ワセダ三畳青春記(高野秀行 集英社文庫)
私が大学生のころ、「大学は人生の夏休み」などとよく言われた。
約30年近く経って今思うと「確かに夏休みだったなあ」と思えるし、人生の中で(短い時間の喜怒哀楽は別として)一番楽しかった時期だった。
学問とか専門的技能の習得は全くできなかったけれど。
授業にはでないけれど、校舎に行って、いつ倒壊してもおかしくなさそうなボロボロの建物にある部室に行くと、誰かヒマを持て余している人がいるので、マージャンに行ったり、人数が揃わないとコーヒーを飲みに行って、飲むのが酒に変わっても、くだらないおしゃべりをえんえんと何時間もして、そのうち白々と夜が明けてくるので、誰かの下宿に行って昼間で寝て・・・バイトがない限りその繰り返し。
本書は、そういう人生の夏休みが10年以上も続いちゃって30歳すぎまで早稲田の3畳(のち4畳半)という、90年代では絶滅に瀕していた広さの下宿ですごした著者の、くだらないこと限りないのに、どこかうらやましい交友記。
その古びた木造建築の下宿屋には、早大探検部のメンバの他に、司法試験の万年浪人なのにやたら明るい人、守銭奴と呼ばれるドケチといった変人が多く住んでいるのだが、極めつけは大家のおばちゃんで、このおばちゃんのエピソードで何度か大笑いした。
著者は早大探検部に所属して世界中の辺境を旅していて、その体験記を私も1冊読んだ事があるけれど、さほど面白くは感じられなかった。それは著者の体験があまりにも私の日常からかけ離れたものだったからだと思う。
一方、本書は、電車の中で読んでいるのに、何度も大笑いしそうになって抑えるのが大変なほど楽しく読めた。この本に書かれているような、いわゆる「青春の思い出」は、私も共有することができたからだと思う。
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