蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

花鳥の夢

2019年10月13日 | 本の感想
花鳥の夢(山本兼一 文春文庫)

狩野派の総帥として安土桃山期に活躍し、数多くの作品を残した狩野永徳の生涯を、ライバルとして長谷川等伯を登場させて描く。

絵を描くことが、文字通り三度の飯より好きで生きがいであり、時の権力者たちから軒並み当代一の技量と認められて数多くの受注をし、現代に至ってもその評価は揺るがない・・・
こんな人生を送った人はさぞ幸福だったに違いない、と、誰でも思うはずだが、本書の中の永徳は、等伯の絵の構想が斬新であることに強烈に嫉妬し、等伯の受注を邪魔する工作までしたりする。
こなしきれないほどの注文がきても、大事なところはどうしても弟子任せにできず、自ら修正しないと気が済まない。その結果、健康を害してしまう。
もっと力を抜いて楽しんで絵を描くよう、多くの人からアドバイスをもうらうが、受け入れられない。

こういったエピソードからは、幸せな生涯を想像できない。まこと人の欲望にはキリがないというのか、満足を知らない人だからここまで昇り詰めることがきたというべきなのか、難しところだ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 地図帳の深読み | トップ | 私たちは生きているのか? »

コメントを投稿

本の感想」カテゴリの最新記事