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てらまち・ねっと



 先日、最高裁判所から「書留」の郵便が来た。
 ・・・2年前に上告した県営渡船事件の「決定」か、と直感した。
 ただ、別の重要な事件、つまり会議の音声記録の情報公開の訴訟も、上告が1年半前なので・・・・もしそちらだったらまずいな・・・と思った。

 前者の事件なら、地裁、高裁でもこちらが大部分勝っていて、その負けた部分を上告しているから、認められなくても『勝ちの確定』なだけ。

 後者の事件だと、地裁、高裁で負けてしまったから、「敗け」の追認の決定、ということになる (その事件は、地裁、高裁で負けても最高裁でなら勝てると思って始めた、「生意気な訴訟」)。



 封を開けてみたら・・・・・・前者の事件だった。

 この事件、岐阜県が長良川・木曽川の渡し船の運営を地元自治体に委託して、毎年委託料を払ってきたところ、現地では、船は置いてあるものの、委託契約で規定された「船頭の常駐」をしないままに、県への報告書には、毎日駐在し、業務日報には「すでに利用者がいない」から「誰も乗せていない」のに「今日は何人乗せた」という虚偽を記載し続け、委託料をもらい続けたもの。

 地元住民から指摘を受けていた地元の行政や県も「知らぬふり」で支出し続けたらしい。

 住民監査請求といえば普通は「過去1年分の支出に限る」。
 裁判では、「過去4年分を全部返せ」と訴えた。
 それを認めさせたいと粘った10年を越す裁判。

 今日はその関係のデータをまとめておく。

 なお、同時に提訴した委託料関係の文書の情報公開を争う訴訟は、ずっと前に最高裁で確定していて、
 【請求対象となっていない情報があることなどを理由として当該部分を非公開とすることが許されないとされた事例】

 として、あちこちで使われているらしい。
 その情報公開訴訟は、地裁、高裁で負けて、最高裁で逆転して勝ったケースだから各紙一面、NHKの全国ニュースなどでも大きく報道された。

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↓ 今回の決定の文書 ↓
平成20年(行ツ)第183号,第184号
平成20年(行ヒ)第204号,第205号

              決      定
           当事者の表示    別紙当事者目録記載のとおり


 上記当事者間の名古屋高等裁判所平成19年(行コ)第25号損害賠償請求事件

について,同裁判所が平成20年3月14日に言い壊した判決に対し,上告人兼申

立人らから上告及び上告受理の申立てがあり,附帯上告人兼附帯申立人らから附帯

上告及び附帯上告受理の申立てがあった。よって,当裁判所は,次のとおり決定す

る。

              主      文

       本件上告及び附帯上告をいずれも棄却する。

       平成20年(行ヒ)第204号事件を上告審として受理
        しない。  

       上告費用及び上告受理申立費用は上告人兼申立人らの,

       附帯上告費用は附帯上告人らの各負担とする。

              理      由

 1 上告について

 民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは,民訴法312条

1項又は2項所定の場合に限られるところ,本件上告理由は,違憲をいうが,その

実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって,明らかに上記各項に

規定する事由に該当しない。

 2 附帯上告について

 民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは,民訴法312条

1項又は2項所定の場合に限られるところ,本件附帯上告の理由は,理由の不備・

食違いをいうが,その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであっ

て,明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。

 3 上告受理申立てについて

 本件上告受理申立ての理由によれば,本件は,民訴法318条1項により受理す

べきものとは認められない(なお,本決定により,本件附帯上告受理の申立ては,

その効力を失う。)。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

  平成22年6月24日

    最高裁判所第一小法廷

        裁判長裁判官   櫻   井   龍   子
            裁判官     宮   川   光   治
            裁判官     金   築   誠   志
           裁判官     横   田   尤   孝
            裁判官     白   木       勇


    当 事 者 目 録

岐阜県山県市西深瀬208-1
                 選定当事者
      上告人兼申立人・附帯被上告人兼附帯相手方.
                    寺   町   知   正

岐阜県揖斐郡揖斐川町谷汲岐礼1048-1
                 選定当事者
      上告人兼申立人・附帯被上告人兼附帯相手方

                    山   本   好   行

   (上記選定当事者両名の選定者は別紙選定者目録記載のとおり)

岐阜県海津市海津町高須515

      被上告人兼相手方・附帯上告人兼附帯申立人
                    海     津     市
      同代表者市長    松   永   清   彦

岐阜県海津市海津町日原33  
      被上告人兼相手方・附帯上告人兼附帯申立人
                   福   島   春   雄

岐阜県海津市海津町森下388
      被上告人兼相手方・附帯上告人兼附帯申立人
                   瀬   古       章

      上記3名訴訟代理人弁護士
                    瀬   古   賢   二












●海津市の敗訴確定 渡船委託料返還訴訟で最高裁決定
          岐阜 2010年06月29日09:14 
 県が海津市(旧海津町)に委託した長良川の渡船事業がずさんに運営されたとして、市民団体が市などに委託料約2200万円を県に返還するよう求めた住民訴訟で、最高裁第1小法廷(桜井龍子裁判長)は28日までに、市側、住民側双方の上告を退ける決定をした。市などに約1700万円の返還を命じた二審判決が確定した。決定は24日付。

 2007年5月の一審岐阜地裁判決は「実情を反映していない委託料精算書や業務日誌を県に提出して委託料を受け取った市の行為は違法」と判断し、約1900万円の返還を命令。08年3月の二審名古屋高裁判決も支持したが、県が受けた損害額の算定方式を一部変更し、約200万円減額した。
 一、二審判決によると、1995~99年度の渡船事業で船頭が常駐していなかったり、不正な報告書が県に提出されたりした。

 ● (上記の) 「決定書」と新聞記事 印刷用PDF6ページ  640KB

 ● (下記掲載の)報道機関へのデータ 印刷用PDF3ページ  162KB

(どの写真もクリックすると拡大。写真右下あたりのクリックでさらに拡大)



 ●  この事件のまとめのページ(岐阜県民ネットワークのWebページ)

↓ 同事件の情報公開訴訟 ↓
 (関連)  2005年3月11日ブログ
  ⇒   海津渡船・情報公開訴訟・最高裁弁論決定 !

判決のデータにリンク
   ⇒ 県営渡船に関する情報公開訴訟で住民側
   の上告を受けて最高裁が弁論開始の決定

  ⇒ 同 PDF版

  ● 洋々亭Forum-地方公務員のための法務・実務から考える地方自治
  【請求対象となっていない情報があることなどを理由として当該部分を非公開とすることが許されないとされた事例】

  ● 北海道町村会 法務支援室
  県営渡船情報非公開処分取消請求事件(岐阜県) 

  ● 同判決全文


↓ 今回の決定を受けての報道機関への案内 ↓
 (新聞に出たのが30日朝刊、こちらがFAXで送ったのが30日朝なので、どこも使っていない・・・)
             2010.6.30
岐阜・司法記者クラブの皆様
岐阜市内・報道各社・司法担当者各位


くらし・しぜん・いのち 岐阜県民ネットワーク
                           寺町知正 携帯 
岐阜県営渡船の委託料返還請求・住民訴訟の
返還命令の判決の最高裁での確定のお知らせ


いつもお世話になります。
標記のとおり、提訴より10年掛かりましたが、このほど最高裁判所の決定(昨日届いた)によって返還命令が確定しました。基本的に、原告の主張に沿った判決です。
事案の経過の資料とともに、住民側のコメントなどをお伝えいたします。

※ 関連資料を岐阜・中署・司法記者クラブ宛にFAXで送付いたしました。
      これと同文の解説A4版・3枚。 
上告状兼上告受理申立書A4版・3枚。
最高裁の決定書A4版・6枚。 
被控訴人(原告)作成にかかる双方の主張と第1審判決の対比表A3版・3枚。

※ 「岐阜市内・報道各社・司法担当者各位」として各社にFAXしているのは、
「この解説・3枚」と「最高裁の決定書のうちの核心部4枚」のみです。 



《争点の事業の経過》
 岐阜県及び愛知県は、単独あるいは共同で県営(無料)渡船事業を行っています。しかし、この多く(岐阜市の「小紅の渡」を除く)は、殆ど利用がない実態でした。
それにもかかわらず周年全日執務したとして多額の委託料等が支出され続けて来ました(総額方式)。
1999年度からは運行実績に応じて支払う契約に変わりました(実績方式)。

 “カラ”業務というしかないにもかかわらず、常時勤務したとして虚偽の業務報告をなし、県もこれを黙認してきたものです。業務報告が事実と異なるように故意、秘密裏に粉飾されていたわけですから、極めて悪質であり、同時にこれらを県民が知ることは困難で、正当な理由がありますので、「1999年6月から遡ること過去4年分」と「1999年の予算分」の合計約2200万円について住民監査請求、住民訴訟としました。



【岐阜地裁】
 裁判官による現場検証も行われました。県民ネットの進めている訴訟では最も長期で、弁論や準備期日は地裁で計47回に及びました。
2007年5月31日の岐阜地裁判決は、基本的に原告の言い分をほぼ認めました。

◆平成11年(行ウ)16号 県営渡船委託料損害賠償請求事件
◇原告 岐阜県民ネットワーク運営委員10名 
◇被告 梶原拓、歴代大垣土木事務所長の個人5人、渡船組合長2人、海津市長
◇提訴日 1999年8月25日     ◇返還請求額 金2258万円

◇公開訴訟と同時に提訴。01年5月、渡船組合長側から和解の申し出があったので、裁判長が双方に額を示したが原告は和解を拒否した。その後、審理が続行されている中、04年12月、裁判所がさらに高額の額を示して和解を双方に求めたが、原告は拒否した。2005年7月15日には裁判官による現場検証も行われた。2006年10月2日結審。

《岐阜地裁判決》 2007年5月31日言渡   
◇3 被告海津市は,県に対し,1910万6750円及びこれに対する年5分の割合による金員を支払え。
◇4 被告伊藤俊樹は,県に対し,483万8365円及び年5分の割合による金員を支払え。
◇5 被告内田鉄男は,県に対し,488万5365円及び年5分の割合による金員を支払え。
◇6 被告大杉幸靖は,県に対し,508万2365円及び年5分の割合による金員を支払え。
◇7 被告渡辺武彦は,県に対し,381万9263円及び年5分の割合による金員を支払え。
◇8 被告渡辺建蔵は,県に対し,48万1392円及び年5分の割合による金員を支払え。
◇9 被告福島春雄は,県に対し,933万1921円及び年5分の割合による金員を支払え。
◇10 被告瀬古章は,県に対し,931万0069円及び年5分の割合による金員を支払え。
◇11 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

 判決のポイント⇒ 住民監査請求では、「住民監査請求から過去1年分の支出が対象」という1年ルールがあるところ、この例外として過去4年分のすべてを返還の対象としたこと。委託相手方の責任を認め当初請求額の約85%に当たる1910万円(これに利息をつけること)との返還命令したこと。所長である県職員の責任も一部を認め、返還を命じたこと。



【名古屋高裁】
その後、被告ら(岐阜県職員ら、海津市、海津の船頭ら)の控訴がありました。
 ◆平成19年(行コ)25号 県営渡船委託料損害賠償請求控訴事件
 
 高裁における第1回法廷のあと、2回目の準備期日において、控訴人海津市ら代理人から「和解はどうか」、という話がありました。こちらは本人訴訟なのですが、被告側(=控訴人)代理人が「弁護士同士ならいろいろと話ができるんですが、そうじゃないので」と付言して。

 最後の終結予定として組まれた法廷においてさえ裁判長から、盛んにこちら被控訴人(原告側)に和解してはどうかと、持ちかけてきました。裁判長は、「てらまちさん、和解の可能性があると思うから言うんですよ、判決になったら地裁のとおりとは限りませんよ」、とまで。

(結審後の廊下で、県の代理人が「上告してからでも和解はありますから」と説明していました)

私は、本人訴訟で40数件の行政訴訟を行ってきましたが、こんな裁判長の口調は初めてです。 
すると、判決で逆転負けは無いにしろ、岐阜地裁の返還命令額の減額修正はあり得るかも知れないと思わざるを得ない、そんな心境でした。

ちなみに、岐阜地裁でも2度の和解の話が出ましたが、こちらは、本件は談合と同じ悪意によって生じた損害の返還を求めるものであるから、住民訴訟の基本の1年ルール(原則・支出から1年間が対象)を超えて認定されるべきケースなので、それが認められるまで最高裁まで争うと和解を断りました。

高裁においても、同様の理由を述べて和解を断わりました。

◆ 《名古屋高裁判決》2008年3月14日(金)判決言渡 
◇1.6 (県職員=所長に対して) 業務委託契約についての監督又は検査の懈怠を理由に、県に代位して、同控訴人らに対し損害賠償を求める部分をいずれも却下、棄却する。
◇2 控訴人海津市は、県に対し、1697万1051円(ただし、857万0447円の限度で控訴人福島春雄と、840万0604円の限度で控訴人瀬古章と、それぞれ連帯して)及び年5分の割合による金員を支払え。
◇3 控訴人福島春雄は、県に対し、控訴人海津市と連帯して、857万0447円及び年5分の割合による金員を支払え。
◇4 控訴人瀬古章は、県に対し、控訴人海津市と連帯して、840万0604円及び年5分の割合による金員を支払え。
 ◇5 その余の請求を、いずれも棄却する

 判決のポイント⇒ 住民監査請求の1年ルールの例外として過去4年分のすべてを返還の対象としたこと。委託相手方の責任を認め、一審判決から約210万円減額したものの、当初請求額の約77%に当たる1697万円(これに利息をつけること)との返還命令したこと。所長である県職員の返還責任は認めなかった。



◆【最高裁】
 2008年3月27日に、原告は「上告状兼上告受理申立書」を提出。
        後日、被控訴人(被告)が付帯上告。
平成20年(行ツ)第183号、184号 平成20年(行ヒ)第204号、205号 
第一審原告の上告とこれに対する海津町らの付帯上告に対して、最高裁第1小法廷は、
2010年6月24日付けで「上告及び付帯上告を棄却」と決定し、通知を発送した。



◆【返還命令の確定を受けての原告・住民側のコメント】
 行政はすべからく適切な職務を遂行してほしい。まして、本件のような「委託先の行為を見てみぬふり」は2度とあってはならない。なお、第1審判決は、差し止め請求の成立を認定したが、第2審は判決し、精算して損害賠償等を請求することができるから未だは損害は生じていないとして、第一審判決から当該部分を返還額から減額した。つまり、二審判決で縮減された返還額は、住民監査請求後の支出に掛かる部分であるところ、事業に不適切があれば岐阜県に相手方(海津市ら)に対して法律上の「返還請求権」を有しているから「損害」はまだ発生していない(つまり何もせずに時効に至らしめたときは「そこから損害となる」という意味)ので、判決としては「棄却する」との主旨の判示がされている。よって、速やかな岐阜県の「返還請求権」の行使を求める。



【同時提訴の関連訴訟の経過】

◆岐阜地裁 平成11年(行ウ)17号  県営渡船情報非公開処分取消請求事件
原告・県民ネット運営委員10名 被告・岐阜県知事
提訴・99年8月25日 
結審00年6月29日   ◇岐阜地裁判決 00年9月28日

◆名古屋高裁控訴10月10日 双方控訴
平成12年(行コ)第53号、平成13年(行コ)第9号
結審01年3月27日   ◇名古屋高裁判決 01年9月28日

◆最高裁  平成13年(行ツ)第280号  平成13年(行ヒ)第263号
  県営渡船情報非公開処分取消請求上告事件 最高裁判所第三小法廷
上告人兼申立人  寺町知正 9外   被上告人兼相手方 岐阜県知事
双方上告→弁論05年4月19日午後1時半判 決言渡05年6月14日午前10時半

⇒ 原告側が大部分勝訴。「船頭名」は非公開是認。「請求外情報」は全国初の公開命令


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