大臣就任僅か1週間未満で辞任に追い込まれ「前大臣」となった中山氏の暴言。選挙区の宮崎では、「日教組をぶっ壊す運動の先頭に立つ」とか「日本の教育のガンが日教組」との過激な発言まで飛び出した。
その前の失言の中では、自分が文科省大臣時代に導入した小中学校での「学力テスト」の目的について、生徒の学力の現状把握よりも、日教組の強い県と学力テストの相関関係を見るためだったと説明して、それが裏付けられたと言っている。宮崎での日教組批判発言とつなぎ合わせれば中山氏の本心であろう。一連の日教組批判の発言は、自民党文教族として安倍内閣時代に半世紀ぶりに教育基本法を改正させた自負が傲慢さとなって露見したのではないかと思われる。(ちなみに、この学力テストには毎年約60億円の予算が計上されているようである。民主党が政権を採ったならば、この予算も別な教育予算に組み替えて戴きたいものである。)
ところで中山氏が日教組をガンと決めつけるのはどのような理由かと思いきや、その根拠は「道徳教育に反対しているからだ」とする宮崎での講演を、テレビニュースは流していた。中山氏の理想とする道徳教育はどのようなものであるかは定かでないが、我々日本人が思い出す統一された教育規範は戦前の「教育勅語」ではないだろうか。
昨年安倍内閣が強引に改正した教育基本法も、教育勅語への復古を指向したものだと巷間いわれており、また日教組もそれを警戒して中山氏等自民党の文教族が言う「道徳教育」に反対しているのではないかと思われる。今回の中山発言は「教育勅語の道徳理念への復帰」を巡っての日教組との戦いではないかと想像できるのである。
そこで下記urlから教育勅語を抽出してみた。戦前の人はこの勅語を学校で丸暗記させられたと聞くが、民主主義を知らない親や純粋無垢な尋常小学校・国民学校の生徒の多くは、何の疑問ももたずに刷り込まれたのであろう。我々も今改めて、象徴天皇制が存続するなかで、戦前の「教育勅語」のような道徳教育を受けたいか、また子や孫に受けさせたいか、そこに軍国主義へ回帰する危惧は全くないか、再読しておきたいと思う。
http://kan-chan.stbbs.net/docs/chokugo.html
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・育ニ關スル勅語
朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世々厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國軆ノ精華ニシテ育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣ノ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重ジ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ獨リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン
斯ノ道ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ
明治二十三年十月三十日
御名御璽
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・教育ニ関スル勅語(現代語訳)
天皇(明治天皇)ご自身がお考えになるに、天照大神(あまてらすおおみかみ)以来の天皇のご先祖たちが我が日本を建国するにさいし、その規模は広大で、いつまでもその基礎が揺るぐことのないようにされ、さらに、ご先祖たちは身をつつしみ、国民をたいせつにして、後の徳政のお手本を示された。天皇の臣民である日本国民は、いつの時代も忠孝をつくし、国民が心を一つにしてその美徳を発揮してきたこと、これこそ我が国体(天皇制社会)のもっともすぐれた点であり、教育の大もともここに根ざしていなければならない。
お前たち臣民(児童・生徒)は、父母に孝行し、兄弟は仲良く、夫婦も仲睦じく、友人とは信頼しあい、礼儀を守り、みずからは身をつつしみ、人びとには博愛の心で親切にし、学業に励み、仕事を身につけ、さらに知識をひろめ才能をみがき、人格を高め、すすんで公共の利益の増進を図り、社会のためになる仕事をし、いつも憲法を大切にし、法律を守り、ひとたび国家の一大事(戦争)になれば、勇気をふるいたて見も心もお国(天皇陛下)のために捧げることで、天にも地にも尽きるはずのない天皇陛下の御運勢が栄えるようにお助けしなければならない。こうすることは、単に天皇の中良な臣民として行動するというだけのものではなく、同時に、お前たちの祖先が残したすぐれた点を継承し、それをほめたたえることにもなるのだから。
このような教えに従うことは、まさしく我が天皇の祖先たちが残されたおさとしで、皇室の子孫も臣民もともに守るべきものであり、之を過去現在のどの時代に当てはめても間違っていないし、国の内外、世界中に当てはめても誤りではない。自分(天皇)は、お前たち臣民たちとともに、このことを自分自身によくいい聞かせ、その教えを守り、君臣一体となってその徳をより高めたいと思う。
明治23年10月30日
御名(明治天皇、睦仁)御璽(天皇の印)
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口語訳の教育勅語の「日本と天皇」の文言を「北朝鮮と将軍様」に読み替えると、現在の北朝鮮にもこのような教育勅語が存在するのではないかと想像したくなるのは、小生だけであろうか。
ところで教育勅語は、下記の通り終戦後の1948年にその排除と失効確認の決議が衆参議院でなされている。我々は、ことを再度肝に銘じて教育勅語を読み、復古主義に反対していくことが重要ではないかと、強く感じる次第である。
http://www.stop-ner.jp/chokugo.html
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・教育勅語等排除に関する決議(1948年6月19日衆議院決議)
民主平和国家として世界史的建設途上にあるわが国の現実は、その精神内容において未だ決定的な民主化を確認するを得ないのは遺憾である。これが徹底に最も緊要なことは教育基本法に則り、教育の改新と振興とをはかることにある。しかるに既に過去の文書となっている教育勅語並びに陸海軍軍人に賜わりたる勅諭その他の教育に関する諸詔勅、今日もなお国民道徳の指導原理としての性格を持続しているかの如く誤解されるのは、従来の行政上の措置が不十分であったがためである。
思うに、これらの詔勅の根本的理念が主権在君並びに神話的国体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ国際信義に対して疑点を残すものとなる。よって憲法第98条の本旨に従い、ここに衆議院は院議を以て、これらの詔勅を排除し、その指導原理的性格を認めないことを宣言する。政府は直ちにこれらの謄本を回収し、排除の措置を完了すべきである。
右決議する。
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・教育勅語等の失効確認に関する決議(1948年6月19日参議院決議)
われらは、さきに日本国憲法の人類普遍の原理に則り、教育基本法を制定して、わが国家及びわが民族を中心とする教育の誤りを徹底的に払拭し、真理と平和とを希求する人間を育成する民主主義的教育理念をおごそかに宣明した。その結果として、教育勅語は、軍人に賜はりたる勅諭、戊申詔書、青少年学徒に賜はりたる勅語その他の諸詔勅とともに、既に廃止せられその効力を失つている。
しかし教育勅語等が、あるいは従来の如き効力を今日なお保有するかの疑いを懐く者あるをおもんばかり、われらはとくに、それらが既に効力を失つている事実を明確にするとともに、政府をして教育勅語その他の諸詔勅の謄本をもれなく回収せしめる。
われらはここに、教育の真の権威の確立と国民道徳の振興のために、全国民が一致して教育基本法の明示する新教育理念の普及徹底に努力をいたすぺきことを期する。
右決議する。
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*参考までに憲法第98条とは、国の最高法規(憲法)に反する法律命令等は無効である旨規定しているものである。
「護憲+BBS」「行政ウォッチング」より
厚顔の美少年