民主党が掲げた農家の戸別所得補償方式は、疲弊しきっている農家に少なからぬ影響を与えた。民主党が政権をとったら、戸別に農家の所得を補償するという政策に飛びつくのは、自然の流れで、止める事は出来ない。どこかの党で、米価は2万円にすると公約した時は、誰も相手にしなかったのだが、民主党のマニフェストなら「やらせてみよう」的な感じで、前後の事は「まあ、いいか」と現農政の貧困さが裏返しにある。
だが、最近の論調が変わってきた。戸別所得補償方式と抱き合わせに、「日米FTAの締結をする」と民主党マニフェストに記載されていたのだ。巨大なアメリカ農産物との貿易を自由化し、関税を撤廃するという条約を結ぶわけだから、米、大豆、麦、牛肉、豚肉の国内生産は壊滅的な打撃を受ける。全中の試算によれば、食料自給率は12%に低下するだろうと見ている。民主党によれば「所得は補償するのだから、わいわい言うのはおかしい」といっている。
よく考えて見ると、戸別所得補償制度は危ない。生産費を下回った価格を戸別に補償するというのだから、個個の査定が必要となる。山間地と平地、経営規模、有機栽培や人件費。品質の良し悪しや収穫高。そもそも生産費とは何か。インセンティブが働かない農業など万死に値する。自民党の細田幹事長は「民主党のマニフェストは造花のばらだ。トゲは痛い」と語っている。日本人の民意は高い。きれい事にだまされる訳にはいかない。野のセイダカアワダチ草が俯瞰している。