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読書メーター #6 — 白昼の死角、ほか

2018-04-08 15:59:52 | 読書
清水 潔 @NOSUKE0607 4月2日
大誤報を書いた産経新聞の高木記者は、沖縄タイムスの記者に対し、こう言い放ったという。

「あんたの都合なんか知らないよ」「つぶすからな」「ヘビみたいな男だ」「受けて立つよ。おれは産経の顔だからな」。
https://dot.asahi.com/dot/2018040100013.html

ますやま @askrec 4月4日
・人種差別
・八百長
・パワハラ
・隠蔽体質
・女性蔑視

さすが「国技」だけあって、日本を見事に体現している。

うさみあきら@2月氷結 @denpa2018 4月5日
仰向けに倒れて痙攣は、間違いなく意識レベルは最悪の状態なのに「まいったなー」って顔で何もしない行司、スーツの男集団は、マジでスポーツ関係者なのかと目を疑うわ。




左から産経新聞の高木・那覇支局長(誤報当時)、大相撲の舞鶴巡業で挨拶をしていた舞鶴市長が倒れ土俵上に集まる人びと、闇金ウシジマくん・サラリーマン編の板橋


ウシジマくんの板橋は、↑の絵の、コンビニのレジでのろのろしている女に向ってキレる、その直前に会社でひどいいじめを受けたのだ。仕事を干され、罵倒されても、生活のため耐え忍ばねばならない、辛い立場のはけ口を求めて暴発したとみることができよう。安く扱われ、怒りや嫉妬に縛られ、どんどん自分を好きになれないような行動の悪循環にハマる。

いっぽう、もう一人の主人公である小堀も、課長のパワハラを受けており、後輩の戸越からも侮られる。ストレスは溜まる。しかし派遣社員の女から「小堀さんみたいな人と付き合えばよかったな」と言われたり、営業先の病院では医師から邪険にされても患者から「これニイちゃんとこの製品だろ、助かってるよ」と声をかけられる。

戸越が看護師と合コンして医師や病院の情報を聞き出すのは計算ずくで、権力のない医師には冷たい態度だと看護師から見抜かれているが、小堀は誰に対してもわけへだてなく自然で誠実な態度で接する。神は細部に宿る。小堀の仕事ぶりも、真鍋昌平さんの作風も。

↑に引用した産経の記者や、相撲界の男たちが、板橋と同じように立場に呪縛されて生きていると、みなさんも気付かれよう。全国紙の記者が、赴任先・沖縄の地元紙や、政府に逆らう基地反対派を蔑視するのには、自分が政府を頂点とするタテの秩序に服従していることの裏返しだ。

相撲も。ちょっと前に行司のホモセクハラも報じられたが、力士だけでなく相撲界全体が、日本的なタテ社会・村社会の縮図といえるだろう。わが国の若者は、他国の若者に比べ、自尊の感情、自己肯定感が低いということも報じられた。常に「お立場・お気持ち」の対人関係に縛られ、忖度して生きねばならない。保身の動物で、責任を取りたがらない役人が、自由意思で公文書の改竄などする筈がない。

サッチャー元英首相の欲望においては、社会というものは存在しない。バラバラに分断された個人・家族のみある。自民党と安倍晋三の欲望においては、逆に個人であるとか自由・人権というものが存在せず、誰も責任を取らないまま相互に呪縛し合う対人関係絶対の社会のみがある。自由を取り戻したいなら、安倍夫妻を牢屋に入れねばなるまい—



チャヴ 弱者を敵視する社会
依田卓巳
海と月社

オーウェン・ジョーンズ/チャヴ 弱者を敵視する社会/海と月社・2017
かつてサッチャー首相は「みな問題を社会に投げるが、社会というものはない。個人、男と女、家族だけが存在する」と述べ組合を攻撃、国民に自助努力を求め小さな政府路線を推進。その後のニューレイバー路線もまた労働者に中流階級を目指させるものであったが、パブリックスクールのような教育制度、IT&グローバル化は格差を固定化させるようにはたらき、貧しい労働者や福祉に頼って生きる層は自己責任の敗者としてひどい蔑視の対象となる。構造改革と市場原理の帰結は、中流以上でないと政治家やジャーナリスト、音楽家にさえなれない分断社会…


アナキズム・イン・ザ・UK――壊れた英国とパンク保育士奮闘記 (ele-king books)
ブレイディみかこ
Pヴァイン

ブレイディみかこ/アナキズム・イン・ザ・UK 壊れた英国とパンク保育士奮闘記/Pヴァイン・2013
彼女が職場の保育所で見聞するアンダークラス(サッチャー&ニューレイバー後ワーキングクラス概念が風化し、こんな身も蓋もない呼称も)の親や子どもの実情は、さすがに生き生きと語られてよいのだが、英ミュージシャンの言動にかこつけて自分語り&社会批評みたいのはどうもなあ。有名人の言葉なんて、その立場だから言えるので、意味ありげでも無意味なことが多いですよ。音楽だけが本当。これまで読んだ彼女の本の中では最も低調でした


大不平等――エレファントカーブが予測する未来
立木 勝
みすず書房

フランコ・ミラノヴィッチ/大不平等 エレファントカーブが予測する未来/みすず書房・2017
植民地支配と貿易により20世紀には「どの国に生まれたか」が社会的出自よりも人の運命に作用し、先進国が繁栄。しかしIT技術とグロバリゼーションにより、法や税に縛られない一部の企業と、中国などアジアの中間層が台頭、エレファントカーブと呼ばれる曲線を描く。こうした経済ではテニスのトップ選手と200位の選手のように、微妙な技量差でも露出効果で極端な格差が生じ、教育プレミアムが消失。先進国政府や民主主義のプレゼンスが後退し、再び出自によって貧富の差が固定化される階級社会に。複雑に織り成す因子を緻密に検討した好著


愛すべき娘たち (Jets comics)
よしなが ふみ
白泉社

よしながふみ/愛すべき娘たち/白泉社ジェッツコミックス・2003
いきなり無関係で恐縮ですが、フジモン「実力が拮抗してたってこと?」、ナダル「ホイ!」。偶然か必然か。一つの噛みにもそこに至る多くのパス回し、人間関係の綾がある。ロンハー&アメトークは貴族のたしなみだ。それに対し、当代きっての描き手であろうよしながふみでも、たった一人の脳内で決め過ぎる、説明的な物語は寒々しい。絵柄が好きでないこともあるが、市井の母娘関係に隠された心もよう等々、彼女に教えてほしくはないと思ってしまった。もう普通のストーリー漫画は無理だな、私には(;´Д`)


闇金ウシジマくん外伝 らーめん滑皮さん 1 (ビッグコミックススペシャル)
真鍋 昌平,山崎 童々
小学館

真鍋昌平・山崎童々/闇金ウシジマくん外伝 らーめん滑皮さん・1/小学館ビッグコミックススペシャル・2018
ナニワ金融道は青木雄二さんご本人が手がけた金字塔である本編19巻が終り、アシスタント筋による類似作品や死後に作られた続編など無残に汚されていった。ウシジマくんもまたドラマ化・映画化・スピンオフと同じ轍を踏んでいる様子。本編は、もっとも暗鬱で読むのがつらい洗脳編ですら人生の糧になる部分が少なくなかったが、これはひどい。作画者が真鍋昌平さんの絵柄に似せており、かえって無意味な蘊蓄&サブカルに終始する内容のなさが浮き彫りに。せめて本編は堂々と完結してほしい


人生、楽に稼ぎたいなら不動産屋が一番!
吉川 英一
ダイヤモンド社

吉川英一/人生、楽に稼ぎたいなら不動産屋が一番!/ダイヤモンド社・2018
ひどい書名、ひどい装丁、ダイヤモンド社。反面教師として購読。「他人のふんどしで相撲をとる、時計はロレックス、車はベンツ」というゴキブリ系男子の生態をかいま見ることができよう。宅地建物取引士の資格は簡単。不動産(負動産)を売りたい者も業者も高齢化、業界はFAXがデフォルト。パソコンとメールが使えるだけで人を雇わず自宅で片手間で利ザヤを抜ける。「三為」と呼ばれる規制緩和もこれを後押し。いっぽう、わが国の住宅事情は十年一日、劣悪なまま。冬の東京の屋内は北欧より寒いとか。まとめて滅亡よろしく


金融排除 地銀・信金信組が口を閉ざす不都合な真実 (幻冬舎新書)
橋本 卓典
幻冬舎

橋本卓典/金融排除 地銀・信金信組が口を閉ざす不都合な真実/幻冬舎新書・2018
コインチェック騒動、もし出金されないなら去年儲けた分の税金を負けてくれないかというのはまだしも、逆に政府が損失を補填してくれというのには呆れる。非中央集権が売りの仮想通貨ながら、おもな客筋は金融庁やアホウ大臣を過信するネトウヨなんでしょか。この著者もまたそうした風潮を助長する御用記者の様子。「金融排除」を招く保守的な与信から脱却せよと説き、いくつか美談を紹介するが、どうせリスクマネーの結果論ならば、スルガ銀行が業者ぐるみでシェアハウス投資家に押し貸ししたあげく自己破産続出というような失敗例が有益でしょう


白昼の死角 (角川文庫 緑 338-25)
高木 彬光
KADOKAWA

高木彬光/白昼の死角/角川文庫・1976、原著1960
戦後の光クラブ事件をモデルにしたと聞き、仮想通貨をめぐるドタバタの座興として読むことに。その隅田という人物は序盤で去り、彼が中途で躓いた悪の道を引き継いで花開かせる鶴岡という人物を主人公とするピカレスクロマン。占領・闇市・東京裁判・朝鮮戦争といった時代背景と並行して、まるでロンハーのドッキリのような大仕掛けによる鶴岡の金融犯罪が進行する迫力。標的は企業。その経理担当をたらしこむ。どうやら彼の天才が犯罪でしか活かされない理由として、同世代の若者を餓死・自決・特攻など犬死にさせた明治世代への恨みがあるようだ…


「愛国」という名の亡国論 ―「日本人すごい」が日本をダメにする
窪田 順生
さくら舎

窪田順生/「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする/さくら舎・2017
表面的で薄い本と分りナナメ読み。「この本を買った人はこんな商品も」を参照すると、現状に満足しない意識高い系のネトウヨが買っているフシもあるようだ。そんな者がいればの話だが。表面的というのは、世相や市場に阿り、自分は右でも左でもないことを示そうと、(古巣である)朝日新聞が愛国報道と反日報道の両極に振れることを執拗に批判するあたり。スポーツや技術力の「愛国」は単なる広告志向で、著者のスタンスとも変らないのでは。もっと欧米の学者のような、何が彼らを・マスコミ広告をそうさせるのかという腰を据えた構造分析が望まれる


日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 (中公新書)
吉田 裕
中央公論新社

吉田裕/日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実/中公新書・2017
「人種差別・八百長・パワハラ・隠蔽体質・女性蔑視=さすが相撲は国技だけあって日本を見事に体現」とのツイートを見かけたが、旧日本軍は特に敗色濃い大戦末期、欧米列強に伍してきたメッキが剥がれ、兵士を消耗品として使いつぶす後進性の博覧会に。一口に戦死といっても、餓死・マラリアなどによる衰弱死・いじめ殺される・輸送船が沈没して救命ボートにしがみつくも先に乗っていた将校に腕を切り落とされ…など無数の事情が。元ミリオタの著者は資料を克明に当り、戦争の実態を著した。ブラック企業や安倍政権、現代日本への警鐘ともなっている

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