蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

カウントダウン・シティ

2017年09月23日 | 本の感想
カウントダウン・シティ(ベン・H・ウインタース ハヤカワポケミス)

「地上最後の刑事」の続編。小惑星激突まで2カ月あまりとなった頃、主人公の元刑事パレスは幼い頃シッターをしてくれていた女性から失踪した夫の捜索を頼まれる。人類滅亡が確実視され、自殺や失踪は日常茶飯事になっていたが、義理堅く几帳面なパレスは青くて薄いノートを手に探し始めるが・・・という話。

「地上最後の刑事」に比べるとミステリ色は薄くなって、終末を突き付けられた人々と社会の変遷を追うSF的作品になっている。
考えてみると大惨事の後の世界を描いた作品は多いが、惨事の前を舞台にしたものは少ないような気がする。
死刑囚はいつ執行されるかがわからないことが苦しみであると同時に希望にもなっているそうだが、〇月〇日に人類は(多分)滅亡する、と確定日付を告げられると人はどのような行動に出るのか?というテーマに対して色々なパターンを描いている。

一縷の望みを怪しげな科学や宗教に求める人、少しでも助かる確率を上げるためにすし詰めの船でアメリカへ不法入国しようとする人、あきらめて「死ぬまでにしたいことリスト」を作る人、自殺する人。
その中で、主人公の捜索対象である男の(失踪の)動機がひときわ気高く純粋であったことが救いになっている。

肝心の主人公は、破滅を前にして何をしようとしているのか?
ただ流されるままに時間をつぶしているようにも見えるのだが、次の、捜索対象の男を見つけたときのセリフ(P172)を読むとそうでもないのかな?とも思わせる。
「お言葉ですが、小惑星のせいであなたは奥さんのもとを去ったのではない。小惑星は、だれにもなにもさせていない。あんなの、宇宙を飛んでいるただの大きな岩のかたまりですよ。だれがなにをしようと、決断はその人のものです」

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