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『VHSテープを巻き戻せ!』

2014-08-05 19:38:27 | 映画(映画館)
Rewind This!@渋谷アップリンク/監督・脚本・原案:ジョシュ・ジョンソン/2013年アメリカ

ホームビデオは、僕らの大革命だった。家にビデオデッキがやってきた日の興奮、ビデオテープをセットした時の感触、レンタルビデオ店の会員になった時の高揚といった"初体験"の数々、中古ビデオを探し歩いた徒労と充実の日々。こうしたことは、ベータとVHSの企画争いからして本拠地・主戦地となった日本だけでなく、アメリカをはじめ世界共通の現象だったのだ。

80~90年代と長く市場を支配し、一大ムーブメントとなったビデオカルチャーにまつわる仕掛け人や生き証人、ビデオに魅せられた人びとの言葉から見えてくる、映像作品のいまそこに忍び寄る危機…。ノスタルジーとテクノロジーをつなぐ"愛"のドキュメンタリー。




テレビ番組を録画して、好きな時間に見られる。レンタル会員になって、家で映画を見られる。
この程度のことが、1981~85年当時は夢のようなことで、われわれの生活を大きく変える事件だった。しかもその技術は日本発であった。

米国のチャートで、ビデオの売り上げが伝えられると、見慣れない種類のものが上位を占めていた。ジェーン・フォンダのワークアウト。いわゆるエクササイズ・ビデオなるものの始まり。ジムへ通わなくても、家でビデオをお手本にエアロビクスができる。
それだけでなく、ミュージック・ビデオ、B級のホラーやSFアクション映画、そして何といってもアダルトビデオと、コンテンツへのニーズが爆発的に増大する中、さまざまな市場が、海賊版も含め花開いた。
雨後のタケノコのように、各地にレンタルやセルのビデオ店ができていった。




↑映画に出てくる、米国のコレクターに感化され、いま私の手元にあるVHSテープを並べてみたんですが。
『制服の少女』なるアダルト作品は、30分12000円となっている。ビデオって高かったんですよね。1万を超すのが普通。
日本ほどべらぼうな値段ではなかったようだが、カルト映画『バスケット・ケース』の監督が、ティーン向けに売りたいと考えて、通常50~60ドルのところ、同作を20ドルを切る価格で売ってヒットにつなげたという証言も。

きのうの上映後、ノイズミュージックの非常階段として活動するかたわらビデオ店やインディー・レーベルも経営していたJOJO広重なる人物が、作家の中原昌也とのトークイベントで語るに、当初はミュージックビデオの海賊版に手を染め、せんずり音楽雑誌ロッキンオンの1ページ広告料が30万円のところ、実際は15万円で、年間通しで打つからと12万に負けさせて広告掲載して売りさばいたと。
当時のファンは洋楽の映像に飢えており、出せば1万円だろうが売れる。後にジャパン・レコードの許可を受けた正規版は、欧TV企画PALから変換する業者に30万円取られたが、それでもペイできる。スロビング・グリスルなどのどマイナーなミュージシャンのものでさえ。

バブルであった。
株や不動産だけでなく、ビデオや音楽、それを紹介する店や雑誌など、コンテンツ商売が膨らむだけ膨らんだ時代。




↑ビデオテープ独特の、繰り返し再生したり同じところで一時停止したりすることによる、画像の荒れ。

上記のようなコンテンツ商売のバブル現象は、株や不動産のバブルほど劇的に崩壊したわけではないが、今に至るまで深刻な問題を残すことに。
ひどい画質の海賊版でも、出せば売れる、この程度で商売になるってことで、猫も杓子も参入し、市場のニッチ化・セグメント化(隙間化・細分化)が限りなく進行し、さらにネット配信やYouTubeの登場で、無限大の時間コンテンツがタダ同然で氾濫する。

かつて映画や小説は、大ヒットしているから、自分も見てみようか、という気にさせる位置付けの商品だった。
純然たる嗜好品なのにもかかわらず、テレビや新聞の広告で宣伝をして…というマス・マーケティングが成立していたのだ。
しかし、コンテンツ商売のバブルや、ネット&携帯電話の普及を経て、各国共通してこの構図が通用しにくくなってきたのは確かであろう。ただし、わが国では、ジブリ映画がOAされる金曜夜にツイッターがその話題で溢れるように、消費者心理上にも中央集権官僚制が温存されており、進行中の文化的危機への対処が遅れがちに感じられてならない–(ニッチ化・セグメント化とマス・マーケティングの問題について次回も扱います)



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