蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ちくま日本文学006 寺山修司 (ちくま文庫)

2008年05月05日 | 本の感想
ちくま日本文学006 寺山修司 (ちくま文庫)

少し前まで寺山修司さんって競馬評論家だけど劇作家でもある人、くらいのイメージだったが、ある時、寺山さんの代表作の一つ
“マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや”
をよんで、「へえー本業(?)は歌人だったんだ」と今さらながら気づいた。

素人(というか、素人である私)にとって良い短歌、俳句というのは、読んですぐほぼ意味がわかり、その後歌われている情景が頭の中に展開されて、短編の小説を読み終わったような気分にさせてくれるものだ。
先にあげた短歌は、誰がよんでも
「ハードボイルド」
「東映やくざ映画の世界か」
「スパイ小説のシーンかも」
みたいな感慨をもたらすであろうし、北国の湿っぽい霧がどんよりとたちこめた、さびれた漁港のシーンが頭に浮かぶ(解釈本を読んだわけではないので正しい読み方かどうかわからないけど)。
そこで煙草をすいながら男が待っているのは大陸からの密航船だろうか?

短歌以外にエッセイ風の文書がいくつか収録されている。その多くが故郷での絶望と東京へのあこがれを書いたものだ。表現手法は斬新なものだったのだろうけど、テーマとしては今も昔もどの国にもある、どっちかというとありふれたもののような気がする。(今風にいうと「格差問題」ってやつだろうか)

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