上にいつでも出られた。大学院生になると、51号館の中に建築学科の研究室があったため、わざわざ屋上に行かずとも新宿などの景色を眺めることができたので、屋上に出ることは少なくなったが、学部生時代には、授業の合間や夕方などに何度か屋上に行って景色を楽しんだものである。何度か不幸な事故・事件があり、また屋上に実験観測装置が置かれたりしたため、90年代の中頃に屋上は立ち入り禁止になってしまった。

 左方は東側階段室からの屋上出入り口。51号館は高さが60m以上あるので、両端部の階段室と中央の機械室の頂部に航空障害灯(低光度赤色航空障害灯)が取り付けられている。150m未満なので明滅はしない。だがこのランプがあるのは超高層ビルの証のようでもあり、入学当初は印象的に感じた。実家の方にも航空障害灯が付いた建物が無くはなかったが、近くで身近に見る機会はなかった。田舎者にはこういうのがもの珍しかったのさ~。

51号館屋上から新宿方面
Photo 1988.8.24

 周囲にあまり眺望を遮る建物がない場所であり、また西新宿も比較的近いので、夕暮れ時などは新宿の超高層ビル群の夜景が美しい場所だった。

 1988年時点では、都庁も恐らくまだ基礎工事の段階だったはずだ。ビル群の中央、安田火災海上(現 損保ジャパン)と新宿野村ビルの間に隙間があるが、ここに都庁の第二本庁舎と第一本庁舎の一部が後に見えるようになった。左側で建設中なのは新宿エルタワー。そのわきで工学院大学も建設中だった。南口方面のサザンテラスやNTTドコモは、この写真より10年ほど後に完成したので、その方向へは全くレンズを向けていなかった。

 現在でも各研究室からはもちろん遠方を眺めることができるが、それ以外には両端にある階段室と、エレベーター北側のトイレスペースから辛うじて景色を眺めることができるのみである。

 屋上にカフェを作ったら賑わうんじゃないかとちょっと思うのだが、いまどきの学生は、景色を見るためにわざわざ高い場所に行ってお茶したりはしないのかもしれない。だが、結構良い景色なのに使わないのは、やはりちょっともったいない気がする。

#早稲田大学  #大学  #古い建物 新宿区  #眺望  #夕景・夜景 
#高層ビル  #安東勝男 
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早稲田大学51号館

2009-07-27 | 新宿区  
早稲田大学51号館
所在地:新宿区大久保3-4-1
建設年:1967.3(昭和42.3)
構造 :RC+SRC
階数 :18F・地下2F・塔屋2F
高さ :65.24m
設計 :安東勝男
Photo 1987.5.9

 51号館は、完成時だったか上棟式の際だったか忘れたが、一時的に日本最高の高さを持つビルだったと言われる。もっとも、ビル以外では東京タワーなどの鉄塔が既にあったし、約1年後の1968年4月には霞ヶ関ビル(36F、最高高さ156m、軒高147m)が完成して、あっという間に一位の座からは滑り落ちた。この話、私自身も大学時代に先輩などからそう聞いていたし、現在もいくつかのサイトでそう書かれているのだが、改めて高層ビルのサイトなどを見てみると、なんだかそのへんが微妙。

 まず、これより3年前の1964年、建築基準法が改正されて100尺以上の建物が認められたその年に、ホテルニューオータニ本館(17F、現 ザ・メイン)ができていて、その高さは72m。また、横浜に建てられたホテルエンパイア(1965年3月開業、現 横浜薬科大学 図書館棟)も地上21F、建物部の高さが68m、尖塔と避雷針を含めると93m。あれれ?
 まあ日本最高でなくても別に良いんだけど、なんだか釈然としない結果。

 東西端には階段室があり、小さな窓が各フロアに3段ずつ並ぶ。研究室の側面にあたる部分は無窓で、下見板状のパネルが2F~18Fを覆う。細長いパネルをたくさん並べたのはスケール感を敢えて無くして、高さを強調するためだとも聞いた。南北面のブレースが入ったやや荒っぽい表情とは異なる、繊細な表情である。

 現在の超高層ビルの大半が柔構造で、柳の木のようにしなることで風圧力や地震動を逃しているのに対して、この建物は剛構造で造られている。風が吹いても地震があっても、ガッチリ形を保ち、変形をせずに耐えるタイプの建物なんだそうだ。剛構造としては日本一の高さということだったのかな?。

Photo 1987.5.9

 建設当時、太い鉄骨はまだ高価だったとかで、コストを削減しながら建てるために、細い鉄骨でジャングルジムのような構造を造り、更にそこにブレース(斜材)を入れて補強するというスタイルをとっている。ただ、開口部の真ん中に×型のブレースが入ると、窓の中央でブレースが交差して視界が遮られるため、これを避けるべく四隅に斜材を入れている。一つの枠に補強を入れれば、隣接する4ヶ所の枠の変形は抑えられるので、ブレースが入る窓と無い窓が、結果的に市松模様のように並ぶことになった。ブレースのある窓はKの字に、入っていない窓はOに見えて、壁面にKとOがたくさん繰り返されているかのように見える。早稲田なのにKO(慶応)とはこりゃいかに、という話を学生時代にはよくしたものだ。ほとんどネタなんだけど・・・。

Photo 2008.3.4

 コンクリート保護のため、88年頃に少し銀色がかった塗装が施されたので、以前とは外観の色が若干異なる。

 また、51号館は傾いているという話もまことしやかに伝えられていた。55号館ができる前、建築学科は51号館の10F、17F、18Fに入居していたが、建設時に傾いてしまったので、責任をとらされて最上階をあてがわれたなんていう話もあった。学生の頃、測量実習の授業があって、51号館の高さを測定せよという課題をやったような記憶がある。その際に屋上から下げ振りを下ろしたが、傾いてはいなかった(経年変化もあるだろうから現在は知らないが。)。実際、少なくとも当初の51号館は傾いておらず、建築学科が責任をとって最上階に入居したわけでもないようだ。むしろ、高い建物を設計したので、自ら高層居住を体験すべく最上階に陣取ったというあたりだったのかもしれない(詳細は知らず)。

 KOの話と傾いているという話は、理工学部が3学部に改組された今でも、大久保キャンパス(現 西早稲田キャンパス)に伝わる都市伝説として語り継がれているのではないだろうか。

#古い建物 新宿区  #高層ビル  #早稲田大学  #大学 
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