駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

無事退院で何より

2014年08月09日 | 医療

               

 寝たきり老人を三十人ほど往診している。八割が女性だ。男の患者さんは殆ど全員、妻の介護を受けている。手厚い優しい介護のはずだが、どうも男性患者は長持ちしない。半分とは言わないが女性の七八割早めに亡くなってしまう。それも、男性寝たきりの方が少ない原因の一つだろう。

 大きな声では言えないが、昔暴君だった亭主も寝たきりとなれば形無しで、妻のコントロール下におかれ、受け身の悲哀を味わわされる?ように見受けることもある。まあ、それでも甲斐甲斐しい世話を受けられていることが殆どだ。

 法律の精神というのをよく知らないのだが、ヘルパーさんの医療行為(といっても軟膏を塗ったり、吸引したり・・・程度)は規制されているのに、家族がする場合には喧しく言われない。どうもこれは過失は訴訟で浮かび上がるという考え方が背景にあるようだ?。まあこれは素人の推測に過ぎない。

 経管栄養投与は難しい手技ではなく、数回指導を受ければ誰でも出来る。それでも基本を忘れると事故が起きる。ちょっと慣れた頃が一番危ない。経管栄養はゆっくり投与しないといけない。慣れるとこれくらいの落下速度なら一時間半とか分かるようになる。要注意は最初の十五分くらいで、希だが速度が速くなることがあるので時々目で確認しなければならない。Kさんの奥さん気の良い楽しい方なのだが、さてこれで良しと食器を洗っている間に、急に投与速度が上がり、気が付いた時には逆流してKさんが咳き込んでいた。あれあれと投与を止めたのはよかったのだが、誤嚥(誤飲)性肺炎を起こしてしまった。経管栄養の人に誤嚥性肺炎は付きもので、厄介なことになる。不幸な転帰を取ることも希ではない。

 どうなることかと案じていたのだが、昨日無事元気に退院して戻ってきた。二重の意味でほっとした。S病院呼吸器の若手バリバリのY君、ありがとう。

コメント (2)
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