老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

公金の研究(3)

2021-06-09 13:53:33 | 社会問題
核保有9カ国は、核兵器関連で毎年7.9兆円を支出(国際NGO、核兵器廃絶国際キャンペーンICANの報道から)。わが国は、原発維持に毎年低く見積もっても1.2兆円を支出。いわば核保有国は核兵器まみれ、わが国は原発まみれです。

今回の公金の研究の話題は原発、特に稼働停止中でも維持にかかる金を取り上げてみたい。まずは困った現状についてから始めます。

2011年東日本大震災による福島原発の惨禍を基に、今後も原発を主要電源としていくための最低限の安全基準見直し作業が行われ、その間全面停止がなされる中、一部の再稼働がされつつあるのが現状でしょう。

原発依存の是非についての多様な議論には今回はあまり踏み込まずに、廃炉決定済みも含めて単に停止中ということだけで発生する維持費についての報道が最近あったことから、それも含めて今までに報道されている関連情報を集めてみました。

1.2021年5月14日の東京新聞より
浜岡原発の維持費(津波対策費や維持管理の為の修繕費等)が10年間で1兆391億円と言う記事が載りました。浜岡一基だけで年間1000億円以上が維持に費やされており、これがまだまだ続くわけです。

停止中の原発の維持費についての報道は今までにも幾つかあり、紹介すると以下になります。

2.2017年6月19日の朝日新聞デジタルより
関西電力はその有する全11基(廃炉決定の2基を含む)の維持費が2015年度、2996億円(安全対策用外注分析費の520億円、廃棄物処理代の452億円、修繕費の388億円等を含む)と発表。一基あたり約272億円の維持費がかかっていることになります。
北陸電力は同じく2015年度に志賀原発(2基)分の維持費として477億円と発表。一基当たり238億円となります。
四国電力は同じく2015年度に伊方(3基)に維持費として721億円と発表。一基当たり240億円となります。   

3.2020年1月16日の東京新聞より
17原発54基の6年間分の維持費(2013年から2018年)が新基準のもと7兆2033億円程かかり(一基当たり毎年222億円となります)、別に安全対策費(再稼働目指す15原発の公表額)として5兆4044億円程がかかったと報道。維持費は今後も毎年必要11社合計、年間1兆円規模で発生すると見込まれる。
廃炉費用は安全対策費の負担が重く、廃炉決定9原発17基で合計8492億円程とされた。これには福島第一の1~4号機は費用算定が異なることから福島分4基の廃炉費用は除外されている。よって廃炉費用は17基分の予測(8492億円)から一基当たりおおよそ500億円となる。

4.2013年3月29日の日経より
原発維持コストに年間1.2兆円と経産省が発表。  

5.平成25年9月総合資源エネルギー調査会電力ガス部会発表の廃炉費用
  小型炉(50万KW)  360~490億円
  中型炉(80万KW)  440~620億円
  大型炉(110万KW)  570~770億円

6.もんじゅの廃炉の問題
1985年の着工以来1兆円を超す資金が投じられた“もんじゅ”は2016年に廃炉が正式に決定(1995年12月に二次系冷却Naの漏出火災事故発生)。停止中も維持費は毎日5500万円かかり、計画では2047年までの30年間以上をかけて廃炉を完了、その費用は1500億円以上と見積もられている。
さらにもんじゅから出る約2万6700トンの廃棄物(使用済み燃料・ナトリウム・建物・機械類等)の搬出先すら決まっていない状態(2018年初当時)。

以上の公表資料から纏めると以下のようになると思います。

1. 廃炉決定済を含む原発の今後何年に及ぶか判らない維持に毎年1.2兆円以上がかかる。
2. 廃炉決定の17原発について、廃炉費用8492億円とされる。
3. 福島原発の廃炉に向けては莫大な費用が見込まれるものの総額費用はまだよくわからないのが実情だが、除染費・賠償費・廃炉費で総計22兆円必要との数値もある。
4. もんじゅは今後30年間以上にわたり、毎年200億円の維持費(総計7000億円以上)と廃炉費用として1500億円以上。もんじゅは廃炉決定されているので維持と廃炉で約9500億円がかかるといえる。

以上の報道及び政府・政府機関からの情報を基にして、原発を相変わらずベース電源にと固守する場合の予測経費と、敢えて損切りと覚悟して原発撤退を直ちに決定した場合の予測経費とを、参考のために算出して以下に示したい。期間は廃炉に要する30年をとりあえず用いる事とします。

ベース電源原発固執策
 39基の維持費  222億円x39基x30年=25.974兆円(東京新聞2020/1/16の維持費)
         1.2兆円x30年=36兆円(経産省2013/3/29の発表数値使用)
 15基の安全対策費  5.4044兆円
 福島4基廃炉費用     22兆円
 もんじゅ廃炉費用   0.95兆円
 合計 54.3284兆円(東京新聞からの予測使用)  または64.3544兆円

損切り直ちに脱原発選択策
 54基全部の30年間維持費  54基x222億円x30年=35.964兆円
 54基全部の廃炉費     500億円x54基=2.7兆円(東京新聞2020/1/16の廃炉費を使用)
              770億円x54基=4.158兆円(5の電力ガス部会発表の最大値を使用)
 福島4基廃炉費用       22兆円
 もんじゅ廃炉費用     0.95兆円
 合計 61.614兆円(廃炉に500億円使用)  63.072兆円(廃炉最大費の770億円使用)

固執した場合にかかる費用を少ない方の54.3284兆円、に対し損切りの場合の大きい費用の63.072兆円を比較すると、8.7436兆円損切りの方が損をするようにみえる。

しかしここで幾つかの捕捉事項を追加して両者の得失を考えなければいけないと思う。

1点目は、損切り策ではほぼこの金額で脱原発終了、原発卒業となる。一方固執策では、いずれ廃炉されていく廃炉費用を上の議論では含めていない。3兆円から4兆円がいずれ上積みされていくことになろう。
2点目は、15基の安全対策費の5.4044兆円で、これで今後すべて済みとはいかないだろう。今後やはり数兆円規模でその都度安全基準を満たすための費用の発生は見ておかなければならないだろう。
3点目は、情緒的になるが、各地に身近なミニ太陽を抱えての生活を続けることの不安感・閉塞感をここで脱することを決断して生きていくか、あるいは抱えたまま生活を続けるかの選択であろう。国・政府・財界・業界・マスコミの発する安全安心などは大自然の前では如何に無力であるかは、今までにいろんな場面で見てきたことを思うと自明であろう。

今後日本の人口は漸減していき、30年後には今の7割程度になるという予測もある。また電気製品の省エネ化が更に進み必要電力が低下していくことも起こるだろう。

トータルで見れば、経費的にも情緒的にも脱原発を選択することは充分成り立つと考えます。遅きに失してはいるものの、やはりいま、今後の電力の在り方を根本から議論する必要が市民に求められていると考えます。人任せは脱却したい所です。

素直に考えればこの方向に進めることは無理筋ではないと思うのですが、そうはいかないのには、やはり巨大な障害物があるからでしょう。障害物をあぶり出し崩していく作業が進める上で市民に求められる重要なポイントです。

市民が普段願っている、こうなって欲しいとか、こんな世の中にしていけたらとの思いが、なかなかそうなって行かない原因である障害物を今後色々な場面・話題で取り上げて議論していきたいと考えております。

障害物は、繰り返しになるもののあげるとすれば、先ず以下があるでしょう。

1. 施策の立案過程と前提条件に利権が大きくからんでおり、立ち入れないこと。
2. 施策の実施前のパブリックヒアリングが形骸化している。
3. 実施と決まったらもう止められない体質。市民の大勢が中止と判断する中、勝手にオリンピックが動き続けるという又またの悲しさを繰り返したくはないのですが。
4. 世の流れを作っているのも今は人任せで、市民の手にほぼないこと。
5. 市民の数十パーセントが不安定な生活環境に置かれており放置されていること。
6. 対立をあおる風潮すら放置されていること。マイナスNOからの発想でなくプラスYESからの発想で物事を進めたいものです。

障害物は他にもたくさんあるでしょうし、あぶり出し作業に時間がかかるものと思います。いろいろな場面で今後考えていく必要があると思っています。

今回は関連話題として、国の主導する地域活性化策に乗って各地で展開されていた再生可能エネルギー施策の問題に対し、法政大の西城戸氏が指摘していることを紹介する形で触れてみたいと思います。

地域の再生可能エネルギー施策の取り組みが、原発を含む今までの集中化・大規模化の電力政策に小規模分散型という考えを持ち込んだ点は、今後の進むべき方向性として大いに奨励すべきではあるものの、西城戸氏は、次のように言う。

「えてして自治体の計画するプランは、先行する他の成功事例を単になぞるという“地域自主性施策もどき”のプランになりがちで、更には地域内でプランをすべて順調に進めて完結するには能力不足の部分もよくあることから、ある段階から中央の大手ディべロッパーが主導権を握る結果になり、地域社会が大資本に従属するという従来からの悪弊の再生産になりがちである。」

もともと大規模風力発電とか大規模敷地に莫大な数の太陽光パネルを設置というプランは大資本が独壇場の得意な分野で、しかも国は再生エネルギープランに手厚く補助するという環境下、大資本計画のケースが目立つ。そんな中で、折角形の上では自治体主導で地域の活性化のためにという動機でスタートしたものでさえ、最終的には地域内に富を循環させるという目標を達成出来ずに、大手に奪われていっているのが実状のようです。

国の突然の方針で急遽付け焼き刃的に性急に計画していくのでなく、普段から地域のあるべき姿を市民含めて考えてゆくことが、折角の与えられた活性化のチャンスをモノにするために求められていると思います。

もちろんパブリックヒアリング等の国の施策計画段階での、利権体質への目配せや施策自体の効果等への目配せに繋がる市民の直接活動と共に、市民の投票権の行使で代議制民主主義の適正化を図っていくことも前提ではありますが。

最後に別の視点を提示する例として「藤野電力」を紹介して、今後の再生エネルギーの進むべき方向の参考にしたいと思います。

神奈川県旧藤野町にある藤野電力という組織です。(奇跡の村、相川俊英著、集英社新書より)

2011年の大震災の後の計画停電で山間地域である旧藤野町の大多数の住民が困窮する中、震災以前から自家発電に取り組み計画停電の最中でも普段通りの生活を送っている人たちもいたことから、自分たちで出来そうなことはNOから発想するのでなく、YESを前面に出して良いことは実行していこうと考え、旧藤野町の住民は、その計画停電にも対応していた人々の自家発電のやり方に取り組み普及させることを考えた。

藤野電力と称し、目指したのは売電目的のメガソーラーではなく地元住民の日常に必要な電気を自ら作るという独立型の活動であった。地域ですでに自家発電生活を実践していた人のミニ太陽光発電システムをもとに、それを地域内に普及させていく地道な活動をしていくことに特化した点に特徴があると言える。巨大な送電網に繋がる中央集権型でない、自分で使う電気は自分で作るという自律分散型という点に藤野電力の取り組みの意義があります。

西城戸氏が話題にしている各地自治体の地域発電思想が、分散型ではあるものの送電線には繋がっていることを前提としている例が多いことと対比して、藤野電力がOff-Gridまで視野に入れている点は強調すべき点と思います。

藤野電力の活動には夢があります。但しいかんせん精々数十世帯の中でのoff-grid活動。日本全体の中ではその規模はまだまだppmオーダーのレベルのものです。

この藤野電力の自律分散型の取り組みを意味のない自己満足に過ぎないものと取る人もいるでしょう。しかし私はここに国の電力政策の今までの考え方に対峙する、もう一つの今後対立軸にすべき方向性の考え方があると考えております。

地道な再生エネルギーの導入を目指し活動している例は他にもありますので、別の機会に是非紹介していきたいと思います。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
yo-chan

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