蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

なんらかの事情

2012年12月09日 | 本の感想
なんらかの事情(岸本佐知子 筑摩書房)

「気になる部分」「ねにもつタイプ」が抜群に面白かったので、この本も(私にしては珍しく)書店で見かけてすぐ買ってすぐ読んだ。
前述の2作に比べると、幻想短編小説風のものが増えて、笑いを狙ったのが減った気がするのが残念だが、まあ、払ったお金分くらいは十分にもとが取れるくらい楽しめた。

「運」→傘運はないが、ビニール傘運はありあまるほどある。
「物言う物」→物言わぬ臓器が物言うとき。
「上映」→走馬灯の準備
「愛先生」→ロボ先生、何先生、ラブ先生
「海ほたる」→カーナビが「海です」「海です」「海です」。これってホントにこうなるの?
「やぼう」→「め」は「ぬ」のことをどう思ってるの?

「瓶記」→一番出来がいいとは思えないが、私には一番ツボに来た。
(以下、引用)「どうせまた溜まるのだからと意を決して捨てることに決め、テーブルの上に並べてみた。こうしてみるとかなりの数だ。太ったの痩せたの、大きいの小さいの、のっぽなのちびっちゃいの、着飾ったのそっけないの。たくさん空き瓶を並べ、その前で腰に手を当てて仁王立ちになっているうちに、バルコニーから群衆を見下ろしているような気分になってきた。
「愚民どもめ」と言ってみる。ちょっと愉快だ。
「愚民どもめ」「愚民どもめ」
何度も言っているうちにすっかり楽しくなり、瓶を捨てるのを忘れる。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ルリボシカミキリの青 | トップ | アニマルキングダム »

コメントを投稿

本の感想」カテゴリの最新記事