「秋の上野は芸術の秋 (その7)」のつづきです、っつうか…
去る10月22日、「その1」で書いたように、私は東京国立博物館(トーハク)前を通り過ぎて、「驚きの明治工藝」展を開催中の東京藝術大学大学美術館に向かったのですが、トーハクの旧因州池田屋敷表門、「黒門」の様子がいつもと違うことに気づきました。
門の前に、スーツ姿の人たちやホテルのベルボーイみたいな格好の人
が立っていて、クルマ
でやって来る人たち
をうやうやしく「お出迎え」しているのです。 何かのイベントをやっているんだろうな…
黒門を入場門に使うのを初めて見た
などと思いながらも、そのまま通り過ぎ、東京藝術大学大学美術館で、「驚きの明治工藝」展を拝見しました。
「驚きの明治工藝」展を見物した後、トーハクに戻ってきて、正門から入場して本館に向かって歩いて行きますと、左手にある表慶館で何かが開催されているようで、ポツポツと人が入館していきます。そして、ここにもうやうやしくお出迎えする係員
の姿が…。
そしてそして、入口には、目立たない白い看板がありまして、
Cartier MAGICIEN
と書かれていました。
きっとカルティエの内覧会のようなものなんだろうな、と理解。
でも、まさしく表慶館で開催された「アート オブ ブルガリ 130年にわたるイタリアの美の至宝」を観て、
でも、これでもか とばかりに散りばめられたダイヤモンド
はガラス玉との見分けがつかないし、本物の金
も金貼りや金メッキとの見分け
ができなくて、、、、そもそも私の生活とはかけ離れすぎていて
、ふ~ん・・・
と思うのが関の山。
という感想だったように(記事はこちら)、Jewelryへの興味が薄弱な私ですから、 「場違い必至」の催しに違いなく、覗いてみたい
気も起こりませんでした。
で、きのう、日経のサイトを見ていたら、このイベントの記事を見つけました。
「カルティエのVIP受注会、東京初開催の裏側」と題するこの記事によれば、
東京・上野の「東京国立博物館 表慶館」は、緑のドーム屋根が美しい明治末期の洋風建築。ここが10月11日から21日までの間、カルティエにとって今年最大のビジネスの舞台となった。世界のVIP顧客を招いてのハイジュエリー受注会「カルティエ マジシャン」。歴史ある建物でジュエリーの商談会が開かれるのは初めて。カルティエが開く同様の受注会では、過去最大規模となった。
なのだそうな。(下の動画は期間限定につきリンク切れご容赦)
私がトーハクに行ったのは10月22日で、上記の会期後ですから、あの日は何だったのだろう…と思いますが、そんなことよりも、日経の記事を読んで驚いたのは、この「受注会」となんとも直接的なイベントの中味
並ぶのは1点あたり3000万円から1億円を超す宝飾品500点以上。歴史を重ねた作品もあれば新作もある。美術品の展覧会のようだが、最大の違いは、一点一点がすべて売り物ということだ。(中略)
この豪華な受注会に招待されたのは、特別に選ばれた世界中のVIP顧客だ。滞在費用などはカルティエが負担し、観光なども楽しめる趣向。人数は「数百組」としか明かさないが、日本と海外の比率は5対5で、各国のメディア関係者300人以上も訪れた。映画監督のソフィア・コッポラ氏ら著名人の姿もちらほら。カルティエは昨年、海外VIPを招いた同様の受注会を京都で開き、欧米やアジア、中東などから約200組を招いた。商品の平均単価は5000万円、総額は500億円。東京の受注会は期間も規模も、ほぼ2倍という。
ですって
世界中から顧客を「アゴアシ
付き」で東京にご招待したといいますから、そのコスト
に見合う売上げ&利益
が見込めるということなのでしょう。
さらに記事を引用しますと、
ライバル社やメディアが注目したのは、招待リストに載る顧客が普段、どの程度の宝飾品を購入しているのか、そして今回の受注会がどれぐらい購買に結びついたかという点。全体の5割を占めたとみられる日本の招待客は、百貨店の外商らが選定する。条件は秘密とされるが、ある百貨店の関係者によれば、選んだのは十数組。1点あたり1000万円以上のハイジュエリーを最近購入したことが一つの目安となった。
この百貨店が選んだ招待客の成果は、というと、さすがに全員が購入するというわけにはいかず、受注会期間中は3000万円台の商品を購入した1組にとどまった。「中国人富裕層の購買力に圧倒された」(関係者)。この関係者はすでに12月上旬、都内の高級仏料理店で再度、カルティエが開くイベントを見据える。「上野の受注会で購入を迷っていた顧客や、もう少し価格が低い600万~700万円クラスの宝飾品を見たいという顧客を招く。再度商談して背中を押す」
だとか。
まったくもって、私には縁のない世界です
そして、うらやむといった意識はありませんで、「Cartier MAGICIEN」に集ったようなお金持ちの方々が、財力をつぎ込んで美術品・工芸品を制作させた、あるいは蒐集したからこそ、美術品
がつくり出され、保存されてきたという事実に感じ入るのであります。
つづき:2016/11/22 秋の上野は芸術の秋 (その9・最終回)