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推敲しない女の思い出

2012-05-25 22:00:28 | マンガ
ツイッターのTLで「エロい」として話題になってたので、稲光伸二という人のマンガ本『性食鬼』の1巻を買ってみたんですけど。『闇金ウシジマくん』以外の一般向けマンガ単行本を買うのは2年か3年ぶりくらいになるんじゃないかと思うのだが、予想を超えて今のマンガはひどいことになってるんだな。
ヤングチャンピオン烈なる雑誌連載とのことで、いわゆる石原条例に触れるとか、片山さつき・丸川珠代型性教育に反しないような範囲で、20~40代男性の読者層が求めるとおぼしきエロ要素を盛り込んだ。
「野川いずみは、学校に現れた奇怪な着ぐるみに襲われるが、“うさ山”と名乗る謎のバニーガールに助けられる。しかし、うさ山にエロい水着を突きつけられて、それを着て戦うよう促され…!? SFお色気アクションの決定版!」ってことですが。
“SF”ねえ…
まあ最近の作家さんらしく、画力は信じられないほど高いのに、世界観は信じられないほど狭くてくだらなくて、おじさん呆れちゃいました、この野川いずみってのが勉強ができる並乳の眼鏡っ娘との設定で、なにしろ絵がきれいなのでちょっぴり勃ちはしたんだけど、テヘペロ─



『エースをねらえ!』の二次創作同人誌を作ってみて、あらためて、昔のマンガはエロを前面に出してないようなものでもエロかったなと。読者の心をつかむため、作家さんが一生懸命考えてたなと。
当時のマンガ好き男子がわりと少女マンガを見てたのは、やはり女たちの方がおしゃれで美的な感度が高い、そういう読者に向けたマンガにあふれるエロ要素を求めてのことだという気もする。
市場としては男子向けの方が一般的で大きいから、逆に女子たちが少年マンガにそうしたものを求めるということもあり、あだち充や江口寿史なんかは十分ニーズに応えることができてたようだが、いつ頃から男女のマンガ読者が交わらないようになったのかと考えるに、冒頭画像『マンガ青春記』という、2009年に亡くなった中島梓/栗本薫というペンネームを使い分けてた作家による自伝的エッセイが参考になるような。
小説家として著名になる前、マンガ家として世に出たいと当時のCOM誌に投稿。もちろん見るのも大好きで、少女マンガだけでなく『巨人の星』や『ハレンチ学園』、さらにはキーボード演奏でバンド志願、スポーツ観戦、観劇、映画─とエネルギー盛んな青春時代が語られる。
ホント、脳内に湧いてくる言葉を、深夜放送のパーソナリティーのように、どんどん原稿用紙に書いてしまったって感じ。
推敲の様子はうかがえない。
そういう意味では、アマチュアの延長上の創作活動。推理小説、SFファンタジー、評論、いろんな分野に適応できて、大量の作品をものせる筆力は、人口ボーナスによる市場拡大期にはうってつけの人材だったかも分からないが、同書の中に「SFファンダムからは拒まれた」との恨みつらみも。
上記の出来損ないエロマンガもSFと称するような間口の広いジャンルであるものの、そういうところへおたくの権化みたいのが集って排他性かもし出すんでしょうな。中島梓をSFではないとするSFファンが実際ハードコアなSFを好むというより、男性エロ需要に特化したヤマト・ガンダム・エヴァンゲリオンなんかを金科玉条とするおたくが腐女子を拒むような、単なる近親憎悪なのかも分からない。
そういう人たちは、自分の好みの作品にはお金を惜しまないだけでなく、ファンジンを作るとかコンベンションを開催するとか消費活動が旺盛なので、出版界にとっても上得意となり、雑誌内や単行本でもそうした層にアピールする作品が次第に幅を利かすようになって、冒頭に記したような現今のマンガ界の状況がもたらされたのではないでしょうか。


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