毎年、なぜか12月30日に書いてきた、その年に観た展覧会のふり返りですが、今年は諸般の事情により(って、関西旅行記を完結させた開放感でボケっ
としてた)、大晦日のきょう、書きます。
例年だと、「TOP 10」と、その中での「TOP 3」、そして「TOP 10までもう一息」と区分しておりましたが、今年はちょっとだけ趣向を変えます。
が、まずは、今年のTOP 3
インポッシブル・アーキテクチャー @埼玉県立近代美術館(MOMAS)
入江明日香-心より心に伝ふる花なれば- @茨城県天心記念五浦美術館
流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美 @京都国立博物館
「佐竹本三十六歌仙絵」展のことは、関西旅行記ほかで散々書いてきましたしたので、このブログで書いていない2つの展覧会についてちょっと書きます。
まず、「入江明日香」展。
この展覧会は、この展覧会を観るために五浦まで出かけたのではありませんで、「Misia Candle Night Reiwa」いわき公演(記事はこちら)への遠征の際、せっかくクルマでいわきまで来たのだからと、福島・茨城の県境を越えて足を伸ばして行った茨城県天心記念五浦美術館で、たまたまやっていたもの
入江明日香さんは、初めて耳にするお名前だったのですが、観たら嵌まりました
フライヤーから引用すると、「手漉きの和紙に刷った銅版画をコラージュし、水彩・墨・箔・胡粉をほどこすという独自の技法を用いた表現により、見た人の記憶に残る作品を制作し続けています」という入江さんの作品、いやぁ~、イイ
特に気に入ったのは、東大寺戒壇堂の四天王(大好き) をモチーフにした作品で、ついつい額絵を2点
購入し、後日、それに合う額縁まで買ったくらいです。
しかも、入江さんが、埼玉・朝霞市の丸森芸術の森(私が大好きな、ベン・シャーンやアンドリュー・ワイエスのコレクションでも有名)を活動の本拠としていると知って、ますます好感度 up
今後も入江さんには注目していきたいと思っています。
「インポッシブル・アーキテクチャー」は、
20世紀以降の国内、国外のアンビルドの建築に焦点をあて、それらを仮に「インポッシブル・アーキテクチャー」と称しています。ここでの「インポッシブル」という言葉は、単に建築構想がラディカルで無理難題であるがゆえの「不可能」を意味しません。言うまでもなく、不可能に目を向ければ、同時に可能性や豊穣な潜在力が浮かび上がってくる--それこそがこの展覧会のねらいです。
という趣旨(フライヤーより)。
今年の「次点」に選んだ「終わりのむこうへ:廃墟の美術史」展とも相通じるところがあると思うのですが、「これが存在していれば、目の前の光景はどんなものなんだろうか?」という想像力を奮い立たされるような展覧会でした。
展示作品の中で一番胸に響いた、というか、考えさせられた
のは、コンペに勝ちながら、ボツ
になったザハ・ハディドさんの新国立競技場の設計案でした。
膨大な量の図面
や計算書
、そして、かなり大きな風洞実験用模型を見ていると、施主側の不誠実な決断/仕打ちに怒り
のようなものが沸き上がる気がしました。
レガシーを後世に残す、という意味では、ザハ・ハディド案の方が圧倒的にインパクトがあると思うのですが…。
きっと、パラレル東京では、このスタジアムで東京2020の開会式が行われることでしょう。
そうそう、山口晃画伯の作品が2点、「都庁本案圖」(c/w 会田誠「東京都庁はこうだった方が良かったのではないかの図」)と、
私も持っている「新東都名所 東海道中『日本橋 改』」が出展されていて、おやまぁ でした。
この「インポッシブル・アーキテクチャー」展は、来週・1月7日から大阪の国立国際美術館でも開催されます(3月15日まで)。
次は、次点の展覧会の前半。
終わりのむこうへ:廃墟の美術史 @松濤美術館 [記事]
ブラジル先住民の椅子 @ MOMAS [記事]
浮世絵に見る意匠(デザイン)の世界 @東海道広重美術館
徳川美術館名品 尾張徳川家の至宝 @秋田市立千秋美術館 [記事]
大浮世絵展 @江戸東京博物館
目 非常にはっきりとわからない @千葉市美術館
河口湖ステラシアターでの「Misia Candle Night Reiwa」遠征の2日目に出かけた東海道広重美術館については、遠征記「河口湖-3」で、
ということで、東海道広重美術館の見聞録は「河口湖-4」で。
と書きながら、そのまま「お蔵入り」状態になっています。
まったくもって面目ない…
浮世絵版画の背景や人物の衣装には、直線や曲線で構成される幾何学模様や連続模様、身近な植物や伝説上の動物を題材にしたものなど、多種多様なモチーフがデザインされています。本展では浮世絵版画の中に見ることができる、様々な意匠(デザイン)をご紹介いたします。
というもの。
ふり返ってみれば、浮世絵を背景や衣装の柄(がら)に注目して鑑賞したことはなかったな、と目からウロコの落ちる展覧会でした。
フライヤーにも「定番」の幾何学模様が描かれていて、かなりイイ
「意匠」についての説明板も詳細で、勉強になりました
ただ、図録がなく
、復習できないのが残念です
ということで、後日、「日本の文様」という本をネットで購入した次第です。
一方、江戸東京博物館の「大浮世絵」展は、「歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」というサブタイトルどおり、浮世絵の大御所たちの作品が世界各地の美術館から前後期合わせて約260点が集結
するという、豪勢な、まさに「大浮世絵」展でした。
個人的には、あまり国芳が好きじゃないこともあって、「どうして春信が入っていないんだ」とクレームを入れたいところですが…
もっとも、「あまり好きじゃない」国芳の大判錦絵3枚続の大作「相馬の古内裏」の大迫力には圧倒されました
また、「浮世絵に見る意匠(デザイン)の世界」によって目覚めた目で見ると、歌麿ってやっぱり凄い
と思ってしまいます。
どれだけ大量の「衣装の意匠」の引き出しを持っていたんでしょ、歌麿は…
歌麿も凄いんだけど、彫り師も摺り師
もとんでもない仕事
をしていることに眼を見張った
のでありました。
「目 非常にはっきりとわからない」展は、正直、「非常にはっきりとわからない」展覧会でした。
平日(12月27日)だというのに、千葉市美術館にはチケットを購入する人たちの列ができていてどうしたことか
でした。
列に並んでいると、係員さんから鑑賞にあたってのいくつかの注意事項
が伝えられまして、その中に、「1階は撮影可能ですが、会場の7階・8階は撮影禁止です」というのがあって、もしかして展覧会は1階から始まっている? と…
千葉市美術館は、12月28日にこの展覧会が終わるとリニューアル工事
に入って、2020年7月中旬まで休館
するらしいですので、その工事
が始まっているのか? という風情なんですが…
そして、エレベーターで8階に上がると、やはりそのフロアも、壁は養生シートで覆われているし、梱包されたままのモノがあちこちに置かれているしで、え" でした。
また、作品(らしい)ものに、タイトルとか素材とか制作年といったことが表示されていないし、かなり変わった展覧会だな と思いました。
8階の展示を観終わった私はエレベーターで7階に降りてつづきを観始めたのですが、、、、あれ ここはどこ?
さっきと同じではありませんか
フロア全部観ても、やはり、さっきと同じ
おっかしいなぁ~と、再びエレベーターに乗って8階へ…。
でも、やはりさっきと同じ
私はどこにいるんだろう と頭の中はぐっちゃぐちゃです
ちょっと前に「別のフロア」で見かけた観客も歩いているし…。
ふと気がつけば、エレベーターフロアにある階数表示も「養生」されて見えなくなっています。
ここでようやく理解できました。7階と8階とは、一部の「作品」がフロアによって「養生(=目隠し)」されていたりされていなかったりすることと、ミュージアムショップが7階だけにあることを除けば、ほぼ同じ展示なのですよ
7階⇔8階の移動がエレベーターに限定されていたのは、観客に「あれ
ここはどこ?」の感覚をもたらすためだったんですな
なんだかわかったような、でも、やはり「非常にはっきりとわからない」感覚のまま千葉市美術館を出て、千葉都市モノレールの葭川公園駅まで歩きました。
あれ? もしかして、「目 非常にはっきりとわからない」展は葭川公園駅から始まっていた?
今年は天皇の代替わりというか今上天皇の即位がありまして、それを記念
する展覧会や特別展示がいくつかありました。
そんな中から東京国立博物館で開催された次の3つも「次点」に選びました。
「両陛下と文化交流」展は、現・上皇陛下の「御即位30年記念」ですが…。
両陛下と文化交流 [記事]
正倉院の世界 [記事]
特別公開 高御座と御帳台 [記事]
ちょっと性格が異なりますが、大嘗宮の公開(記事)を加えても良いかもしれません。
公開終了後はサーマルリサイクル(要するに「焼却」)される大嘗宮を拝見
するなんて、このときだけの経験でしたから。
ちなみに、大嘗宮を参観した人は、11月21日~12月8日の18日間で、782,081人ですって
この人数、福井・徳島・高知・島根・鳥取各県の人口よりも多い
ということで、今年の美術展・展覧会のふり返りはおしまい。
また、この記事が今年のブログ書き納めです。
来年は元旦、というか今夜から書き始める予定ですので、来年も当ブログを暖かく見守ってくださいますようお願い申し上げます。
では、皆様、良い年をお迎えください