蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

穂足のチカラ

2012年01月14日 | 本の感想
穂足のチカラ(梶尾真治 新潮文庫)

私がSFマガジンを欠かさずに読んでいたのは、高校生のころで、もう30年前の話。そのころ、山田正紀さんの「宝石泥棒」が連載されていて、毎月楽しみにしていた。
そのころ、梶尾さんも主力ライタの一人で、短編の作者としては森下一仁さんと並んで好きな人だった。

その梶尾さんが、今でも元気?に活躍しているのは、どこか力づけられるものがある(あまり売れているとは思えないSFマガジンが欠かさず刊行されているのもすごいなあ、とは思うけど)。

穂足という幼稚園児が事故にあって意識を失ってから、その家族に不思議な能力が備わり、崩壊寸前だった一家は立ち直る。実は穂足はキリスト級の救世主だった・・・という話。

筋立てには特にひねりはなく、展開も結末も恐ろしく楽天的だけれど、読んでいると、「オレも世のため人のためにがんばるか。そうすれば世界はもっと良くなるかも」という、根拠のない高揚感が感じられる。

著者の良心みたいなものが、ストレートに反映した、読後感がさわやかな作品だった(元が新聞連載ということもあって、いくらなんでも700ページは長すぎるとは思うが)

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