蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

捕食

2011年07月18日 | 本の感想
捕食(渡辺球 角川ホラー文庫)

同じ著者の作品「べろなし」は、アイディアも語り口もよかったと思うのだけれど、タイトルと、雰囲気が暗すぎる(おどろおどろしさを追求しすぎている気がする)ので損をしていたような気がする。

本作も同じ印象。生活保護受給者を食い物にするビジネスに加担することになった主人公とその父親の退職公務員を食い物にしようというミザリー風女を中心にした話で、現代風のホラーに仕上がっているのだが、「ホラー文庫」というカテゴリを意識しすぎたのか、必要以上に主人公が勤務するホームレス収容所の過酷さやミザリー風女のサド技の描写の生々しさを強調しすぎていると思う。
もう少し抑え目にすると背筋が寒くなるような本当の怖さが出てくるような気がするのだが、グロいなあ、という印象が前面に出てきて怖さより不快感が先に立ってしまっているように思う。

もともとは、主人公と雪という恋人のロマンスを中心に描きたかったのだろうなあ、と感じられるのだが、この二人をつなぐのが、安いワインとハムチーズサンドイッチだった、というエピソードは結構しゃれていて気に入った。

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