蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

「超」独学法

2018年10月13日 | 本の感想
「超」独学法(野口悠紀雄 角川新書)

著者は、東大の工学部にいたのに、独学で経済学を学び、公務員試験をパスしてキャリア大蔵官僚になる。官僚になってからアメリカ留学をしていた時を除いて独学で経済学、財政学、ファイナンス理論を学び、大学などで講義してきたという。そうした経験を通じて独学の意義を説く内容。

よく言われることだが、学習した内容を定着される良い方法は、学んだことを他の人に教えることだという。
教えるためには本質的な理解が必要で、私自身の経験でも、いざ他人に教えようとすると、いかに自分がわかっていないのかがよく見えてくる。
本書でも、独学の方法論として同様の記載があるのだが、スケールが違うなあ、と思ったのは、独学でファイナンス理論を学ぶために、大学院でそれを教えることにした、というくだり。

確かに、勉強を進めて以前はできなかったはずの問題ができるようになると、自分の成長が実感できて嬉しく感じることはあるけど、著者が強調する「学ぶことは楽しい」という心境に達するのは難しい。ましてや、大学教授として確たる地位を築いた後に、全く門外漢とはいえないもののファイナンス理論を独学して、学校で講義できるまでのレベルに達するなんて、やはり普通の人じゃ無理だよね。学習能力の差もあるけど、それよりもその学ぼうという意欲の差の方がもっと大きい。

なお、本書には具体的な独学法はほとんど書いてなくて、独学がなぜ必要か、独学はいかに素晴らしいか、といった内容ばかりである。他の「超」シリーズも同様で、「「超」独学法」というのは、(「ものすごく効果ある独学ノウハウ」ではなくて)「ノウハウみたいなチマチマした方法論を超えて独学の本質を問う」という意味だと思う。

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