●全角度取材「家計崩壊に備えよ」 次は復興増税!あなたの預金が狙われている
現代ビジネス / 2012年06月27日(水) 週刊現代 「週刊現代」2012年6月29日号より
週刊現代 経済の死角
こんなに不況なのに暴動やデモが起きないのは世界を見渡しても日本くらい。政府はお となしい国民から税金をむしりとる一大プロジェクトを開始し、個人金融資産1400兆円に狙いを定めた。
いきなり18万円もやられた
「国は財政再建のために増税や社会保険料の引き上げをやらざるをえないが、そのしわ寄せをすべて庶民に押し付けようとしている。
日本経済の現状を考えれば、今後は給料が下がる可能性が高い。そこに大増税や負担増がのしかかってくる。つまりは収入が減って、支出が増えるという〝ダブルパンチ〟の時代に突入するのです」(ライフプランナーの紀平正幸氏)
テレビや新聞は連日のように消費税政局ばかりを報道しているが、実は消費税報道の陰に隠れて民主党政権がこっそり仕込んだ「増税策」「負担増」がすでにスタートしている。
忘れている方も多いだろうが、来年からは復興増税が始まることが決まっている。
詳細は後述するが、日本は税金を払うために働くような〝重税大国〟になってしまうのだ。
まずはすでに悲鳴を上げている〝被害者〟の声を紹介しよう。
大手営業支援会社勤務の37歳の男性は、最近、会社から受け取った住民税の通知を見て驚いた。今年になって増税されていることがわかったからだ。
「私が不勉強で知らなかったのが悪いんでしょうが、子どもの扶養控除がこの6月から廃止されていたんです。これまでは子ども一人につき33万円控除されていましたが、これがなくなっていた。うちには子どもが二人いるから、年間6万6000円の増税ですよ。
マニフェストでは『子育て支援』と謳っていたくせに、フタを開けてみれば子育て世帯から税金をむしりとろうとしているわけでしょう。一方で相続税や所得税の最高税率を上げる方針は〝先送り〟して、金持ちを優遇している。僕らをモノ言わぬ大衆だと思って税金を召し上げようとしているんだから、許せない」
怒りをあらわにこう語ると、男性は紙を一枚、取り出した。
区役所から最近受け取ったもので、今年4月に「子ども手当」から名称変更した「児童手当」に関する通知書。
この6月から所得が一定額を超える人は児童手当が一律削減されるから、区役所に所得証明書などを提出しろとの内容だった。
二人の子どもは小学生で、いまは一人あたり月額1万円の児童手当をもらっているが、男性は所得制限の対象になるため、今後はそれぞれ5000円に減額されるという。
住民税の増税分と合わせて年間で18万円の〝負担増〟だ。
親の介護もあっておカネが必要だから、5年前に歩合制の会社に転職して一生懸命働いてきた。男性はこう嘆く。
「親は田舎に住んでいて、いまは週末ごとに新幹線で介護に通っているが、頻度を減らさざるをえない」
大手サービス系企業に勤める32歳の男性も最近、児童手当に関する通知書を受け取った。今年1歳になる子どもが一人。
月額1万5000円を受け取ってきたが、所得制限の対象になるので5000円に減額される。男性は憤る。
「月額1万円も減額されるなんて知らなかった。子どものおむつ費だけでひと月に4000円もかかっているから、1万円は大きい。
それに所得が一定水準を超えているといっても、僕は土日もなく働いているし、ノルマ以上の結果を出しているからある程度の給料をもらえているわけで。仕事が忙しすぎて、子どもとも全然遊んであげられていない。いま話題の生活保護問題みたいに、サボっている人が得する世の中なのかって、がっかりです」
他人事ではない。
これから予定されている家計直撃の政策をまとめたのが右の表である。
増税、社会保険の負担増、控除の廃止など、われらの預金を狙い撃ちにするイベントが今後数ヵ月おきにあることがよくわかる。
誰が対象になって、どれくらいの負担増になるのかを事前に知っておかないと、ある日突然、家計崩壊の憂き目にあう。
ひとつずつ詳細を見ていこう。
まずは先の例で紹介した児童手当の所得制限。
そもそも民主党政権がマニフェストに掲げて鳴り物入りで始まった子ども手当は、「中学校卒業まで一律で1万3000円」「所得制限なし」だったのが、〝バラマキ批判〟を受けて昨年10月から「3歳未満は月1万5000円、3歳以上~小学校卒業までは月1万円(第3子以降は1万5000円)、中学生は月1万円」「所得制限なし」に減額された経緯がある。
これが今年4月から「児童手当」と名称変更されたうえ、6月からは所得制限が設けられ、対象となる世帯は「一律で5000円」に減額される。
民主党政権がかつて子ども手当を2万6000円支給すると主張していたことを思えば、その差は大きい。カネをえさに票を集めながら、いざとなったら「財源がないので払えない」という〝やるやる詐欺〟のようなものだ。
退職金や預金の利息も取られる
所得制限の対象になるのは家族構成や年収によって違ってくるが、「夫と専業主婦、子ども二人」の場合、収入が960万円以上、同じく「夫と専業主婦、子ども一人」だと約917万円以上が目安となる。
「児童手当は毎年6月に2~5月分、10月に6~9月分、2月に10~1月分の4ヵ月分が一気に振り込まれることに注意したい。
月額1万円の減額といっても、実際には受け取る額が4万円も減る。子どもが二人だと8万円なので、これを当てにして生活費を考えていると痛い目にあう」(資産運用コンサルタント)
続いて住民税の年少扶養控除の廃止。
ざっくり言うと、住民税は所得から各種の控除を引いた額に一律10%をかけた額を納める。
いままでは15歳以下の子ども一人につき33万円を控除できる年少扶養控除があったが、この6月から廃止。子ども一人につき年間3万3000円の〝増税〟になる。
42歳大手証券会社勤務の男性は民主党政権の変節に怒りを覚えたと言う。
「そもそも子ども手当ができる〝見返り〟に、年少扶養控除の廃止が決定したという経緯がある。子ども手当を実質減額するのなら、控除の廃止も見直すのが当然でしょう。それを国民にまったく説明しないで、こっそり控除だけ廃止するのだからふざけるのもいい加減にしろ、ですよ。
うちは小学生の子どもが二人だから、年間6万6000円負担が増える。子どもが好きで通っているダンス教室も、やめさせようか悩んでいます」
実は先立つこと昨年1月には、所得税の年少扶養控除も廃止されている。
結果、各自治体で所得税の納税額〝増加ラッシュ〟が起き、国の所得税の総額(2011年度)は4年ぶりに増加した。しかも前年比で660億円あまりもの激増。逆に言えば、家計にはそれだけ税負担が増えているということだ。
ただ、これはまだ序の口。追い討ちをかけるように、来年からは復興増税がスタートする。
第一弾として2013年1月から始まるのが復興特別所得税。現在納めている所得税額に2・1%を上乗せして支払うもので、来年1月から「25年間」も継続される。月額の所得税が5万円なら、「毎月1050円×12ヵ月=1万2600円」の追加負担が発生する計算だ。
「しかも給与や年金収入だけでなく、預貯金や債券などの利子収入、株式や投資信託の売買益にも適用されるので、利息の手取りが減ることになる。さらにその1年後、2014年1月からは株式などの配当・譲渡益にかかる税金が増税され、現在の10%の暫定税率が20%に引き上げられる。なけなしの利息から、さらに税金が取られてしまうわけです」(ファイナンシャル・プランナーの深野康彦氏)
復興増税の第二弾は2014年6月から始まる復興臨時住民税。個人住民税が年収にかかわらず一律1000円(年間)増税される措置で、これが「10年間」も継続する。
年金生活者はご用心
そもそも民主党政権は5年間で必要な復興経費を19兆円と見積もり、そのうち10兆5000億円を増税で賄うとした。野党の反対にあってなくなったが、タバコ税を1本あたり2円増税するとの案も出していた。
一方で企業に対しては優遇税制を維持。財源がないと言いながら、昨年末には八ッ場ダムの建設再開まで決めている。
代わりに庶民を狙い撃ちにして税金をむしりとる。これが民主党政権がこっそり仕込んだ「大増税ラッシュ」の実態である。
しかも、増税と並行して社会保障に支払う保険料が増額される点も見逃せない。
たとえば国民年金保険料の引き上げ。最終的に月額1万6900円になる2017年度まで、毎年280円ずつ引き上げられることが決定している。
厚生年金保険料の引き上げも同じで、最終的に18・3%になる2017年度まで、毎年0・354%ずつ引き上げられる。
過去の消費税増税時には、時の政権がほかの減税措置などを並行して行うことで、家計への影響や景気の冷え込みをおさえこむ努力をしていた。しかし、民主党政権はそんな考えもなく、ただただ庶民に痛みを押し付けている。
「ただ、負担増ラッシュはこれで終わりでない」と言うのは前出・深野氏だ。
「来年度以降に実施される可能性が高いものがいくつもあります。たとえば健康保険料や介護保険料の引き上げ、退職金控除の上限設定、高齢者医療費の窓口負担の増額などこれまで一度でも検討されたことがある政策が実施に移されるかもしれない」
前出・中村氏もこう警鐘を鳴らす。
「最近になってひそかに語られているのが年金所得者への課税強化です。年金所得にはいま公的年金等控除というものがあり、たとえば240万円の年金所得者だと所得税と住民税を合わせて約10万円を納めている。ただ控除が半分に縮小された場合、納税額が約20万円になり倍近くの増税になる。
政府は明らかに預金を大量に持っている中高年層への課税強化が念頭にある。年金所得控除の縮小は今後5年以内には行われると思っています」
預金を取り崩しながら税金を払う人も出てくるだろう。日本はいつから、こんな国になってしまったのだろうか。
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