蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

米中もし戦わば

2019年12月03日 | 本の感想
米中もし戦わば(ピーター・ナヴァロ 文春文庫)

現アメリカ大統領の補佐官が著者と聞くと、エクセントリックな内容が想像されるところですが、本書の内容はそれなりに論理的で、ソースが多少偏っているような気がするものの学術的な裏付けもあるマトモな本でした。なお、実際の戦闘のシミュレーションをするかのような邦題ですが、そういう内容ではありません。

世界の製造業の太宗を占めるまでに発展した産業力と、そこから得た資金力をもってすれば、現時点では圧倒的な米軍を脅かすような軍事力を、近い将来中国が保持するだろう、
ハイテク分野でも他国からの剽窃を含めてすでに十分な競争力をもっている、
などというのは誰もがぼんやりと抱いているイメージだとは思うのですが、これでもか、と何度も著者に叩きつけられると、読者の方も切迫感が湧いてきます。

東アジアの米軍基地の無防備さ(飛行機が露天で駐機しているこか)も何度も強調されるところで、空母戦闘群や基地は非対称兵器(破壊対象に対して非常に安価な兵器。空母に対する中距離ミサイルなど)によって簡単に無力化される恐れがあるというのも、うなずけるところです。そして、空母のような象徴的な兵器が破壊されたりすると(国内世論が沸騰するなどして)エスカレーションが止められなくなるのが非常に危険だという指摘もなるほど、と思えました。

冷戦下でも米ソ間には対話チャネルが豊富であったことが破局を招かなかった一つの原因であるとの指摘もありました。これに対して米中間にパイプらしきものが乏しく、人民解放軍の実権を本当に握っているのか誰なのか外部からはうかがえないことと合わせて不気味な感じです。


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