MRの人達の訪問を受けるようになって四十年以上になる。MRはMedical Representativeの略なのだが、実態は自社薬品のセールスマンである。三、四十年前はそれこそゴルフや夜の飲食と接待係のようだったのだが、徐々に規制が強くなり二年前から個々の接待はなくなった。今は講演会の企画後援と訪問自社製品説明が主な仕事になっている。
この訪問説明なのだが、これが色々でテープレコーダーのように決まった説明を数分して、ありがとうございましたと帰ってしまうのから、豊富な話題で楽しい時間を過ごさせてくれるのまでかなりの幅がある。一番嫌なのが買ってくれ買ってくればかりで、ライバル社をこき下ろし、最後は泣き落としであと二年だけ(自分の任期中)は自社製品をお使いくださいと最敬礼する奴だ。
相性もあるのだろうが、年下の友達のようになり転勤で名残惜しい人達も居る。今頃、厳しい名古屋や京都大阪で泣かされていないだろうなと思うこともある。
自分にはできそうもない仕事のアドバイスは僭越かも知れないが、やはり相手を見て対応するのがよいと思う。色々な話題の中で乗ってよく話すことは好きなのだし、何となく言葉を濁してはぐらかすような話題は好みではないのだ。そうしたことはセールスの基本だろうと思うが、よく分かっていない奴も多い。今の季節は
「夏休みはどこか行かれましたか」という質問が多い。
「田舎に墓参りかな」。
「田舎はどちらですか」くらいまでは良いのだが、
「それからとか、何日くらい、ご家族と・・・・」などは聞き過ぎで、最初の返答で、展開して良い話題かどうかを見極める能力が求められる。よほど親しくなれば別だが、数回の訪問でプライベートなことを聞かれるのは、嫌がる医師が多いと思う。尤も、ひょっとして、私は難しい顧客リストで申し送られているかも知れない。