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唾(つばき)姫の恐さ

「私の家の椿姫にうまいお茶を入れてもらうから君も着いて来い!」と言われて歯科医師の自宅を訪問する事になった。姫には何を聞かれても「今朝まで銀座の店で一緒だった、と言ってくれよな」どうやら、姫とは奥様の事で、自分は医師のアリバイ作りに利用されるようだ。まあ成る様に成るさ。

さすがに新築だけのことはあり信濃町の豪邸と言う感じだった。夜8時、床の間の立派な部屋に通され和服姿の奥様にごあいさつの後、落ち着いてよく拝見すると正に品性漂う椿姫そのものであった。「あなたが主人と一緒にいた方ね?」何と奥ゆかしい物言い。

さすが上流は違う物だ!と、次の瞬間「もし嘘だったら承知しないよ!!ほかの歯医者につれてってあんたの歯みんな抜いてしまうからね!!」腹に響く大きな声!自分の顔にかかるツバキ!なるほど! 椿姫は唾姫だったのだ!

唾の奥様を持った金持歯医者さんと、しがない株やの26歳の自分、さっきまでと違って本当の椿姫をもらえる可能性のある自分の方が幸せなのだ!としみじみ思った青春の秋の一日だった。

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