峠(司馬遼太郎 新潮文庫)
戊辰最大の激戦といわれた北越戦争で、家老として長岡藩を率いたか河井継之助を描く。
この頃、昔読んだ本を再読することがあるのだが、どうも前読んだときよりも面白く感じられないような気がする。
本書は20年ぶりくらいに再読したのだが、意外にも前読んだ時より楽しく読めた。
若い頃は戦争場面が短かった(今回読んだ新潮文庫版では1500ページ中の150ページくらい)のが不満だった。年のせいかそういうクライマックスシーンよりなんてこともない日常を描いた場面の方に心動かされるようになったせいだろうか。
官軍が迫る前、継之助が長岡藩の支藩の家老たちを招待して訣別の式をしようとする際、部屋を飾るために花をいけようとするが、花器を全部売り払ってしまったため、仕方なく飼葉桶に桜の枝をいけようとするシーンなんかがじんわりとよかった。
継之助は自身の美意識に殉じることができて満足だっただろうが、長岡藩の藩士や領民にとってはとんだ迷惑というか災難でしかなく、為政者としては失格だなあ、ということは昔も今も変わらない感想。
文庫版の解説(亀井俊介)でも、この点を指摘していている。
同じ司馬さんによる継之助を描いた短編「英雄児」では、英雄は時に周囲にとっては害悪をもたらす、という視点が強かったそうだが、本書ではそういった点(例えば、継之助が恭順派を虐殺したり、継之助の墓は地元民によって破壊された等)にはあえて触れていないように思われるそうである。
それにしても、昔の文庫解説は重厚だったんだなあ、と感心した。今時は単なる感想文か著者をベタ褒めする程度のものが多いが、亀井さんの解説は上記のような批判的な視点もふくめて立派な評論になっている。
戊辰最大の激戦といわれた北越戦争で、家老として長岡藩を率いたか河井継之助を描く。
この頃、昔読んだ本を再読することがあるのだが、どうも前読んだときよりも面白く感じられないような気がする。
本書は20年ぶりくらいに再読したのだが、意外にも前読んだ時より楽しく読めた。
若い頃は戦争場面が短かった(今回読んだ新潮文庫版では1500ページ中の150ページくらい)のが不満だった。年のせいかそういうクライマックスシーンよりなんてこともない日常を描いた場面の方に心動かされるようになったせいだろうか。
官軍が迫る前、継之助が長岡藩の支藩の家老たちを招待して訣別の式をしようとする際、部屋を飾るために花をいけようとするが、花器を全部売り払ってしまったため、仕方なく飼葉桶に桜の枝をいけようとするシーンなんかがじんわりとよかった。
継之助は自身の美意識に殉じることができて満足だっただろうが、長岡藩の藩士や領民にとってはとんだ迷惑というか災難でしかなく、為政者としては失格だなあ、ということは昔も今も変わらない感想。
文庫版の解説(亀井俊介)でも、この点を指摘していている。
同じ司馬さんによる継之助を描いた短編「英雄児」では、英雄は時に周囲にとっては害悪をもたらす、という視点が強かったそうだが、本書ではそういった点(例えば、継之助が恭順派を虐殺したり、継之助の墓は地元民によって破壊された等)にはあえて触れていないように思われるそうである。
それにしても、昔の文庫解説は重厚だったんだなあ、と感心した。今時は単なる感想文か著者をベタ褒めする程度のものが多いが、亀井さんの解説は上記のような批判的な視点もふくめて立派な評論になっている。
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