老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

桜考

2019-03-30 14:06:40 | 暮らし
各地から開花のニュースが届いている。わたしの住んでいる団地の公園の桜(ソメイヨシノ)も咲き始めた。一年で一番心躍る季節の到来である。

日本人が桜を愛で始めたのはいつごろからであろうか。ものの本によれば、花見の起源は、奈良時代にさかのぼるらしい。ただ、奈良時代には、桜とともに梅も対象だった。

わたしの県で有名な後楽園(日本三名園の一つ)では、梅の花見が終わると桜の花見になるように梅も桜も植えてある。また、わたしの県は桃の産地。だから、桃の花も花見の対象になっている場所がある。わたしも赴任した学校(桃の産地)で桃の花見をした経験がある。ただ桃の花は背が低く作られているので、多少窮屈。しかし、匂いはかぐわしかった。

いわゆる花見の起源は、嵯峨天皇が812年3月28日(弘仁3年2月12日)に神泉苑で「花見の節」をしたという記録がある。(日本後記)これが記録に残る花見の始まり、と言われている。
神泉苑 ;二条城のすぐ近くにあり、現在でも京都の桜の名所の一つ
https://kyototravelnoosusume.hatenablog.com/entry/shinsenensakura

今では広く知られているが、染井吉野(ソメイヨシノ)は、江戸時代に染井村(東京都)で作られた品種。戦後、全国各地で盛んに植林された。だから、桜前線というほど全国ほぼ一斉に咲き始める。戦後、70年あまり。そろそろソメイヨシノの寿命がきつつある。

TVによれば、東京の国立でも、植え替えの議論が行われているそうだが、同じことが全国各地で出ている。わたしの県の桜の名所の一つ、後楽園周辺の桜もソメイヨシノ。もう何年も前から、寿命の尽きたソメイヨシノの植え替えが行われている。

植え替えが必要なのは、ソメイヨシノだけではない。戦後のシステム全てが植え替えが必要な時期に来ている。そのためには、国立市ではないが、植え替えのための慎重な議論が必要。新自由主義のような拙速でのやり方では、悔いを千載に残すことになる。

桜の品種は原種は9。変種を合わせると100種程度。人の手で交配した「園芸品種」と「野生種」(山桜ともいう)合計は、約600種ほどあるそうだ。興味のある方は、こちらをどうぞ。
http://flower-trivia.com/sakura-syurui/

わたしが見た桜の名所で、もつとも桜の品種が多く、素晴らしい花を咲かせているのは、京都の平野神社。「魁」とか「平野寝覚め」とか「胡蝶」とか「嵐山」とか「虎の尾」などという風雅な名前の付いた様々な桜が楽しめる。さらに平野神社では、桜の季節には、境内のお茶屋で花見が楽しめるようになっている。お酒も楽しめる。わたしが訪れた時はあいにくの雨模様だったが、境内のお茶屋は満員だった。聖俗併せのむ日本の神様の面目躍如たるものがある。
平野神社;http://www.hiranojinja.com/home/cherry

“願わくば 花の下にて 春死なん その如月の 望月のころ”

新古今和歌集に載っている西行法師の句である。望月のころとは、旧暦の2月15日。できうれば、満開の桜の下で死にたい、という西行法師の願いをうたっている。齢を重ねるほど、西行の願いが身に染みてくる。

もう一句。西行の歌を紹介しよう。

“身を捨つる 人はまことに 捨つるかは 捨てぬ人こそ 捨つるなりけれ”

西行法師の俗名は、佐藤義清。武士である。この歌意は、仏門に帰依し、坊主になる事をあたかも世捨て人のように人はいうけれど、世捨て人にもなれないで、様々の人生上のしがらみに縛られて生きている人こそ、本当はわが身をすてているのではないか、というほどの意味であろう。

平安時代も忖度に苦しめられて生きていた人も多かったのであろう。一つ忖度の方向を誤ると、失脚だけではなく、命の危険すらあるのだから、大変である。西行は、そんな生き方を【身をすてている】と断じている。

お前さんたちは、たしかに生きてはいるけれど、自分を殺し、自分らしさを失っている。そんなお前さんたちこそ、真の意味での「世捨て人」ではないのか?と問いかけている。

千年以上たった今でもこの西行の問いは、色あせない。わたしも官僚やメディア従事者、御用評論家、御用学者、自民党の代議士、公明党の代議士たち、そして、何より日本国民に問いかけたい。【あなたたちは、本当の世捨て人なのですか】と。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水
コメント (1)

ショウケン死す!

2019-03-29 17:19:52 | 社会問題
ショウケン(萩原健一)が死んだ。享年68歳。早すぎる死である。

ビートルズが来日した1966年以降、GSと呼ばれたグループサウンズが日本でも数多く輩出した。GSは、リード・ボーカル+エレキギター+エレキベース+ドラムスという構成が基本になっていた。

日本では、寺内タケシのブルー・ジーンズ(彼らはベンチャーズの影響を受けていた)やジャッキー・吉川とブルー・コメッツ(ブルシャトーというヒット曲で有名)などのGSが出てきた。

わたしは当時京都に住んでいたが、タイガースの京都での人気は凄かった。彼らはまだメジャー・デビューはしておらず、京都や大阪など主に関西で活動していた。それでも、彼らにはすでの多くの追っかけが存在していた。四条通を歩いていた時、沢田研二とタイガースメンバーに遭遇したことがあるが、その人気ぶりに唖然とした記憶がある。

当時は、長髪やエレキギターといった要素は、その恰好だけで、完全に不良を意味し、若者の非行を助長する非健全な存在と考えられていた。GSは、その意味で、そんな社会風潮に抗う【怒れる若者】たちの代表格でもあった。

ショーケン(萩原健一)はその典型的存在で、彼のショーケンというニックネームは、デビュー前の不良仲間の、ダイケン、チューケン、ショーケンから取っている。

たしか、日活映画だと記憶しているが、和田アキ子と太田雅子(現在の梶芽衣子)などが主演した「野良猫ロック」シリーズで、オックスというグループが出ていて、彼らの音楽に驚いた記憶がある。藤竜也も出ていた。監督は長谷部安春。
野良猫ロック 女番長 http://www.nikkatsu.com/dig/noranekorock/nr.html

当時は、フォークソングが主流を占めていて、GSは一種のサブカルチャー的扱いを受けていたが、彼らの持つエネルギーはその後の音楽界の流れを変えていった。

彼らは存在そのものが反体制的だった。長髪、ジーパン、胸をはだけた色柄シャツ、ため口、ギター。どれをとっても日本社会の常識に反していた。それこそ、あんな若者になってはいけない、という見本的存在だったと言っても過言ではない。

当時の全国の高校でも彼らのコンサートに行くことが禁止されていたところが多かった。こんな校則はわたしの高校でもあった。石原裕次郎の映画を見て、謹慎処分になった同級生が何人もいた。当時ではそれが常識だった。

そんな中でもショーケンの反体制ぶりは群を抜いていた。文字通り、彼の存在そのものが反体制だった、といって過言ではない。

彼は鮮魚店に非嫡出子として生まれたそうだが、この出自のありようが彼の生涯に大きく影響したことは否めないと思う。現在でも非嫡出子として生まれれば、嫡出子とは相当違う精神的影響を受けるが、ショーケンが生まれた時代はもっと大きな影響を受けたに相違ない。ショーケンの反体制的言動には、屈折した彼の精神的煩悶が大きく影響を及ぼしていたのだろうと思う。

彼の感性が鋭敏である事は、彼の音楽や彼の演技者としての活動を見れば、一目瞭然。繊細で鋭敏で傷つきやすい精神の持ち主が生きていくためにどうしたら良いのか。彼が芸能界で起こした数々の騒動(逮捕4回)や人生上の騒動(離婚4回)がすべてを物語っている。

政治家を評する言葉に、塀の上(刑務所の塀)を歩いている、というのがある。要するに、一歩間違えれば、塀の中に落ちる(逮捕される)ようなヤバいことをやっている存在、という意味。

ショーケンを評するとしたら、【塀の上を歩いている存在】という言葉がぴったりする。それも【正気と狂気】の間の塀の上だろう。

これはわたしの想像だが、ショーケンは世間で言う普通でまともな生活が信じられなかった、のだと思う。こんな幸せな生活が続くはずがない。こんな生活は、虚構で砂上の楼閣だと考えていたのではないか。だから、そんな生活を壊したくなる。だから、ショーケンの醸し出す雰囲気は、明らかに常人とは違っていた。

彼の醸し出す「危うい空気感」こそ、ショーケンの魅力に他ならない。こんな役者は、松田優作以外見当たらない。

触れば火傷するような「ひりひりとした空気感と危うさ」こそショーケンの魅力だった。いしだあゆみとか倍賞美津子などの魅力的な女優と浮名を流しているが、彼女たちが彼に魅かれた理由もおそらくこの「ひりひりするような空気感と危うさ」だったに相違ない。

その意味でわたしは彼の作品で最も評価しているのは、1974年の神代辰巳監督による「青春の蹉跌」である。この作品は石川達三の小説を映画化したもの。野望を持って社会に挑戦する青年の情熱や孤独。焦り、挫折や破滅に至るまでの苦闘を描いている。
当時の、ショーケンそのものと言っても過言ではない作品である。

「青春の蹉跌」ウィキペディア・・・
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%92%E6%98%A5%E3%81%AE%E8%B9%89%E8%B7%8C

彼の遺言で、葬儀は近親者のみ。しのぶ会もしないそうである。生涯を反体制として生き抜いてきたショーケンらしい遺言である。

わたしは彼が晩年を、4番目の妻と人間らしい生活を営んでいたという話を聞いて、ほっとした。どんなに反体制的に生きてきたといっても、否、反体制的であればあるほど、人としてのやさしさに包まれたいと願っていたはずである。彼の晩年が人として幸せであったことを心から喜び、ショーケンへの冥福を心から祈りたいと思う。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水
コメント

「幸福度ランキング」から日本の政治、社会を見る

2019-03-27 22:26:24 | 自民党政治
国連がまとめた「世界の幸福度ランキング-2019」が3月20日に発表され、日本の「幸福度」は世界156か国中58位、G7(主要7か国)の中で最も低いという結果でした。

「幸福度」は、『1人当たりのGDP』、『健康に生きられる年数』、『社会の自由度』、『他者への寛大さ』、『社会的支援』、『政府やビジネスにおける腐敗のなさ』、などを数値化したもので、今年度、日本は『健康に生きられる年数』がシンガポールに次いで2位、『1人当たりのGDP』が24位と比較的上位にある一方で、『政府やビジネスにおける腐敗のなさ』は39位と微妙な位置に、そして『社会的支援』は50位、『社会の自由度』は64位、『他者への寛大さ』は92位と低迷しています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190321/k10011855631000.html

これ等数値が示す状況は、私たちが日々暮らしの中で実感している今の日本の政治・社会状況と齟齬はありません。

例えば、安倍政権は、「社会保障費はこの6年間で4兆円カット」「国民年金は年間4万円、厚生年金は年間14万円減額」「高齢者の医療負担費額引き上げ」「特養ホームの入所制限」など、消費税増税の根拠だったはずの『社会的支援(社会保障)』を縮小させる政策を採り続け、私たちの暮らしは年々苦しくなってきています。
http://news.livedoor.com/article/detail/16222388/

『社会の自由度』についても、大学入試や就職における女性差別、常態化する非正規雇用、政府の不誠実な答弁、嘘や改ざん、不祥事に対し堂々と批判できないメディアの状況など、自由の欠如の例は枚挙にいとまがありません。

そして、社会的支援の削減や、自由に生きられない社会が齎す息苦しさが、ヘイトクライムや、政党や特定個人に対するバッシングとして噴出し、テレビやSNSの煽りとあいまって、『他者への非寛容』が社会を覆い人々の心を蝕んでいるように見えます。

今はそれでも国民の忍耐強さによって何とか治安も維持されていますが、最近のアポ電強盗や多発するレイプ事件、子供への虐待、職の無い成人した子供による親殺しなど、社会の歪み、荒みを感じさせるニュースが後を絶ちません。事態の深刻化、治安の悪化が懸念されます。

27日午後、2019年度予算が参院本会議で自民、公明などの賛成多数で可決、成立。一般会計総額は7年連続で過去最大を更新し、今年度は100兆円を超えたといいます。
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%EF%BC%91%EF%BC%99年度予算が成立%EF%BC%9D初の%EF%BC%91%EF%BC%90%EF%BC%90兆円超%EF%BC%8D与野党、選挙態勢に/ar-BBVhcWa?li=AA570j&ocid=spartandhp#page=2

予算増大の主な要因は、10月の消費税増税に伴う景気対策としての、キャッシュレス決済向けポイント還元やプレミアム付き商品券などに計2兆280億円、防衛費は「イージス・アショア」の配備などを盛り込み過去最大の計5兆2574億円。かろうじて社会保障費といえるのは幼児教育・保育の無償化ということですが、「国民の幸福度」への視点とは程遠い、何ともピントのずれた施策だと、今さらながら失望を深めずにはいられません。

折しも、間もなく統一地方選が行われ、夏には参議院選が続きます。私たちは、このチャンスを無にすることなく、政治の本来の使命はその国に暮らす人々の幸せを保証することだという大原則を明確にし、生活者に真に寄り添う政党や政治家を、大きく強く育て、国民の相互不信や、多様な国の人々への排他性を党利党略に利用するような政治に、きっぱりと別れを告げたいと思います。

「護憲+コラム」より
笹井明子
コメント (3)

NHKの政権への忖度が酷過ぎる

2019-03-26 16:47:48 | マスコミ報道
もう、NHKニュースを見るのは止めようと思う人が増えているのではないでしょうか?
ニュースが事件とスポーツ、タレントの話ばかりで時間を取って、まともな政治の話はちょっぴり、上滑りに伝えるだけ。

ウケを狙う民放がそうなのは仕方がないとしても、NHKはお金を取っている分、きちんと報道する義務があると思うのです。
なぜ、NHKはそうなったか…是非お読みください。

なぜNHKは政権による嘘と誤魔化しに加担するのか<永田浩三氏>
https://hbol.jp/188405

「護憲+BBS」「NHKの報道内容をウォチングしよう」より

コメント (2)

親の体罰禁止をどう考えるか

2019-03-23 17:10:40 | 社会問題
「しつけ」に名を借りた親による児童虐待事件が後を絶たず、ついに政府は、「親の体罰禁止」の法制化に乗り出した。

・・・政府は19日午前の閣議で、児童虐待防止の強化に向けて児童福祉法等改正案を決定した。親権者らが「しつけ」として子どもに体罰を加えることの禁止などが柱。施行日は一部を除き来年4月1日とし、今国会での成立を目指す。
 野党も児童相談所(児相)の体制強化策などを盛り込んだ対案を国会に近く提出する予定。与党は「対立法案でもない。野党とよく協議をさせていただき、早期成立を目指したい」(森山裕・自民党国会対策委員長)としている。
 政府の法案では、民法が規定する親権者の子どもへの「懲戒権」のあり方について、改正法施行後2年をめどに検討すると明記。児相がちゅうちょなく子どもを一時保護できるように、一時保護などの「介入的対応」と「保護者支援」の担当職員を分けるとした。・・・・・
(朝日新聞デジタル 2019年03月19日 )

◆では、しつけ【躾、仕付け】とは何か。
・・・しつけ(躾・仕付け)とは、人間社会・集団の規範、規律や礼儀作法など観衆に合った立ち振る舞い(規範の内面化)ができるように、訓練すること。概念的には伝統的な子供への誉め方や罰し方も含む。ドイツ語では、しつけのことを、die Zuchtというが、これは人に限らず動物(家畜)の調教、訓練の意味もあり日本語のしつけと同じである。
なお裁縫(特に和裁)では、ちゃんとまっすぐに縫えるように、「あらかじめ目安になるような縫い取り」をしておくこと、それに沿って縫っていくことを仕付けと言う。 ・・・ウィキペディア 
https://ja.wikipedia.org/wiki/しつけ

【しつけ】は、広義には教育の範疇に入ると考えられるが、教育と言うより人間が生きていくうえで身につけなければならない「根源的な」ものと考えられる。

特に、言葉が理解できない幼児の時代には、「やって良いこと」を褒める、「やって悪いこと」を叱る、罰を与える、と言う方法で【体得・感得】させる事が重要になる。「規範の内面化」には、この「感得・体得」という作業が欠かせない。

多少封建的なニュアンスがあるので、紹介するのがはばかられるが、「氏より育ち」という言葉がある。どんな良い家庭、金持ちの家庭に生まれても、きちんとした礼儀作法(しつけ)を教えられていなければ、何にもならない。逆に、きちんとした礼儀作法をしつけられた人間は、たとえ家柄が悪くても、家が貧乏であっても、評価できる、という意味でつかわれていた。

この言葉は、日本の昔の家庭では、いかにしつけ(この場合は躾であろう)が重要視されていたかを示している。例えば、箸の持ち方、食事の作法(食べ方、茶碗やお椀の持ち方、おかずの食べ方、汁のすすり方など)、服の着方、座り方、風呂の入り方、挨拶の仕方、履物の処理の仕方(履物を脱いだ後、それを直すなど)祝い事の席と不祝儀の席の身の処し方等々、山のようにある。

三世代同居だった時代は、家族揃っての食事が常識だった。その食事の場が、この種のしつけの主戦場だった。子供たちは、爺ちゃん婆ちゃんに箸の持ち方から、膳の上げ下げに至るまで細かく注意されたものである。これが外に出た場合、無作法な子供だと後ろ指をさされないための、その家のしつけだった。

上記のような「しつけ」でも、そう簡単にできるものではない。子供を育てた経験のある人間ならだれしも、言葉でしつけをする難しさを痛感している。口で言って分からないので「お尻ぺんぺん」した経験のない親を探す方が難しいだろう。

実は、「しつけ」の本当の難しさは、タイミングの難しさである。道路に不意に飛び出したり、友達との喧嘩で加減が分からず怪我をさせたり、子供たちは育って行く過程で様々な危険な行為を経験する。こういう危険な行為をしないようにするためには、間髪を入れず、その場で注意しなければ身に付かない。そういう場合は、どうしてもきつく叱ったり、時には「お尻ぺんぺん」しなければならない。

意図的な「しつけ」ではなく、その場でなければ身に付かない「しつけ」というものもある。このタイミングの見極めが難しい。この「お尻ぺんぺん」と体罰との線引きをどうするか、非常に難しい問題である。

実は、いま問題になっている児童虐待は、「しつけ」だと主張している親の側が、このタイミングが全く考慮していない。そのため、子供たちは何で、どうして怒られているか、全く理解できていない。そこでどんな事が起きるのか。なんで怒られているのか理解できないので、子供が反抗的な態度をとる場合が多い。そうなると親がかっときてさらに暴力的な折檻をするという悪循環である。

学校、教師の「しつけ」は、親の「しつけ」とは違う。学校での「しつけ」は、【集団生活】を営むための「しつけ」という側面が大きく、家庭で行う「自立」のための「しつけ」とは、多少ニュアンスが違う。

ただ、子供の「自立」のための「しつけ」は、学校での【集団生活】を営むための基本的要素なので、この連携が学校と親との間できちんと認識され、共有されていることが望ましい。

わたしは教師(中学校)だったので、参考までにわたしが子供たちにどんな「しつけ」をしていたかを書いてみよう。

わたしは、自分の学級や授業では、必ず最初に日常生活の約束事、授業の約束事(ルール)を徹底的にしつける事から始めた。この「しつけ」がきちんとできた学年やクラスの子供たちは、活発で楽しく学校生活を過ごすことができ、成績も右肩上がりに向上する事が多かった。

①授業前に必ず筆記用具・教科書・ノート・資料集・地図などを机に出しておく(わたしは社会科教師だったので)⇒準備をする事の重要さを体得させる。(理解でなくて、体得でなくてはならない。それが家庭での学習に役立つ)

②授業中は、静かにしない事を約束。(騒げというのではない。授業に参加して、活発に質問しなさい、と言う意味) わたしは、子供たちがしーんとした授業になった場合、一切説明せずにただ黒板に書くだけの授業をすることにしていた。子供たちが説明してください、というまで、一切説明しなかった。言葉による会話(質疑)が成立していない授業は、決して身に付かない。教師の一方通行で自己満足の授業にしかならないと考えていた。

③授業は子供たちの常識を根底から考え直すチャンス。ありとあらゆる考え方を提示し、考えさせ、推敲させ、他者と会話し、自らの考え方を構築させていく【最高の場】だという事を繰り返し、繰り返し話し、認識させ、感得させる。毎時間、毎時間、新たな発見がある授業。これができたら、授業が楽しくなり、好きになる。「好きこそものの上手なれ」にならせることが教師の使命だと考えていた。

④図書館の利用法を徹底的に指導する。教科書に書かれた事だけではない様々な歴史的事実や、歴史的事実に対する様々な考え方、見方を教科書でない本や図鑑、参考書で調べる訓練が必要。その為、一ヶ月に一度は、図書館を利用した授業を行った。

⑤公民の授業では、新聞を毎時間持ってこさせ、疑問に思うニュースを質問させ、それを子供たちと考える時間を取っていた。自分たちの学ぶ内容が如何に現実の社会を理解するために重要であるかを体感させる狙いだった。

⑥クラス経営では、【自治能力】をどのように育成するかを最重要の課題にした。そのために、日常生活をどう構築するか、という課題を考えさせ、実践させる⇒ポイントは、学校での一日の生活をどう考え、どう実践するかにある⇒【生活を自主的に組み立てる】ことこそ、「自立」への第一歩。

※ 【自主⇔自立⇔自治】 自主的でない子供は、自立できない。自立できない個人の集団では、自治は不可能。自治能力のない集団では、自立した個人を生み出す事は難しい。自立した個人でなければ、自主性など生まれない。この三つの能力は、不可分な関係にある。家庭のしつけと学校のしつけの連携は、教師と保護者がこの関係をきちんと理解し、お互いに協力するところから生まれる。

結論的に言えば、「自治能力」を育成しない学校教育では、自主性も自立した個人も全て絵に描いた餅。日本の学校教育の最大の欠陥は、「自治能力」を育成しないシステムにある。

⑦わたしのクラスの場合 ●学活(学級活動)朝・午後⇒これが一番重要;(理由)子供たちの自治能力を培う最重要な場 ※全て子供たちの手で運営し、子供たちの目で一日の反省をする。教師は、ファシリテーター(支援者)に徹する。■ 失敗を恐れない。失敗こそ、自治能力涵養の母。教師は子供たちの失敗を次の飛躍のバネとして喜ぶ余裕が欲しい。

●給食時間⇒食を制するものは、生活を制す。給食時間の約束事は、時間に遅れずに一斉に食べる事。とにかく、食事時間をできるだけ長く確保する事を考えていた、そして、給食時間の生徒の動き、会話などを子細に観察すれば、「いじめ」の早期発見は可能。何故なら、給食時間ほど子供たちの心が解放され、裸の姿が見える場はない。班で給食を食べる時、机をつける場合が多い。ところが、班の中で阻害されている子供の机は、ほんの少し離れている場合が多い。こういう事にきづけば、「いじめ」を芽のうちに摘み取る事ができる可能性が高い。

●休み時間⇒さりげなく、トイレなどの見回りをかかさない。廊下をぶらぶら歩いていれば、必ず話しかけてくる子供がいる。こういう子供たちの話を大切にしなければならない。他愛のない話にこそ、子供たちのSOSが隠されている場合が多い。ここにアンテナを張れる感性こそが、「いじめ」を早期発見し、被害者の子供も加害者の子供も心の傷を深くしない要諦である。

●掃除時間⇒自分の教室を清掃する事は、自分の生活の場を愛する(大切にする)事につながる。同時に清掃活動ほど子供たちの自治能力が伸びる活動はないと考えていた。こういう活動は必ずさぼる奴がいる。このさぼる奴をどう考え、どう活動させていくか。これが子供たちの自治能力を高める。だから、班の子供たちの話し合いで問題解決させることを約束していた。

同時に、教室清掃では、子供たちを教壇に立たせて教室全体を見させた。全体を俯瞰させることにより、どこをどう清掃したら良いかを子供たち自身に考えさせ、実践させた。子供たちが「きれい」とか「感じよい」と思えるような掃除ができたらOK。子供たちの感性を鍛えることが重要な課題である。

※これが最重要な点だが、教室は消毒されたような清潔すぎる空間ではなく、多少の汚れがある空間でなくてはならない。子供たちが生き生きと活動している空間は、多少の汚れは許容されなければならない。息苦しいほど清潔な空間は、子供たちの心をよそゆきにし、不自由にしてしまう。心に衣をまとった子供たちをいくら厳しく指導しても、届かない。

⑧わたしは、常に多少雑な指導を心掛けた。担任している時は、しっかりものの女の子に、「先生はだらしないんだから」といつも叱られていた。だらしない先生だから、わたしたちがしっかりしなければ、と思ってくれる子供が多いほど、そのクラスは素晴らしいクラスになる。

一つの汚れも一つのシミも許さないような清潔な空間を目指す指導は、子供を駄目にすると考えていた。息が詰まるような完璧主義の指導のほうが、はるかに子供の心を傷つける場合が多いと考えている。

パソコンが普及した現在、一つのミスも許されない社会が現実のものになっている。せめて家庭や学校では「完璧主義」から脱却したおおらかな雰囲気で生活させてやりたいと願っていた。

今回の【体罰禁止】の法制化は、上記の文脈で考えれば、ある意味では正しく、ある意味では間違っている。

体罰禁止の法制化は、しつけは「言葉の力」を信じるべきであるという西欧先進国(スウェーデンなど北欧各国)の流れに即応しており、容認されなければならない。ただし、北欧各国でもその導入に向けて、親や社会の意識変革に相当な時間をかけている。スウエーデンでも40年近くかかったと言われている。

「言葉の力」を信じると言う事は、まず、社会が「言葉の力」を信じる社会である、という前提(実感)が必要になる。「言葉の力」を信じると言う事は、民主主義という政治システムの基本である。

政治で言えば、【公約】をきちんと守る政治であり、嘘や騙しやごまかしのない政治である事が求められる。

政治とか外交という世界は、一筋縄ではいかない。ある種の嘘や誤魔化しは必要条件でもある。しかし、そういう場合でも、為政者の嘘や誤魔化しが国や国民のためにどうしてもそうせざるを得なかった、という信頼感が醸成されていなければならない。これは一にかかって、政治家の日常の言動と紡ぎだす言葉への信頼感にかかっている。

社会全てがこのような【豊かな言葉】を大切にする環境を整備しなければならない。これには、マスメディアの役割がきわめて重要である。

例えば、先日来、過剰に報道されているピエール瀧のコカイン吸引は、たしかに犯罪である。しかし、彼にコカインを売り、利益を上げ、彼を犯罪者になるまで貶めた人間が、最大の悪人であろう。メディアが追及しなければならないのは、このような薬物を売りさばく反社会的組織だろう。そして、その組織を逮捕しきれない公権力のふがいなさではないのか。

そう考えると、ピエール瀧の犯した罪は罪として、彼の出演した映画、アニメ、TVドラマの価値を全て否定してしまうほどの重罪なのだろうか。わたしは、彼のおかした罪と出演した作品の評価はおのずと別の尺度で判断されなければならない、と考えている。

【言葉の豊かさ】とは、そういう寛容さを含んでいる。

ジャン・ジュネというフランスの作家がいる。代表作に「泥棒日記」という作品がある。

・・・・ジュネは学校の成績はよかったものの、犯罪を繰り返すようになった。養母が死亡した後、新たな夫妻(ウージェニーの娘ベルトとその夫アントナン)の養子となったが、繰り返して起こした犯罪のため、15歳のときに感化院に送られた。18歳のときに外国人部隊に志願し入隊するが、後に脱走してフランスを離れ、ヨーロッパを放浪した。この際にも、窃盗や乞食、男娼、わいせつ、麻薬密売といった犯罪を繰り返していた。
1942年中央刑務所に投獄される。・・・・ ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/ジャン・ジュネ

ジュネは刑務所で処女詩集「死刑囚」を書き、ジャン・コクトウに評価され、文壇にデビューする。

彼の作品は多くの小説家、批評家に評価されている。わたしがジュネの名前を知ったのは、サルトルの「聖ジュネ論」を読んだ時である。

「言葉の豊かな社会」では、ジュネのような犯罪者であっても、作品の評価には全く影響されない、という発想に驚かされた記憶がある。朝日新聞が坂口安吾を取り上げて同様な論を展開していたが、同感する。

さらに、体罰禁止を法制化するためには、非暴力な社会が実態としてあり、言葉による暴力も威嚇も脅しも許されない社会が実感として存在しなければならない。

わたしたちは、そんな社会を生み出す思想が、新自由主義的思想で可能なのか、という根源的な問いをしなければならない。

次に重要なのは、【親は自然に親になるのではない。親は親になる事を学ばなければならない】と言う事を社会全てが認識しなければならない。

昔は、女性は花嫁修業とか、花嫁学校と言われた女学校とか、家庭科という科目があって、料理・裁縫など母親になるための学習をしていた。戦後になって男女平等が叫ばれ、夫婦が共同して子育てをすべき、という原則が叫ばれた。家庭科も男女で学んでいるが、その内実は結局どちら付かずのいい加減なものになってしまった。

さらに言えば、そんな日常的な事柄を学ぶより、入試科目を勉強して成績を上げる方が価値がある、という風潮に流され、「親になる」教育がおろそかにされてきた。さらに、核家族化が進み、祖父母や親の世代の子育ての知恵がほとんど継承されにくくなってしまった。

もう一つの大きな要因は、新自由主義的経済論が幅を利かせた結果、非正規雇用という働き方が一般的になり、親たちに子供を育てる金銭的余裕も時間的余裕も精神的余裕も失われつつある。

この結果、平成と言う時代は、一種の【鬱の時代】になってしまっている。【鬱】という精神状態は、「苛立ち」とパラレルの関係にある。この精神的苛立が爆発するのは、家庭が一番多い。これが【家庭内暴力】【児童虐待】などの暴力行為が頻発する最大の要因である。この苛立ちが外に向かった場合、クレーマーという存在になる。

結果として、【親になる】とは何かを体得していない若者が増加し、最近の児童虐待行為が増えてしまったといえる。

今回の【体罰禁止】の法制化の問題を考える事は、わたしたちの社会のありよう全体を考える事でもある。

何故、わたしたちの社会は、こんなおぞましい子殺し、親殺し、DVや児童虐待などを生み出し続けているのだろうか。何故、世界の幸福度ランキング58位などいう厭な数字が出されるような国に成り下がったのだろうか。何故、こんなぎすぎすした社会を作り出したのだろうか。

わたしたちは、もう一度立ち止まってわたしたちの社会のありよう、国のありよう、わたしたちの子孫が直面する近未来の運命を真剣に考え直す時期が来ていると考えなければならない。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水
コメント (2)

31年度NHK予算案の衆議院通過を期して

2019-03-20 11:02:51 | マスコミ報道
今日(3/19)午後7時のNHKニュースで、NHKの新年度予算案が衆議院を通過し、参議院に送られたと報じられていたが、一方で朝日新聞デジタルニュースでは、「森友問題」で下記のようなNHK内部のニュースが報じられている。

事実とすれば、一昨年最高裁が受信料制度と視聴料支払い義務を認める判決を下した際の判決要旨、「受信料制度が国家機関などから独立した表現の自由を支えている」がNHK幹部には全く理解されていないと言えよう。

「なぜ事実の迅速な放送ができないのか、いけないのか」、野党には次の参議院予算委員会のNHK国会中継のある日に是非追求して貰いたい。

これが視聴料を支払っている国民多数の要望だろう。

―以下は朝日新聞デジタルニュースより―

「露骨な圧力を見たの初めて」 森友報じた元NHK記者
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20190317000625.html
(2019年3月19日13時50分より)

『森友学園問題を報じた元NHK記者で、現在は大阪日日新聞の論説委員を務める相沢冬樹さん(56)が16日、福井市大手2丁目の福井県教育センターで講演し、森友学園問題をめぐるNHKの報道や記者の仕事などについて語った。約90人が聴き入った。

森友学園問題が明らかになった当時、相沢さんは大阪報道部にいた。当初、NHKでは全国ニュースにならなかった。売却価格の決定過程に関する特ダネは約2カ月、放送されなかった。やっと放送されたその3時間後、「あなたの将来はないと思え」と当時の上司が電話で激怒されている姿を目の当たりにした。』

「護憲+BBS」「NHKの報道内容をウォチングしよう」より
厚顔
コメント (2)

沖縄の県民投票-今度は日本国民の番

2019-03-19 16:51:36 | 沖縄
2月24日に、沖縄県の全市町村で「普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋立てに対する賛否についての県民による投票」が行われた。

結果はご存知の通り、当日有権者数1,153,591人のうち、投票総数605,385票(52.48%)で、賛成114,933票(18.99%)、どちらでもない52,682票(8.70%)に対し、反対が圧倒的に多く434,273票(71.74%)だった。

「辺野古の海の埋め立て反対」という、これほど沖縄の人々の民意をハッキリさせた結果に対し、政府の反応は酷いものだ。

安倍首相は「投票の結果を真摯に受け止める」と言いながら、その口で「日米が普天間基地の全面返還に合意してから20年以上、実現されていない。これ以上先送りすることはできない」と、埋め立てを再開した。

何が「真摯に受け止め」だ。沖縄の民意をまるっきりの無視。第一、普天間の移転と辺野古をセットで考える必然性がどこにあるのだろう。

沖縄は太平洋戦争末期の1945年4月から6月の短い間に、県民の4人に1人が犠牲になった。そして米国による統治が始まり、占領からようやく日本復帰したのが1972年。

しかし米軍基地は残り、しかも日本全国の面積の0.6%でしかない沖縄に、日本全国の米軍基地の74%を押し付けられてきた。

そして米軍兵士による婦女子への暴行・殺傷事件、米軍ヘリの大学敷地への墜落、離着陸の騒音問題等、沖縄はさんざんな目にあってきた。これに対して、日本政府は米国の言いなりだ。

米国の戦略も変化を見せてきて、沖縄にあれほどの米軍基地を置く必然性は無くなってきている。それなのに米政府が日本に基地を置きたがるのは、日本政府からの「思いやり予算(在日米軍駐留経費負担)」の、国民の税金から出る2,000億円の魅力か。

そして、沖縄の民意よりも、国民の生活のしづらさよりも米軍優先、どう考えても不平等な「日米地位協定」に改善の声すら挙げないという、日本政府の下での居心地の良さか。

サタデージャーナルで上田晋也さんが
「沖縄の方々が1つの答えを出しました。今度は沖縄以外の人達が日本の基地問題、何が出来るのかを考える番です。沖縄の民意に政府が寄り添う姿勢は一切見せません。
 沖縄の声が沖縄以外の人が考える事により日本の声となり、大きくなれば政府の対応を変える事も可能ではないか」
という発言をしたそうだ。

沖縄の人々が長年耐えてきた状況に責任があるのは、米国ではなく、日本、日本政府、そして本土に住む私たち日本国民、選挙民だとつくづく思う。沖縄の民意に知らん顔はできない。

「最悪の悲劇は、悪人の圧政や残酷さではなく、善人たちの沈黙である」(キング牧師)

「護憲+コラム」より

コメント (2)

ベネズエラで進行している米国によるあからさまな政府転覆計画(2)

2019-03-18 20:33:10 | 安全・外交
(4)チャベス死後のベネズエラと米国

2013年3月 チャベス死去以降、「21世紀型の社会主義」を標榜するニコラス・マドゥロ大統領が政治の舵取りを行ってきた。

ベネズエラを敵視する米国政府は、お得意の【経済制裁】を課してきた。シェール・ガス革命後、OPEC(石油輸出国機構)などの産油国の力は急速に衰えた。石油価格が暴落に近い下がり方をしたのである。

NYマーカンタイル(原油先物市場)は、投機マネーが暴れまわるきわめて危険な市場だが、かってはその市場の支配権はOPECが握っていた。特にサウジアラビアの動向がカギを握っていた。そのメカニズムは簡単で、石油価格が高騰しすぎると、石油産出量を増産し、価格が低くなりすぎると、石油産出量を減産する。そのメカニズムを握っていたのが、OPEC諸国。その一員であるベネズエラの経済は安定していた。特に、ベネズエラは、その埋蔵量は、世界一とされている。

ところが、シェール・ガス革命は、OPECの価格決定権を奪い去り、現在の市場の動向は、エクソン・モービルなどの石油メジャーと巨額の余剰マネーを握る投機筋が握っている。原油安の進行は、これらの投機マネーが原油市場から一斉に引き上げられたと言う事を意味している。

つまり、ベネズエラ、イラン、ロシアなど国家財政を石油が握っている反米国家の経済を直撃したのである。

このように、原油価格の決定は、見事な経済制裁になりうるのである。これが覇権国家米国の強み。他国の生殺与奪の権を握っているのである。

米国は、さらに厳しい制裁を加えている。

国営石油公社PDVSAを狙い撃ちにした経済制裁を発動。

●PDVSAによる石油の輸出を禁じ、米国内の資産を凍結。

年間110億ドル(約1兆2000億円)の輸出収入を消失。70億ドルの資産凍結
●米国以外の国々もベネズエラ産の原油の取引をしないように働きかけ

●ベネズエラ産原油は硫黄分の多い重質油⇒ナフサを加えて希釈⇒製品化
 米国内の資産凍結でナフサが輸入出来なくなり、石油生産それ自体が滞る。

★制裁によってベネズエラが受けた損失 ⇒3,500億ドル(38兆5000億円)(2013~2017年) ・・ラテンアメリカ地政学戦略センターの計算。
          ↓
★ハイパーインフレが進行 ①制裁による物資不足②自国通貨の価値を決定づける石油販売ができない ⇒1月の物価上昇率 268万% 年内予想⇒1000万%
300万の国民が国外脱出事態

※現在、米国は選挙で選ばれたマドウロ政権を認めていない。そして、コロンビアに送り込まれた人道支援物資をマドウロ政権が搬入を認めていない、と非難している。マドウロ政権は独裁的で強権的で非人道的政権だというわけである。

かっては、チャベス政権にも同様な非難を加えていた。

まあ、現在のベネズエラの窮状は、米国の経済制裁が大きな要因である事は明白。苛酷な経済制裁を課し、その国をぎりぎりまで追い込み、国民に塗炭の苦しみを味わせておいて、「人道支援」もないわけだが、これが米国の常套手段。

イランもそう。北朝鮮もそう。キューバもそう。中国もそう。ロシアもそう。米国が経済制裁を加える国は、すべて反米国家だと考えてほぼ間違いない。

あらかじめ、相手国内部に米国の同調者を作っておく。そうしておいて、経済制裁をかけ、相手国の経済を破滅的な状況に追い込み、国民の不満を極限まで高め、相手国の政治情勢を乱せるだけ乱す。

そこで、人道支援などを行い、米国に対する好印象を与え、米国傀儡政権をつくり、その国を支配する。そうしておいて、相手国からできる限り収奪を行う。これが、米国流支配の法則。今も昔も変わらぬ【侵略】の手口である。

(5)ベネズエラの現在

正式な選挙によらないで大統領を自称しているフアン・グアイドは一体何者なのか。彼はアメリカによって大統領として認知されている。これ一つとっても、通常の国際関係ではあまり考えられない状況である。

ファン・グアイドは、2007年にジョージ・ワシントン大学へ留学、ごりごりの新自由主義者である。彼が、政権を奪取した暁には、ベネズエラでチャベスが推進した社会主義的政策を破棄。私有化を推進するつもりだと言われている。特に、国営石油会社のPDVSAをエクソンモービルやシェブロンへ叩き売るつもりだと言われている。

グアイドが米国留学する2年前、米国支配層はベネズエラの学制5名をセルビアに送っている。彼らは、応用非暴力行動・戦略センター(CANVAS)の支援でやってきた。CANVASは、スルジャ・ポポビッチが設立したオトボール(抵抗)の幹部たちによって設立され、非暴力を標榜しているが、目的はアメリカ支配層のカネ儲けに邪魔な体制を転覆させることにある。

このあたりの事情については、以下の論文に詳しい。
・・・フアン・グアイド誕生裏話:アメリカの政権転覆研究所によるベネズエラ・クーデター指導者の作り方・・・(マスコミに載らない海外記事)
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2019/02/post-58b3.html

要するに、チリのアジェンデ政権が打倒され、ピノチェト政権が樹立された時、新自由主義経済学者フリードマンたちが行った新自由主義的経済政策をベネズエラでも行おうという狙いが見え見え。そのための準備が10年以上前から行われていたと言う事である。

今回のベネズエラ危機は、米支配層の長年にわたる周到な準備を経て顕在化していると見なければならない。つまり、東欧で行われたカラー革命には、「政権転覆研究所」のような緻密な計画と資金の供給と指導が背後にあってはじめて成功している、と言う事が良く理解できる。

今回のベネズエラ危機は、米支配層の世界支配の手口がよく分かるという意味で、注意深く見なければならない。

チャベス大統領に対する暗殺計画も何度かあったが、現在のニコラス・マドウロに対する暗殺計画も三度あり、彼も運よく生き残っている。

アメリカが経済制裁の名のもとに仕掛けたベネズエラの経済混乱につけ込み、トランプ政権は軍の一部を使ったクーデターを何度か仕掛けている。

しかし、昨年一月の大統領選でマドウロが再選された。すぐさま、議会で多数を占める野党が、「野党候補が不当に排除された。この政権は正統性がない」と非難。グアイド国会議長を暫定大統領に選出。米国は直ちに承認。追加制裁を実施。マドウロ政権の退陣を要求。

上で指摘したように、このグアイドとアメリカの関係はきわめて濃密。誰がどう見ても、グアイドがアメリカの傀儡である事は明白である。アメリカやEUのうち17ヶ国がグアイドを大統領として承認している。しかし、彼が国内で大統領として承認されたという実体はない。

アメリカのボルトン大統領補佐官(安全保障担当)は、人も知るネオコンで強硬派。彼は、「ベネズエラの広大な未開発の石油埋蔵量のため、ワシントンはカラカス(首都)での政治的成果(クーデター)に大きな投資をしている」「アメリカの石油会社にベネズエラへの投資と石油生産を可能にすることができれば、それは経済的にアメリカにとって大きな利益をもたらす」等と公然と発言。アメリカの帝国主義的侵略の狙いを隠そうとしていない。

当然、マドウロ政権側も反論する。「もはやワシントンはクーデターの黒幕というよりも、攻撃の前線に立ち、暴力を煽って従順なベネズエラ野党に命令を出している。証拠はあからさま過ぎて米国内ですら疑う人はない」 アレアサ外相の言葉。

わたしがトランプ政権の下品で乱暴な手口と指摘するのは、ボルトンのようなあまりにもあからさまな発言を指す。

当然このようなアメリカのやり口に対して、ロシア・中国、イラン、シリア、トルコ、ニカラグア、キューバ、ボリビアなどが批判を強めている。メキシコ、ウルグアイ、ローマ法王庁、国連事務総長、EUは、対話を呼びかけている。

一方アメリカは「対話の時は終わった」とし、武力介入も辞さず、と強硬姿勢を崩していない。

3月7日、ベネズエラで大規模な停電があった。グリ水力発電所が電力を供給できなくなった事が原因。マドウロ大統領発表では、破壊活動があったと主張している。

・・・・ベネズエラの最大80%が影響を受け、与えられた損害は最初考えられていたよりずっと深刻だ。この出来事の前には、何週間、あるいは何カ月もの計画があった可能性が高い - こういうものを成功させるには相当な専門知識が必要なのだから、アメリカの闇の勢力が背後にいるのはほぼ確実だ。

 金曜日に二度目のサイバー攻撃、土曜日に三度目の攻撃が続き、電力が復活した地域に影響を与え、問題解決をさらに複雑にしたとマドゥロが述べている。
 ベネズエラのおよそ70%で電力が回復した後「白昼、我々はもう一つのサイバー攻撃を受け、再接続作業が乱され、昼までに達成した全てが駄目になった」と付け加えた。
 「完璧に機能していた発電装置の一つ」が電力会社を内部から攻撃する潜入者により再び破壊工作された。」・・・・・

当初思われたより遥かに深刻なトランプ政権によるベネズエラ電力戦争(マスコミに載らない海外記事)
Stephen Lendman
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2019/03/post-b11d.html

このような憶測をさらに駄目押しするのは、アメリカ政府によるベネズエラ工作の指揮官に任命されたのが、エリオット・エイブラムズ。

彼の仕事は何なのか。以下の記事を読めば、一目瞭然。

・・「エイブラムズもニカラグアの秘密工作に参加している。CIAの工作には麻薬取引がつきもので、ニカラグアを含むラテン・アメリカの場合はコカインが利用された。
 ニカラグアの工作は周辺国、例えばエル・サルバドルでの工作と一体の関係にある。そのエル・サルバドルで実行された「汚い戦争」ではCIAの手先になっていた軍人や警官が1980年3月にカトリックのオスカル・ロメロ大司教を暗殺、その年の12月にはカトリックの修道女ら4名を惨殺、81年12月にはエル・モソテの村で住民900名から1200名を殺している。
 2月13日に下院の外交委員会へ出席したエイブラムズはイルハン・オマール下院議員からエル・モソテの村での虐殺について1982年2月に上院外交委員会で虚偽の証言をした過去を指摘された。
 
エイブラムズはイラン・コントラ事件と自身の関わりについて議会へ情報を隠した罪を1991年に認めているが、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領の恩赦で刑務所行きを免れた。破壊、殺戮、麻薬取引を含む秘密工作に連座していた人物が今、ベネズエラのマドゥロ政権転覆工作を指揮しているのだ。」・・・・櫻井ジャーナル
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201903080000/

※イラン・コントラ事件(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/イラン・コントラ事件
※イラン・コントラ・ゲート事件
http://naotatsu-muramoto.info/rekisinobenkyou/iransi/iransi33.html

このような人物が指揮を執っているベネズエラ工作にあまり正統性は感じられない。むしろ、いかがわしさの方が感じられる。

以前から指摘してきたが、覇権国家を降りる寸前の覇権国家の振る舞いは、非常に危険である。ベネズエラに対する米国の振る舞いは、その事を証明している。そして、その事は日本も例外ではない。

これも以前から指摘してきたことだが、アメリカには二つの権力がある。トランプ大統領に忠誠を尽くす軍とCIA派と反トランプ派の軍とCIA派の二つの権力が死闘を重ねている。

北朝鮮外交の物別れに象徴的に示されていたが、ポンペオとボルトンが参加した会議で会談が決裂した。北朝鮮側がこの二人が失敗の原因だと名指しで批判しているのを見れば、トランプ大統領のお目付け役としてこの二人が参加していたことは明白だろう。

ベネズエラ工作の中心は、ペンス副大統領やボルトンなどのネオコン派と石油業界などの産業界だろう。トランプは、この工作に乗ったのか、乗ったふりをしているのか、良く分からないが、このベネズエラ工作の裏があまり明らかになると失敗する可能性が高い。

地球の裏側で展開されている話なので日本ではあまり話題にならないが、アメリカと言う国の正体が一番よく認識できる話なので、注視したほうが良い。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
流水
コメント (1)

ピエール瀧の薬物(コカイン)犯罪報道の異常

2019-03-16 21:18:00 | マスコミ報道
ピエール瀧さんがコカイン吸引で逮捕された事件の報道は、結論を先に言うと、過度なバッシングとしか思えない。

確かに国法(刑法)に違反するれっきとした犯罪である。しかし、薬物犯罪(麻薬の犯罪)は被害者は直接には存在しない。刑法では国家とか社会が「被害」にあったとするだけである。

これまでも芸能人の薬物犯罪は無数にあったし、その都度マスコミはここぞとばかりに紙面を埋めて読者に情報を流す。いつも似たり寄ったりの表現で。「以前からおかしかった」「最近ちょっとおかしい」という友人などの取材を必ず流して「犯罪者」だったことを確認するのである。

薬物(麻薬)の犯罪は、実は近代後半(近代前期は貿易の商品だった)に先進国などで制定されるようになったが、それまではイギリスは麻薬を中国に強制的に買わせていたのである。

まるで、トランプが高額な武器を安倍に買わせているのと同じようなものだ。憲法9条がある限り、この「戦闘用」の武器の売買は違法な取引である。

脱線したのでピエールさんの話に戻る。

被害者もいない犯罪に手をそめたからと言って、彼の出演した番組の放送を各社一斉に取り下げるのはリンチ(私刑)にも近い。このような犯罪は「治療」によって治す。犯罪者と烙印を押された人にも社会復帰の権利はある。

生存権は残っている。それを侵害するような報道は間違っている。安倍首相の犯罪(森友・加計事件)の方がよほど重要なマスコミネタである。

一介の芸能人ばかり攻撃して、「最高責任者」を名乗り「森羅万象」に通じていると臆面もなく宣言している政治家の犯罪を不問に付す報道姿勢の方が異常なのである。

「護憲+BBS」「マスコミ報道を批評する」より
名無しの探偵
コメント (5)

ベネズエラで進行している米国によるあからさまな政府転覆計画

2019-03-15 16:00:58 | 安全・外交
(1) 序

現在進行している米国によるベネズエラ政府転覆計画ほど、あからさまで露骨なものはない。米国はここまで露骨に他国を侵略する帝国主義的国家意思を明らかにするほど落ちぶれたのか、と唖然とする。

わたしのトランプ政権評価の一つに、米国流世界支配の手口をきわめて分かりやすく下品で露骨な方法で世界に見せてくれる点がある。米国の狙いはこれだな、とすぐ理解できる。見事な反面教師役である。

過去の米国政権は、それなりに知性があり、上品で、米国流【自由】の理念にもそれなりの説得力があった。東西冷戦時代は、資本主義国家の旗手として、多くの国々を束ね、説得しなければならなかったので、それなりの自制心も働いていた。

しかし、冷戦終了後の米国は、米国一国覇権時代を迎え、「タイラント」としての本質を隠さなくなった。特にネオコンが政権中枢に入りこみ、以前にも紹介したが、ウォルフォウィッツが世界支配の野望を書いて以降とみに酷くなっている。

特に、ブッシュ・ジュニア政権時のアフガン戦争、イラク戦争は、誰がどう見ても、【侵略戦争】そのもの。米国の戦争目的それ自体が産軍複合体の利益確保のために、他国(それも反撃力のない国)の国土の破壊と国民の命を奪う理不尽なものだった。

武器と言うものは、消費してはじめて次の武器を作れる。使わない武器は、廃棄せざるを得ない。しかし、もったいないから、どうしても、廃棄するまでに時間がかかる。それでは軍需産業は儲からない。とにかく、盛大に武器を消費してもらえばもらうほど儲かる。それには戦争しかない。だから、アフガン、イラク戦争のような米国が負ける心配のない戦争(武器消費のためだけの戦争)が必要となる。

そうなると、どうしても戦争のための大義名分が怪しくなる。特にイラク戦争の戦争目的(大量破壊兵器の存在、テロリストとの関係)が全くのでっち上げだったことは、米国の世界的信用を失墜させるのに十分だった。もし、米国が覇権国家でなかったら、ブッシュ大統領やチェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官などは国際社会から「戦争責任」を追及されても致し方がなかった。

冷戦終了後、世界各地(特にアフリカや東欧諸国)で起きた【カラー革命】もその実態は、各国の民衆が選挙で選んだ政権を米国に支援された反体制勢力による打倒だった。後で触れるが、現在のベネズエラ危機の主役のグアイドという人物も、この【カラー革命】を指導した組織が育てた人物である。

米国が民主主義国家だ、などと言う事は幻想にすぎない。戦後、米国は何度、国民の選挙で選ばれた民主主義国家を打倒して、独裁国家を支援してきたことか。その典型的事例が、ベトナム戦争。米国と組んだ南ベトナムのゴ・ジンジェム政権の独裁的体質と腐敗体質は、本当に酷かった。民主主義を標榜する米国が、何故あのような政権と組むのか。世界中の人々には理解できなかった。

米国が高らかに語る「民主主義」と「自由の理念」と、彼らが支援する独裁的で強権的体質の政府との落差が、常に米国と言う国に対する疑問符として残らざるを得なかった。

(2)米国による中南米諸国に対する介入

中南米諸国は、アメリカの裏庭と呼ばれ、中南米諸国の歴史は、米国を抜きにしては語れない。スペイン・ポルトガルの侵略により、中南米各国に住んでいた先住民がほぼ壊滅状況にされたため、不足している労働者を補うため、アフリカから黒人たちが奴隷として運ばれてきた。その結果、米国やカリブ海の国々には多くの黒人たちが住み着いた。例えば、大坂なおみ選手の父親の母国ハイチなどもそうである。中南米諸国は、米国に対する労働力の供給国としての役割を担ってきたのである。

資本主義の盟主、新大陸の盟主としての米国は、中南米諸国に社会主義的政権や独立志向が強く自主的外交を行う政権ができる事は、目にゴミが入るようなもので、大変嫌った。

理由は明白。米国にとって中南米各国は、収奪の対象。その連中が独立したり、自主外交をしたり、ましてや社会主義国になることなどあってはならない。そんな政権は、どんな手段を講じても、叩き潰す。これが米国の中南米各国に対する明確なメッセージ。この方針に従って、米国の政策は立案されてきた。

★チリ 【アジエンデ政権の打倒】⇒新自由主義政策の実験場
※もう一つの 9・11と呼ばれる。

一番悲惨な例が、チリのアジェンデ政権の場合である。世界最初の選挙で選ばれた社会主義政権と呼ばれた人民連合のアジェンデ政権は、チリの主要産業である【銅鉱業】(生産量世界一)をはじめ、主要産業を国有化する方針を打ち出した。当然なことだが、これらの主要産業を支配していたのは、米国資本。

権益の喪失を恐れた米国は、CIAを送り込み、チリの軍隊を教育。1973年9月11日にピノチェト将軍にクーデターを起こさせ、アジェンデ首相を殺害。政権を掌握。同時に数万人に及ぶ市民を拘束。市内のサッカー場で数千人を殺害した。その中に、フォークロア歌手として活躍したビクトル・ハラもいた。

※ビクトル・ハラ 
命尽きるまで歌とギターで戦い抜いた男
【 あの人の人生を知ろう~ビクトル・ハラ 】
 http://kajipon.sakura.ne.jp/kt/jara.html

血塗られたクーデターで政権掌握したピノチェト将軍は、経済立て直しのために、ミルトン・フリードマンなどのシカゴ学派の経済学者=(新自由主義経済論の旗手)を招き、経済運営にあたらせた。

このあたりが米国と言う国の凄さだが、1950年代より、中南米の若者たちを米国に留学させ、新自由主義的経済理論を教え込み、それぞれの国へ帰国させた。チリのように政権転覆させ、新たな経済運営を行う時のために、理論も人材もそろうように周到な準備を行っていたのである。

(実は日本でも同様な事が行われている。戦後、日本のエリートたちの多くが米国で学んだ。小泉政権が新自由主義的経済運営にシフトした時、その理論的支柱になった竹中平蔵も同様。彼は、ゴリゴリの新自由主義者で、米国多国籍企業の代理人とでも言うべき人材)

そこで行われたのが、典型的な【新自由主義的経済政策】である。
①銀行など500の国営企業の民営化
②外国からの輸入自由化
③医療・教育などの公共支出の削減;公立学校⇒バウチャー・スクール チャーター・スクールになる。医療費は利用のつどの現金払い。幼稚園も墓地も民営化 学校での牛乳の配給停止(チリも貧しかったので、給食で栄養を取る子が多かった。その牛乳停止政策で、学校に来なくなった子供が増加した)
④パンなどの生活必需品の価格統制

よく見てほしい。現在、安倍政権下で進められている政策とあまり違わない。新自由主義的経済政策は、時代や国を選ばない。「民営化」という手法一点張りだと言う事。

当然、このような経済政策の帰結は、酷いものになる。
10年後のチリ経済
①累積債務⇒140億ドルまで拡大
②超インフレが襲う 失業率はアジェンデ政権下の10倍⇒30%・・⇒チリ経済破綻
③1988年⇒45%の国民は貧困ライン以下の生活 上位10%の富裕層⇒収入は83%増大

こんな状況に陥っても、フリードマンの評価は高くノーベル経済学賞受賞。ノーベル経済学賞とノーベル平和賞の政治力学が取りざたされるのも無理はない。

このチリの悲劇は、多くの証言や映像によって記録されている。

http://www.webdice.jp/dice/detail/4908/ 
(アメリカが仕組んだもうひとつの9.11―世界初の選挙による社会主義政権とクーデター
民族問題研究家・太田昌国さんによる『光のノスタルジア』『真珠のボタン』トーク・レポート

チリの軍事クーデターから45年、政治の力学、海外派兵、政治家の資質
http://www.kokusyo.jp/america/13269/

著名人も殺害…アメリカが主導した『もうひとつの9.11』
https://matome.naver.jp/odai/2141026974625216601

世界初の選挙で選ばれたアジェンデ政権の崩壊までを描いたパトリシア・グスマン監督の映画『チリの戦い』は、必見である。
https://www.huffingtonpost.jp/hotaka-sugimoto/chile-coup-history_b_12204650.html

チリの場合は、あまりに多くの国民が殺され、ピノチェト将軍の残忍さが際立った事例だが、これが典型的な米国の侵略のやり口である。

●チリの軍事政権支援と同様な手口が、70年代の南米で行われた。アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジルなども新自由主義経済の実験場になった。
・ストライキの禁止・雇用主が労働者を自由に解雇する権利・外資の出資制限の緩和⇒国営企業の売却・・・・・⇒これまた現在日本で行われている政策。いかに日本が周回遅れの新自由主義イデオロギーの洗礼を受けているかが分かる。

南米の軍事政権の共通の手口
●反体制派の活動家を拉致して【行方不明】にする方法⇒背後にCIAが暗躍
アルゼンチンの場合⇒行方不明者 約3万人 (8割以上が16~18の若者)

この軍政下、多国籍企業が莫大な利益を上げる⇒GM、フォード、クライスラー、メルセデス・ベンツなど。

チリもそうだったが、これらの国々の経済政策も破綻する。

80年代、ラテンアメリカ各国で累積債務危機が発生。⇒75年の685億ドル→82年には3,184億ドル 約5倍近く膨れ上がった。

IMF(国際通貨基金)や世界銀行の方針(徹底的な新自由主義的政策の押し付け)

構造調整計画

債務返済を最優先⇒国内産業保護や外資の規制や社会福祉政策を撤廃させる⇒規制緩和、自由化、民営化を強制

公務員の削減、社会保障支出の削減、増税、公共料金引き上げ

公共企業の民営化・外資への売却・貿易の自由化

★結果
ほとんどの国で経済成長マイナス。
一人当たり所得⇒15%低下
失業者の総数⇒全労働者の44%
IMFや世界銀行の政策は、大失敗。

80年から89年の間に、この地域の一人当たりの所得は15%低下し、都市部での最低賃金はペルーで74%、メキシコで50%低下した。失業者の総数は全労働者の約44%に達した。90年代に入り、米ソの二極対立から、米国一強時代が到来する。米国は、中南米諸国への新自由主義政策をさらに強化した。90年、パパ・ブッシュ時代、米州イニシアチブ構想を打ち出し、94年に米州自由貿易構想を発表。

中南米諸国は、厳しい緊縮財政と民営化によって失業者は増大の一途。対外債務は増加の一途。中南米諸国全体で、7000億ドルを超えた。

99年、中南米の貧困人口は43・8%。一部の富裕層のみ肥え太る新自由主義政策の結末が明確に表れ始めた。

(3)ベネズエラの場合

90年初頭 ペレス政権 ⇒累積債務問題解決のためIMFと合意書
                    ↓
                 緊縮財政政策実行
                    ↓
公共料金の大幅引き上げ、各種補助金の縮小、廃止。基礎生活物資(コメ、小麦粉、粉ミルク、医薬品など)の価格統制廃止・自由化、付加価値税(消費税)導入
                     ↓
                 国民生活大打撃
1990年⇒政府管理課の三銀行売却 
1991年⇒VIASA航空 国営電気通信会社CANTV 民営化⇒米電機メーカーGTEと電話会社AT&Tなどが経営権獲得、所得税の最高税率引き下げ、輸入自動車の関税引き下げ
    ↓
(結果)
物価2~3倍に高騰(価格自由化)
インフレ率(89~98) 年平均53%
貧困層 82年=33・5%  96年=67・3%(半数以上が極貧層) へと上昇
        ↓
1989年 カラカソ大暴動
(原因)バス料金の値上げ 
(結果)1000人以上の犠牲者を出す

※ベネズエラの歴史 https://ja.wikipedia.org/wiki/ベネズエラの歴史
 (ウィキペディア)

◎新自由主義に対する戦い
1999年2月 ベネズエラ チャベス政権
2003年   ブラジル、エクアドル、アルゼンチン、パラグアイ、ボリビア
2004年   ウルグアイ
反米左翼政権誕生

この中でシンボル的存在が、ベネズエラのチャベス政権。チャベス政権は、「ボリバル革命」を唱えて政権を奪取。
(具体的内容)
●大衆の政治参加 ● 米国支配からの独立 ●新自由主義反対 ●富の平等な分配 ●貧困の撲滅
※ボリバル革命⇒スペインからの中南米諸国の独立を主張したシモン・ボリバルの主張になぞらえた。

※シモン・ボリバル(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/シモン・ボリバル

政権掌握後のチャベスが実行した政策
①憲法制定議会設立⇔国民投票 ⇒新憲法制定
②憲法制定⇒国民が政策決定過程に参加できる。議員のリコール制導入。農地改革(大企業や大地主の農地を農民に分配)
③食料、教育、医療、職業を保証
④石油資源は国家管理下に置かれる  ベネズエラの主要産業 輸出総額の約80%、国庫収入の50%、国内総生産の25%を占めている。
⑤領土内への外国軍隊が入る事を禁止
⑥共同評議会・・200~400世帯を単位として、全国に設けた。共同評議会は予算を持ち、条例も作る事ができた。⇒地元の問題について決定できる権限を保有
⑦住民参加を拡大⇒教育、医療、食料助成、社会サービス、土地改革、環境保護などの社会開発計画への住民参加を制度化した。
⑧低所得者対策の充実⇒住宅建設や医師の派遣、安価な基礎食料品の供給、低所得者向けの無料の食堂の運営、識字教育、失業者の職業訓練など。

【結果】
 GDP 2002年 920億ドル ⇒ 2006年 1700億ドル
 失業率 1999年 16% ⇒ 2006年 9・6%

チャベスの改革は、米国の中南米支配との戦いだった。米国のNAFTA(北米自由貿易協定)を南米に拡大しようとした試み(米州貿易圏構想)に反対、挫折させる。中南米諸国の自立に向けた戦いを繰り広げた。

チャベス(ベネズエラ)は、石油資金を外交の武器に使い、キューバとの関係を構築。石油をキューバに提供する代わりに、医療などの人材をキューバから受け入れた。

●石油メジャー支配に抵抗。
2006年にはブラジル、アルゼンチン、ボリビアとともに、ベネズエラの石油と、同国およびボリビアの天然ガスを南米南部まで送るパイプライン網建設計画。
●南米開発銀行を創設する構想。
●キューバ、アルゼンチン、ウルグアイなどに働きかけて、2005年7月に国際テレビ放送網「テレ・スル」を発足させた。

チャベス大統領率いるベネズエラは、米国の南北アメリカ支配計画に大打撃を与えた。このため、2002年4月11日に、CIAの支援を受けて軍部によるクーデターが発生した。チャベスは軍に監禁され、代わりに元ベネズエラ商工会議所連合会 (Fedecámaras) 議長のペドロ・カルモナが暫定大統領に就任するという事件が、既に起きていた。

一瞬成功したかに見えたクーデターは、民衆による巨大な抗議運動がおこり、チャベスを支持する軍の一部と国家警備隊がチャベスを奪還。クーデターはわずか2日間で失敗に終わった。

この事件の詳細は、偶然そのときにベネズエラを訪れていたカメラマンによって記録されていた。NHKのBSプライムタイム「チャベス政権 クーデターの裏側」 でも紹介された。わたしも、この掲示板に投稿した記憶がある。
https://www.youtube.com/watch?v=aZXAzhm2zJ8

上記に書いたチャベス政権の政策は、きわめて反米色が強く、中南米諸国を完全に支配下に置きたい米国支配層にとって、目の上のたんこぶとでも言うべき存在だった。

その後もチャベス暗殺計画があったのだろうか、チャベス大統領自身がCIAの暗殺計画を告発している。
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=146580


チャベス大統領の死についても、CIAの関与を疑うものは絶えなかった。それだけ、中南米諸国に対する米支配は強烈で、それに抗うものは、常に命の危険を覚悟しなければならなかった。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
流水
コメント (2)