蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

レストア

2006年12月09日 | 本の感想
レストア(太田忠司 光文社)

一般に「レストア」というのは、古くて動かなくなったあるいは調子が悪くなった機械などを修復すること。古くなっているので壊れた部品などを調達できない時には自作しなければならず、手作りで一からその機械を作り上げることができるくらいの技量がないとできない作業です。

私は、できたてのピカピカの作品より、使い込まれた古い機械、道具が好みです。壊れた機械や道具を修理して使用するのも、なんというか、一種の快感があります(ケチだからでしょう)。しかし、手先が不器用なので、とてもレストアなんてレベルではありません。
のべつしゃべりまくる必要がある仕事に従事しているので、一日中、誰ともしゃべらず、黙々と細かい作業を続ける職業、というのもあこがれがあります。

この本の中でのレストアとは、オルゴールの修復師のことです。主人公の修復師は、うつ病で人ぎらい。主な依頼主である金持ちの婦人以外とはほとんど会わない、という設定なのですが、それでは話がすすまないので、けっこういろいろな人と会って話しをし、その悩み事を(おせっかいにも)解決してあげる。そしてその過程で病気が治癒されていく、というのが筋です。

この小説の当初設定は気に入ったのですが、私としては、ハードボイルドにつっぱり通すキャラ(高村薫さんの小説の主人公のイメージ)、反対に表向きはチャラチャラしているけど、芯のところでは頑なで閉鎖的というキャラ(ドン・ウインズロの「ストリートキッズ」シリーズの主人公ニール・ケアリーのイメージ)が好みで、ストーリーが展開していくに従って、ちょっと甘味がきつすぎるかなあ、という感じがして、残念でした。
コメント
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