蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

みみずくは黄昏に飛びたつ

2019年12月28日 | 本の感想
みみずくは黄昏に飛びたつ(川上未映子 村上春樹 新潮社)

二人の作家の対談本。
「騎士団長殺し」の宣伝&解説っぽい部分が多い。同書を未読だったのだけどそれなりに面白く読めた。というか同書を読んだような気分になれた。

村上さんは彼がデビューした頃の文壇の中心だったらしいテーマ小説みたいなのが嫌いらしく、読んだ人の数だけ解釈がわかれるような物語作りを心がけてきたという。
確かに私が読んだ村上さんの著作の多くは単純明快な筋や結末、オチがあるものではなくて、そういう小説を読み慣れてきた者にとっては、最後が尻切れトンボみたいに感じられることもある。
村上さんがデビューした頃は、私が学生だったころで、当時、国語の授業で必ず言われたのは、教科書(やテスト問題)の文章の主題は何か、ということだった。今もそうなのかはよく知らないが、主題を定めることを否定する村上さんのような作品が増えてくれば、現代国語という教科で小説の問題を出すことが難しくなりそうだ。
それでなくても、作家のエッセイなどで、自分が書いた作品が試験に採用されていたが、自身で正解することができなかった、みたいな主旨の文章を時折目にするくらいだから。

村上さんがもう一つ強調するのが文体とか文章力そのものの大切さで、そういう能力を伸ばせる限り(物語作りの巧拙を問わず)作家は進歩していけるという。
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