老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

「その話は今日はやめておきましょう」(井上荒野)

2018-06-25 12:57:09 | 暮らし
井上荒野という作家は、小狡くて、いい加減で、我儘で、暴力的でイヤな、けれどどこか憎めない、若い男を描くのが上手い作家だ。

70代になろうとする大楠夫妻は、夫の昌平が自転車事故にあったのをきっかけに、26歳の若者一樹と知り合う。病院の送迎、家事での困り事を任せ、主夫として雇う。

当初は一樹を好ましく思っていた夫妻だったが、次第に家の中の高価な物が無くなり、一樹と夫妻の仲も不穏なものに変わっていく。

この一樹という男、悪い友人辰夫に煽られ、夫妻を窮地に陥れようとしたり、大好きな彼女を傷つけたり、イヤなろくでもない奴。しかし、捨て台詞を残して老夫婦の元を去った後で、夫妻が辰夫に付きまとわれたり金を騙し取られたりしないように配慮したりもする。

だから、妻のゆり子は「悪い事をしたと思ってる?」「もうしない?」とか電話に声を掛けてしまうのだ。どこまで人が良いのだろう。

辰夫は夫妻を「ジジイ、ババア」と呼び、「そのくらいの年寄って生きている価値あるのかな。金使って人を雇って、どれだけ無駄しているんだ。死んだらその金俺達に配るって法律出来ないかな」と嘯く。

今の時代に「自分は社会で割を喰っている」「好景気と言われている世の中から取り残され、損ばかりさせられている」と思っている若者がいて、ほんの一握りだとしても正直な気持ち、本音ではないだろうか。

大楠夫妻は老いを意識しながらも未だ知性も意志もしっかりしている。妻のゆり子は、暴力的なものを防ぐだけの知恵と勇気もある。誰でも人は歳を取る。「その話は今日はやめておきましょう」と言いながら、人は自らの老いと向き合って行くのではないか。

息子家族もアメリカに住んでいる娘も、いざという時には駆けつけ、親身になって助けてくれるだろう。しかし私はその親族より、この一樹という得体の知れない若者の方が、夫妻のより近くにいるように感じた。

老いて行く者達の穏やかな日々に、一樹という石を投げ込む事によって生じた波紋と再生。そして一樹も、社会に場所を無くし自分をもてあましながらも、自分にとって本当に大事な場所に向かって走りだそうとする。それは大楠夫妻と出会った事によるのではないか、彼が本来もっている何かを呼び覚まされたのではないか。と思うのは私の都合の良い解釈だろうか。

「行きたい所はあるのだが、行けるかどうかは未だ分からない、決めろよ」と呟きながら、自分に言ってスピードを上げていく。彼の行きたい場所は何処なのか、間に合うのか、未だ誰にも分からないけれど。

「護憲+コラム」より
パンドラ
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「減る収入、増える貯蓄」『お金をもって死ぬ』矛盾・長生きする不安の払拭を求める

2018-05-28 16:20:36 | 暮らし
「減る収入、増える貯蓄」は何を意味する?|日テレNEWS24
http://www.news24.jp/articles/2018/05/23/06393775.html
 〇世の中で議論を呼んでいる話題について意見を聞く「opinions」。今回の話題は「減る収入、増える貯蓄」。日本テレビ経済部の鰺坂圭司デスクに聞く。
 総務省が18日に公表した家計調査報告によると、2人以上の世帯の2017年の年間平均収入は617万円と10年前に比べ、32万円減った。一方で、平均貯蓄は1812万円と10年前と比べて93万円増えていた。
 ネット上では「この先の経済が不安。使うより“ためる”だな」「いつどうなってもいいように使う」「給料上がったんだけど、貯蓄ってしないな」という声が聞かれた。
 ――この調査結果をどう見ますか?
 全体的に見ると、収入が減って、貯蓄が増えているという傾向にはあると思いますが…その結果、「お金を持って死ぬ日本人」と書きました。
 …三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎さんに話を聞いたんですが、「お金は使わなければ価値がない」と。どういうことかといいますと、今、企業はお金はいっぱいあるけど使い道はない、一方、個人はお金はそんなにないから使えませんと、だいたいこういう状況になってると思うんです。
 ただ、日本経済をうまく回していくには、みんながお金を使って、その結果モノの値段が上がって、そしたら企業は収益が上がって、その結果、みんなの給料が上がると。そして給料が上がったらみんながお金を使ってと…こういう循環がないと、経済って拡大しないんですね。
===
  
浅ましいこと、この上ない。三菱、ゴミウリの主張である。大企業などは内部留保して言行不一致。更には労働者への大胆とは言わないまでも、再配分には耳を貸さず、我利我利するばかり。今度は、貧乏人から貯蓄を吐き出させようとするか?人を踏みつけにして、我利を図ろうとする図々しさ。己のやっていることと主張との矛盾!言うまでもない。

只、本日は、『お金をもって死ぬ』の前段としてある、『長生きする不安』について、あれこれ想像、考えてみたい。
 
『長生きする不安』は、否定できないこと?突然死する、想定外の病死をする、これらも否定できないが、これについては、事前に対応を考えておくことが出来よう。保険を掛けるなり、分相応に。
 
しかし、昨今、医療をはじめ、科学技術の進展は目を見張るものがある。IPS細胞等を利用した医療や薬開発、或いは、AI、ロボットを利用した生活支援などなど、伝えられている。
 
私事だが、以前は、脳疾患の病で80歳前には死亡すると心得ていたが、最近の検査結果では、血管年齢は40代後半とか、骨は30代とか、或いは、甲状腺癌の疑い(判定シロ)とか、情報が与えられた。が、ひょっとして長命したら、先立つものの不安が先に立つ…
 
資金繰りは出来ていないが、三菱やゴミウリ、金融資本に、或いは、政府にも、『お金をもって死ぬ』な!などとは言われたくない。言語道断の言い草だ。
 
マクロ経済を操作するものとして、政府や金融資本には、年金減らし、将来不安への手配りを要求したい。また、税金などの無駄遣いにも警鐘を鳴らしておきたい。軍拡や戦争(準備)など以ての外である。国民、主権者を護るは、政府第一の責務、義務である。公務員たる者、その存在根拠法たる、最高法規、日本国憲法(その使命)を再確認すべきだ。
 
金融資本にしたって、科学・技術革新を目指す者にしても、将来設計と想像力と密接不可分であろう。これを余りに外してしまえば、せっかくの発見、発明も、実用の機会を失うかもしれぬ。
 
現在の日本、少子高齢化、人口減少の傾向の中、人々の豊饒な生活確保の為何をなすべきか考え、議論すべきではないか。私には日没する国化も危惧されるが。
 
最近のTVを筆頭とするメディアは、エンタメ系が占めるようだが、これは、ある主張を繰り返し拡大反響させる装置になっていないか、危惧される。その反響盤に抗するものとして、新聞各紙の論説など、目を通してほしい。中々時間を取れないかもしれぬが。立ち止まって考えるために。
 
国民投票をするにしても、金に糸目を付けぬ者が、この反響盤を駆使して我が意を遂げることになっては、国民主権を害することになろう。国民投票法の、民主主義を体現する(民意を正しく反映する)ものとしての改正を求めたい。安倍首相の、安倍友疑惑の中では、その目的は遂げられぬ?採決強行などあるとすれば、とんでもないこと。
 
ジャーナリストは、その使命を果たして。主権者、国民は、これを利用して。ツイッターも、携帯も、良いだろうが。民主主義には、時間がかかる… 真実ではないか。
 
こんな戯言繰り返す勿れ!産み育てる環境を政府の手で整備せよ。結婚も躊躇させといて、ホザクな。
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018051202000166.html
 東京新聞・社説: 「3人産め」発言 女性蔑視の本音見えた 5/12

「護憲+コラム」より
蔵龍隠士
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桂春蝶専用落語

2018-03-05 09:27:57 | 暮らし
上方に桂春蝶という噺家がおられます。

このお方がネット上のツイッターという140文字の呟きサイトで

「世界中が憧れるこの日本で『貧困問題』などと言う方々は余程強欲か世の中に受けたいだけ。この国はどうしたって生きていける。働けないなら生活保護もある。我が貧困を政府のせいにしている暇があるならどうかまともな一歩を踏みだして欲しい。この国での貧困は絶対的に自分のせいなのだ」

と呟いちまったもんで、ツイッター読者が「落語家なのに自己責任論を振り回すなんてとんでもねえ野郎だ!」と怒り心頭に発しました。

だいたい日本の貧困問題は、ワーキングプアだったりシングルマザーだったり、働いても生活出来ない賃金しか得られ無い。政府がそれに対して本気で取り組んで来なかったという現実を、この落語家はわかっているのでしょうか。

たかが一落語家の呟きと侮るなかれ。既に彼は全国放送のテレビ番組で持論を展開しているのです。

この春蝶という噺家。実は二代目桂春蝶の倅で世襲って奴でございます。お銭(おあし)に何不自由無い育ち方をして、総理夫人と写真を撮ったり、ネトウヨの集会で櫻井よしことチラシに収まったり。

とんでもねえ野郎だと、ツイッター読者がついに「春蝶専用落語」というタグをつけてツイッターに投稿したところ、大反響。そのひとつをご紹介いたしましょう。

「ブラック企業に就職した寿限無」

「激務 激務で心は擦り切れ 退社時間過ぎても 感情なく 未来なく 将来無く 
食う寝るだけの 住むところ パワハラ上司の糞上司 
解雇 解雇 解雇で少人数 少人数の愚民達 愚民からの暴言有りの 病休からの無職へ」

これにはツイッターでやんやの大反響。「いいね!」の数が3万を越えたとか。国会で審議されております「定額残業やらせ放題」法案を先取りした話じゃござんせんか。

落語の笑いと涙は市井に生きる名も無き人々の武器だったんですよ。それを悪代官にすり寄ってご機嫌取っている奴なんざ噺家の風上にもおけねえ、豆腐の角に頭ぶつけて……おっとそれ以上は言わぬが華。

桂春蝶のツイッターは大炎上とか。火事とけんかは江戸の華と申しますが…「桂春蝶専用落語」で検索しておくんなさいまし。オチの無い噺になりましたが、お後がよろしいようでテケテンテン。

✳「桂春蝶専用落語」はツイッター社のサイトから引用しました。

「護憲+コラム」より
パンドラ
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明けましておめでとうございます

2018-01-01 13:27:52 | 暮らし
               

東京は静かで穏やかな元旦となりました。

今年も政治に公平・公正を求めて、皆さんと共に、焦らず粘り強く考え、発信、行動していきたいと思います。

本年も宜しくお願いいたします。

「護憲+BBS」「どんぺりを飲みながら」より
笹井明子
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フィクション:「高プロ制度」

2017-08-10 09:39:13 | 暮らし
東アジアの片隅にある小さな国のお話です。

A:おい、これは何だ? 何々
「高度プロフェッショナル制度についてのお知らせ
全て我が企業で働く人材は、正規、非正規に関わらず【高度プロフェッショナル士】の資格を取ること。
なお、資格取得者には特別手当てとして毎月100円を上乗せする」
何だこりゃー。何々
「我が企業は国際社会におけるグローバル化を目指して少数精鋭の人材を……」
何だこの張り紙は、ふざけるな! ははあ~高度プロ何とかか。
企業がそれと認めた者は全て【高プロ】になる、って誰かが言っていたがこれのことか。

B:お、なに怒ってるんだい。この張り紙か、ひでえ話じゃねえか…。
何で70過ぎた俺達がスーパーのカート片付けや自転車の整理や駐車場の管理やって、高プロにならなきゃならないんだ!

A;残業代浮かせるためだろ。ペラペラの紙切れ1枚で資格取得とかいって、はいあなたは【高プロ】になりました~?冗談じゃねえや!
それでなくても少数精鋭とか言って、何百メートルもある駐車場走り回ってカート片付けたり自転車移動したりクタクタになっているというのに。

B:なんでも来月からまた俺たちの就業時間減らされるらしいぜ。後は皆様方の技術力でこなして下さい、だと。
何しろ俺たちに支払われる金は人件費じゃなくて、備品その他になってるらしいからな。
誰だ!こんな法律通した奴は。よし!次の選挙迄に名前調べて絶対落としてやろうぜ!

A:そうだ!俺も絶対忘れないぜ。こうなったら若いの年寄り集めて【高プロ】反対同盟つくるぜ。

翌年【高プロ制度】に同意した「労働連盟」は組合員の猛烈な抗議にあい同意を撤回し、国民も強行採決で通した【高プロ制度】に嫌気が差して内閣の支持率も一桁迄落ちてしまった。政権の延命を図りたい内閣は遂に【高プロ制度】を廃止せざる得なくなった。

何だやれば出来るじゃないの。でも、企業も国もこんな分かり易いやり方はしないでょうね。
呉々も騙されないようにしましょうね。

※※ この話はフイクションです。実在の人物とは何の関係もありません。

「護憲+BBS」「どんぺりを飲みながら」より
パンドラ
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映画「大人の恋の測り方」

2017-06-24 11:31:38 | 暮らし
フランス産ラブコメをみてきました。

彼女は美人で有能な弁護士。元夫とは3年前に離婚しましたが、同じ事務所の仕事上はパートナー。元夫は今でも彼女に未練たっぷり。

そんな彼女が出会ったのは、有能な建築家で、知的でユーモアもあり、人の心を思いやる優しさを持っている、しかもリッチな理想のパートナー。但し身長136センチの。

日本でも昨今見た目が全てとか、就活にもビジュアルが影響するなどと言われるようになりました。でも「見た目」って何でしょう?

フランスでも見た目はかなり影響するらしく、2人で街を歩けば身長差にかなりの人達が振り返り、彼は余所見をしている大人にぶつかられなぎ倒されます。レストランに入れば人々にチラ見され一寸法師等と笑う声も聞こえてしまいます。

でも彼は臆する事なく彼女に接します。この彼がまた凄く素敵な大人なのです。彼女が悩んでいるときに助言した女性秘書が良い味をだしています。

彼女が出した結論と二人の恋の行方は…。

この映画はお洒落で、気軽にみられるラブコメです。でも観ているうちに、自分の内なる偏見と差別意識に気づかされます。

私も「そうは言っても現実はねえ。」なんて言葉は封印して、暫くは映画の余韻を楽しみましょう。

「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
パンドラ
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ミステリー紹介:「闇に香る嘘」 (下村敦史)、「罪の声」(塩田武士)

2017-03-04 19:29:50 | 暮らし
前回のミステリー紹介からだいぶ間が空いてしまった。

3冊目は、「闇に香る嘘」 下村敦史

村上和久は自分の兄に孫への腎臓移植を頼むが、何故か頑なに拒否される。中国残留孤児の兄が永住帰国をした際、既に失明していた和久には事実を確かめる術もない。本当にこの男は兄なのか?自分や母を騙しているのではないか?

この物語の作者、下村敦史さんは物語のテーマからしても年配のかと思っていたが、1980年生まれの若い方なので意外だった。

中途失明者の生活、外出する際の不安と恐怖も丁寧に描かれている。主人公が盲目故に、読んでいる私もモヤモヤした霧の中を手探りで歩いているようなもどかしさを覚えて恐かった。

そして国策に翻弄され中国の地に棄民された人々。永住帰国迄の厳しい道程。帰国してもなお差別され就職もままならない日本という国。

「この人達の生活を保証すると、大空襲での被害者等、全ての戦争被害者を保証しなければならなくなる」という理由で誰も責任を取らない。「戦争の被害は全ての国民が分かち合うもの」という身勝手な建前を押し付けて国民を見捨てる冷たい国。

「生きて捕虜の辱しめを受けず」と言っていた軍人は、偶々遁走した軍隊に取り残され、満州の地で赤子を「敵に見付かるから始末せよ」と命じ、無事帰国した彼は軍人恩給を支給され天寿を全うする。

「誰も責任を取らない」は70年余り経った現在でも変わる事はない。

4冊目は「罪の声」塩田武士

1984年に世間を騒がせたグリコ森永事件を元に書かれ綿密な取材の跡が伺える。

京都でテーラーを営む曽根俊也はある日、父の遺品からカセットテープ黒皮の手帳を見付ける。テープには自分の幼い声と手帳には製菓メーカーの名前が書かれていた。事件に巻き込まれた子ども達のその後。人生を粉々にされ何十年経っても苦しみ続けている姿が痛ましい。

これ等の4作品に共通するのは、謎に満ちたカーテンの向こうに透けるように見える国家。富と権力を持った彼等の姿。誰も責任を取らず逃げ切ろうとする者達が今日も現実世界でのテレビ中継にその姿を晒しているが。

そしてそれらと向き合わざる得なくなった個人。その小さな個人が、権力を追い詰め事件を解き明かして行く。しかしその最高権力者迄はたどり着いても追い詰める事の出来ない歯痒さ。

それ等が綿密な取材と資料を積み上げ、または事件の現場迄足を運びその場所で起きた事を検証する。これ等の作品はフイクションであるがノンフイクションのようなリアルさを持っている。

この作品を書いたのが30代~40代の若い人達だったのも意外だった。

私の紹介では作品の素晴らしさをお伝え出来ないと思うが、ぜひ一度お手に取ってご覧になることを願っている。

「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
パンドラ
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貧窮問答歌を読み直す

2017-02-27 16:22:08 | 暮らし
「貧窮問答歌」は、言うまでもなく山上憶良による和歌作品である。

http://www.geocities.jp/sybrma/51hinkyuumondouka.html

国語や日本史の教科書でも取り上げられるため、内容をはっきりと思い出せずとも「貧窮問答歌」という名前だけは記憶に残っている人も多いだろう。

「貧窮問答歌」は長歌と反歌である短歌各一首ずつからなり、『万葉集』の巻五に収められている。一般に教材として取り上げられる芸術作品は「真・善・美」に代表される理想的な姿や個人の心情を表現することが多いが、この歌では人々の貧しい暮らしを詠んでいる。

もちろん、この歌に詠まれた出来事が事実なのか否かは現代となっては論証しようもなく、本当か嘘かを証明することは、この歌を鑑賞するにあたっても大きな意味を持たないはずだ。ただ、こうした歌を詠む背景には、困窮する人々の暮らしぶり、心無い役人による厳しい税の取り立てなどがあったことは間違いないだろう。
 
千年以上の時を超え、今も残っている作品テクストと出会えることは実に嬉しい。実際には会うことのできない人の想いを目にすることができること自体は幸せであるが、こうした必死に声を振り絞るような作品を目の前にした時に、これは遠い昔のことなのだと突き放すような気持ちには決してなれず、むしろ共感を覚えてしまうことは非常に悲しい。
 
文明が進歩し、生活は楽になり、ものが溢れていても根本的な部分には何ら変わりがないのではないか。今の日本にも貧困は確かに存在し、その日を生きることがやっとという人もいる。なにより、あらゆる面で人々の生きづらさは決して消え去ったものではない。
 
「貧窮問答歌」は長歌の部分が問答形式になっている。冒頭から「汝が世は渡る」の部分までが問いで、「天地は」から長歌の最後までが答えの部分である。貧者が自分よりもさらに貧しい者に対して暮らしぶりを問うというものが一般的な解釈であったが、近年では役人が貧者を尋ねているという解釈も出てきているようだ。

いずれにしても、読んでいると自分よりも貧しい人の状況を直視するような人は、今日、日本のトップを担う人間たちの中にはいるだろうか、と考えさせられる。
 
自分のしてきたことを子どもたちに称賛してほしいと考え、世界を牛耳る強国に追随しようとして結果的に振り回されてしまっているような人に、この国に今も日々の生活が苦しく必死に生きている人がいるということをまずは理解してほしい。

「貧窮問答歌」の最後の短歌は、現代日本に生きる人たちにとっても自らの気持ちを代弁するものであろう。

世間乎 宇之等夜佐之等 於母倍杼母 飛立可祢都 鳥尓之安良祢婆
(世間(よのなか)を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば)

「護憲+コラム」より
見習い期間
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冬の夜長はミステリー

2017-02-11 09:56:17 | 暮らし
テレビがちっとも面白くない。

そんなわけで、私は夜はもっぱら読書にふける事にした。その内の何冊かを紹介しょうと思う。

一冊目は「ガラパゴス」上下 (相場英雄)。

身元不明のままとなっている死者のリストから、殺人事件の痕跡が発見される。不明者リスト902の男は自殺に見せかけて殺害された派遣労働者だった。そこには、コスト削減に走り非正規の人材を部品扱いする大企業、人材派遣会社の姿があった。

ハイブリットカーは本当にエコカーなのか?日本の家電メーカーは何故凋落したのか?そこまで切り込んで作者は描ききっている。最後まで読み終えた時、ガラパゴスの本当の意味が分かった。

やりきれないのは、殺害されたのが沖縄出身者で、派遣労働者として日本中を転々としていた青年だったこと。直接手を下した者も東北出身の派遣労働者だったこと。沖縄と東北。二人が酒場にて三線と津軽三味線で演奏する場面が切なかった。

彼に命じた者、その上にいる巨悪は罰せられる事なく、のうのうと生き永らえている。

読後感は良くなかったが一気に上下1000ページ近くを読んでしまった。

二冊目は「砂漠の影絵」(石井光太)。イラク戦争での日本人人質事件を題材にしている。

この小説は、イラク戦争でアメリカがサダムフセインを倒し、イラクに進攻(実際は暴力、略奪、無差別爆撃)、無法地帯になったイラクで孤児になり、後に「イラク聖戦旅団」の 頭領となった若者のモノローグから始まる。

この物語では、テロリストと呼ばれた男の視点が描かれている。狂信的な人物ではなく、地獄と化した祖国で平和を願い、人々の静かな暮らしを願った若者だった。

そしてイラクで「旅団」の人質となった五人の日本人の顛末を描いている。同じ人質になっても、「官僚、商社の社員」「フリーライター、ボランティアの女性、自らの事情でイラクに渡った女性」で命に差があるのか?

この小説もページをめくる手が止まらない。

それにしても、気になるのは安田純平さんのこと。全然情報が入ってこないのだけれど生きておられるのだろうか。

とりあえず今日はここまで。

「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
パンドラ
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明けましておめでとうございます

2017-01-01 15:31:31 | 暮らし
               

青く澄み渡った空、暖かな空気の中で、新しい年がスタートしました。
2017年が、今日の天気のように穏やかで晴れ晴れとした一年となりますように!

本年もよろしくお願いいたします。

「護憲+BBS」「どんぺりを飲みながら」より
笹井明子
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