蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

幕末新選組

2022年11月07日 | 本の感想
幕末新選組(池波正太郎 文春文庫)

永倉新八は、松前藩の江戸屋敷育ちの江戸っ子。父のような藩官僚になるのを嫌って家出し剣道道場に転がり込む。近藤勇に誘われて新選組のスタートメンバーになり・・・という話。

本書では、新選組の陰惨さはすべて土方のせいにして、永倉はひたすら気風のいい江戸の剣士、という設定になっており、確かに最後まで爽やかに話が進んで、読んでいて気持ちがいい。

「軍隊は運隊」などと言ったりしたそうだが、永倉は、池田屋、七条油小路、鳥羽伏見、戊辰戦争と新選組の激戦場面ですべて先頭に立ちながら、大怪我をすることもなく生き延びて、明治に入ってからも剣道師範?などをしながら楽しく?老後をすごしたそうで、まことに運がいい人というのはいるものなんだなあ、と感心した。

冒頭の、松前屋敷の門番をだましてク○入り饅頭を食わせる場面がツカミとして抜群で、脇筋の、藤堂平助と遊女の豊浦と小常を取合うエピソードも楽しかった。著者のさすがの腕前といったところだろうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

OPEN

2022年11月06日 | 本の感想
OPEN(ヨハン・ノルベリ ニュースピックス)

人やモノの移動・取引(移民や交易等)が社会経済に健全な成長をもたらす、と論じる。これはよくある内容だが、後半でこのような開放性が阻害されてしまう原因を考察しているところが新鮮。

社会進歩や経済拡大あるいは人口が爆発的に進展したのはここ200年ほどに過ぎず、生物としてのヒトはその前何十万年の間に培ってきた本性を引きずっていて、例えば、複数人が集まるとグループを形成して対立することを止められない、という。

成功すると、その成功パターンに捕らわれてしまって(あるいは既得権益を侵されないために)イノベーションが進まない。官僚機構が型を決めてなにかを普及させようとしてもうまくいかず、民間に好き勝手にやらせたほうがよい(PCやインターネットがこれに当たる)という。

産業革命以降の拡大成長が(それまでの歴史とちがって)継続したのは、その舞台となった西欧がひどく小さな国々に分裂していて、その間で活発に交易や移民が行われたからだという。

いずれも、証明や検証のしようがない説ばかりだが、饒舌な語り口や歴史上の例を豊富にあげることで納得性を高めていた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする