蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

短歌の友人

2008年09月24日 | 本の感想
短歌の友人(穂村弘 河出書房新社)

著者を知ったのは、ある出版社が配布(値段がついてるけど実際は店頭で「ご自由にお取りください」になっている類のもの)したPR誌だった。
ある有名なハードボイルド作品(確か「長いお別れ」だったと思うが)の評論(感想?)を書いていた。2ページほどの極く短いものだったが、これまでにない斬新な見方で、かつ納得性の高いものであった。

そこで著作をさがしたところ、すぐに見つかったのが「本当はちがうんだ日記」
これまた出来がすごく良くて、ファンになった。 ところが、どうも本職は歌人のようで、本書は短歌の評論集。正直言って期待したものとは違ったが、全くの門外漢にもいちおう頷かせる説得力をもった明快さがあった。

斎藤茂吉に代表される近代短歌のテーマは、私の命の重み、であり、塚本邦雄に代表される現代(戦後?)短歌のテーマは、戦争の影響と言語自体へのこだわり、であるが、現在の短歌のテーマを見出すことは難しい、というのが、多分、本書の主題だと思う。思うけど十分に理解できたわけではない。

本書で著者の感情が露出していて、「本当はちがうんだ日記」の一部みたいになっている箇所があった。
それは著者の最初の歌集に対する評論において、徹底的な否定(というより嫌悪)をあびた(歌集の評論なのに引用歌が全くないという徹底ぶり)時の感想(190ページあたり)。

正直言ってここが一番面白かった。著者には不本意かもしれないが、一読者としては、エッセイ系の著作を増やしてくれることを期待したい。特に、小説の評論に期待したいところだ。
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