一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

戦争と特攻隊の恋

2014-08-09 15:31:12 | 雑記


       もうすぐ終戦記念日がくるが、今年は
       なんと戦後69年だという。
       日本はあれ以来、戦争をしていない。
       地球のどこかで戦乱が起っている現在、
       それはたしかに貴重なことなのかも
       しれないのだ。

       特攻隊とは島尾敏雄(1917~86)
       のことである。
       島尾は九大を繰り上げ卒業して海軍
       予備学生を志願。
       特攻隊(第一震洋隊)隊長として赴任
       したのが奄美の加計呂麻島(かけろま
       じま)の呑之浦(のみのうら)基地で
       あった。

       そこにはミホという美しくも情熱的な
       娘がいた。
       ミホは祭事をつかさどる島長(しまおさ)
       の家に生まれ、ノロ(祝女)になると
       いう宿命をもっていた。

       しかし戦時下、特攻隊、島の娘……
       という条件のもとで、恋ははげしく燃え
       あがるばかり。
       いつ特攻命令が下されるか分からない中、
       部隊近くの浜辺で深夜の逢瀬をかさねた。


       ついに、昭和20年8月13日、
       特攻隊の出撃命令が出た。
       ミホは出撃を見届けて自決しようと
       白い死装束を身につけ、短刀を懐に、
       浜辺で待った。

       しかし、最終の発進命令が出ないまま
       夜が明け、とうとう15日の終戦を
       迎えたのだった。

       死をもって完結するはずだった恋は
       敗戦によって生の方向に舵を切る。

       ミホは復員した彼を追って、
       老いた父を残し、闇船で島を脱出、
       島尾と結婚した。

       まるで小説のような話だが、これで
       終わらないのが現実である。

       純粋すぎて気性のはげしいミホは、
       夫を安住させなかった。
       少しのことでやきもちを焼き、しまい
       に精神を病んでしまったミホは、
       入退院をくりかえす。

       それが島尾敏雄の『死の棘』で、苦し
       みつつ、なんとか妻を甦生させようと
       する。
       島尾文学とし高く評価され、映画にも
       なった。
 
       夫の死後、島にもどったミホは最後
       まで喪服を離さなかったといわれる。
       (実際に会った人の話によると、
       奥に引っ込んで喪服に着替え、特攻隊
       のあった浦まで案内してくれたという)