1月18日(金)に開催された総務文教委員会では、コンプライアンス条例の制定に向けた協議もおこなわれた。
一昨年から昨年にかけて職員の不祥事が相次いで発覚。「職員個人の倫理観の欠如とともに、組織全体の法令遵守意識の希薄化、内部統制の不備等も要因となって発生したことから」などを理由に、玉野市コンプライアンス条例を、3月議会で制定するための協議である。
私は、「職員が遵守すべき倫理原則」の項の「5 職員は、職務の遂行に当たっては、公共の利益の増進を目指し、全力を挙げてこれに取り組まなければならない。」の文言に疑義があると主張した。「公共の利益の増進に全力挙げる」とは、どういう意味か?
要するに職務に全力をあげよ、ということだろうが、税金の徴収や国保料の収納業務等で、「市民の理解と協力を得る」努力をせずに、或いは、「市民に説明する責務を全うする」ことなく、厳しい取り立て徴収をすすめる、職員にそのような誤解を生むことにならないか。「公共の利益の増進に全力を挙げる」前に、むしろ、「職務遂行に当たっては、法令等を遵守し、その職務を市民に説明する責務を全うするとともに、市政に対する理解と協力を得られるように努めなければならい。」、「職員は、特に自らの職務に関連する法令等に精通するよう努め、職務を適正に遂行しなければならない。」【小郡市コンプライアンス条例、(職員の倫理原則)から抜粋】とする、こうしてた文言が強く求められる。
私は、地方自治法に規定する「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として」(地方自治法第1条の2)とある、「市民福祉の増進」の目的を基本にした立場が職務遂行に貫かれることが重要で、そのような視点での見直しをこの項に求めた。
しかし、その後、他市の関係条例をネットで調べたところ、「近江八幡市コンプライアンス条例」に玉野市と同様の「公共の利益の増進」という文言があったが、必ずしも多くの市でこうした文言を使っているものではない。近江八幡市の場合でも、
その前文に「職員は、全体の奉仕者であることを深く自覚し、市民から信頼される職員となるよう不断に公務員としての資質の向上に努めるとともに、常に公共の利益の増進を目指して公正な職務の遂行に当たらなければならない。」とし、「市民からの信頼」等の文言を明記している。
こうして検討してくると、玉野市の「職員が遵守すべき倫理原則」のうちの、「公共の利益の増進を目指し、全力を挙げてこれに取り組まなければならない。」の文言を中心に、その市民不在の弱点がみえてくるように思う。
憲法11条━基本的人権、第13条━個人として尊重、幸福追求権、第25条━健康で文化的な最低限度の生活を営む権利━生存権など
「住民福祉の増進」は、こうした憲法の諸規定とも関連するものであると考える。
今後、この条例案を市当局がどのように見直しするか不明であるが、「市民福祉の増進」、「市民の立場に立って」「市民に説明する責務」、「市政に対する市民の理解と協力を得られるよう」などの文言が書き加えられなければ、強く見直しを求めていく必要がある。
これまでの経験で、市職員が職務に関連する法令等に精通せず、市民に不利益を与えたこと、或いは、市民にとって有利な情報を説明せず、滞納整理を強引に進めていた例など、幾つか知っているだけに、倫理原則は、「市民が主役」の立場が貫かれなければならない。