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老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

アメリカとどうつきあうかーその2

2025-03-26 14:28:03 | アメリカ
ドナルド・トランプ氏が大統領に就任して2ヵ月がたった。

就任時に危惧したとおり、トランプ氏は次々に大統領令に署名して、これまでまがりなりにも西側諸国間で合意されていた「自由と民主主義のリーダー」の役割を見事なまでに投げ捨て、今やアメリカは、金と力で他者を屈服・服従させる、独善的、攻撃的な国家に変貌した。

トランプ氏個人の(悪い意味で)際立った個性のなせる業かと思いきや、「政府効率化省(DOGE)」を通して人員削減(RIF)を迫るイーロン・マスク氏、ゼレンスキー・ウクライナ大統領に「感謝がない」と非難するバンス副大統領、「日本はコメに700%の関税を課している」「アメリカからガザ地区にコンドーム購入のため5000万ドルの税金が使われる予定だった・・・」等々、トンデモ発言を平然と発し、それを糺す記者に「侮辱的だ」と切れてみせるレビット報道官等々、“トランプの衣を借る”政府要人たちが一丸となって、国内的には人権や自由、多様性を、対外的には国家主権の原則を、平然と毀損し続けている。

これに対し、アメリカ国民の間から、多少の抗議の声は聞こえてくるものの、トランプ大統領が方針を見直さざるを得ないほどの有効な「NO!」の声が生まれてこないのは、権力による抑圧がよほど厳しいのかもしれないが、少々意外ではある。

一方、けんかを売られた形のカナダやEU諸国からは、スーパーマーケット上げてのアメリカ製品のボイコットや、「自由の女神」返還要求など、力に拠らずにアメリカにダメージを与える、ウィットに富んだ抗議の意思表示が聞こえてくる。

さて、日本だが、関税の問題は一旦おいておくとして、トランプ氏はかねてから日米同盟について「アメリカは日本を守るが、日本はアメリカを守る必要がない」と不満を表明してきた。

元々、「憲法9条」を持つ日本はアメリカのために軍事力を行使することは国是としてできない代わりに、米軍基地を提供し、「おもいやり予算」や「不要な武器購入」を強いられてきた。

そんな環境下でも、日米軍事一体化策の検討は進められ、その一環として、3月24日に、日本は陸海空の3自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」の発足を発表。今後米軍との調整をより緊密に行い、敵基地攻撃能力を持つ長距離ミサイルの運用、弾道ミサイル対処や大規模災害などが同時多発的に起こる「複合自体」への対応も受け持つという。

一方、現在トランプ大統領は、「世界の警察官」であることへの関心を失った米国民の民意を反映し、経費節減のため、在日米軍の強化計画の中止を検討している、とも報じられている。

アメリカが在日米軍の縮小を検討しているのなら、沖縄を始め全国各地で、散々迷惑を被ってきた私たちにとっては、むしろ朗報といえるのではないだろうか。

緊急事態に柔軟、迅速に対応する自衛力が整うことは、独立国家として、決して悪いことではない。日本政府には、これを契機に、他国を攻撃、侵略しない「憲法」を持つ国家として、アメリカべったりから脱却し、戦争回避の道を自律的に選択する、真の平和国家としての政治を推進してもらいたい。

「護憲+コラム」より
笹井明子

商売人に政治を任せて、大丈夫なのか?

2025-03-03 09:47:01 | アメリカ
米国は良くも悪しくも、ダイナミックな政治を見せてくれる。大統領に返り咲いたドナルド・トランプ氏はある意味公約通り、思いっきり、好き勝手にアメリカ合衆国の舵きりを始めた。しかも、太いスポンサー(資金源)で決断力の速い、イーロン・マスク氏を取り込んで。この二人に共通しているのは、アメリカ第一主義に名を借りた“自分第一主義”という部分だ。

民意を反映しているか否かは別にして、トランプ氏の政策や方針は単純明快である。自分に反対し、批判する者は“You are fired!(おまえはクビだ!)”と切り捨て、大統領権限下の政府組織にもそれを駆使する。歴代大統領や前政権が築いてきた価値観や法的整合性(それが違法か否か)など検討もせず、大統領令を優先させる。まるで、アメックスの決済無制限プラチナカードを与えられたワンマン経営者が「オレって最強じゃん!」とクレジットカードを使いまくっているように見える。その支払い(ツケ)はアメリカ国民だというのに・・・それでも、彼は言うだろう。「その国民がオレを選んだのだから、ナニが悪いんだ?」と。

そして遂に、彼は世界中の金持ちに対して500万ドル(約7億5千万円)でグリーンカード(米国永住権)を販売すると言い出した。その名も「トランプ・ゴールドカード」!私の友人はグリーンカードを取得するために米国へ渡り、ネイティヴな英語をマスターし、弁護士を伴う手続きに多額の費用を払い、3年以上の歳月をかけて取得したという。9.11同時多発テロ以降、外国人には厳格な審査を伴う“狭き門”だったというのに。つまり「アメリカに大金が転がり込む」という大胆かつ単純な発想である。その効果は「歳入の増加と雇用の創出」というが、これはアメリカをカネで売るようなものではないか。悪いジョークにもほどが・・・いや、彼は本気である。トランプ氏はアメリカの大統領ではなく、株式会社アメリカの経営者に見える。

そう、彼はビジネスマンなのだ。もちろん、マスク氏も。おそらく、彼らは善悪ではなく「損得」「カネ」で国際政治を「経営」しようとしている。そう考えると、二人の言動は理解しやすい。ネット記事を参照して、その具体的なテクニックを例示する。

① 大きな商取引・契約(ディール)においては、初めに突拍子もない無理難解な交渉条件を吹っかける。それで怯んだ相手に、少しだけ譲歩した現実的な交渉条件を提示して呑ませる。
② 自分がディールしたい本命をB案として、交渉相手にA~Cの3案を提示する。A案は大変魅力的だが高価なもの、C案は安価だが魅力に乏しいもの、B案はA案を少しだけ安くしたもの。すると多くの場合、交渉相手はB案を選ぶ。
③ ディールの当初は自分から友好的かつ温厚に話を進める。話が具体的になり熱気を帯びてきたところで突然、何の脈絡もなく怒り出し、難癖をつけ始める。交渉相手は面食らい、慌てて自分に非があったのではないかと疑心暗鬼に陥り、思考が混乱する。そこで交渉のペースを自分に引き寄せ、話を有利に進める。これはヤクザやそのフロント企業がよく使う手法である。

トランプ氏は不動産業界において強引で巧みな交渉術と合法的な脅し(?)を駆使し、大金持ちになったと言われている。彼はそのスタイルを米国内と国際政治に持ち込み、善悪・礼儀・協調・弱者への思いやりなどは置き去りにしているのだろう。

国際政治学者や評論家の中には「ウクライナ紛争を含め、停滞した状況ではトランプ氏のようにダイナミックかつ迅速に言動する人が必要」「彼は強欲で単純な人間ではない。したたかに計算して“演出”しているのだ」という人もいる。今回、ゼレンスキー大統領との会談でも前述したビジネス・テクニックを使ってウクライナを懐柔し、ロシア寄りのメッセージを発信したように思える。それを「ロシアと友好関係を築き、中国を分断させるトランプ流の交渉術」だと大局的な見方と捉える識者もいた。世界は米国vsロシアからvs中国にシフトする、と。

しかし、理不尽にウクライナを侵略するロシアを棚上げし、NATOとロシア共栄圏との緊張・均衡状態を無視し、EUとの協調関係を壊すことはどうなのか。全て更地にして、スクラップ&ビルド・・・国際政治は不動産業のような一方的で強引な進め方は通用しない。ゼレンスキー大統領が冷静に対処して折れないので、トランプ氏は立腹して会談を打ち切ったように見える。

共和党と民主党の皆さん、ビジネスマン大統領&「トラの威を借る」副大統領に米国を、国際政治を任せていいのか?とうに過ぎた話だが、「ノストラダムスの大予言」にある“恐怖の大魔王”、実はドナルド・トランプ・・・と妙なこじつけを考えてしまった。

「護憲+コラム」より
猫家五六助

トランプ米大統領とどうつきあうか

2025-02-10 22:39:59 | アメリカ
2月7日にアメリカ・ワシントンで行われた石破首相とトランプ大統領による日米首脳会談は、多くの日本国民が抱いていた不安・懸念の割には平穏に終わり、上々の出来というのが大方の評価となった。

私自身も、トランプ大統領が大統領就任以来矢継ぎ早に大統領令に署名し、荒っぽく独善的な政策を繰り広げようとするのを見ていただけに、会談が終始和やかな雰囲気で行われ、石破首相とトランプ大統領の間に一定の信頼関係が成立したことに驚くと共に、具体的な無理難題をとりあえず押し付けられなかったことに安ど感を覚えた。まずは石破首相の日本の政治家トップとしての見識と、外務省職員らの事前準備の周到さを率直に評価したいと思う。

今回の会談についてマスコミが好意的に伝えたいくつかのエピソード、例えば、共同記者会見で石破首相が「恐ろしい方との印象がなかったわけではないが、誠実で強い意志を持ち、世界に対する強い使命感を持っている方」と言ったトランプ評や、「高額関税があれば報復措置をとるか」という記者の質問に「仮定の質問には答えられない、それが日本の国会答弁です」とアメリカ人が好むユーモアに包んだ回答には、石破首相の考える「あるべきリーダー像」や、「性急に言質を取らせない」意思が見られて、石破首相の知性が感じられた。

ついでに言えば、お土産の「金のかぶと」も、トランプ氏の「金色好き」への忖度はともかく、日本の歴史文化の紹介や石破氏の郷土愛と共に、ドラマ「SHOGUN将軍」のヒットや大谷翔平ブームという今の日本の明るい側面をも示す、優れた選択だったと思う。

こうして、日本への悪影響はひとまず回避し、とりあえずほっとした私たちだが、トランプ大統領の「MAGA―アメリカ第一主義」の暴走が治まったわけではない。

対外的には、不法移民や薬物のアメリカ流入を防ぐためと称するカナダやメキシコへの高額関税の表明、グリーンランドをアメリカが所有すべきとの言及、パリ協定からの離脱表明、WHOの脱退表明、果ては、パレスチナ・ガザ地区を「引き取り」、「所有」し、その過程で住民を移住させるという妄言。

国内的には、イーロン・マスク氏や元FOXニュース司会者ピート・ヘグセス氏らの政府要人への起用、自身の味方に対する恩赦の乱用、USAID=アメリカ国際開発庁の閉鎖、米国籍の「出生地主義」大幅制限、等々、「法の支配」「多様性」「人権」等、民主主義の根幹となる価値感を、これ見よがしに否定し続けている。

今回の首脳会談の結果にひとまずホッとしたとはいえ、軍事力と経済力とポピュリズムを武器に、「MAGA」を掲げて暴走を続けるトランプ大統領に、日本は、そして日本国民はこの先どう付き合っていけば良いのか。

日本政府には、首脳会談では触れられなかった高額関税や防衛費増額、安全保障体制などの具体的な課題について、今後アメリカの脅しに屈し安易に妥協することのないよう、「誠実で強い意志を持ち、<日本と>世界に対する強い使命感を持って」判断、対応することを期待しつつ、政府の動きを監視・注文し続けたいと思う。

それと同時に、私たち自身が、自由で平和な世界を求めて今を生きる世界の人々と共に、世界を混乱に陥れるトランプ大統領の危険な言動に、明確な「NO」を示し続けることが、今は何より重要なのではないだろうか。

「護憲+コラム」より
笹井明子

米国外交の光と影

2022-10-24 10:32:40 | アメリカ

◆ウクライナ戦争の分かりにくさ
ウクライナ戦争の帰趨が分かりにくい。日本のニュースでは、もうすぐロシアが敗北し、プーチンが失脚するようだ。TVに出ているコメンテーターでこの見方に反対を唱える人間はいない。

本当にそうなのか。私には、戦前の日本軍の大本営発表に見えて仕方がない。

今年の2月から始まったウクライナ戦争は、本当に戦争と呼ばれるようなものだったのか。

① 本当の戦争ならば、ウクライナのインフラを全部破壊し、ウクライナ民衆が生活できないように攻撃するのが戦いの常道。⇒太平洋戦争時の東京空襲をはじめとする日本国内への無差別爆撃。広島・長崎への原爆などを見ればよく理解できる。米国の戦い方はほとんどこの方法。(ベトナム・イラク・アフガン戦争など)⇒その米国がロシアの非人道的戦争を批判するなど理解できない。
⇒ロシアはこの半年このような無差別攻撃をしてこなかった。⇒その理由は、プーチンの言う【特別軍事作戦】は【戦争】ではない。だから通常の戦争のような破壊や殺戮はしない。他の一つは、ウクライナのインフラを破壊したら、その再建に天文学的費用がかかる。それも避ける。

② ウクライナに戦争継続の力があるのか。
⇒戦争継続には、財政的根拠、生産的根拠、武器弾薬、兵士など様々な難題を克服しなければならない。
⇒現在のウクライナにはその大半が欠落している。経済的にも破綻国家に近い。武器生産などできない。
⇒つまり、ウクライナは単独で戦争継続など全くできない国家だと考えるのが至当。 

では、何故戦争継続できているのか。
⇒米国およびNATO諸国の援助があるから。というより、現実的には、現在の戦争は、ロシア vs. NATOの戦いになっていると見なければならない。

③ 以前の投稿で、米国のウクライナ援助額が、日本の軍事費総額を上回る額だと書いたが、米国はさらに5兆円近い援助を決めている。少し考えたらすぐ分かるが、どの国家が、日本の防衛費をはるかに上回る援助をするのだろうか。

理由はただ一つ。その戦争が自国の戦争だから。
⇒つまり、ウクライナの戦争継続は、米国とNATOの援助におんぶにだっこ状態。ゼレンスキー大統領の発言は、大半が米国やNATOの意向だと読まなければならない。

【結論】
※現在のウクライナ戦争は、ロシア対米国・NATOの、ウクライナに場所を借りた「代理戦争」であり、その勝敗は今後の世界の帰趨を決定する。

わたしは、トランプとバイデンの大統領選前から、もしバイデンが大統領になったら、第三次世界大戦の危険性が高まると書いた。その理由は、わたしには、バイデン大統領および民主党の主導する【理念外交】の危うさがどうにも危険に見えたからである。

◆米外交の二つの方向性
米国は本質的に理念国家である。これは、米国の歴史に起因する。英国植民地支配に対する独立戦争を戦った歴史が米国と言う国家や国民の思考の骨格を形成している。これが米外交に色濃く反映している。

▼リベラリズム外交
それが、米外交の一つの柱である【理想主義】である。具体的に言えば、米国指導者の口癖である【自由】と【民主主義】を指す。これらを総称して言う【リベラリズム】が米国外交の一つの柱。

学問的に言えば、「民主主義や貿易の自由などの普遍的な価値観を広め、国際的なルールや国際機関を通じた国際協調を推し進めれば、平和で安定した国際秩序が実現するという理論」(中野剛志・奇跡の社会学)
(例)イラク戦争など。(人権、自由と民主主義)

▼リアリズム外交
他の一つは、外交を具体的に進めていく際に必要な現実主義的思考を指す【リアリズム】。

【リアリズム】的政治手法は、国益に合致するなら、多少理想に反していても目をつぶって最も国益に合致する手段を選択する。例えば、ベトナム戦争前、南ベトナムに対するベトコンの浸食に対抗するため、暴力的で腐敗していて、独裁的でどう見ても反民主主義的なゴジンジエム政権を支持したような政治手法を指す。
(例)湾岸戦争

学問的に言うならば、「国際秩序を成り立たせているのは、民主主義や貿易の自由といったリベラルな制度や価値観ではなく、軍事力や経済力といったパワーのバランスであるとする理論」(中野剛志・奇跡の社会学)

◆パット・ブキャナンの論説
パット・ブキャナンは、ニクソン・レーガン大統領補佐官を務めた人物で共和党系の思想の持主。彼の米国政治の論評は、きわめて本質的で傾聴に値する。

そのブキャナンが「米国は何故冷戦勝利の果実を失ったのか」という視点で以下のように論じている。

★1991~1992 (パパブッシュ政権時代)
米国の国力・名声が頂点に達した。
ブッシュ大統領は、新世界秩序(New World Order)を提案し、一極集中(米国中心)を主張。
★1997年 冷戦終結
★ブキャナンの主張する冷戦終結後の米国の三つの失敗
(1)ロシア政策の失敗⇒同盟国にロシアは永久の敵と指摘し、ロシアの孤立化を図った。
(2)中国政策の失敗⇒中国をグローバル経済に引き込み、中国繁栄に手を貸し、貿易・経済・軍事などあらゆる部門で米国を凌駕するような国に育てた。
(3)中東政策の失敗⇒強引に中東に進出、アフガニスタンやイラク、シリアなど、しなくてもよい無駄な戦争をしかけ、米国に対する信頼を失った。これらの戦争は何の役にも立たず、死と破壊をもたらしただけである。

ブキャナンの主張では、1997年ソ連邦崩壊・冷戦終了後、ロシアに対する包囲網は必要ではなかった。そうではなくて、中国に対する包囲網を形成すべきだった。中国こそ、米国の最大のライバルになる可能性があり、グローバリストが中国の繁栄に手を貸したのは間違いだった。

結果、中国とロシアは接近し、冷戦終了後30年、米国は中国とロシアの二正面作戦を戦わざるを得なくなった。

同様の主張をジョージ・ケナン(ソ連封じ込め政策の中心人物で冷戦終了の立役者)もしている。

彼は、ソ連崩壊後、NATOは決して東方進出をしてはならないと主張した。彼は、冷戦終了後のNATOの東方拡大は致命的な誤りだと厳しく批判している。

理由は明白で、ロシアは民族主義的・反欧米的・軍国主義的傾向があり、NATO東方拡大はそれを刺激する。NATOの東方拡大は、ロシアを中国に近づけ、再び【東西冷戦】を進展させた。

現在のウクライナ戦争は、ブキャナンやケナンから言わせれば、冷戦終了後の米国外交の致命的な間違いで、NATO東方拡大の結果だと言う事になる。

わたしから言わせれば、この致命的間違いの上に、さらに米国の【リベラリズム的戦争論】が加わり、米国の二枚舌外交に世界の大半が嫌気を差しつつある。

ウクライナ戦争の帰趨ははっきりしないが、おそらくこの戦争は長引く。理由は、プーチン大統領が現在の世界秩序を根底から変えようと考えている。そのためには安易な妥協は禁物だと腹を据えている。

もう一つは、米国の中間選挙の帰趨を見極めているはず。バイデンの民主党が敗北すれば、停戦論議もしやすいと考えている。

もはや欧州の政治情勢は、プーチン有利に動いている。もう少しの辛抱だと考えているはずである。さて、どうなるものか。

「護憲+コラム」より
流水


岸信介とアメリカ政府との「密約」とは何だったのか

2021-11-04 20:59:29 | アメリカ
前回の投稿に引き続き、岸信介という60年代の元首相の存在が、現在の自民党政権の長期の政権運営上で、極めて重要だと思われるので、矢部宏治氏の「知っては行けない」パート2を参考に以下、記述します。

矢部氏によれば、「日本の戦後史を振り返ると、アメリカとの間で、国家の根幹に触れる外交交渉を行ったのは、以下の3人の首相たちだけだった」という。
首相    成果     密約
ーーー   ーーー    ーーー   
吉田茂  占領の終結   指揮権密約
岸信介  親米体制の確立 事前協議密約等
佐藤栄作 沖縄返還    沖縄核密約等

本稿では、岸信介が、アメリカ政府(当時)にとって最も重要な政府要人だったので、岸に焦点を当てて記述する。

アメリカのジャーナリスト、ティム・ワイリー氏は、次のように述べている。
『CIAは、1948年以降、外国の政治家を金で買収続けていた。しかし、世界の有力国で、将来の指導者「岸信介」をCIAが選んだ最初の国は日本だった。』

矢部氏は「岸がアメリカから評価された理由」という見出しで、次のように述べる。
『もっとも大きな理由は、当時アイゼンハワー大統領が進めていた、核兵器を中心とする世界規模での安全保障政策「ニュールック戦略」にありました。その戦略のなかでもっとも重視されていたのが、同盟国から提供される海外基地のネットワークと、そこでの核兵器の使用許可だったのです。』

この時に、岸はマッカーサー大使(元帥の甥)に絶大な評価を受けている。大使は「報告書」の中で、岸に関して、「私たちは、ついに日本において、岸という有能な指導者を手にしました」という。

矢部氏によれば、『これは、実に面白い報告書です。なぜなら、ここで、岸と大使が共有している世界観こそが、その後安保改定における両国の合意事項となり、それから60年経った現在に至るまで、いわゆる「日米安保体制(日米同盟)」の基本的なコンセプトとなっているからです。』

「共産主義勢力が現在、東アジアに軍事的脅威をあたえており、日本はその最大の標的になっている。」(マッカーサー報告書)

矢部氏はここで、著書のはしがきで述べた、岸の孫である、安倍晋三の不可解な行動を引き合いに出して、次のように述べている。

『ですから、そうした「日米安保体制」のコンセプトをアメリカ政府と共有することで権力の座についた自民党政権にとって、「東アジアにおける共産主義勢力の脅威」は、永遠に存在し続けなければならないものなのです。

「はじめに」で書いたように、今年(2018年)の3月6日に突如として始まった米朝間の関係改善が、6月12日の歴史的な米朝会談に向かう過程で、日本の安倍首相が世界の首脳の中でただ一人だけ、なんとかそのブレーキをかけようとしていたことも、そう考えれば理由が分かります。彼は祖父の岸首相のつくった「日米同盟」という世界観を、21世紀においてもっとも純粋に受け継ぐ人物だからです。』

「護憲+コラム」より
名無しの探偵

アフガン戦争とその終焉: 世界史的転回点

2021-09-26 11:00:37 | アメリカ
🔶9・11の衝撃

アフガン戦争は、2001年9月11日、WTCビルに飛行機で突っ込んだテロ行為に対する報復として始まった。

わたしはその時の衝撃をよく覚えている。

ゆっくりと旋回してビルに突っ込む飛行機の映像は、現実のものとは思えなかった。ビルに突っ込んだ飛行機が、WTCビルに突っ込んだままの姿で残っている映像は、まるで、悪夢をみているようだった。そしてその後に起こったビルの崩落、砂埃、逃げ惑う人々の姿。現実にこういう事が起きるのだ、という衝撃以外なかった。

次に思ったのは、米国は怒り狂うだろうな、という予感だった。

米国は内戦(南北戦争)以外、米国本土が本当の意味で戦場になった事はない。第二次大戦後は世界の覇権国家として君臨し、米国本土を攻撃する国などあり得ない。もし、万が一そんな事をすれば、その後の報復が恐ろしい。それが世界の常識だった。

ところが、そのあり得ないはずの攻撃が現実に起きた。こんなテロ攻撃を受けたならば、米国は怒り狂い、徹底的な報復をするだろうな、というのが私の予想だった。

しかし、このような国際的大事件には必ず裏がある。特に、米国・ロシア・中国・英国・NATOなど大国が絡む大事件には、表面からみただけでは分からない裏がある。戦争というものは、正面での戦いと同時に裏での駆け引き(諜報)が入り混じっている。

一例を挙げれば、ベトナム戦争の契機になったトンキン湾事件。この事件をきっかけに米国はベトナム戦争にのめり込むのだが、これは米国の「自作自演」だった。
※トンキン湾事件 ウィキペディア 
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%B3%E6%B9%BE%E4%BA%8B%E4%BB%B6

わたしは、9・11テロ事件にも同様な匂いを感じた。
(1) 最初に“あれ?”と感じたのは、当時のチェイニー副大統領が身を隠していると報道された時だった。二波・三波のテロ攻撃を警戒して身をかわした、という説明がなされていたが、少し違和感があった。ブッシュ大統領が公の場で記者会見をしているのに、副大統領は身を隠し、潜伏している。それが大統領と副大統領の棲み分けだと言えばそうだろうが、どうにも釈然としなかった。

(2) もう一つの違和感は、ブッシュ大統領がテロ実行犯としてアルカイダとオサマ・ビンラディンを直ちに名指しした事である。通常、これだけのテロ行為なのだから、犯人グループやその名前の特定には、多少の時間がかかるはず。それを殆ど間を置かずに犯人グループや首謀者の名前を特定した。⇒と言う事は、米国の諜報機関や捜査機関は、彼らをテロ行為をする可能性の高い集団や個人としてマークしていた事になる。

(3) 9・11の犯行は、WTCビルだけではなく、国防総省など全部で3ケ所に対して行われた。これだけの犯行がどうしてできたのか。( 2)で書いたように、犯行直後から【アルカイダ】や【ビンラディン】だと言う事が分かるくらいなら、なぜテロ実行前に逮捕できなかったのか、という疑問が拭いきれない。
 たしかに、テロ実行犯は、サウジアラビア出身者が多い。単純にアルカイダと特定できないかもしれない。しかし、米国は、世界一の諜報機関CIAや捜査機関としてのFBIなど、世界最高の諜報組織を持っている。彼らにかかれば、他国の大統領の携帯の盗聴などお茶の子さいさい。世界の外交官の間では、大使館内部でも盗聴を警戒しなければならないのが常識。その彼らが、あれだけの大テロ事件をやすやすと成功させたのか。どう考えても納得できない。

(4) もう一つの違和感は、WTC(世界トレードセンター)のようなあれだけの巨大なビルディングが、飛行機が体当たりしたくらいで、ああも簡単に崩壊するものか。この疑問もどうしても消えない。WTCの地下で火薬が爆発していたなどという諸説が飛び交っている。⇒いわゆる陰謀説に近いが、9・11テロは、CIAなどの「自作自演」だったのではないか、という説が消えない。

🔶戦争のあり方の変容 【非対称型戦争=永遠に続く戦争】へ

その後の経緯を見れば分かるが、9・11を契機にして戦争のあり方が大きく変わった。
◎「対象型戦争」⇒「非対称型戦争」へと変化した。
「国家」VS「国家」の従来型戦争、いわゆる戦争の「対象」が明確な戦争から「テロリスト」VS「国家」という戦争の対象が不明確な戦争へと変化した。

アフガン戦争が典型だが、相手が「テロリスト」のため、宣戦布告がない。しかも、「テロリスト」は何にでもなる事ができる。毛沢東や北ベトナムの将軍ポー・グエンザップなどが得意とした「ゲリラ戦」の要諦は、【民衆の海に潜る】こと。ベトナム戦末期、米軍兵士が最も恐れたのは、どこにでもいる民衆が、突如テロリストに変身する事だった。例えば、街で靴磨きをしている少年(浮浪者)が突然爆弾を爆発させるように。

こういう目に見えない敵を相手に戦争を始めれば、それこそアフガンの民衆を皆殺しにでもしなければ勝利はない。理由は明白。誰が「テロリスト」か分からないから。敵が分からないから、誰もが敵に見える。だから、恐怖に駆られ普通の民衆を殺してしまうケースが多発する。こういう戦争を始めると、多数の民衆を殺戮せざるを得ない。そうなると、多くの民衆の怨嗟の的になる。

今回の撤退劇でも行われたが、こういう混乱のさなかにテロを行えば、混乱に拍車をかける事ができ、効果は倍増する。テロ攻撃の死者が百数十人と報道されていたが、この死者の大半は、パニツクに襲われた米軍兵士が銃を乱射したためだ。密閉した空間ならいざ知らず、外での爆弾テロであれだけの人間が死ぬはずがない。この手のニュースを読む場合、常に眉に唾をつけて聞く必要がある。

米国が始めたのはこういう戦争である。テロ撲滅を旗印に戦争を始め、テロ撲滅の名目で罪なき民衆を多数殺戮する。殺害された民衆の家族に米国に対する深い憎しみと恨みの感情を植え付ける。中には、報復のため米軍を標的にするテロリストになる人間も出る。これに対し米軍はさらなる報復をする。いわゆる【憎しみの連鎖】である。この「憎しみの連鎖」の蟻地獄にはまってしまうと果てしがない。

さらに問題なのは、この戦争が始まった時、ブッシュ大統領は【悪】に対する【正義の戦争】だと言いきっていた。そうなると、戦争の意味が、【宗教戦争】の色彩を帯びてくる。「悪」を殲滅する戦争=「正義の戦争」という理念で戦えば、「正義」を体現している国の軍隊=米軍の行為は全て免責される。

現にイラク戦争を始める時、ブッシュ大統領は、米軍を【十字軍】に例えた。イスラム教徒は全て敵なのか、という反発が起きた。事実、米国内ではイスラム教徒に対する警戒感や敵視や嫌がらせが頻発した。
(※日本人にも既視感がある。太平洋戦争中、米国に住む多くの日本人が収容されたのを忘れてはいけない)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E7%B3%BB%E4%BA%BA%E3%81%AE%E5%BC%B7%E5%88%B6%E5%8F%8E%E5%AE%B9

これは、中東諸国から見れば、我慢できない。中東諸国から見れば、「十字軍」は、イスラム教徒に対するキリスト教徒の侵略に他ならない。歴史的悪夢であり、看過できない屈辱でもある。米国はイスラム教徒全てを敵に回すのか、という議論が沸き起こった。もちろん、米政府は公式には否定したが、この疑いは世界中のイスラム教徒の心に滓のように残った。

🔶戦争のゲーム化(永遠の戦争を勝ち抜くための方策)

米国が始めた戦争を【永遠の戦争】と呼ぶのはこのためである。換言すると、「永遠の蟻地獄」戦争である。

そして、武器も劇的に変化した。ロボットを使い、【無人機=ドローン】を使ってターゲットを銃撃したり、爆破して殺戮。言い換えると、人殺しの「機械化・自動化」である。換言すると、「人殺しのゲーム化」である。

米国が戦争の「無人化・機械化・自動化」を進めるのには理由がある。現在、米国の兵士は、志願制を取っている。志願制の兵数には限りがある。そして、戦死者が増えれば増えるほど、志願者が少なくなる。米軍にとって、戦死者の増加は、軍隊への志願者の減少と同義語。だから、出来るだけ戦闘を機械で代用しよう、という発想が生まれる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%81%AE%E5%BE%B4%E5%85%B5%E5%88%B6%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2

もう一つ、米軍にとっての頭痛の種は、退役軍人のPTSD発症の多さがある。ベトナム戦争の地獄の戦いでPTSDを発症した兵士は数えきれない。その治療費も莫大である。

イラク戦争でのファルージャの戦いのような悲惨な戦場で戦った兵士たちの多くもPTSDを発症している。
※ファルージャの虐殺 https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/3555
※シリーズ米軍の危機:その2 イラク帰還兵を襲うPTSD
http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Iraq/us_troops_crisis2.htm

このような兵士たちのメンタル面での負荷を出来るだけ減らすための、「機械化・自動化・ゲーム化」の導入という側面もある。

しかし、今回の撤退劇の中でも起きたように、無人機による攻撃は、多くの誤爆を招く。無人機による攻撃が成功するためには、地上での誘導が欠かせない。誘導なくして、無人機による攻撃を行えば、誤爆も頻発する。同時に、非人間的な無人機による殺戮をされた側の心には、殺された恨みの他に、人間ではなく物扱いをされた怒りが堆積する。これが、タリバン復権をゆるしたアフガン国民の心にないとは言い切れない。

🔶 戦争のコスト

戦費⇒2兆ドル(約250兆円)以上 ブラウン大学「戦争のコストプロジェクト(Costs of War Project)の見積もり

〇20年間、毎日3億ドル(370億円)以上のコストがかかる計算)
〇内訳
米軍の直接戦争費用 8000億ドル(約96兆円) 
アフガン軍訓練費用  850億ドル(約10兆2000億円)
アフガン兵士の給料  年間7億5000万ドル(約900億円)

〇米国は、アフガン戦争費用を借金で賄っている。⇒戦争終了後も借金払いは続く

〇戦死者など。
・米軍兵士⇒2500人以上
・米軍と契約した米国民間人⇒4000人近く死亡
・アフガン軍や警察⇒6万9000人 ・民間人⇒4万7000人
・反政府勢力兵士⇒5万1000人 が死亡
●米国人死者収容費用⇒3000億ドル(約36兆円)

※アフガン戦争のコストは20年間で「250兆円」、米大学が試算(FORBES)
 https://forbesjapan.com/articles/detail/42876

如何に壮大な無駄が費やされてきたかが分かる数値である。

🔸 ビンラディン殺害

オバマ大統領の時、オサマ・ビンラディンの潜伏先に米軍がヘリコプターで乗り付け、殺害する場面がTVで公開された。オバマ大統領をはじめ米国の閣僚たちがその場面を見ている場面も公開された。生きている人間が殺される場面を映像で見るのである。常人の神経で耐えるのはなかなか難しい。
※ビンラディン殺害映像  https://www.nicovideo.jp/watch/sm14344534

米国の権力者の神経は強靭でなければ務まらない。こういう血塗られた場面を正面から見据え、米国の行為を堂々と正当化し、国民をきちんと説得できる論理を構築できなければ、大統領は務まらない。

しかも、ビンラディンの潜伏先はパキスタン。パキスタン政府に何の断りもなく、他国の領土で米軍ヘリを使い米軍兵士がビンラディンを殺害する。国際法で言うならば、明白な「主権の侵害」。米国は、「テロリスト」の殺害のためなら、国際法など無視して構わない、と考えているのだろう。「覇権国家」の傲慢さそのもの。まさに「タイラント」である。

その決定を下したのが、民主主義を説いてやまないオバマ大統領。アメリカと言う国家の【ダブルスタンダード】が象徴的に見えた場面でもあった。わたしにとっての「アフガン戦争」の最も象徴的な場面だった。

同時に、ビンラディン殺害はアフガン戦争の一つの転換点だった。これ以降、米国民の間からアフガン情勢に対する興味が減少した。タリバン復権の一つの要素に、ビンラディン殺害によってアフガン戦争の目的が果たせた、という米国民の安堵感があったと考えるのは、そう的外れではない。

🔶米国の戦争考

「米国の戦争の歴史」の年表を見ると、米国と言う国が如何に多くの戦争をしてきたかが良く分かる。
http://machidaheiwa.fc2web.com/tokushyuu/1war/us-history.html

米国の歴史は浅い。わずか240年余りしかない。
★戦争(発動・関与)⇒200回以上
★第二次大戦終了後(1945~2001年)
 世界の武力紛争⇒153地域、248回
  ↓
 米国が起こしたもの ⇒201回  (全体の81%)
  ↓ 
世界で、これだけ戦争をした国家はない。文字通り、米国は戦争を好む国家=【好戦国家】である。

◎米国が戦争を好む理由
 端的に言えば、戦争をすることにより、実際的な経済的利益があるからである。
 ☆アフガニスタンの20年戦争の受益者リスト・・安全政策改革研究所リスト(SPRI)
  ↓
 ロッキード・マーティン、レイセオン、ジェネラル・ダイナミクス、ボーイング、ノースロップ・グラマンの米軍事大手5社 ⇒20年間 2兆200億ドルを得ている。

 ☆米国の軍事費(2020年度)⇒7780億ドル(約90兆円)⇒世界の軍事費39%

実にシンプルで分かりやすい。

わたしはこの掲示板で何度も「戦争は米国の公共事業」と指摘してきた。小難しい「安全保障」論をぶち上げる連中は、この単純明快な事実を糊塗するために、難しく語るのである。【戦争は儲かる】。この単純明快な理屈で米国は戦争をするのであろう。逆に言えば、戦争をしないと経済が回らなくなる、という経済体制に落ち込んでいるのかもしれない。

この経済体制(好戦国家体制)のほころびが見え始めたのが、現在の国際情勢。バイデン政権は中国との緊張(新冷戦体制)を煽る事により、この危機を乗り切ろうとしている。

そのお先棒を担がされるのが日本。過去あまり反中国的言動を弄さなかった岸田元政調会長が、総裁選では、反中国的言動を発信しているのは、米国の戦略転換(中東・アフガンから中国)に合わせたものであろう。

米国も「戦争が公共事業」という経済体制からの脱却が難しいのだろう。米国の覇権が揺るぎ始めたというのが、今回のアフガンを巡る一連の動きだと思う。

「護憲+コラム」より
流水

日米関係の戦後史:岸信介元首相とアメリカ政府の「密約」

2021-09-17 13:20:35 | アメリカ
「アメリカ政府は朝鮮戦争の後で、冷戦に対応できる日本政府の協力者をスカウトした。それが首相になる前の岸信介だった。」

今回も、矢部宏治さんの「知ってはいけない」(その2)を参考に、日米関係の戦後史を問題にしていきます。

矢部氏は、この本の「はじめに」で本書の概略をかなり具体的に述べている。すなわち、

「今年は(2018年)6月には歴史的な米朝の首脳会談までが実現した。(朝鮮戦争の)『終戦宣言』が、いつ出されてもおかしくない状況となっているとして、日本の大きなチャンスのはずだと思われる。なぜなら、本書のパート1で述べたように、現在の日本とアメリカの間に存在する異様な従属体制の本質は、いまから70年前に、日本の独立直前に起こった朝鮮戦争の中で生まれた『米軍への主権なき軍事支援体制』、いわゆる『朝鮮戦争レジーム』にあるからです。」とする。

続けて、矢部氏は「世界中が首をかしげた安倍首相の行動」という見出しで、次のように述べている。

「この『分断された民族の融和』と、『核戦争の回避』という誰もが祝福すべき大きな歴史の流れに対して、世界でただ一か国だけ、なんとブレーキをかけようと最後まで抵抗し続けたのが、自国がもっとも核ミサイルの危機にさらされていたはずの日本の首相と外務省だったのです。」と。

さらに、続けて、矢部氏は「なぜ日本だけがまともな主権国家になれないのか」というタイトルで、次のように言っている。すなわち、

「そこで、本書では、その異様な体制が70年たったいまも、『なぜ、続いているのか』という、戦後日本の<最後の謎>に挑戦することにしました。」として、「第二次世界大戦のあとも、アメリカの軍事同盟のもとで主権を失っていたドイツやイタリアなどの多くの国々、それと韓国までが、正常な主権国家への道を歩み始めているにもかかわらず、なぜ日本にだけそれができていないのか」と問いかけて、次のようにその「謎解き」を示している。

「その謎を解くための最大の鍵が、いまから60年前、現在の安倍首相の祖父である岸信介首相が行った『安保改定』と、そのときアメリカとの間で結ばれた『三つの密約』の中に隠されていたのです。」

そして、さらに、矢部氏は、「朝鮮戦争レジーム」が、日本列島の中にだけ残される可能性がある、と重大な予測を述べている。つまり、政府自民党の「朝鮮戦争レジーム」の担い手としての行動パターン;安倍晋三の不可解な行動が象徴するように、「準戦時体制」を維持するという<政治的ベクトル>が存在するからだという。

本家本元の朝鮮半島で消滅した「朝鮮戦争レジーム」が、その原因となった朝鮮戦争が終わった後も、アメリカとの二国間関係として、日本列島の中にだけ残されてしまう可能性が高いのだとする。

そして、結論的に、矢部氏は「私たちには『ポスト戦後日本』の行方を正しく選択する大きな歴史的責任がある」と述べている。(その処方は著書に詳しい)

◎では、当時のアメリカ政府は岸信介を「アメリカの反共政策の協力者として、いかに獲得できたのか。」これが重要な問題点であり、謎の解明のキーポイントといってよいだろう。

岸信介は戦時中に東條内閣の商工大臣として活躍した経歴の持ち主であり、日本が中国侵略への大きな足掛かりとして満州国を建国したが、その経済的な基盤である財政運営において辣腕を振るった「革新官僚」であり、商工大臣に任命されていたのである。

その経歴からすれば、当然にA級戦犯として巣鴨プリズンに収容されていたのである。ところが、東条以下のA級戦犯が「東京裁判」で処刑された翌日の1948年12月24日に岸信介は巣鴨から出獄している。これは誰が見ても、大きな謎であろう。

その「謎」を解くカギは、アメリカの朝鮮戦争後の冷戦体制への対応にあり、冷戦構造を有利に戦うための、日本の「再軍備」と日米関係の「見直し」にあった。反共政策の協力を日本政府に求める必要が大きく、その協力者として、最大の候補となった「人物」こそが岸信介その人だったのである。

次回は、何故、岸に白羽の矢が当たり、岸が何故、アメリカの協力者となったのか、その問題を具体的に明らかにしたい。

「護憲+コラム」より
名無しの探偵

アメリカの占領が継続している日本

2021-07-30 09:57:47 | アメリカ
戦後史を検証していると、様々な疑問が出てくる日本の現在である。その疑問の多くは日米関係の問題に収れんされると言っても過言ではないだろう。特に、米軍基地が日本の各地に張り巡らされている。沖縄では米軍基地が本土よりも断然多く、それでも不足しているらしく、現在は辺野古への移設工事が進んでいる。

こうした、多年に渡る疑問と「謎」に終止符を打つ著書に出会うことになった。矢部宏治著「知ってはいけない」全2巻である。

矢部氏によると、日本の現状は、実際にはアメリカの「占領」が継続されていると言う。その顕著な事例が、米軍の飛行機(戦闘機のこと)は日本本土と沖縄の上空を「自由に」飛行できるし、アメリカ本国では禁止されている「低空飛行」が許されているということ。そして、その「自由な飛行」などの法的な根拠は、安全保障条約とそれに基づく「日米地位協定」にあるという。

それだけではない。「密約」という非公式の取り決めに、日米関係の不均衡な国家関係の「謎」が集約されているという。

◎「日米関係の密約とは何か」

安全保障条約は、二回の改正を受けて、現在は新安全保障条約と言われるものになっている。しかし、矢部氏によれば、旧安全保障条約と新安全保障条約では条約の規定内容が異なっているが、実際上は「全く変わっていない」のだと言う。

その具体的内容は次のようになっているとされる。矢部氏の著書、72ページを引用する。(「知ってはいけない」1,講談社現代新書)

★安保法体系の構造
(この構造は1960年の安保改定後も少し条文上の表現を変えただけで、新安保条約+地位協定+日米合同委員会という三重構造の中に受け継がれています。)

旧安保条約 「アメリカは米軍を日本に配備する権利をもつ」
      「その配備の内容は、行政協定で決定する」

→★行政協定 
  「日本は安保条約・第1条の遂行に必要な基地を提供する。具体的な内容は日米合同委員会で定める。」
  「アメリカは米軍基地の中で絶対的な権力をもつ。米軍基地の外でも必要な権力をもつ。具体的には日米合同委員会で協議する。」
  「すべての具体的な協議は日米合同委員会でおこなう」

→★日米合同委員会 
  「日米合同委員会の議事録や合意文書は、原則として公表しない」
  「日米合同委員会で決定した日米合意は、日本の国会での承認を必要としない」(安保改定交渉の中での秘密合意 1959年4月)

以上の内容が矢部氏の著書からの引用ですが、この安保条約(新安保条約も旧安保条約と基本的に変わっていないと、矢部氏は強調する)の概略から分かることは、日米関係の重要な取り決めは、政府と政府が決めているのではなく、「日米合同委員会」という米軍の要人と日本の高級官僚が、秘密の合意、つまり「密約」で決めているということであり、これがキーポイントである。その意味は、後段にある「国会の承認」を必要としない、と定めていることから明らかです。

ここから、次のことが帰結されます。

第一に、安保条約と「密約」(法的な根拠は、日米地位協定です)があることで、日米関係は、日本の国内法の上位に位置づけされている、ということ。つまり、憲法や刑法などは安保条約の下位にあり、言ってみれば、米軍は「治外法権」の法的な扱いになっており、米軍の行動は日本の裁判所の裁判を原則として受けません。

ここから様々な問題が起きています。米兵の殺人行為などはともかく、交通事故などは日本の裁判の対象となっていません。(殺人でも、実際には日本の裁判が事実上存在しているかは疑問な事件もありました。ジェラード事件、参照)

第二に、日米合同委員会の密約で、すべてが決められるということなら、安保条約があっても、政府間の交渉は存在していないも同然であり、特に以前の国会でも大騒ぎになった「核密約」つまり、アメリカの原子力潜水艦の核兵器の持ち込みなどは、日本政府が言う「米軍の核の持ち込みはなかった」という公表は虚偽であると矢部氏は強調しています。なぜなら、アメリカは、日本との密約を情報として「公開」しているからです。

結論として、日米関係は安保条約で規定されている、というのは表面的な事柄なのであり、実際には米軍のトップと日本のエリート官僚(外務省の高官)が密約で決めていて、日本政府とアメリカ政府の「合意」で決まるわけではないということです。

ここから様々な問題が発生します。米軍が決めた取り決めが優位に立ち、アメリカの行動に日本の官僚も「協議」が条件となっていない事柄は口出しできないとなっており、沖縄上空ばかりか、本土でも非常に危険な「低空飛行」とかは、「野放し」状態であるということになります。

次回は、何故、こうした取り決めが「密約」で決まってしまうのか。改めて、岸信介元首相とアメリカ政府の最初の「密約」に触れたいと思っています。その問題が、現在の日米関係の「初期条件」となったからです。

「護憲+コラム」より
名無しの探偵

きな臭さが充満しはじめた世界 (平和主義を再評価した日本の生きる道の模索)(2)

2021-04-27 08:57:40 | アメリカ
🔶「民主主義」と「人権」の危険な側面

米国は戦争を始める前には周到な準備工作を行う。イラク戦争前、独裁者フセイン大統領の蛮行の数々が世界中のメディアに満ち溢れた。大量破壊兵器を隠し持っているとも喧伝された。テロリストをかくまっているとも報道された。

要するに、独裁者フセインは、民主主義の敵であり、人権侵害を平気で行う悪魔のような人間であると世界中に報道されたのである。こういう悪魔を征伐し、塗炭の苦しみにあえぐイラクの民衆を救う正義の戦士が米国という図式が、世界中のメディアで報道されたのである。

その結果はどうだったのか。大量破壊兵器はなく、死者は五十万人を超えたとされる。戦争を行う大義名分すらなかったのである。

※イラク戦争の死者 
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/8459/

戦争中、ファルージャなどでは、多数の市民が虐殺されたという報告もある。

※ファルージャの戦闘 ウィキペディア 
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%81%AE%E6%88%A6%E9%97%98
※ファルージャの悲劇 真正の偽造旅券 論座
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2015070400004.html

戦争は米国兵士にも深い傷跡を与えた。帰還兵のPTSD発症率は高く、様々な問題を起こしている。その数は膨大な数になると言われている。

※銃乱射の元海兵隊員も? 米退役軍人にまん延するPTSD AFP
https://www.afpbb.com/articles/-/3196878

もし、米国が敗戦国だったら、イラク戦争の米国の指導者は、間違いなく『戦争裁判』にかけられたと思われる。米国が覇権国家だからこそ、戦争裁判などの声が起こらないのである。

こういう経緯を見ていると、西側メディアで『民主主義』とか『人権』というフレーズが大仰に飛び交い始めると、戦争危機が近づき始めた、と考えてそれほど間違いはない。

◇ナワリヌイ問題(ロシア)

現在、ロシア国内で起きているのは、プーチンの政敵ナワリヌイ氏の健康不安に対してのデモのニュース。ナワリヌイ氏の問題に関しては、かなりの部分、眉に唾して聞いた方が良い。

※ナワリヌイは毒を盛られていない 
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2020/08/post-e3990d.html
※ナワリヌイが部下から「毒物」とされる飲み物を渡されるのを示す空港CCTV映像
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2020/08/post-83623b.html
※ロシア - ノルド・ストリーム2 対 アレクセイ・ナワリヌイ毒物被害
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2020/09/post-16abed.html
※ナワリヌイ偽旗作戦の張本人連中がウソを隠蔽するため新しい展開を発明
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2020/09/post-959714.html

◇ベネズエラ問題

現在、米国は、ナワリヌイ氏と同様なことをベネズエラでも行っている。トランプ政権が傀儡(かいらい)のグアイドを担ぎ出し、「チャベスやマドゥロの独裁に対する民主主義、自由主義の運動が弾圧を受けている」とふりまき、経済制裁とともに軍事侵攻をほのめかす緊迫した事態を作り出していた。

ナワリヌイにはグアイドほどの力はなかったが、両者とCIAとの緊密な関係は知る人ぞ知る事実。米国の手法は変わっていない。

※独裁vs民主主義でよいか ベネズエラをめぐる二つの見解にみる 長周新聞
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/11393
※新自由主義に対抗 反米の牙城となったベネズエラ 歴史的背景を見る 長周新聞
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/10894
※ベネズエラ転覆に乗り出す米政府 暫定大統領でっち上げる内政干渉 長周新聞
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/10759

🔶 日本はどう生きるか

日本は米国にとって重要な役割を担っている。米国の地政学的戦略理論から見れば、日本は対中国抑え込みの先兵になる。

安倍政権が耳にタコができるほどわめき続けた『日米同盟の深化』とは、日本と自衛隊が限りなく米国と一体化し、米国戦略の主要プレイヤーとしてひたすら米国の為に活動する事だと考えれば良い。(※間違ってならないのは、日米同盟の深化とは米国のためであって、決して日本のためではない。)

今、21世紀の世界は重大な岐路に立っている。日本の進むべき方向は三つある。

(1)これまでと同じように、米英欧日と同じ海洋国家側にたち、内陸国家(中国・ロシアなど)を封じ込め弱体化させる側に立つのか。
(2)中国・ロシアなど内陸国家側にたち、海洋国家側と一線を画すか。
(3)米国・中国・ロシアなどと等距離外交を行い、両者を仲介する存在感を持った中立的独立国家の道を選択するのか。

これまでの自民党政権は、(1)の道を選択してきた。田中角栄や小沢一郎、鳩山由紀夫のように(3)の道を選択しようとすれば、政財官メディア挙げて潰しにかかる。当然、その背後に米国の影があった。

自民党は田中内閣失脚で米国の意向に逆らう事の怖しさを学習した。鳩山内閣や小沢一郎などの民主党政権の倒れ方は、覇権国家としての米国の強さの表現でもあった。端的に言うと、“お前たちは米国の属国だ。逆らう事は許さないぞ”というわけである。それは同時に日本経済沈没の始まりでもあった。

民主党政権が倒れ、清和会という似非右翼政権が誕生したのは、米国がこれまで中南米やベトナムなどで行ってきた傀儡政権樹立とほとんど同様な手口だった。

例えば、南ベトナムのゴ・ジンジエムは文字通りの独裁政権で腐敗の温床のような政権だった。当時、米国は民主主義を叫ぶのに、何故あんな非民主的独裁政権を支えるのか不思議だとよく言われたものだ。

※ゴ・ジンジエム政権 世界史の窓 
https://www.y-history.net/appendix/wh1603-062.html

今、考えればそれは不思議でも何でもない。洋の東西を問わず、独裁政権は「政権維持」だけが目的になる。理由は明白。政権を失えば、今までのしっぺ返しが来る。国内の敵に酷いことをすればするほど、自分自身の命が危うくなる。だからどんな手を使っても権力を維持したい。その為には、国益を米国に売っても、自分を支えてもらいたい。こういう人物が権力を握っていれば、米国の意向は何でも通る。

米国の支援で、チリのアジェンデ政権をクーデターで倒したピノチェト政権も、同じような独裁政権で腐敗政権だった。ピノチェト政権下でどれだけの国民が死んだか。現在、ミャンマーで行われている国軍による民衆の虐殺どころの騒ぎではなかった。

※【世界のマイナー戦争犯罪】ピノチェト政権下の「反体制派」弾圧【南米チリ】
https://oplern.hatenablog.com/entry/2019/01/20/012426
※ピノチエト政権 世界史の窓 
https://www.y-history.net/appendix/wh1703-075.html
※赤旗 ピノチェト独裁下で政治囚処刑 
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-12-27/2013122706_01_1.html

自民党清和会政権もこれと同じだと考えれば、小泉政権,森政権、安倍政権、菅政権の統治下で日本中が貧しくなり、日本沈没が現実のものになるのも無理からぬものがある。

一応日本は先進国という扱いになっているので、民主主義的選挙による政権交代という手続きを経て行われる。だから、チリを始めとする南米各国やベトナムのような形を取ってはいないが、本質的には変わらない。

米国の目的は日本の富の収奪。それに尽きる。清和会の政権は、米国の目的に忠実に従う政権。権力維持のために、日本の国益を米国に売り尽くす典型的な売国政権。日本万歳を叫ぶ右翼政権が、国益を売る典型的売国政権だというところに、笑えない悲劇がある。

※竹中平蔵に代表される新自由主義的経済導入 (これもチリなどの南米諸国と同様。米国で教育を受けた人間をその国の重要政策を決定できる地位に送り込み、その国の人間の手によって、米国に都合の良い政策決定を行い、国の方針それ自体を米国寄りに決定させる、という典型的な植民地政策。)
※湾岸戦争、イラク戦争などへの関与(戦争経費負担、自衛隊の派遣など米国の戦争への一体化。)

このように見てくると、現在の日本の経済的沈下、格差の拡大、貧困の増大、軍事費だけが異様に増大し、コロナ下での危機管理政策の無さ、オリパラだけに景気浮揚を託す無能な政権が、なぜ生き延びる事ができるのかがよく理解できる。

それもこれも米国の属国の地位に甘んじ、米国の顔色だけを窺ってきた売国政権を唯々諾々と受け入れてきた日本国民と、何の批判精神も持たず政権の意向を垂れ流す大手メディアの腐敗堕落が招いた結果である。

🔶21世紀こそ日本国憲法の平和主義が最大の武器になる時代

21世紀の世界をどう生き抜くか。わたしは、(3)「米国・中国・ロシアなどと等距離外交を行い、両者を仲介する存在感を持った中立的独立国家の道」を選択する以外ないと考えている。

日本国憲法の理念である非戦・平和主義がもっとも必要とされるのが21世紀。何故なら、21世紀は、否応なく、『覇権の多様化』の時代が招来する。現在では中国の台頭が話題になっているが、21世紀はアジアの各国、ブラジルなどの国々が中国の後を追う可能性が高い。アングロサクソン流の世界支配は時代遅れになる。

このような『覇権の多様化』の時代だからこそ、戦争をしない平和国家という理念こそが、最大の武器になる。戦争をしない平和国家だからこそ、世界の国々に安心感を与え、信頼を勝ち取る事が出来る。アングロサクソン流の収奪をしない国家、という安心感こそ日本の武器になる。この理念を旗印にした等距離外交を選択する以外日本の生き残る道はない。

経済的には、新自由主義理論を克服する以外ない。対外的には先祖返りをしているバイデン政権だが、国内的には新自由主義経済克服の舵を切っている。これは民主党内の左派を取り込まないと生き残れないバイデン政権の内部事情もある。それだけではなく、米国内の格差問題が、もはや看過できないほどの国内問題を生み出す土壌になっているからである。

さらに言えば、新自由主義的欲望資本主義は、地球環境破壊の最大の要因でもある。気候変動は、もはや待ったなしの状況。内でも外でも、ありとあらゆる状況が、新自由主義的欲望資本主義の行き詰まりを示している。

日本も例外ではない。国内の経済格差は、開く一方。コロナ下の経済的困窮者は増加の一途。もはや、ドラスチックな経済改革を行わなければ日本は沈没してしまう。

今こそ政治の季節である。北海道・長野・広島の補選は、野党が三連勝。野党が連携し、結束を固めれば、政権交代は可能。

今年こそ、清和会主導の自民党売国政権を倒さなければ、21世紀の日本は、奈落の底に沈んでしまう。老骨に鞭打ち、最後の頑張りをしなければならない。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水

きな臭さが充満しはじめた世界 (平和主義を再評価した日本の生きる道の模索)(1)

2021-04-26 20:34:14 | アメリカ
🔸バイデン政権の本質(軍産複合体の代弁者)

バイデン政権が誕生して4か月。予想通り、世界は確実に第三次大戦へ向けて歩み始めた。

トランプ政権は米国のエスタブリッシュメントに対する極右からの革命政権だった。トランプ支持者の間で広まっていた【陰謀論】の標的は、米国の真の支配者である軍産複合体を中核としたエスタブリッシュメントに向けられていた。

トランプ政権は、米国が世界の覇権国から降りるという政策を着実に実行し、世界の多極化に拍車をかけた政権だった。トランプが再選されていたら、米国は確実に覇権国家から降りていた。トランプが攻撃の標的にした米国エスタブリッシュメントは、世界の経済・軍事・金融・メディアなどあらゆるものを支配下に置き、世界を実質的に支配する巨大な権力を手に入れている。

米国内の格差は広がる一方。1%の富裕層が米国の富の30%近くを保有している。この事態は、もはや容認しがたい状況に陥っている。
※広がる格差、「上位1%」がアメリカの総資産3割を握る | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

1%の支配層は、自らの支配を正当化するため世界中のメディアに影響力を行使している。日本のメディアも同様である。彼らがメディアを通じて世界中に流布するイデオロギーの中心が【民主主義】と【人権】。この価値観に反する国や支配者は、米国の敵であり、殲滅すべき対象になる。

安倍晋三が繰り返した『価値観外交』とは、米国外交の中心的価値観である。そしてその価値観は、米国の世界統治の基本的理念であり、世界一の巨大な軍事力に裏付けられている。

問題は、『民主主義』と『人権』という標語にあるのではない。その価値観を他国に押し付け、拒否する国を攻撃する材料に使う点にある。この時の米国は、彼らが語るような温和な民主主義国家ではない。恐ろし気な顔をしたタイラント(専制君主)そのものである。戦後、米国が『民主主義』と『人権』を旗印にしてどれだけ多くの他国の政権を倒したり、戦争を仕掛けたか、枚挙に暇がない。

特に米国の裏庭と称される中南米諸国への介入は、『民主主義』と『人権』の守護神を任じる米国が強権的で専制主義的性格をむき出しにしており、米国という国家のダブルスタンダードを余すところなく示している。

例えば、チリの軍事クーデター。米国の支援を受けたピノチェト陸軍司令官が1973年9月、選挙を通じて誕生したアジェンデ人民連合政府をクーデターで倒し、軍事独裁政権をつくった事件。90年の民政移管までの弾圧で約3200人が死亡もしくは行方不明になった。2011年までの調査によると、拷問や投獄などの被害者総数は4万人を超える。

※赤旗 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-01-05/2013010507_02_1.html
※「もう一つの9/11」 https://democracynow.jp/video/20100915-3

このクーデターで、アジェンデ大統領は自ら銃を取り、大統領官邸で戦死した。現在ミャンマーで行われている軍事クーデターと同じというより、はるかに酷い虐殺や拷問が行われた。

その他、2000年代、旧ソ連邦加盟国家で起きた非暴力の革命運動=カラー革命がある。ジョージア(グルジア)のバラ革命。ウクライナの「オレンジ革命」。その後起きた「アラブの春」(チュニジアのジャスミン革命)など花になぞらえた革命が多く、総称して【カラー革命】と呼ばれている。これらの革命の裏に米国CIAなどの影がある事など世界の常識である。投資家ジョージ・ソロスなども東欧のカラー革命にかかわっている。

香港の民主化運動も2000年代に行われた『カラー革命』と同じ手法が行われた、とする見方が絶えない。
さよなら香港 田中宇 http://tanakanews.com/190911hongkong.php
さよなら香港、その後 田中宇 http://tanakanews.com/190917hongkong.htm
※「カラー革命」敵視で共鳴  中国式ガバナンス  朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASL5J4WC3L5JUHBI01L.html

香港の民主化活動家たちが米国CIAと親密な事は周知の事実だった。これを見た中国当局が、「カラー革命」の手法を警戒しないわけがない。香港の民主化活動家に対する強権的な弾圧は、その意味では当然の結末だった。

わたしは周庭という活動家に注目していたが、香港の民主活動が過激化するのを見ていて、中国当局の思うつぼだと心配していた。活動の過激化は、当局にとっては思うつぼ。案の定、香港の民主化運動は終息。周庭も逮捕、収監され、結果として、見事に抑え込まれた。

もし、この運動が成功したら、2000年代のカラー革命の再現だった。中国当局にとっては、それは悪夢以外の何物でもない。それだけは絶対阻止するという中国当局の意志は、多少の国際的批判など歯牙にもかけないほど堅かった。

わたしは、香港の運動を見ていて、中心活動家が米国の要人と会っている写真を公表するなどあまりにも米国寄りの姿勢を明らかにしており、国際関係の力学に無頓着な点を懸念していた。

もし香港が独立したら、必ず『台湾独立』が日程に上る。これだけは、絶対阻止するというのは革命以来の中国共産党の国家的大命題。その為には何が何でも香港独立は阻止しなければならなかった。

台湾海峡の緊張は、米国流世界統治の方法と中国流統治の方法のぶつかり合う最前線の緊張であり、この緊張を煽る事は、第三次大戦を覚悟しなければできない。

🔶バイデン政権の対中政策

バイデン政権は、中国に対して明確に「人権」を理由にした非難を開始した。特に、新疆ウイグル問題に関して、「人権」を名目にして厳しく非難。中国の政策を明確に否定した。EUも同調し、制裁を課している。当然ながら、中国は強く反発。

※新疆ウイグル問題
https://kotobank.jp/word/%E6%96%B0%E7%96%86%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%82%B0%E3%83%AB%E5%95%8F%E9%A1%8C-1738007

※NHK ウイグルの人権問題で欧米が制裁 中国は反発 日本の対応は
2021年3月23日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210323/k10012930421000.html

さらにバイデン政権は、一つの中国というこれまでの米国政府の外交原則を修正。台湾政府を認知し始めた。この米国政府の態度変更は、当然中国政府の激しい反発を招き、米中関係は厳しい状況になっている。
※米中全面対決、台湾有事はあり得るか:
https://www.nippon.com/ja/in-depth/d00702/

今回の菅総理の米国訪問。米国の対中政策の最前線に日本が立ってほしいという狙いが歴然としている。その為、共同声明で台湾に言及。中国政府の激しい反発を買っている。
※中国はどう報復するか。日本には「寸止め」方針との見方
https://www.businessinsider.jp/post-233359

バイデン政権の対中政策の変更は、日本にとってきわめて深刻な問題になる可能性が高い。何故なら日本の中国に対する貿易依存度は年々高くなっており、米国をはるかに超えている。中国との対立は日本の経済の根幹を揺るがす危険性がある。
※対中依存度が急増する日本に米中の踏み絵は踏めるか 貿易収支が語る、台湾有事と日本の安全保障の不都合な現実(1/3) | JBpress(Japan Business Press) (ismedia.jp)

🔶バイデン政権の対ロ政策

バイデン政権は、4月15日にロシアに対して追加制裁を決定した。理由は、ロシアによる選挙介入やサイバー攻撃。

その前の3月17日に、バイデン大統領はプーチン大統領に対して人殺しと認識していると発言。外交官引き上げなど、ロシアとの間で大きな確執を生んでいる。一国の大統領が他国の大統領を『人殺し』と罵るのは尋常ではない。ロシア当局が怒るのも無理はない。

さらにウクライナ問題に関しても、米国はウクライナでの戦争を望んでいるかのような動きをしている。
・・・4月8日CNNは、米国が黒海に二隻の軍艦を配置するつもりだとトルコに知らせたと、トルコ外務省の情報筋が金曜日に述べた。軍艦は5月5日まで黒海に留まる。・・・と伝えた。

黒海に軍艦を配備すると言う事は、ロシアと正面から対峙する事を意味する。つまり、ウクライナとロシアの間の戦争を米国は望んでいると言う事になる。ウクライナの現在の政権(ゼレンスキー内閣)の力では、米国の承認なしに戦争を始めることなど不可能。軍艦配備とは、米国の承認があったのではないか、と疑わせるに十分。ロシアは受けて立つことを明言している。

ここでもきわめて危険な兆候があらわれている。

🔶バイデン政権の中ロに対する基本姿勢(米国の地政学的戦略視点)

▼これまでの米国流「地政学」理論
ユーラシア大陸の外側・海洋側の勢力(米英日欧)⇒中ロイランなどのユーラシア大陸の内側国家(内陸国家)の勢力を封じ込め、弱体化させる=ユーラシア包囲網⇒米英支配の要諦
=米国流戦争理論

▽この理論に対置する中国の戦略⇒一路一帯政策
内陸国家が結束。海洋勢力の包囲網を打破する。⇒地政学的逆転が中ロの狙い。(現状はそうなりつつある)⇒覇権の多様化

この状況を打破するためには、米国は何が何でもEUの住民(約4億5千万人)を囲い込まねばならない。つまり、EUの住民を守るためには、どうしても米国の保護と武器が必要だと感じさせなければならない。その為には、ロシアの危険性を大々的に報じ、どうしてもウクライナとの戦争が必要だ、とEUの人々に感じさせなければならない。これが、ウクライナ危機を煽る米国の理論だろう。

誰がどう考えても戦争はウクライナの完敗に終わるだろう。米国はそれで良い。ウクライナの国民やウクライナ国家の運命など物の数ではない。ブリンケン国務長官やビクトル・ヌーランドなどのネオコン連中の発想は、この戦争を通じて、ロシアの脅威をEUの住民に腹の底から感じさせれば良いのだ。そうすれば、EUの住民たちは、米国の保護を求め、米国の覇権を望むことになる。それが出来れば大成功という話だ。

このネオコン流のやり口には米国の成功体験がある。旧ソ連邦が崩壊したのは、アフガン戦争のゲリラ戦で泥沼に陥り、経済的苦境に陥ったのが原因。当時アフガン・ゲリラを武器・弾薬・人で支えたのが米国。オサマ・ビンラデインは、サウジアラビアからこのゲリラ戦に参戦。文字通り、CIAのお友達だった。

とにかく、ソ連をアフガン戦争の泥沼に引きずり込んで消耗させるのが狙いだった。このグランド・デザインを描いたのが、当時、まだ力があまりなかったネオコン連中。ソ連邦崩壊を契機に米国政治の中でネオコン連中の力が高まったのである。
※ネオコン ⇒ネオコン(新保守主義)とは、アメリカの保守系の勢力の一部を構成する「国際政治へのアメリカの積極的介入」「アメリカの覇権を重視」「アメリカ的な思想を世界に広めること」などを信条とする勢力のこと。
詳細については以下を読んでください。
https://liberal-arts-guide.com/neoconservatism/

政治力学については、このように、様々な理屈が考えられるが、問題の根源は、米国の衰退にある。

冷静に現在の経済状況を眺めてみればすぐ理解できることだが、現在、絶対米国から買わなければならないものがあるのかと問えば、世界の誰もが一瞬首をひねるだろう。それくらい米国が世界に売りつける高付加価値の商品が年々乏しくなっている。

日本の安倍前首相などが米国に脅されて使えもしないポンコツ武器を言い値で買わされているのを見れば、いかに米国が売るものがないかが良く分かる。

覇権国家の脅しと力づくの商売は長続きしない。脅しで商売できる相手は限られる。今や世界の成長エンジンは、中国やアジア諸国に移っている。

ユーラシア大陸のアジア諸国の人口は約47億人。中国の成長により、この巨大マーケットから米国は排除されつつある。もしこれにEU各国が続けば、世界の6割近い50億以上の人口から米国商品が排除されることになる。

しかも、これらの住民は商品を買う事が出来る豊かな住民であり、アフリカの住民たちとは根本的に違う。それがユーラシア大陸と言う一塊になっている。ここから排除されると言う事は、米国にとっては悪夢に近い。米国がただの南北アメリカという一地域の『覇権国家』に転落する事を意味する。

通常の国家指導者なら、ユーラシア大陸の住民たちが欲しがる魅力ある商品を作る事が出来る産業の育成を図るだろう。

しかし、覇権国家としての果実を食べる事に慣れた米国の支配層はそう考えない。『経済』と『戦争』を一体化させて考える。競争相手を戦争に引きずり込み、相手国を徹底的に疲弊させ、経済を弱体化させ、自国の覇権を死守するように考える。

だからこそ「ウクライナの戦争」が必要だ、というのがネオコンの理論だろう。政権中枢にネオコンの影響力が強いバイデン政権の危険性はここにある。

ただし、正面からロシアと戦争すれば、米国もただでは済まない。ロシアは核兵器を大量に保有しているうえに、ロシアの大陸間弾道弾サルマトの性能は米国のそれを上回るというのが定説。

・・・ 最も脅威的なのは、大陸間弾道ミサイル「RS28サルマト」で、射程は11万キロ。通常の攻撃コースである北極経由はもちろん、南極経由でも欧米を攻撃できる射程を持ち、弾頭重量は100トン、核弾頭なら15個を搭載できるという。北極経由より圧倒的に長距離である南極経由の攻撃が可能になった。この意味するところは、弾道ミサイル防衛(MD)において「北から核ミサイルがくる」との想定に基づき北方方面に配備していたMDの迎撃ミサイルなどを、南側にも配備しなければ守りきれないということだ。

・・もうひとつは低空を飛ぶ巡航ミサイルだが、その動力は原子力。核動力巡航ミサイルとして「無限の射程距離」を獲得したという。これは北大西洋条約機構(NATO)や米国、日本の迎撃システムによる迎撃可能エリアを大きく迂回して目標に到達することが可能だと説明。レーダーに探知されにくい低空を飛ぶ。・・・ 
岡田俊彦 軍事ワールド
https://www.sankei.com/west/news/180313/wst1803130006-n1.html

米本国が核攻撃に晒されるなど、米指導者にとってはあってはならない。そんな危険は冒すことはできない。だからこそ、ウクライナとNATOの協力により、米国が後方支援する形での戦争が必要になる。これなら、ウクライナが戦場になり、拡大してもヨーロッパが戦場になるだけ。米国にとっては痛くもかゆくもない。

ウクライナ問題、ナワリヌイ問題をこの視点で考えると、米国の壮大な意図が見えてくる。

ロシアとの関係も一触即発だが、米国と肩を並べる中国との関係もきな臭さが充満している。自分の立場を脅かす国は、力づくでも追い落とすせ、というのが、覇権国家の力学である。

以前から、わたしは覇権国家が覇権を降りなければならない時が、世界にとって一番危険な時期であると指摘してきたが、バイデン政権の4年間がまさにその時期だと考えている。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水