蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ステキな金縛り

2012年08月18日 | 映画の感想
ステキな金縛り

えーつと、実は三谷監督の映画、今一つ面白いと思えなかったんですね。今まで。舞台はとんでもなく面白いん(と言っても今まで4回しか見たことないけど)ですけどね。
でも、本作は違いました。あまり期待せずに(DVDを)見たんですが、とにかく西田さん扮する落ち武者が面白すぎ。ウワサでは(本作に限らず)西田さんの演技は相当部分がアドリブとか。そうだとしたら、いやー天才ですな。

ラストシーンも、とってもよかったです。

それにしてもキャストが豪華ですね。市村さん、よくこの役引き受けましたねえ。チョイ役でもどっちかというと小日向さんの役あたりがお似合いだと思いました。
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終わらざる夏

2012年08月18日 | 本の感想
終わらざる夏(浅田次郎 集英社)

占守島モノは今までに2冊読んだことがありますが、浅田さんがテーマにしたというので、出版されたら買おうと思っていたのですが、どうも評判がイマイチだったのでためらっているうち、図書館の開架にも(予約が途絶えて)並ぶようになったので借りて読んでみた。
他の浅田さんの作品に比べて、特別に優れているわけではありませんが、そうかと言って悪評がたつほどの出来ではなくて、いつもの浅田節でお涙ちょうだいというパターンではありますが、最後まで一気に読めました。

占守島は一エピソードにすぎなくて、終戦をはさんだ時期のたくさんの人たちのエピソードを集めた短編集のような感じの構成でした。
むしろ、一つ一つを短編として独立させた方が、より余韻が残って良かったかなあとも思いました。

特に良かったのは序章で描かれる召集令状の作成・配布をめぐる物語。今まで気づいてなかったのですが、召集する人を選別する人や令状を配達する人など、召集令状に係る事務を担う人は実はとてもつらい、というか陰で嫌われる立場だったんですねえ。

あと、ベルリンから占守島まで転戦を強いられたロシア兵の独白もよかったです。ファンタジー風のオチはいらなかったように思いますが。
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世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア横断2万キロ

2012年08月12日 | 本の感想
世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア横断2万キロ(下川裕治 新潮文庫)

ユーラシア大陸の東端のロシアの駅から列車を乗り継いで西端のポルトガルの駅までいこうという旅行記。

一部分、線路はあっても(紛争などの影響で)列車が走っていない区間があって車などを利用したり、途中で2回くらい日本に帰ったりしているのがちょっとどうかな、という感じ。

「世界最悪」というのは大袈裟というか、看板に偽りありというか、あるいはもしかして著者が安い料金での旅行に慣れていて旅の厳しさが文面にあらわれないせいか、読んでいてそれほどひどい旅とは思えなかった。

食事が、パンにチーズやハムをはさんだものやカップラーメンばかりというのや、入出国検査で(列車が止まっているので)トイレが使えなくて小便を我慢しなければならないというのは、かなりつらそうだったけど。

悪口ばかり書いたけれど、沿線の国や民族の違い(特に漢民族のエネルギッシュなところ)がうまく表現されているし、妙にくどくなることなくスムーズに読めて楽しかった。
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モンガに散る

2012年08月12日 | 映画の感想
モンガに散る

書評でも映画評でも、あらすじの紹介があんまり長いのはどうかと思ってしまうのだけれど、沢木耕太郎さんの映画評(朝日新聞に月一連載の「銀の街から」。月一なので見逃してしまいがちなのだけれど、プロ作家が書くものとしては珍しく比較的短期間でネットに無料公開されるのがありがたい(最近は無料では見れなくなっているかも・・・))は、その紹介部分が大変によくて、へたをすると本物の映画より、映画評のあらすじの方が面白いくらい?である。

本作もだいぶ前に「銀の街から」で紹介されていたのだけれど、いつもに増して沢木さんの推奨度合が熱かったので、早く見てみたかった。
しかし、なかなかDVDにならず、なってもツタ●が「新作」から外してくれないので、今頃(実際見たのは1年近く前。ずっと感想を書けていなかった)になってやっと見ることができた(我ながらせこい)。

不良グループの友情、子供から大人への脱皮の苦しみ、売春婦との恋、ヤクザに離合集散、仲間の裏切り等々、ストーリーの要素としてはありふれているが、スピード感あふれる展開と準主役のモンク役の役者の表情や演技が素晴らしくて、楽しくみられた。

沢木さんが指摘する通り、映画の終末部分、青空の下、不良グループが白い壁の上に座って主人公を招いているシーンがとても鮮やかで印象に残った。
明るいシーンが多かった学生時代から、暗い夜のシーンがほとんどのヤクザ時代への推移した後、ラストでからっとした青空と鮮やかな白壁のシーンに転換した視覚効果も大きかったように思った。
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息もできない

2012年08月12日 | 映画の感想
息もできない

どこかの映画評で絶賛されていたので「見てみたい映画(DVD)リスト」の上の方にあったのだが、いきつけのツタ●でもけっこう人気があってのびのびになっていた。

父親から虐待されて育った主人公は、ヤクザの手先になって暴力的な借金取立てを稼業にしている。身内にも他人にもとにかく手をあげるのが早くて、すぐに平手打ちとケリが入る。主人公が心和ませるのは姉の子供と遊ぶ(といっても、ムッツリ子供の横に座ってタバコをふかしているだけだけど)時だけだったが、ある日道端で出会った女子高生(?)と妙に気が合い、付き合い(といっても、屋台で酒飲んだりするくらいで、甘やかなデートをするわけではないのだけど)始める。やがて、彼女の兄が主人公がいるヤクザ組織の新入り構成員になり・・・という話。

主人公も女子高生も育った家庭がすでに崩壊しており、家族間の関係性や愛情を得ることができず、そうかといって会社(ヤクザの事務所)や学校でも周囲に溶け込めない。やっと姉の子を媒介にして擬似的な家族関係を築きかけたところで、主人公に不意に破局が訪れる。そんな皮肉で残酷なめぐりあわせを、演技というより素のままなんじゃないかと思えるような主人公役の俳優(ヤン・イクチュン)が上手に表現していたと思う。

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