新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

東京国立博物館でお花見

2024-04-10 21:46:58 | 美術館・博物館・アート

好天に誘われて上野の東京国立博物館(トーハク)に行ってきました。

恒例の「博物館でお花見を」は先週日曜日で終わってしまい、行けずじまいでしたが、本物のサクラはまだまだ間に合う という次第です。

で、きょうの上野公園は、とても平日とは思えないほどの賑わい

そして、なんと外国人の多いこと
そして、人出が多いだけでなく、服装話す言葉多様性に満ちていました。

これだけでも十分に驚いたのですが、トーハクに入場すると、本館前の行列びっくり

これは、特別展「中尊寺金色堂」を観ようとする人たちの列で、なんでも「60分待ち」だとか
私がこの特別展を観た1月末には(記事)、行列することもなくすんなり展示室に入室できて、ゆっくりゆったり見物できたのですが、今週末が千穐楽ということもあってか、こりゃ早めに観に行ってよかった…と思ったのでした。

   

さて、きょうの私のトーハクでのお目当ては、敷地内のサクラでした。
トーハクには咲く時期の違う数種類のサクラが植えられていて、長い期間、サクラを楽しめるのです。

遅咲きのカンザンなんて、まだツボミの状態でした。

でも、私一番のお気に入りのイチヨウザクラは、ちょうど見頃を迎えていました。

ほんとかわいらしい花です

また、もう一つの私のお気に入りのオオシマザクラほぼ満開でした

一方で、葉桜になりつつあるソメイヨシノほどではないにしろ、ミカドヨシノも、盛りを過ぎた感じ…。

でも、これを眺めながら食したランチはなかなかオツなものでした

   

このように、「ソメイヨシノだけがサクラじゃない」
なのですが、「サクラだけが花じゃない」 でもあるわけで、サクラ以外の花も楽しんできましたので、そちらも紹介しましょう。

まずはこちら。

これを「花」と呼ぶのはどうかと思いますが2か月ほど前に花と香りを楽しませてくれたウメをつけていました。

また、こちらは「花」と呼ぶには地味すぎるカエデ

まぁ、今でこそ地味ですが、カエデ主役ですから…

ここまでウメ・サクラとくれば、モモを忘れてはいけません
九条館の前では、「ヒナタシダレ」が、まごうことない桃色の花見事に咲かせていました

私は、今週末、今シーズン初のドライブ帰省を予定しています。
この季節のドライブ帰省のお楽しみは、東北道沿線のサクラと、福島辺りモモの花なんですが、今回はどうでしょうか?

   

サクラの季節は、どうしてもばかりを見てしまうものですが、こちらで書いた皇居・乾通りで見かけた少年のように視線を変えると、思いがけないものを見つけるものです。
表慶館裏の日陰ではハナニラが咲きまくっていましたし、

九条館の傍らではシャガが咲きまくっていました。

ところで、「シャガ」という奇妙名前の由来はどういうものなのでしょうか?
Wikipediaを見てもよく判りませぬ
そのうち気が向いたら調べてみます

トーハクに着いてから約1時間半庭園レストランで過ごしてしまった私、この後、本館(日本ギャラリー)の展示も楽しんだのですが、そのことは、これまた気が向いたらブログに書くかもしれません

それはともかく、ここまで、歩いた楽しんだ

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久しぶりに平泉に行ってみたくなった

2024-02-01 20:34:15 | 美術館・博物館・アート

いま、東京ステーションギャラリーでは「みちのくのいとしい仏たち」展が開催されていて(2月12日まで)北東北(岩手・青森・秋田)「仏師でも造仏僧でもない、大工や木地師の手による」民間仏素朴でほんわかとした佇まいを見せてくれています(記事)が、そうしたいわばローエンドの仏さんたちとは対照的な、平安時代後期のハイエンドの仏さんたちが、これまた東北からドカっと東京にやってきています。

きのう、中尊寺金色堂建立900年を記念して東京国立博物館(トーハク)で開催されている「中尊寺金色堂」展を観に行ってきました。
この展覧会は、トーハクの特別展としては小規模ですが、なかなかどうして、見応え満載でした

中尊寺金色堂には、奥州藤原氏三代(清衡・基衡・秀衡)ご遺体と四代目・泰衡の「首級を安置した3つの須弥壇が並び、それぞれに阿弥陀如来坐像・観音菩薩立像・勢至菩薩立像6体の地蔵菩薩立像増長天持国天、都合11体×3チームが鎮座していて、そのうち、恐らく藤原清衡のご遺体が安置されていると考えてられている中央壇のチームがユニット(?)として上野にやっていらしたという次第です。

さて、会場の本館1F 特別5室に入ると、まずは幅約7mという巨大LEDディスプレイが観客を出迎えてくれました。

そこで視られるのは、「実物大の金色堂」
大量の超高精細の静止画像を再構成した8KCGで、実際に金色堂の中に入り込んだような体感です
いや、実際の金色堂は、覆堂の中でさらにガラスに囲まれていますので、実際に現地で拝見する以上にリアルに感じられました

そして、仏さまたちも素晴らしかった

奥羽の王たる奥州藤原氏が、その財力美意識を駆使して作り上げた浄土の世界は、それはそれは、あの世にいるみたい 行ったことはないけれど…
きっと、当世一流の仏師を都から招いて制作させたのでしょう あれほどまでにハイレベルの仏さまたち(後ろ姿までもが美しい) が一堂に会している仏堂は、なかなかありませんぞ

拝見していてちょっと不思議だったのは、四天王のうち、金色堂にいらっしゃるのは増長天と持国天だけ3ペアなのはなぜ? ということです。
須弥壇の後方を守護するはずの広目天と多聞天どこにいった???

それはそうと、この二天像が、8KCGで拝見した感じ、トーハクで展示されている中央壇の二像と、他の二像たちと、ずいぶんと雰囲気が違うことに驚きました。
中央壇の二像のダイナミックさが図抜けているのです。なんだか鎌倉仏っぽい感じです。
調査研究の結果、現在、中央壇にいらっしゃる二天は、もともと別の壇のご担当だったと考えられるのだとか。
他のお寺・仏堂でも、仏像の配置が造営当時と違っているというのはよく聞く話で(例えばこちらで書いた東大寺法華堂とか…)Wikipediaによると、

金色堂は江戸時代にも修理が行われ、元禄17年(1704年)には江戸にて金色堂諸仏の出開帳が行われており、こうした機会に仏像を移動した際に混乱の生じた可能性がある。

だとか
そんなぁ~ です。

   

仏さんたちだけでなく、仏具・経文も素晴らしい作品が展示されていまして、中でも、

「金光明最勝王経」の経文を、紺紙を二枚継いだ上に金泥によって塔の形に象り、その左右および下方に、さらに紺紙を継いで経文の内容を表す情景を金銀泥と彩色によって表したもの (「日本国宝展」図録より)

という「金光明最勝王経金地宝塔曼荼羅図」には、久しぶりに再会でき、しげしげと拝見しました。
この「経文の内容を表す情景」がまた、ニコニコしてしまうくらいイイのですよ

また、法会の際に導師が座られる台座「礼盤(らいばん)」が、一見、地味ながら、よくよく観ると、金具の細工とか螺鈿の象嵌がなんとも細かく、一切手抜き無し そりゃそうなんですけど…

唯一残念だったのは、金色堂の堂内の雰囲気を醸すべく立てられたとおぼしき円柱でした。
円柱には、それっぽいプリントが施されていたのですが、なんとも平面的安っぽかった
右の写真は、東北歴史博物館(多賀城市)で常設展示されている金色堂の柱のレプリカで、ここまで気合いを入れてほしい とまでは言えませんけれど、でも、あの「シールを貼ってみました的な柱もどきなら、不要だったんじゃないかと思った次第です。

そうそう、金色堂といえば、金ピカのイメージが強い人が多いかもしれませんが、螺鈿細工凄いのですよ

この「残念感補って余りある存在だったのが、この展覧会で唯一「撮影だった縮尺1/5「金色堂模型」
こちらは大変に良くできていました

仏さまたちは「不在」ですが、須弥壇精巧に再現されています

いやぁ~、ステキです
そうそう、金色堂の屋根は、瓦状に木材を細工した木瓦葺きです。
寒冷地には本瓦は適しませんからねぇ
現在の金色堂の屋根には金箔は張られていませんが、この模型では、半分だけ「金箔張り」です。

   

ところで、「センターユニット」ごそっ東京出張中中尊寺金色堂は、今、どうしているんでしょ
と、中尊寺のサイトを覗いてみると、、、

2024年1月9日より4月末日まで、金色堂内は通常と異なる仏像安置構成となります。
拝観は通常通り行えます。

ですと。
特別仕様の金色堂を拝観してみたいかも…
4月の帰省ドライブの際に、約9年ぶり平泉「途中下車」しようかな…

実は私、クルマでの帰省でも、新幹線での帰省でも、ひたすら平泉の近くを通過するだけで、平泉を観光したのは2015年8月一度きりです (記事)

毛越寺庭園中尊寺も、このエリアだけ平安時代が残っているようで、印象的でしたっけ…

金色堂の先代の覆堂(室町時代中期から1960年代まで金色堂を風雨から守ってきた建物)の中に入ってみたら、金色堂がこんなに小さなお堂なのだと実感できましたなぁ。
そういえば、金色堂は中尊寺の「金堂(=本堂)」ではなく奥州藤原氏「御霊屋」なんですよねぇ。

   

また書いてしまいますが「小さな特別展」ではあるけれど、この「中尊寺金色堂」展は、私の東北人としての血を騒がすというかなんというか、なんとも心動かされる展覧会でした。

会期は4月14日までと、まだまだ続きます。
もう一回行こうかな…
観覧料も1,600円と、最近のトーハクの特別展としてはお安めですし

最後に、芭蕉の句。

五月雨の 降り残してや 光堂

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2023年の美術館・博物館めぐりの振り返り [番外編]

2023-12-30 09:42:07 | 美術館・博物館・アート

「2023年の美術館・博物館めぐりの振り返り」の番外編です。

私は、出かけた展覧会をExcelで記録しておりまして、その表には、美術館・博物館だけでなく、寺社や史跡、常設の展示物なども載せています。
この「番外編」では、「前編」「後編」で取り上げた美術館・博物館での企画展・特別展以外の、私が今年観て/行って、楽しんだもの/感慨深かったものを列挙しておこうという趣向です。

まずは、

太陽の塔

2018年1月の一般公開開始以降、ずっと観てみたいと思っていた、太陽の塔内部を、遂に観覧してきました [見聞録]
私、太陽の塔大好き(こちらの記事をご参照方)、このブログ内を「太陽の塔」を検索すると、関連する記事が出てくる出てくる…
しっかりと予習した状態で観る太陽の塔の内部は最高かつ最幸でした なにせ、あの音響とか照明は予習できませんでしたし、なによりも、生命の樹が目の前に存在するという現実感は、「生でしか体験できないことです。
1960年代末という時代にあれほどのモノを作り上げた、当時の日本のエネルギーを浴びた気がしました。
この余韻のせいで、ついつい、2万円弱もするプラモデルポチってしまいました

太陽の塔 (1/200)

何色もの塗料を買い集め、ピンセットやらアートナイフやら接着剤やら調合皿やらを調達し(これだけでも樋口一葉さんくらいかかった)、取り組むこと約1か月、なんとか完成させたんですが、てっぺんにつける階段行方不明となり、また、「黄金の顔がちょっと左に傾いているのはご愛敬ってヤツです
それにしても、買い集めた塗料を次に使う機会は、今後あるのか??

お次は、常設展打ち震えた こちら。

横手市立増田まんが美術館

こちらの記事で書きましたが、どうして今まで行ったことがなかったんだろう と後悔しきり
展示されている原画たちを間近に拝見して、漫画家とそのスタッフが精魂込めて引くの、なんと繊細緻密なことか と、心底感動しました。
やはり、

マンガを読むとき、勢いのままにページを繰ってしまうものですが、それじゃあまりにも作家さんたちや作品そのものに対して失礼ではないかと思ってしまうほどで、1ページ毎に、ファインアートの鑑賞と同様にじっくりと観て、噛みしめなければもったいない気がしてきました。

です。
これで観覧料無料だなんて、申しわけなくさえ思った美術館でした。

 

東大寺法華堂

「東大寺開山良弁僧正1250年御遠忌」で沸く東大寺で、秘仏「執金剛神立像」を拝見できたのは、今年の大イベントの一つでした。[記事]
年に一度良弁僧正のご命日(12月16日)だけ公開されて、そのときは3時間待って5分間だけ拝観です」(説明員さん談) というのに、のんびり&ゆっくりと思う存分に拝観させていただきました
普段は厨子の暗闇の中にいらっしゃるだけに、1200年以上の時を経ても執金剛神立像には色彩が良く残っていて、とりわけ、開いた口の中の赤さが印象的だったなぁ
私がこの絶妙なタイミング奈良・東大寺に出かけた主目的は、「東大寺開山良弁僧正1250年御遠忌慶讃 MISIA PEACEFUL PARK Dialogue for Inclusion 2023」を聴くことでして、私をあの場にいざなってくれたMISIAとの縁に感謝です

   

ここからは、ちょっと微妙な話で…。

ところざわサクラタウン

「跳んで埼玉展 -埼玉の皆様、展覧会を作ってゴメンなさい。-」を観ようと、武蔵野線に乗って 角川武蔵野ミュージアムに行きました。

展覧会も角川武蔵野ミュージアムも楽しかったのですが、気になったのは、2年前に初めて行ったときに比べて、角川武蔵野ミュージアムのあるところざわサクラタウン寂れていること
いくつかの飲食店やホテルが閉店して、その跡が埋まっていません
交通の便悪さのせいか、はたまた角川グループの総帥東京五輪スキャンダルで逮捕されたせいか…
このままさびれ続けませんように切に願っています

   

最後は、今年の美術館・博物館めぐりで、良くない意味で気になった美術館

埼玉県立近代美術館 (MOMAS)

MOMASといえば、かれこれ30年近く足繁く通っていた美術館なのですが、今年は一度も行きませんでした
昨年度&今年度と、どうも食指が動く企画展開催されていないのですよ
かつては、この「美術館・博物館めぐりの振り返り」で毎年のように「TOP3「次点を賑わしていたというのに、どうしたことなんでしょうか? 私の嗜好が変わった? いやいや、MOMASの上層部が変わった? 方針が変わった? 予算の制約?
なんとも気になります。来年度にはガラリと様相が変わってほしいぞ

埼玉県立近代美術館

一方で、東京ステーションギャラリーは相変わらず興味をそそる企画展連発してくれています。JR東日本系だけに、東北絡みの展覧会が多いことにも好感度が高まります。
欲を言えば、JR東日本株主優待で頂ける割引券の枚数(2枚)増やしてほしいな…

ということで、今年の「美術館・博物館めぐりの振り返り」はおしまい。
来年はどんな展覧会に巡り逢えるのでしょうかねぇ

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2023年の美術館・博物館めぐりの振り返り [後編]

2023-12-29 11:04:22 | 美術館・博物館・アート

「2023年の美術館・博物館めぐりの振り返り [前編]」で紹介した私の TOP 3につづく、次点は以下のとおりです。

次点も観た順番に紹介しますと、まずは、

面構 片岡球子展 たちむかう絵画 @そごう美術館

私が片岡球子の回顧展を観るのは、2015年4月の「生誕110年 片岡球子展」@東京近代美術館(MOMAT) 以来2度目です。MOMATでの片岡球子展は、他の展覧会(大阪万博1970 デザイン・プロジェクト)常設展も併せて観たこともあって、片岡作品のパワー圧倒されて、楽しかった以上に疲れた印象でした。
この「面構~」展では、「面構」シリーズ44点中42(残る2点は、外務省が所有して在外公館(パリの日本大使館?)にあるという「面構 師歌川豊広・弟子安藤広重 師歌川豊春・弟子初代歌川豊国」韮崎大村美術館が所有する「面構 浮世絵師烏亭焉馬と二代團十郎」)とそれに先立つ人物像を観ているうちに、逆にパワーをもらえた感じ。
ただ、片岡さん描く喜多川歌麿の「面構」が、いかにも大旦那風で、私のイメージと違っていて、「ん? 」となりました

田中千智展 地平線と道 @福岡市美術館

この展覧会は、2月の福岡へのMISIA遠征のときに立ち寄った福岡市美術館たまたま開催されていたもので、まったくもって拾い物でした
詳しくは旅行記をご参照ください。

悠久の絆 奈良・東北のみほとけ展 @東北歴史博物館

鑑真和上坐像東北にやって来る というので、ずいぶん前から楽しみにしていた展覧会で、ほぼ鑑真和上にお目にかかることだけを目的に、仙台(博物館は多賀城市にある)まで日帰り遠征してきました。
博物館の最寄り駅JR東北本線国府多賀城駅なのですが、何を勘違いしたのかJR仙石線に乗ってしまい、多賀城駅から延々と歩いた 痛恨の思いを味わってしまいました。何度も行った博物館なのに…

でも、鑑真和上坐像至近かつ360°からしげしげと拝見でき、また、2015年1月に「みちのくの仏像」展 @東京国立博物館[見聞録] で拝見した仏さまたちのいくつかに再会できて、はるばる出かけた甲斐があったというものです

東福寺 @東京国立博物館

京都の東福寺には、数年前から行こう行こうと思いつつも、なかなか機会を見つけられなかったのですが、遂に今年1月のMISIA遠征の際、初めて訪れることができました。[訪問記]

シーズンオフで参拝客が少なくガラガラの伽藍を歩き回り噂に違わぬ素晴らしさホクホクしたのですが、なんだか建物だけを楽しんだ感じは拭えませんでした。
この約3か月後に、この感覚を払拭して、さらに補完してくれたのが、「東福寺」展でした。
ハイシーズン(紅葉期)通天橋の再現はなんともビミョーな企画だったものの、

色彩豊かな五百羅漢図 (明兆、凄い)とか、凄まじい迫力「遺偈(いげ/ゆいげ)」とか、見応え満点でした。

ジャムセッション 石橋財団コレクション×山口晃 
 ここへきてやむに止まれぬサンサシオン @アーティゾン美術館

大のお気に入り山口画伯の展覧会でございます。
石橋財団コレクションとのジャムセッションっつうのは「う~む…でしたが、それでも山口画伯の作品たちを久しぶりにたっぷりと拝見できてにんまりでした。
とりわけ、うちにもある「東京2020アートポスター」「馬からやヲを射る」原画を拝見できて盛り上がりました と、、、絵に合わせてマット切り込みが入っている

歌川広重:東海道五拾三次「原 朝之富士」「掛川 秋葉山遠望」も、枠からはみ出した富士山とか凧を見せるためにこんなマットで額装しているのを観たことがありますけれど、ポスターはどうなっているんだ?
こうなっていました

この遊びごころよ…

「次点」の最後は、今年の美術館・博物館めぐりの掉尾を飾ったこちら。

みちのく いとしい仏たち
  @東京ステーションギャラリー

北東北(青森・岩手・秋田)の地方の村々で祀られてきた仏像の展覧会。
ただし、仏像とはいっても、国宝や重要文化財に指定されるような著名な仏師や造仏僧が手練手管を駆使して生みだした荘厳なものではなく、なんとも素朴というか、簡素というか、下手くそというか、そんな仏像たちが並ぶ、なんともハート・ウォーミングな展覧会でした。
展示されている仏さまたちの中に、相対的に洗練された仏さまがいる と思ったら円空仏だった なんてこともありましたし。
「鰯の頭も信心から」なんてことばに例えたら失礼極まりありませんけれど、信仰の原点を感じるような気がしました。
ずっとニコニコしながら観ていたところ、吹き出しそうになった仏さまが2組ありました。
まず、六観音立像 (岩手・宝積寺)。

左から3人目の馬頭観音は、シソンヌ次郎さんに似てませんか?
そして、尼藍婆・毘藍婆 (共に複製・岩手県立博物館、原像は花巻市・三熊野神社毘沙門堂)

これは「さいたまポーズ」原型ではなかろうか
なお、場内は撮影禁止のため、上の写真はこちらのサイトから拝借しました。

   

お次は「もう少しで次点です。

150年後の国宝展 @東京国立博物館

秋田藩の絵図 @秋田県立博物館

皇室の名宝と秋田 三の丸尚蔵館収蔵品展 @秋田県立近代美術館 [記事]

令和の時代を迎えて @皇居三の丸尚蔵館

文字数制限が迫っているため、展覧会名のみで失礼いたします

[前編][後編]で終えるつもりでしたが、もうちょいと振り返りたいことがありますので、[番外編]につづきます。

つづき:2023/12/30 2023年の美術館・博物館めぐりの振り返り [番外編]

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2023年の美術館・博物館めぐりの振り返り [前編]

2023-12-28 18:54:43 | 美術館・博物館・アート

このブログでは、毎年12月30日に、その年の「美術館・博物館めぐりの振り返り」をしています。
今年中に展覧会に出かける予定もないし、ブログ書きをサボっていたため記事を書くのに時間がかかるだろうということで、例年よりも早く「2023年の美術館・博物館めぐりの振り返り」を始めることにします。
なお、過去11年の記事の一覧をは以下のとおりです。

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年

例年に比べて、ことしは、美術館・博物館にあまり行かなかった印象を持っています。実際、記録を見ると、コロナ禍だった2020~21年に比べても2割以上も減っています
これは興味深い展覧会が少なかったというわけではなく、あの夏の暑さが主因です。とても外出する気にならない酷い暑さでしたから…
加えて、これが尾を引いて、ちょっと出不精になってしまったこともあるかもしれません

   

さて、いつものように、今年観た展覧会の TOP 3から始めます。
順番は観た順です。

アンディ・ウォーホル・キョウト/ANDY WARHAL KYOTO
アンディ・ウォーホル・キョウト/ANDY WARHAL KYOTO  @京都市京セラ美術館

私が「MISIA THE GREAT HOPE」大阪公演2日目をパスして(そもそもチケットを取っていなかった) 観に行ったこの展覧会は、巡回展無し京都一発勝負でした。
そりゃ、「京都でのウォーホル」に特に力を入れた展覧会でしたから、巡回展無しも仕方のないことだと思いました。
この展覧会の見聞録は、「今年も最初の遠征先は関西 #3-1」で書きましたので、その内容や感想は省略いたしますが、質も量も充実していて、もともとポップアート好きな私が、しっかりと楽しんだことを強調しておきます。

   

佐伯祐三 自画像としての風景
@東京ステーションギャラリー

私が佐伯祐三の回顧展を観るのは、2008年5月に「佐伯祐三展」@そごう美術館 以来約15年ぶり
2022年2月に、世界最大の佐伯祐三コレクションを誇る大阪中之島美術館が開館して、ようやく佐伯祐三の作品を観られるようになるぞ と思っていました。

それが、ご本家大阪中之島美術館での開催に先駆けて東京でこの展覧会を観られるなんて、そして、大阪よりも安い料金(東京:1400円、大阪:1800円)で観られるなんて と、勇んで出かけた展覧会でした。
そして、期待にそぐわない良い展覧会だったぁ~

会場には、佐伯祐三が結婚してから(1920年10月頃)から最後の渡仏に出発する1927年7月まで、日本での生活&制作活動の拠点にして、多くの風景画を描いた下落合付近の地図(作品を描いた地点がプロットされている)が展示されていて、図録にも載っていました。

いつかその地図を頼りに歩いてみたいのですが、佐伯祐三が風景画を描いた頃とはまったく変わっているんでしょうねぇ もう100年も経っているのですから…

   

TOP 3の最後は、記憶にも新しい、

やまと絵-受け継がれる王朝の美- @東京国立博物館

日本画の常として、作品の展示期間が短くて展示替えが頻繁にあるんで(2か月の会期が4期に分けられていた)、私は2回(1期と2期)行きました。

去年の「国宝 東京国立博物館のすべて」も相当なものでしたが(初めて拝見するものは多くなかった)[見聞録]、この展覧会では、全国各地の博物館・美術館・寺社から至宝が集結するという、とんでもない展覧会でした。出品目録で数えてみると、国宝だけで50点以上もあるのですから
国宝たちに限らず、これだけの作品たちを各収蔵先で拝見しようと思ったら、どれだけの時間とお金(旅費&観覧・拝観料 etc.)がかかるのでしょうか それを考えれば、2,100円という観覧料は高くはないと思ったりして… 首都圏に住んでいるメリットをつくづく感じました。

この展覧会のフライヤーに載っている「目玉は、

といったスーパースターたち。
私、過去に、四大絵巻(源氏物語絵巻伴大納言絵巻信貴山縁起絵巻鳥獣戯画)も、平家納経も、神護寺三像(伝源頼朝像、伝平重盛像、伝藤原光能像)も、拝見したことがありました。
このうち鎌倉殿の肖像画は、2011年7月、ほぼ展覧会(「よみがえる国宝」@九州国立博物館)だけ、それもこの作品を観ることだけを目的に九州まで遠征しました(記事)

なお、御堂関白記(藤原道長の日記)も、この遠征以来の再会でした。

「やまと絵」展で面白かったのは、神護寺三像が展示されている部屋に入ってきた観客の多くが、鎌倉殿像を観た瞬間、ほぉ~と声を漏らしていたこと。
恐らく多くの人が、教科書事典に載っていたあの肖像画が、ほぼ実物大だと知らず、その大きさに圧倒されてしまったのでしょう。私も九博で同様の感慨を覚えました また、大きさもさることながら、鎌倉殿威厳眼差しの美しさも、神護寺三像の中で際だっていますから。

また、四大絵巻も素晴らしかった
とりわけ、伴大納言絵巻応天門炎上シーンのと、狼狽する人々の表情の描き方は、ホント、見事でした。

ところで、この「やまと絵」展、なんとなくイメージで、お堅い美術品ばかりかとも思うかもしれませんが、そんなことはなくて、おなじみの「鳥獣戯画」とか、「百鬼夜行絵巻」(重文真珠庵蔵)とかは、観ていると、思わず口角が上がる楽しさでした。

これほどのお宝集結は、次はいつ実現するのだろうか と考えると、観に行ってほんと良かったと思っています。

TOP 3の紹介はここまでにして、「次点「もう少しで次点「後編」で書きます。

つづき:2023/12/29 2023年の美術館・博物館めぐりの振り返り [後編] 

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7月の帰省のこと #4 [秋田県立近代美術館編]

2023-08-17 19:50:02 | 美術館・博物館・アート

「7月の帰省のこと #3 [稲庭うどん編]」のつづきです。

昼食を済ませた私は、一路、横手ICのすぐ近くにある秋田県立近代美術館(秋近美) へと向かいました。

秋近美では、7月8日~9月3日の会期で、「皇室の名宝と秋田 三の丸尚蔵館 収蔵品展」を開催中です。
実は、7月10日に前期展を観たわたしは、きょう、8月17日後期展を観てきまして、せっかくなので、前期・後期の感想などをまとめて書きたいと思います。
観覧料は1,200円格安ながら、展示点数は多くないし、前期・後期を通じて展示されるのは工芸品のみで、絵画・絵巻はすべて入れ換えか巻き替えですので、「裏を返す」しかないだろ ということであります。

さて、この展覧会は、主催者の「ごあいさつ」を引用すると、

(三の丸尚蔵館の) この数ある収蔵品から、秋田ゆかりの作品と皇室の名宝を、〈皇室ゆかりの江戸美術〉〈近代絵画の名品〉〈平福百穗と金鈴社〉〈秋田ゆかりの美術工芸品〉〈近代日本工芸の精華〉の5つの章でご紹介します。加えて、明治天皇が東北巡幸で秋田を訪れた際の写真もパネル展示し、皇室と秋田のつながりもご覧いただきます。

というもの。

三の丸尚蔵館は、新施設建設のため休館中で、これを機にあちこちで収蔵品展が開催されているみたいです。

)

去年夏に東京藝術大学大学美術館で観た「日本美術をひも解く 皇室、美の玉手箱」展なんかもその一つなのでしょう。

さてさて、秋田ゆかりの皇室の名宝と聞いてまず思い浮かぶのは、2019年春に東京国立博物館で開催された「両陛下と文化交流」展で拝見した東山魁夷「悠紀地方風俗歌屛風」(記事)でした。
そして当然のようにこの展覧会でも展示されていました
前期展では右隻(春・夏)後期展では左隻(秋・冬)と分けて展示されたのが、ちょっと残念 できることなら一緒に並んでいるところも観たかったな…

秋田県人たる私にとって平成期「悠紀地方風俗歌屏風」別格の存在ですが、これを除けば、前期展白眉酒井抱一「花鳥十二ヶ月図 (5・6・7・8月の4幅のみ)」後期展では伊藤若冲「旭日鳳凰図だったと思います。
「日本美術をひも解く 皇室、美の玉手箱」展で観たときも「一番お持ち帰りしたい作品だった「花鳥十二ヶ月図」は、今回もとろけそうになるほど素敵でしたし、巨大な掛け軸に仕立てられた「旭日鳳凰図」は、とにかく華やかさ & めでたさに満ち満ちておりました。どんな不幸があっても、この絵を飾ったら不幸木っ端みじんにされそうな感じ… ただこれほど大きな作品(絵画だけで 186.0 × 114.3 cm) を飾られる家庭はそうそう無いというのが難点

「お持ち帰りしたい」といえば、初めて拝見した2009年秋の東京国立博物館「皇室の名宝」展でそう思って(記事)、その後、いくつかの展覧会で目にしては、食い入るように見つめため息をついた作品も出展されていました

並河靖之「七宝四季花鳥図花瓶」です

まさかこの作品が展示されている(通期展示)とはつゆ知らず、展示室で「七宝四季花鳥図花瓶」が目に入った瞬間、思わず「わおでした。
しかも、すぐ近くには、「西の並河 東の濤川」と並び賞された濤川惣助無線七宝「墨画月夜森林図額」(原画:渡辺省亭)まで展示されていて、これまた良い趣向でした。
ただ、「七宝四季花鳥図花瓶」を鑑賞するには、展示室が明るすぎて、あの麗しい漆黒堪能しきれなかった気がしないでもありません

ちょいと脇道に逸れますが、きょう、見終わったあと、運試しでアクリルキーホルダーのガチャガチャ (500円)一回だけやったら、

1/6の確率から見事に「七宝四季花鳥図花瓶」を引き当てました

持ってるなぁ~

   

「秋田ゆかりの作品」となると、秋田出身の作家の作品はどうなのか?

そこは、しっかと、皇室に献上 or 宮内省が購入した秋田出身の作家の作品も展示されていました。

とりわけ、平福百穂寺崎廣業の作品がたっぷりと展示されていました。
三の丸尚蔵館には、こんなにたくさんのお二人の作品がコレクションされていたとは知りませんでした

どうでもよい話ですが、平福百穂「感恩講図鑑」の解説に「へぇ~となりました。

感恩講は、文政12年 (1829)、秋田で窮民や孤児救済を目的に始まった慈善団体です。(中略) 本図鑑は、秋田の那波家から百穂に制作依頼されたもので、皇太子(大正天皇) へ献上され、その後木版画で配布されました。(後略)

ここで出てくる「那波家」、私の生家は那波家からの借地にありました

   

前期・後期「巻き替え」が行われた絵巻3点もなかなかでした。

まず、岩佐又兵衛をくり (小栗判官絵巻)は、人々の顔は美しくないけれど、その動きは躍動感にみなぎっていて、いかにも岩佐又兵衛 って感じ

また、俵屋宗達(絵) & 烏丸光廣(詞書)「西行法師行状絵詞」尾形光琳「西行物語絵巻」は、その関係がなんともおもしろい
「西行法師行状絵詞」の説明板を転記しますと、

俵屋宗達は、寛永7年 (1630)、当時宮中に所蔵されていた室町時代の《西行物語絵巻》(所在不明) 模写しました。それは越前松平家の家老・本多富正の依頼によるもので、長らく萩藩毛利家に伝来しました(現在は諸家分蔵)。それとは別にもうひとつ模写をしており、それが本作(渡辺家本)です。2作の細部は微妙に異なっていて、尾形光琳の《西行物語絵巻》は、本作の図柄をもとに制作されたものです。

だそうです。光琳はどんだけ宗達大好きだったんでしょ
この2作品同時に拝見できたのは貴重な体験でした。

この他にも著名な大家の作品が、これでもか と展示されていましたが、キリがありませんので、この辺でおしまいにします

三の丸尚蔵館は、今年10月以降一部リニューアルオープンし、2026年にはグランドオープンする予定だとか。
そのコレクションの質と量に反して、きわめて貧弱な展示スペースだった三の丸尚蔵館が、どんな美術館に変身するのか、楽しみでたまりません

   

「#3」とのつながりから、、、、きょう (8月17日)「皇室の名宝と秋田」展を観た後、同じ秋田ふるさと村にある「八代目佐藤養助」横手店昼食を摂りました。

食べたのは「えび天おろし」ぶっかけうどん

というところで、「#5」では、先月の帰省の話に特化します。

つづき:2023/08/18 7月の帰省のこと #5 [秋田港編] 

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2022年の美術館・博物館めぐりの振り返り [後編]

2022-12-31 11:32:32 | 美術館・博物館・アート

「2022年の美術館・博物館めぐりの振り返り [前編]」のつづきです。

ことし観た展覧会のお気に入りを選出する「振り返り」、「次点は次の6展としました。なお、順番は「前編」同様に「観た順」です。

体感!日本の伝統芸能 @東京国立博物館(トーハク)
日本美術をひも解く 皇室、美の玉手箱 @東京藝術大学大学美術館
野口哲哉展 -this is not a samurai- @ポーラミュージアムアネックス
東北へのまなざし 1930-1945  @東京ステーションギャラリー
国宝 東京国立博物館のすべて  @トーハク
響きあう名宝 曜変・琳派のかがやき  @静嘉堂文庫美術館

「野口哲哉展 -this is not a samurai-」は、昨年(次点)に続いてのランクインです。
群馬県立館林美術館で観た昨年の展覧会(記事)に比べてはるかにこぢんまりした展覧会なのに、なぜ 2年連続? なのですが、たまたま私がポーラミュージアムアネックスにでかけたとき、なんとなんと、野口哲哉さんご本人が会場で作品を製作中だったのです
こんなセレンデピティーなんて、そうそうあるもんじゃありません
今年最大級サプライズでした

   

それはそうと、今年は(今年も)ブログ書きが低調で、この6展のうち、見聞録を記事化したのは「国宝」展「響きあう名宝」展だけでした

その「罪滅ぼし」(?) として、ちょっくら思い出しながらプチ見聞録を書いてみましょう。

まずは「体感!日本の伝統芸能」

ユネスコ無形文化遺産に登録された日本の伝統芸能歌舞伎、文楽、能楽、雅楽、組踊-を一堂に集め、明治末期の洋風建築として重要文化財に指定されている東京国立博物館・表慶館という空間で、それぞれの芸能が持つ固有の美それを支える「わざ」を紹介します。

という展覧会で、歌舞伎以外にはで拝見したことのない私にとって実に興味深いものでした。
文楽の人形遣いさんはこんなクッション付きの高下駄を履いているんだ とか、
能面を着けるとこんなに視野が狭まるんだ とか、とか…。

また、知ってはいたけれど、舞楽面の多様性ときたら…
能楽面は、能面より大きく伎楽面より小さいらしいけれど、その多様性は能面や伎楽面をはるかに上回っていて、特に、雑面(ぞうめん)は、「面を打つのが本番に間に合わないので、とりあえずこれで…」という感じ

そうそう、この展覧会で、「現存最古の日本映画」として九代目市川団十郎と五代目尾上菊五郎による「紅葉狩」が公開されていました。このフィルムは、1899年に撮影されたオリジナルから1927年に焼き増しされたもの(重要文化財)。それが、私が拝見してから2か月後の今年4月もっと前に焼き増しされたフィルムが発見され、NHKの報道によると、

映像全体に赤みがかけられていて、複製回数が少ないため映像が鮮やか

なのだとか
となると、1927年版「重要文化財指定」はどうなる???
ま、今後の動向は、新発見のフィルムの詳細が判明してからのことでしょうな。

   

「東北へのまなざし 1930-1945」は、

本展は、こうした東北に向けられた複層的な「眼」を通して、当時、後進的な周縁とみなされてきた東北地方が、じつは豊かな文化の揺籃であり、そこに生きる人々の営為が、現在と地続きであることを改めて検証するものです。

とフライヤーには堅苦しく書かれていますが、東北人たる私としてはなじみ深い展示が多く、ホッコリする展覧会でした。

一方で、かのブルーノ・タウト秋田を訪れた際、勝平得之(私の小学校の大先輩)が案内役を務めて親交を深めたこととか初耳でしたし、なによりの眼福津軽「こぎん刺し」で、その精緻な仕事ぶりには感服いたしました。

   

現在、皇居東御苑内にある三の丸尚蔵館では、新しい建物が建設中です。

もともと三の丸尚蔵館は、その収蔵する作品の質と量に比べて、展示スペースがあまりにも狭かったですから、来年秋(一部)オープンが楽しみです。

で、ホームグラウンドが休館中「お宝が、「日本美術をひも解く 皇室、美の玉手箱」として公開されました。

近年、三の丸尚蔵館皇室が所蔵する美術品を拝見する機会がたびたびあって、そのたびに、そのレベルの高さほれぼれしていますが、この展覧会でも、「春日権現験記絵」とか、狩野永徳常信「唐獅子図屏風」とか、酒井抱一「花鳥十二ヶ月図」とか、葛飾北斎「西瓜図」とか、並河靖之「七宝四季花鳥図花瓶」といった大好きな作品に再会できて、それはそれは幸せでした。
とりわけ、狩野永徳「唐獅子図屏風」(右隻)は、何度拝見しても、あの大迫力にはやられてしまいます。「百聞は一見に如かず」といいますが、何度写真で視たとしても、現物目の当たりにすることにはかないません

三の丸尚蔵館の新施設は来年(2023年)秋に一部オープンするそうですが、それに合わせて、三の丸尚蔵館の管理運営独立行政法人国立文化財機構へ、収蔵品管理文化庁に、それぞれ現在の宮内庁から移管されるのだとか。
この仕組みの変更が、三の丸尚蔵館所蔵作品を拝見する機会がさらに増える方向に作用してくれることを願っています。

   

最後に、「もう一息で次点」の展覧会を、タイトルとフライヤーだけ挙げておきます。

大・タイガー立石展 @埼玉県立近代美術館 & うらわ美術館
はじまりから、いま。1952-2022 アーティゾン美術館の軌跡
   @アーティゾン美術館
ポンペイ @トーハク
川瀬巴水 旅と郷愁の風景 @秋田県立美術館
みる誕生 鴻池朋子展 @静岡県立美術館 [探訪記]

来年は、観てきた展覧会の記憶が鮮明なうちに、見聞録として書けるよう、努力したいと思っていますが、さて…

ということで、今年のブログ書きはこれにてお開き
前年にひきつづきサボりまくりで失礼いたしました
来年はもうちょい踏ん張りたいと存じますので、どうかよろしくお願いいたします。

それでは、良いお年をお迎えくださいませ。

つづきのようなもの:2023/12/28 「2023年の美術館・博物館めぐりの振り返り [前編]

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2022年の美術館・博物館めぐりの振り返り [前編]

2022-12-30 15:04:06 | 美術館・博物館・アート

毎年12月30日は、その年の美術館・博物館めぐりの振り返りとして、1年間に私が観た展覧会の TOP 3~4 次点の6~7展を選んでおりまして、今年も独断と偏見で選考いたしました

ちなみに、まったく参考にはなりません(私の嗜好とそのビミョーな変化が察せられるかもしれませんが、それこそ役にたたない)過去10年の記事の一覧を載せます。気がつくと今回が11回目なんですな

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年

   

さっそく TOP 3、行きます
順番は、観た順番です。

琉球 @東京国立博物館

今年は沖縄が日本に復帰して50周年という節目の年。この展覧会はまさしく「沖縄復帰50年記念」と冠されています。
沖縄関連の展示だけで平成館の広いスペースを埋められるのか? なんて失礼なことを考えていましたが、まったくもって失礼な話で、展示替えを含め、なんともボリューミーな展覧会でした。
私が10年前の沖縄旅行では、首里城複製を拝見して(恐らくあの火災焼失)

「実物を観たいぃ~」と思っていた「玉冠(たまんちゃーぷい)」は、私が出遅れたせいで観られなかったの残念

でも、梵鐘 旧首里城正殿鐘(万国津梁の鐘)を拝見し、鋳込まれた銘文(読み下し文と現代語訳)を読んで、もう…
(写真は首里城で観た「万国津梁の鐘」のレプリカ)

 琉球國者南海勝地而 鍾三韓之秀以大明為
 輔車以日域為脣歯在 此ニ中間湧出之蓬莱
 嶋也以舟楫為万國之 津梁異産至宝充満十
 方刹

漢文だけでもなんとなく意味が判る感じですが、この銘文の冒頭に書かれているのは、要は、「琉球は中国・日本と親密な関係をもち、その中間に湧き出た蓬莱の島。海洋貿易で万国の橋渡し(津梁)をし、国内には様々な宝であふれている」ということ。

この鐘は、1458年琉球王国尚泰久王(第一尚氏)が鋳造させたもので、その正式名称にあるように、首里城正殿(のどこか)に設置されていたのだとか。
1458年は、日本では室町幕府三代将軍義政の治政で、もう少しすると応仁の乱が起こって戦国時代になだれ込むという時代。ちょうど、太田道灌江戸城をつくった年でもあります。

と、「万国津梁の鐘」のことを書き連ねてしまいましたが、この鐘の銘文に触れることができただけで、「琉球」展TOP 3 に入れたに等しいのでご勘弁を

生誕100年 朝倉摂展
    @福島県立美術館

この展覧会のことはこちらの記事で書きましたのであっさりと…。

ひとことで言って、「新幹線で日帰り遠征までして観に行ってホントに良かった 温泉にも入れたし…」ということです。

鉄道と美術の150年
   @東京ステーションギャラリー

今年の美術館・博物館おさめとして今週火曜日に観てきたこの展覧会がTOP 3 に入りました。
まさしく有終の美です

今年は、「沖縄の本土復帰50周年」というだけでなく、「東京国立博物館の創立150周年」であり、また、「鉄道開業150周年」という節目の年で、この展覧会も、

日本初の鉄道が新橋-横浜間で開業したのは明治5(1872)年のことですが、奇しくも「美術」という語が、それまでの「書画」に代わって初めて使われたのも同じ年のことでした。鉄道と美術はともに日本の近代化の流れに寄り添い、時にはそのうねりに翻弄さながら150年の時を歩み続けてきたのです。この展覧会では、鉄道と美術の150年間にわたる様相鉄道史美術史はもちろんのこと、政治、戦争、社会、風俗など、さまざまな視点から読み解き、両者の関係を明らかにしていきます。

というもの。

ペリー艦隊からのお土産品・蒸気機関車の模型を描いた瓦版から始まり、日比野克彦によるポップ山陽電車ヘッドマークまで、質・量ともにどっしりした展覧会でした。
とりわけ印象的だったのは、150年前の鉄道開業式典を描いた錦絵でした。なんとも華やかで、当時の高揚ぶりが伝わってきます。
それにしても、蒸気機関車の模型がプレゼントされたのが1854年で、それから20年も経たずに本物の蒸気機関車が客車を曳いて新橋=横浜間を走り出すなんて、とんでもないスピード感です

他にも、ほわぁ~ となるファインアート(長谷川利行「赤い汽罐車庫」とか赤松麟作「夜汽車」とか、木村荘八「新宿駅」とか松本竣介「駅の裏」とか) があるかと思えば、大丸が販促品として作った「大阪電車 大丸呉服店 案内双六」(ふりだし:梅田停留所⇒あがり:大丸呉服店)とか、山下清が描いた我孫子駅駅弁掛け紙とか守備範囲が広い

ここで、おぉ と思った作品その1

うちで額絵を飾っている里見宗次のポスター「JAPAN」の現物
額絵を見慣れているせいで、デカい

ポスターといえば、やはり杉浦非水「東洋唯一の地下鉄道 上野浅草間開通」は忘れられないし、何度観てもイイ

昔懐かしい「ディスカバー・ジャパン」のポスターも展示されていたのですが、その説明書きに、

「ディスカバー・マイセルフ」「美しい日本と私」というコンセプトは、若い女性旅行者たちを筆頭に一定の共感を得て社会に浸透した。<中略> しかし一方で、都市生活者による地方搾取という非対称な構造を看過していると非難の声も上がる。

とあって、「いつの時代にも拗れた人がいるものだ」と思わず眉間に皺が寄ってしまいました
「都市生活者による地方搾取という非対称な構造を看過している」って何だよ…
このキャプションは、ChimPom (私、嫌い)「LEVEL 7 feat.『明日の神話』」と並んで、いやぁ~な気分にさせていただきました

気分を変えて、おぉ と思った作品その2。

児島善三郎「下板橋雪景」は、赤羽線(現:埼京線)沿線の石神井川と中山道に挟まれた辺りから北方向を描いた作品で、遠くを東北本線の列車が煙をたなびかせて上野方向へ走っています。
この辺りは、通勤何千回と通ったところで、土地鑑ありです。

Googleマップで見るとこんな感じ。

この作品が描かれたのは1921年で、当時は田畑が広がって、東北本線まで見渡せますが、現在では建物だらけで東北本線なんて見えっこありません

以上で、今年私が観た展覧会のTOP 3の発表を終わりにしまして、あすの「後編」では次点の展覧会を選出します。

つづき:2022/12/31 2022年の美術館・博物館めぐりの振り返り [後編]

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オープンしたばかりの美術館に行ってきた

2022-10-29 14:22:53 | 美術館・博物館・アート

昨夜、書棚から雑誌「東京人」2010年4月号を引っ張り出してきました。

この号の特集は「美術館をつくった富豪たち」で、表紙にフィーチャーされているのは、尾形光琳燕子花図屏風(左隻)」(根津美術館)曜変天目(稲葉天目)」(静嘉堂文庫美術館)普賢菩薩騎象像」(大倉博古館)で、私は、幸いにも3点とも直に拝見したことがあります。しかも、その1点は昨日お会いしてきたばかり

というのも、昨日、今月1に丸の内の明治生命館移転・リニューアルオープンした静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)に行って、「響きあう名宝-曜変・琳派のかがやき-」を観てきたのです。

これまで静嘉堂文庫美術館世田谷区岡本にある静嘉堂文庫の本拠地で公開されていましたが、正直、交通の便の良くないところで、私は一度も行ったことがありませんでした。
それが、静嘉堂文庫(岩﨑彌之助・小彌太父子のコレクション)創設130年を期に、交通至便な明治生命館に引っ越してきたのです。
そして、「静嘉堂創設130周年 新美術館開設記念展Ⅰ」と冠して開催されている「響きあう名宝」展は、静嘉堂文庫が所蔵する国宝7点一挙公開 というのですから、この期を逃すものか でした。

なお、会期は12月18日までですが、風雨山水図 (伝 馬遠)」禅機図断簡 智常禅師図 (因陀羅筆、楚籍梵琦題詩)」源氏物語関屋澪標図屏風 (俵屋宗達)」の3点は11月6日までの公開ですのでご注意ください。他の倭漢朗詠抄 太田切曜変天目(稲葉天目)予中峰明本尺牘 (趙孟頫)」太刀 銘 包永 (手掻包永)」の4点は会期中ずっと観られます

この展覧会も日時指定方式だったのですが、それでも混んでました
もともと展示スペースがさほど広くないことに加えて、音声ガイドを利用しているシニア女性が多くて、彼女らは、ほんと、ショーケースの前から動かない
でも気づきました 順不同で見物していて、人混みが途切れたところを見計らって人気作品鑑賞すれば良いのです
こうして、観るのを半ばあきらめかけた茶入2「大名物 唐物茄子茶入 付藻茄子」「大名物 唐物茄子茶入 松本茄子」を間近にじっくり拝見できました。
なのですが、例によって私、茶道具にはイマイチなんです

それでも、その来歴を見ると、作品そのものを見る眼が変わってくるような気がします。
茶道具や刀剣は、その来歴ひれ伏すことが多いもので、「付藻茄子」足利将軍家⇒山名豊重[中略]⇒松永久秀⇒織田信長⇒豊臣秀吉⇒有馬則頼⇒豊臣秀頼⇒徳川家康⇒藤重藤元⇒今村長資⇒岩崎彌之助⇒岩﨑小彌太⇒静嘉堂「松本茄子」山名氏⇒[中略]武野紹鴎⇒今井宗久⇒織田信長⇒今井宗久⇒豊臣秀吉⇒豊臣秀頼⇒徳川家康⇒藤重藤巖⇒今村長資⇒岩崎彌之助⇒岩崎小彌太⇒静嘉堂というもので、なんという顔ぶれでしょう

蒼々たる戦国武将や天下人が愛蔵した名品を手にした岩崎父子は、に対する純粋な喜びと共に、その来歴に自分たちの名前を加えることに誇りを抱いたのでしょう。

   

日本の国宝(2022年10月1日現在)は、建造物が229件(292棟)、美術工芸品が902件あります(出典)美術工芸品について都道府県別件数を見ると、1位:東京 (286件)、2位:京都 (185件)、3位:奈良 (142件)、4位:大阪 (57件)と、東京が他を圧倒しています。こちらで書いたように、寄託品を含めると東京国立博物館(トーハク)だけで143件も収蔵しているのが大きいのですが、静嘉堂文庫のような「富豪系コレクション」もまた東京に集中しているのがその要因でしょう。

静嘉堂文庫三菱系で、三井には三井記念美術館があり、住友には泉屋博古館があります。
三大財閥の他にも、富豪のコレクションを常設展示している都内の美術館としては、大倉集古館国立西洋美術館(松方コレクション)アーティゾン美術館(石橋コレクション)五島美術館畠山記念館出光美術館根津美術館山種美術館太田記念美術館平木浮世絵美術館などなど枚挙にいとまがありません。ちょと毛色が変わったところでは、細川家の伝来品に細川護立のコレクションを加えた永青文庫なんてのもありますな。
蒼々たる顔ぶれですが、大コレクターがいません
「大茶人」と称された益田(鈍翁)孝松永(耳庵)安左エ門のコレクションはどうなった?
鈍翁コレクションは戦後散逸耳庵コレクショントーハク福岡市美術館を中心に寄贈されたそうな。ちなみに、松方コレクションのうち浮世絵トーハクに寄贈されています。

それはそうと、明治の日本経済の立役者、渋沢栄一の名前が見当たりませんな
雑誌「東京人」から鹿島茂さんの発言を引用しますと、

井上(馨)と親しかった渋沢栄一コレクションしていませんが、引退後の明治42(1909)年に、「渡米実業団」の団長として、日本の実業家たちをアメリカに連れて行ったことがあります。アメリカの実業界の人間たちと知り合わせるために。そのとき同行したのが、根津嘉一郎。この人は、初期はひじょうに評判の悪い人だった。ぼろ買いの根津と言われるほどで、とにかく、クズみたいになった会社を買い叩いて再興させることでお金持ちになった人。しかし、渋沢とアメリカに行って、カーネギーワナメーカーといった人々の社会福祉活動を見て、それまで会社と金にしか興味のなかった根津の目が開く。それから、いろいろな社会貢献やコレクションをやったみたいです。
安田財閥の安田善次郎も、晩年には東大に安田講堂を寄付しています。功成り名を遂げた人間が、金儲けだけだと恥ずかしくなるという風潮ができていきました

だそうです。日本経済の種蒔く人だった渋沢らしいお話です

   

ここで「響きあう名宝」展にもどりまして、国宝「源氏物語関屋澪標図屏風」俵屋宗達⇒「鵜舟図」尾形光琳⇒「麦穂菜花図」酒井抱一⇒「雨中桜花楓葉図」鈴木其一とつづく琳派の流れが眼福でした。
とりわけ、酒井抱一、いつ、どの作品を観ても、上品静謐で、実にイイ

そして、この展覧会の目玉ともいうべき「曜変天目(稲葉天目)」、さすがでした
この世に3腕しか現存していない超貴重曜変天目茶碗をガラス越しとはいえ至近から眺める幸せ
これでお茶を点てたらどんな風景になるんだろ、飲んだらどんな気分なんだろ。
図録によると、

小彌太「名器を私に用いるべからず」と生前一度もこの茶碗を使用することはなかった[中略] 岩崎家において唯一、曜変で茶が点てられたのは小彌太三回忌、熱海別荘の仏間で、孝子未亡人が仏前で献茶をしたときのみであったとされる。

だそうです。
小彌太さんの思いは、「自分にこの茶碗の守り役が廻ってきた」という喜びと、完璧な形で次の世代に引き継がなければならない責任感だったのかもしれません。

ということで、「響きあう名宝」展の見聞録はおしまいです。
ちょっとした展覧会の観覧料が2,000円「普通」になってしまった昨今、この内容で1,200円CPが相当高いと思いました。
静嘉堂@丸の内は、JRや地下鉄の各駅からも近く、今後はご贔屓したいと考えています。

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「国宝 東京国立博物館のすべて」展を観てきた (後編)

2022-10-26 21:50:17 | 美術館・博物館・アート

「『国宝 東京国立博物館のすべて』展を観てきた (前編)」のつづきです。

私が予約した11:30「国宝」展の会場である平成館に行ってみると、

おぉ、大行列です

でも、大きな企画展も時間指定が無い場合は開館直後が一番混みますし、コロナ禍以降、時間指定が一般的になると、その区切りのタイミングが一番混みますから、完全に想定内でした。
私は喫煙コーナーでお茶を飲んだり、煙草(電子タバコ)をふかしたり、スマホをいじって、行列が短くなるのを待ちました。
私の時間指定「11:30~12:30」ですが、この時間帯は、モギリ通過の時間で、一度入ってしまえば時間制限はありません。入口には鑑賞時間について「90分以内」と表示されていますが、あくまでも目安です。

そして12:00寛永寺の鐘が鳴る中、ようやく私は、最盛期の半分くらいまで短くなった行列に並び、入館しました。

   

「国宝」展は、最後のコーナーを除いて、写真撮影禁止です。

トーハク総合文化展(平常展)では、寄託作品の一部を除いて写真撮影可で、「国宝」展に出品されている作品も、普段なら写真撮影できますが、人出を考えれば、写真撮影禁止にしなければ、観客が滞留してしまうし、シャッター音がやかましくて仕方なかったでしょう

そんなわけで、私が「国宝」展で撮ったのは最後の菱川師宣「見返り美人図」だけ(しかもピンボケ)でして、この記事では、過去に私がトーハクで撮った写真を使います。

で、最初の長谷川等伯「松林図屏風」から凄い人

「松林図屏風」は、毎年正月に展示されるのが通例になっていて、狙って観るのが簡単な作品なんですけど、観客が群れています

こりゃ、観た頃のある作品は、作品を間近に観るのはあきらめて、人混みの後ろからざっと拝見して、展覧会の雰囲気を楽しむことにしました。

さっそく、久隅守景「納涼図屏風」を観ている若い女性の会話に思わず吹き出しそうになりました。

上半身裸で夕涼みしている女性について、「こんな格好で外にいたら、虫にさされるよねぇ」ですと… 確かに…

さて、屏風や表装された絵画はまだマシで、とても観る気が起きないほど混雑していたのは「平治物語絵巻」でした

どんな展覧会でも絵巻混雑が厳しくて、なかなかじっくりと鑑賞することができないもの。
この点、2021年4~5月の「国宝 鳥獣戯画のすべて」は、展示室内に「動く歩道」を設置して観覧者がじっくりと作品を鑑賞できるようにした素晴らしい展覧会だったと、つくづく思いました

また、コーナー全体で全ての作品の前に観客ビッシリと集中していたのが刀剣コーナーでした。

相変わらずの刀剣人気痛感 です
期間を通じて、トーハクが所蔵する国宝の刀剣すべて同じコーナーに展示されるというのは、刀剣ファンにとっては「夢の空間」なのでしょう。

そんな刀剣コーナーで、私が、唯一じっくりと拝見し、そして響いたのは、拵(こしらえ)「梨地螺鈿金装飾剣」。これ、観たことはなかったような…
高級公家(こんな表現はあるのか?)儀式で佩用した拵で、なんとも優美 でした。

   

過去数年にわたって、何度も何度もトーハクの総合文化展を楽しんできた私、初めて拝見する作品は、極めて少なくて、そりゃそうだよな、って感じでした。

しかし、「第2部  東京国立博物館の150年」は、国宝は1点も展示されていないものの、初めて拝見するものが多くて、とてもとても楽しめました

とりわけ、孝明天皇明治天皇が実際に使ったという「鳳輦」眼福でした。
昔、教科書で、鳳輦に乗った明治天皇江戸城に入城する錦絵を見た記憶がありますが、これがあの鳳輦現物 と感慨もひとしお…。

鳳輦の他にも、「皇室から引き継がれた名品」として、「内親王女房装束」という十二単の一部が展示されていて、これは、

孝明天皇の妹で、第14代将軍徳川家茂に降嫁した静寛院宮(和宮親子内親王)が所用していたと伝わる女房装束の一部

だそうな
それにしても、鳳輦とか内親王女房装束どうしてトーハクにある? です。

図録によれば、鳳輦は、宮内省所管東京帝室博物館だった明治39(1906)年に宮内省式部職から引き継がれたそうですが、内親王女房装束は、

明治23(1890)年に(宮内省)調度局より帝国博物館歴史部第六区に引き継がれ、戦後宮内庁に引き継がれて、長く所管が明らかにされないまま当館の収蔵庫に保管されていたが、平成30(2018)年に当館の収蔵品として登録された。

ですって なんといいかげんな…

一方で、「博物館初期の収蔵品」として展示されていた作品は「お馴染みさん」が多かった。

菱川師宣「見返り美人図」とか、(猪目)が印象的な小早川秀秋所用と伝えられる「陣羽織 猩々緋羅紗地違鎌模様」とか、

鈴木長吉「鷲置物」とか…。

この作品を観ていると、ついつい2日前の記憶がよみがえって、

鷲の背人影が見えるような気がしました

   

「国宝」展に入場する際、「国宝スタンプカード」「国宝カード」を受け取りました。

トーハク「博物館でお花見を」のように、展示室内のいくつかのポイントにスタンプエンボッサーが置かれているのかと思ったところ、違いました

「前編」で書いたように、トーハク所蔵の国宝89件をすべて観ようとすれば、12月11日までの会期中に、下記の4回行かなくてはなりません。

10月18日~10月30日
11月 1日~11月13日
11月15日~11月27日
11月29日~12月11日

このに入場する毎にスタンプをもらえて、スタンプ 2個「国宝カード」を1枚3個でさらに1枚4個でさらに1枚もらえて、3つのスタンプを集めると、「東博国宝博士認定証」をもらえて、さらに抽選「国宝カード全89セット」をもらえるというものだそう。

でもねぇ~、前述のとおり、国宝は以前に拝見したものがほとんどだし、人だかりでよく見えないし、入場料は2,000円もするしで、私が、もう2~3回、「国宝」展に行くことはあり得ない気がします。

でも、一度は「国宝」展は観る価値があると思いますよ。
あれほどの数の国宝を、あの時間で、あの歩行距離で観られるなんて、あと50年はあり得ないでしょうから

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