蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ひとり日和

2011年10月10日 | 本の感想
ひとり日和(青山七恵 河出書房新社)

青山さんのことはほとんど何もしらなかったのですが、日経夕刊のプロムナードのコラムがいつも面白く、一編一編がしゃれた短編小説のような感じだったので、出世作である本作を読んでみました。

母子家庭で育った主人公は、高校卒業後、進学せずアルバイトをして親元で暮らしていましたが、なんとなく東京へ行くことにして遠縁の一人暮らしのおばあさんの家に同居することになります。
おばあさんは、マイペースで同居人とつかず離れず(つかずの方が7割暗いという感じ)の距離感がいい感じで、身勝手な主人公の行動を、特に文句を言うこともなく受け入れてくれます。もしかして、おばあさんの方が主人公なのかもしれないですが。

おばあさんの家は京王電鉄がすぐ横を通っていて窓から垣根越しに駅に止まっている電車が見えます。この設定が素敵で、そんな家に住んでみたいと、ちょっと思わせるほどでした。

文学賞の選評の決まり文句に「身辺雑記にすぎない」みたいなのがありますが、本作はまさに身辺雑記という感じの筋立てです。
しかし、思い出とか人生とか別れとかについてちょっとだけ考えさせてくれるようなところがあって、そのあたりが凡作とは異なるところなのかもしれないですね。

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