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旧作探訪#97 『トゥモロー・ワールド』

2010-05-16 23:44:20 | 映画(レンタルその他)
Children of Men@レンタルDVD、アルフォンソ・キュアロン監督(2006年イギリス=アメリカ=日本)
子どもが誕生しない未来─このままでは、地球を受け継ぐ者は、誰もいなくなる。
西暦2027年11月、人類は希望を失い、多くの国が無政府状態となるなど恐慌におちいっていた。女性の出産能力が失われ、18年間も子どもが生まれないのだ。
イギリス政府も世界中から押し寄せる不法移民を警察や軍によって厳しく取り締まるが、日に日に治安は悪化していた。世界最年少の青年がアルゼンチンで刺殺されて絶望に包まれたこの日、ロンドン市街地で爆弾テロが発生し、英国エネルギー省に勤めるセオ(クライヴ・オーウェン)はすんでのところで難を免れる。
翌朝、セオは出勤途中に過激派グループ「フィッシュ」に拉致される。そのリーダーはかつての妻ジュリアン(ジュリアン・ムーア)で、彼女の要求はある不法滞在者の「通行証」を手に入れることだった。渋りながらも、従兄弟の政府高官から通行証を手に入れるセオ。検問所を突破するためジュリアンと共に乗り込んだ乗用車で、セオが引き合わされた不法滞在者は若い黒人女性、キー(クレア=ホープ・アシティー)だった。
検問所に向かう途中、セオたちの車は暴徒の襲撃にあい、ジュリアンが撃たれて絶命。組織のアジトに逃げ込んだセオは、キーから衝撃の事実を告白される。なんと彼女は子どもを身ごもっており、間もなく出産を迎えるというのだ。セオは彼女を連れ、命がけの逃避行を開始する…。



先日の『月に囚われた男』が意外につまらなかったので、海外での評判を調べようとネット検索。2000年以降のSF映画をランク付けしたサイトで15位とのこと。そこで堂々1位に輝いたのが、この映画。SF冬の時代といえど、10年間の1位となるような映画の題名に覚えがない。
『Children of Men』─わが国での題名は『トゥモロー・ワールド』。チラシの宣伝文句といい、バカしか相手にしてない感じなので、目に入ってませんでした。
で、内容はすごくいいです。久しぶりにきっちり細部までお金をかけて情熱かたむけて構築された新作のSF映画を見た感じ。映画館で見たらさぞかしの迫力でしたろう、キング・クリムゾン、マーラー、ジョン・タヴナー、ジャーヴィス・コッカーといった音楽も効いている。
細部を作り込んだ壮大なSFといえば『2001年宇宙の旅』が古典中の古典とされるが、早稲田松竹でかかったのを見て、映画としての完成度はともかく根底をなす世界観としてはトンデモ。人類が宇宙へ旅立って、「次のステージ」へ進化するとかの。
神を殺して、人類が神の座に就くというような、現実を踏まえない誇大妄想にも似た。
対照的にこの映画は、人類は地球の新参者に過ぎず、次の時代には生き残ることさえ許されないかもしれないとわれわれに問うのだ。



人類は火や電気や原子力、エネルギーや道具の文明を発展させて地球上に満ちあふれたものの、生きものとしての基本は変わっていない。勃起した陰茎を膣内に挿入して精子を卵子に受精させ、十月十日かけて母胎から出産するという方法でしか増えることはできない。
その場合、胎児に栄養を吸い取られ、命がけで出産しなければならない女性が主導権を握るのは当然。↑の竹内久美子がだいたいどの文章でも同じことを言っているとおり、林真理子や上田美由紀のようなドブスといえど、女の側に男を選ぶ優先権がある。



↑「助産婦さんがいい女なら結婚しちゃるわい!!」などと言う諸星あたるも、高橋留美子が「いっぱい種をまける男性」として理想化を施した主人公であるがゆえ、そのような言動が許される。通常男子には、選り好みは許されない。まして並より劣った遺伝子しか持たぬオラは、45才までシロート童貞に甘んじなければならない。
つまり、この映画は現実を描いている。人類が生き残れるかどうかの瀬戸際の現実を。2027年に生き残れるかというのは、あなたやオラ個人が生き残れるかということではない。あなたの子どもやオラの親戚が生き残れるかというのとも、ちょっと違う。
たとえ自分や自分の家族や日本人が滅んでしまっても、アラブ人やアフリカ人など、とにかく人類が生き残ればいい。そのために身を捧げましょう、という。
口で言うのはたやすいが、現実には自分の利益ばかりが追求される世界。江副浩正・秋元康・折口雅博・笠原健治─汚い汚っさんが若い女を食いものにし、まして外国からの移民の命などゴミのようにあつかわれる新自由主義。だんだんと女が安心して出産できない世の中になりつつあるのは洋の東西を問わない。
そこのところを、いったん立ち止まって、種としての人類という原点に戻って考え直してみましょうと触発する映画として万人に推奨したいものの、わが国で公開当時バカしか見ないような宣伝だったのは、先に挙げたような人たちがマスコミ・広告業界を牛耳っているためかもわからない。


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