蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

袋小路の男

2006年10月01日 | 本の感想
袋小路の男(絲山秋子 講談社)

主人公は同級生の小田切に惚れている。高校以来20年近く惚れ続けている。気まぐれな小田切と主人公はたまに食事に行ったりするが、恋愛関係とはいえないぼんやりとした付き合いである。小田切は大学から10年以上酒場でバイトをしながら作家を目指して文芸誌に投稿し続けているが、たまに雑誌に掲載されるくらいで「作家」と呼べる状態ではない。「袋小路の男」というタイトルは、こうした八方ふさがりの状態にある小田切のことを指している。

ある作家(確か島田雅彦さんだと思った)が、「文芸の新人賞はニートのための福祉制度」という主旨のことを言っていたことがあった。絲山さんの著書にはニートっぽい登場人物が多いし、著者自身もサラリーマンから作家になる過程では無業者だった時期があるようで、「ああ、ニートってこんな感じなのかなあ」と思わせるようなリアル感がある。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする