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旅立ちの予感

何となく落ち着かない。朝からモヤモヤ、そわそわする。誰かに話したいような、話したら「とんでもないっ!」と怒られそうな気もする、、、。夕方「たけよし!お爺さんがお菓子をあげるそうだから二階においで。」と祖母の声。階段を上り、祖父の枕元へ。

まさか本人に『おじいさん、今日死んでしまうよ』とはいえない。ソコデ、「おじいさん、これが生きてて最後のお菓子だね!?」と言ってしまった。母が低い声で『こらっ』と言って階下へ、間もなく私も下へ。すると父がいつの間にか囲炉裏の前にうなだれて座っていたが、母から報告を受けていたものか「縁起でもない事を言うな!!」と叱られてしまった。

母はいったいどこへ行ったんだろう?二階に祖父と祖母。下には父と私。14人の大家族である。あとの10人はどこで何をしているんだ?一人で夕食をとり、18時頃離れの二階で早々と寝床に入り、そのまま寝入ってしまった。23時頃長姉に起こされた。「ビックリしないでね、今お爺さんが死んでしまったんだよ」『解ってるよ』「えっ!なんでなの?」『今日は朝からそう思ってたんだ』母屋の二階で祖父の死に水をとらされた。

吉野精一郎、享年76歳。厳しいが優しくもあり、いろいろ教えてくれた祖父の、私には予見された旅立ちだった。祖母が葬儀の後もやって来る弔問客に、祖父の枕元で言った私の「せりふ」の事を話していたのを覚えている。昭和30年11月16日。私が大瓜小学校五年生の晩秋でした。

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