蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

もえない

2008年04月13日 | 本の感想
もえない(森博嗣 角川書店)

著者自身を思わせるような、醒めた高校生を主人公としたミステリ。
殺人事件は起こるのだけど、伏線とかがしっかり張ってあるわけではなく、ミステリというより青春?小説というべきだろうか。

森さんのエッセイを読むと、森さんは小説を読む時はシーンを映像として把握しつつ読み進めるという。
このために本を読むのにすごく時間がかかるが、いったん読んだ本は映像(イメージ)を頭に焼き付けているので容易に忘れないという。
小説を書くときも内容を映像的に構築してから書くので、書き始めたら執筆スピードがすごく早いという。

主人公が見る夢(自分が小人になって庭にいるときにスコップをもった人間に追い回される夢)を描いたシーンが印象的だった。映像を文章にしているという感覚が理解できるような描き方だった。
実はこのシーンが伏線になっている。森さんが見た夢をネタにすることもあると書いてあったことがあるので、この本はこの夢のシーンに似た夢を見て、そこから発想したものなのかもしれない。
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自分「プレゼン」術

2008年04月12日 | 本の感想
自分「プレゼン」術(藤原和博 ちくま新書)

2000年に出版された本。図書館でたまたま見かけて借りてきた。

今やプレゼンといえばパワポ(このソフトの使い勝手やテンプレートのセンスには大いに疑問を感じるが、(少なくとも一般的な会社では)市場を独占している。まこと恐ろしきはM社の商売上手よ)なのだろうが、2000年頃はまだ普及していなかったらしく、著者のプレゼン資料は紙の切り貼りである。
しかし、著者が言うとおり、一見美麗ながらどれを見ても同じようなパワポ製資料よりはるかにインパクトと説得力があるように見える。

時々、仕事の関係でプレゼンを受ける立場になるが、今まで「おおこれはすごい」という感動を呼ぶようなプレゼンにめぐりあったことがない。
有名な外資系のコンサルなどが行う場合もあって、「この会社ならきっとすごいプレゼンだろう」なんて期待しても、たいていは眠気をこれえるのがやっと、みたいな代物だったりする。

本書で読む限り、著者のプレゼンは素晴らしそうで、ぜひ一度現物を見てみたいと思ったが、実際リクルートのトップセールスだったのだから、きっと魔術的な魅力があるのだろう。

備忘として著者のいうポイントを並べておく。
・プレゼン資料は4枚まで
・日頃からアイコンを収集し活用する
・すでに相手の頭の中にあるイメージ構造を利用する
・4回うなずかせて、最後の結論もうなずかせる
・メタファー(たとえ話)の活用
・キレイ過ぎるプレゼン資料は退屈
・プレゼンの3つの極意は、「始めよければすべてよし(つかみ)」「プラスだけでなくマイナス的エピソード(失敗談など)をいれる」「第三者に語りたくなるキーワードがふくまれている」
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翼に日の丸(上)

2008年04月06日 | 本の感想
翼に日の丸(上)(川又千秋 角川文庫)

架空戦記小説には大きくわけて二つのパターンがあると思う。

一つは、「トンデモ系」。戦艦空母とか超大型潜水艦とか、まあ現実にはありえない兵器を登場させて、ありえない戦場で戦うようなもの。「紺碧の艦隊」が代表。

もう一つは「シミュレーション系」。ある程度史実に基づく、あるいは軍事的にありえる設定の下、少しだけ史実を改変(例えば栗田艦隊がUターンしなかったら・・・みたいな)することにより大きく変わった(あるいは、それでもやっぱり変わらなかった)歴史を描くもの。「連合艦隊ついに勝つ」が代表。

私は前者に属すると考えるものは「紺碧の艦隊」以外読んだことがない。(「紺碧の艦隊」がトンデモ系とは何事か!という方もいらっしゃるかもしれませんが・・・)
一方、後者の方のもう一つの代表作(と私が考える)「覇者の戦塵」シリーズは開始以来20年余り読み続けているし、その他のシリーズもつまみ食いしている。

「連合艦隊ついに勝つ」(いや~この小説は面白いですよね。今読んでも全く古さを感じないし、何回読んでも楽しめる)、「覇者の戦塵」シリーズの他にも熱中して読めるものがないかと、探しているのだが、なかなか巡りあえない。

さて、「翼に日の丸」は、後者に属するといって良いと思うのだが、どうも主人公がツキすぎているのと、講談調(?)の語り口がちょっと気になった。

それにしても川又千秋さんの作品を読むのは20年ぶりくらいだろうか。かつてはSF専業で評論とかもされていて「硬派」(?)かと思っていたので、ラバウル空戦記シリーズ(本作はこのシリーズの外伝みたいなものらしい)を書かれたのには少々驚いた記憶がある。
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サイドカーに犬

2008年04月05日 | 映画の感想
サイドカーに犬

主人公は小学生の女の子。その子の父母は仲たがいして母親は家出する。そこへ食事を作るという名目で父(古田新太)の愛人(竹内結子)が出入りするようになる。
主人公と愛人は仲良くなるが、父の愛人への熱はさめて手切れ金を渡される。主人公と愛人はそのお金で海辺に旅行に行く。

怪しげな中古車ブローカーだが、本当のウラの世界には踏み込めないでいる父親役の古田さんには存在感があった。

竹内さんも好演(特に、別れを告げられた後、ピザを食べながら泣き始めるシーンは良かった)だが、「愛人」というムードはあまり感じられなかった。もう少し自堕落なイメージが見えるとそれらしかったと思う。
また、この愛人は「自転車を軽やかに乗りこなす」というのが物語の設定のはずだが、竹内さんの乗り方はかなりぎこちなかった。

事件らしい事件は起こらず、ともすれば間延びして製作者のひとりよがりな作品になりそうな筋書きだが、退屈することなく(また逆に何かを考えさせられるようなこともなく)最後まで楽しく見られた。
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