昨日のつづきです。
昨日(6月12日)の日経朝刊文化面の「日替わりエッセイ」は、カッティング・エンジニアの手塚和巳さんによる「レコードよ 永遠に回れ ◇カッティング技師として40年、熟練の技で音色奏でる◇」でした。
アナログレコードのカッティング技術者(技能者)の手塚さんが勤務する東洋化成は、「盤に溝を切るカッティングからプレスまでレコードを今も一貫製造している。日本のみならずアジア圏唯一のメーカー」なんだそうです。
日本にはアナログレコードのメーカーが1社しかないらしいことは噂として聞いたことがありましたが、アジア圏唯一とは・・・。知りませんでした。
また、「レコードは外側、つまり1曲目が録音・再生の状態が最もよく、中心部に近づくほど悪くなる特性がある」という話も、「目ウロコ」
試しに、1秒間の音が記録される溝の長さを計算してみました。
LPレコード(33・1/3rpm=3分間で100回転)の場合、
外側:290mm×円周率×(100回転÷180秒)≒506mm
内側:130mm×円周率×(100回転÷180秒)≒227mm
となります。って、こんな計算をしなくても、レコード盤の中心からの長さに比例することは容易に思いつきますな…。
で、外側は内側の2倍以上の情報を刻み込むことができるわけで、そりゃ録音・再生の条件は良くなります。加えて、内側は「小回り」のストレスもあるでしょうし。
一方、デジタル媒体(CDほか)の場合は、単位時間当たりの情報量は任意に設定できるので、記録される場所は影響しないでしょ(私の想像です)。
それはさておき、大小さまざまなレコード会社や一般企業やアマチュアが持ち込む音源からアナログレコードを製造するこの東洋化成という会社は、複数の有名ラーメン店に麺を卸している製麺所みたいなものでしょうか。
または、浮世絵師から原画を預かって、錦絵を印刷した彫り師・摺り師みたいなものでしょうか。製麺所に例えるよりも、こちらの方が適切かも。
ここで、アナログレコードの製造過程をさらっておきます。
①音源を最終調整して、ラッカー盤(原盤)に溝を切る[凹]
②ラッカー盤にメッキして、メッキをはがす(マスター盤)[凸]
③マスター盤にメッキして、メッキをはがす(マザー盤)[凹]
④マザー盤からプレスの金型ともいうべきスタンパー盤をつくる[凸]
⑤A面用スタンパー盤とB面用スタンパー盤の間にレコード盤の原料となるペレットとレーベルを置いて、プレス![凹]
で完成です。手間がかかるものですなぁ。
詳細は東洋化成のHP(こちら)でご覧ください。
ところで、下に載っけた三菱化学のCD-R、見た目がアナログ盤で、音楽用には雰囲気ぴったりです。このデザインだけで他社の同等品より高い値付けができますね。
こんな具合に、っつうか、昨日の記事に限らず、日経の文化面の日替わりエッセイは、目ウロコ的な話が多くて、毎日楽しみにしています。
一応、最後に、日経文化面の「看板」ともいうべき「私の履歴書」にも触れておきましょうか。
昨日書きましたように、この連載は筆者によって当たり外れが大きく、私が1ヶ月通して読み続けることはほとんどありません。
そんな私でも、毎日読み続けたのが、山口淑子さんの「私の履歴書」でした。
山口さんと山口さんが演じた「李香蘭」が歴史を創り、歴史に翻弄されるさまは、「こんな波瀾万丈の人生ってあるものだろうか」と、読みふけりました。
この連載は、単行本として刊行されています(私、買いました)ので、ご興味のある方は是非お読みください。
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