蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

テニスプロはつらいよ

2016年10月02日 | 本の感想
テニスプロはつらいよ(井山夏生 光文社新書)

日経夕刊の書評欄で褒められていてので、読んでみました。
さほど期待していなかったのですが、とても面白かったです。

関口周一という錦織選手とほぼ同年代(錦織の2歳下)のプロテニスプレーヤーの子供時代から現在までの経歴を描いたものです。
私はテニスについてはほとんど知識がないですし、技術的には無知なのですが、本書ではスポーツとしてのテニスにはあまり触れず、プロになる道のり、プロのランキングシステム、プロの経済状況などについて説明しています。(それでどこが面白いの?という向きもあると思いますが、著者の語り口が軽妙で楽しく読み進められます)

直近1年間の試合の結果のみが反映されるランキングが選手にとってはすべてで、おおよそランク100位にはいっていないと4大大会には事実上出場できず、それは同時にプロとして生計をたてていくのが難しいことを意味するそうです。
たまに錦織選手が出ている大会のTV中継をみたりしますが、相手がランキング50位以下だったりすると、「あ~楽勝だな」なんて思ってしまうのですが、実はランク100位に入るのは至難の業で、関口選手もその厚い壁に阻まれ続けています。

関口選手はジュニアの頃は世界ランク4位までいったことがあって、錦織選手並の期待の選手だったようですが、ここ一番の大事な試合に勝てないことが続いているそうです。それでも日本選手ではベスト10に入っているのですが、テニスだけでは暮らしていくのが難しいようです。
本書の中で、日本選手権を4度も制覇したプロ(それでも世界ランクは100位にいかなかった)が、自分の知名度が(プロ野球選手等に比べて)非常に低いことを嘆いている場面があるのですが、考えてみれば(錦織選手のように)世界のトップクラスにいけば大金持ちになれるテニスはまだいい方で、大半のスポーツは、たとえ世界有数のレベルにまで達してもスポーツだけで生きていくことは難しいのが現実ですよね。

本書を読んで、競技としてのテニスにも興味がわいてきて、(下位大会である)フューチャーズなどを見に行ってみようなんて思いました。(テニス雑誌の編集長だった著者の思うつぼですな)

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