老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

「大竹まことゴールデンラジオ」に高村薫さんが出演

2023-08-29 09:53:26 | マスコミ報道
「大竹まことゴールデンラジオ」というラジオ番組に作家の高村薫さんが出演しました。
 
https://youtu.be/d9cniUhGB5E?si=U7WZlyeXniXuBQrj

高村薫さんは、番組の前半では大竹まことの質問に答える形で、原発汚染水の海洋投棄について意見を述べを述べていました。
「原発の汚染水を海洋投棄をする事によって福島の漁業は立ち行かなくなるだろう。これは外交政策の失敗である。」

更に「安倍政権から、重要な事を次々と閣議決定等で決めているが、これは国民が何も言わないから。大事な事を国会にもかけずに次々と軽々と通している。 敵基地攻撃能力も閣議決定されてしまったが、もし日本にある54基もの原発が攻撃されたら日本は終わる。ロシアのウクライナ攻撃を見ても戦争は何でも起きる」と。

一言一言が納得出来る内容でした。

やはり私達が声をあげ、明日にむかって出来る事をやって行くしかない、と痛感させられた番組でした。

「銃を置け、戦争を終わらせよう」という新刊についても紹介していました。
書店に行って手に取ってみようかと考えさせられた番組でした。

「護憲+コラム」より
パンドラ
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気候変動への挑戦-小さな島嶼国Barbadosの事例

2023-08-28 16:07:50 | 環境問題
「気候変動への挑戦-小さな島嶼国Barbadosの事例:
 グローバルサウスが、国際金融構造を変革して、サウス・サウス間協調の強化を目指す」

「グローバルサウスと世界秩序」プロジェクト(The Global South in the World Order Project)という機関があり、毎月グローバルサウスの専門家を集めて会議を開いている。

グローバルサウスの立場から見た国際関係の話題を議論すること、現在の西欧が主流の考え方に対して異論を提示すること、そして非西欧的な視点をワシントンの政策立案サークルに投げかけること、を目的としているという。

先週開かれていたBRICSの会合についてネット情報を見ている過程で、この存在を知る機会があった。そもそもBRICSが向かう方向の一つは、グローバルサウスという存在を如何に世界に認知させていくか、そして現実に存在しているが故に当然持っていてしかるべき彼らの発言権を如何に確保し保証していくか、ということであろう。その流れから今回BRICSはエジプト・エチオピア・イラン・サウジアラビア・UAEそしてアルゼンチンを新たにメンバーに迎え入れたのであろう。BRICSの動向も今後注目すべき対象である。

そしてグローバルサウスの問題は何もアフリカ・アジア・中南米に限った話ではないと常々思っている。グローバルサウスの国の中にもグローバルノース部分は存在しており、またグローバルノースの中にもサウス部分が存在しているということが、現代社会の困った状況をピッタリと表現していると思っています。

原因は、ここ数十年にわたりグローバルに蔓延した新自由主義・経済拡張市場至上主義だったことは言うまでもなく、故に世界の格差拡大は止まることを知らずに進み、同じく日本国内にもグローバルサウス部分の拡大化が進んでいるのが実態です。

今までもグローバルサウスの視点を一つの物差しに世界状況を見てきております。この世界の現況情報が日本国内の状況を考えていく際にも極めて示唆的なものを提供するとの思いから、そんな過程で見つけた「グローバルサウスと世界秩序」プロジェクトの発信する情報の存在を先ずは紹介したいと思います。
世界の格差矛盾の問題を考えるだけでない、日本の中の格差矛盾をも考えていく上で意義あるものと思います。
今後折に触れて紹介していきたいと思いますが、先ずは8月25日付けの記事から取り上げてみます。

***
「グローバルサウスと世界秩序」プロジェクトはこの7月28日、グローバル金融構造変革に関するBarbadosの2022年Bridgetownイニシアティブ構想について討論を行っている。この構想は、島嶼国BarbadosのMia Mottley首相がグローバルサウスへ向けての気候変動対策資金の利用の上で障害となっているものを取り除くことを目指して積極的に主張している提案のことです。

専門家らはこの会議でこれらの諸国の負債の重圧を軽減するための具体的方策を検討し、そしてグローバルサウス全体を支援する上ではBridgetownイニシアティブ構想を推進することが如何に重要であるかを議論している。そして国際金融機関の協力ならびに国際金融機関の効果的な改革を確保し、進めていくのに西欧諸国が中国と協調することの重要性も議論しています。

***
「グローバルサウスの気候問題向け資金調達の挑戦」
Veronica Gutman氏(ブエノスアイレス大学・アルゼンチンTorcuato Di Tella財団研究員)

グローバルサウスは今、先例のない絡み合った課題に直面している。生活費危機・負債危機・予算と財政上の課題・政治的および制度的困乱状態そして緊急事態の異常気候危機。これらの課題には緩和(Mitigation)と適応・順応(Adaptation)の為の投資資金として数兆ドルが要り様とされている。

途上国が、回復能力を高め、そして低炭素型経済を促進展開するには、気候課題向けの資金を緊急に展開することが必要である。コロナパンデミック・ロシアとウクライナとの戦争および異常気象が悪化を辿るという厳しい制約を経済的・社会的に受けているとはいえ、途上国は適切な緩和措置努力を講じる必要がある。必要となる財源は今起こっている異常気候の損失と損害(Losses and Damages)の両方を手当てするとともに、今後に必要とされる適応・順応措置努力にも手当する必要がある。

しかし、国際的な気候変動向けの融資構造は、通常短期的金融投資に適用されるモノサシを使って各国を評価しており、基本とすべき長期的な低炭素社会構築向けのインフラは視野に入っていない。広く行きわたっている金融投資の根拠として考慮に入れられているのは、国際的な主要投資家らの見方や好みであって、温室効果ガス(GHG)排出を世界規模で削減するという責務や途上国の明確な責務といったものは無視されることになる。

途上国のGHG対策動向を修正する上で緊急に必要なこと、そして避けることのできない気候変動の打撃に直面している地球を緩和化し順応化し助ける上で緊急に必要なことは、金融の流れを支配している評価基準に革命的な改革を直ちに行うことである。
ことに途上国にとって利用可能な資金は3倍化すること、損失と損害に対する交付金・補助金(grants)は利用しやすくすることが必要であり、低コストの長期譲許的融資が提供されるべきである。

更に、革新的な金融商品を開発することが重要である。例えば負債-気候スワップ(Debt-for-climate swaps)は途上国の負債負担を軽減することに役立ち、気候変動に関連する要請に応える資金を提供するのに役立つ。持続可能性に繋がる融資は、これらの融資が金利の低減を通じて気候目標を達成した国に報いることが出来ることから、もう一つの方策になる。

簡単に言うと、現在の経済的および社会的危機の状況の中、気候変動危機により途上国に課せられている挑戦の為の資金ニーズは緊急性があるとともに複雑さもあると言える。これらの諸国は経済の下降および不安定な社会状況に直面している中で、持続可能な開発の達成に努力しており、気候変動対策向け行動への適切な財源を確保することは最も重要な課題となっている。

気候変動への順応・適応策ならびに緩和策の取り組みに対する資金不足を埋め合わせるためには、資金メカニズムの革新化・協調的パートナーシップの構築やグローバルな各課題の優先順位付けの再設定を行うことが大切となる。資源を有効に動かすことで、負債軽減が促進され、そして資金的支援の平等な分配がなされることから、国際共同体組織がこれら諸国の回復力拡大と環境上のリスク緩和に役立つことになる。これらの諸国が直面する多方面の課題が存在するものの、この様な行動を取りいれることによってこれら諸国はより持続可能であり、如何なる国も漏れなく全て包み込まれることになるという、より包括的な将来へと続く道を切り開いていけることになるだろう。

***
「ブリッジタウンイニシアティブ(Bridgetown Initiative)が如何に世界秩序の再考に役立つか」
Brurce M,Mecca氏(Climateworkセンター上級アナリスト)

インドネシアおよび東南アジアの気候変動に永らく携わった経験から、西欧ではしごく普通と思われる西欧の思考様式が如何にグローバルサウスとの間の気候問題の国際間交渉において彼らが公平公正さを欠き、そして愛他心を欠く姿勢を取ることになるのかが、想像ができるのである。

例えば、気候変動事象に基因する損失と損害(Losses and damages)に関わる基金の創設の希望は1991年小さな島国のバヌアツが提起したが、この最も気候変動に脆弱な国々のための基金設立に国連気候変動枠組み条約の締約国が合意したのは、昨年のCOP27の最中であった。実に32年後に実現したことになる。

そもそも損失と損害基金構想の背景は、これまでのGHGの92%分の排出に関わっている西欧が、世界からかき集めた資産を使って自身らは取り得る最大の緩和化策(mitigation)と順応化策(adaptation)で見を守ることを行いつつ、一方ほとんど排出に責任の無いバヌアツやバルバドスのような島嶼国がただただ被害のみを被っており、適切な緩和化策や順応化策を取ろうにも彼らに使い勝手の良い公正公平な世界金融システムがないという、構造の欠陥に注意を払うことが重要な視点である。そして今現在も続く世界金融システムが先進国によって優先的に独占的に支配され続けているという欠陥構造なのである。

かかる背景のもと、昨年のCOP27においてMia Mottleyバルバドス首相が、気候異常事象により良く対応がとれるように世界金融構造を改革するべく2022 Bridgetownイニシアティブを提案した。事実、グローバルサウス諸国の気候変動資金に対する必要性は今後数年中に更に高まっていく情勢である。

ここではグローバルサウス諸国に向かう資金の流れの障害となっているものを取り除いていくことに加えて、グローバルサウス諸国がそれぞれの国の市民の生活水準向上努力を犠牲にしたやり方で気候異常事象の対策を行うことのないよう、国際社会は配慮して保証していくことが重要である。

提言されたイニシアティブは、国際通貨基金(IMF)に対し、利用可能な緊急流動性を拡大するよう促しており、多国間開発銀行(multilateral development banks)に対して1兆ドルの融資手段(lending instruments)を追加するよう求め、多国間機関の支援による気候変動強靭性の為の民間投資を奨励している。

このイニシアティブが、基本としているのは、気候変動事象に大きく打撃を受けており、そして高い利子(先進国の数%に対してグローバルサウスは14%の利息とも言われる)の負債返済に今現在苦しんでいる途上国に対して、気候変動向けの資金が、常時利用可能だということを保証する具体的な方策を提供することである。

Bridgetownイニシアティブの訴えかけの核心部分は、地球温暖化を1.5℃未満に抑えるという2030年の気候目標の達成のためには、少なくとも35兆ドルの利用に障害となるものを取り除くことが出来るよう世界金融システムを改革することを希求することである。

このイニシアティブは必要に迫られて生れたものであり、現在存在し、提示されている多くの解決策は全く持って不充分だと明確に指摘することは大切なことである。現状の解決策が不充分ということは、インドネシアを含めて全てのグローバルサウス諸国にとって当てはまることであり、これらの国々は異常気象に対する緩和化(mitigation)措置、順応化(adaptation)措置、強靭化(resilience)措置に要する資金援助の利用しやすさに関する難題に直面しているのである。

視野を広げて見ると、Bridgetownイニシアティブは、国際金融構造を我々が理解する上で役立つといえる。公正であり、バランスのとれた気候についての国際的統治が如何なるものであるべきか、が今や理解できるといえる。世界は気候変動と闘うためにBridgetownイニシアティブのような現実的な解決策を必要としているが、世界の気候統治を再構築するにはまだまだ多くの作業が残されている状況である。これら残されている作業には、気候変動に対する責任と権利をどのように線引きするか、などが含まれている。

今日、グローバルサウス諸国の気候変動向け資金利用の権利が大きく合意されているのであれば、西欧富裕諸国もまた、現在のGHGの90%以上という過去の排出の責任を負わなければならない。換言すれば、西欧富裕諸国の責任は、グローバルサウス諸国の気候変動向け資金利用を提供することに留まるものではない。手遅れになる前に大気中からGHGを意図的に除去(carbon capture)するというマイナスの排出に相当する努力を西欧富裕諸国は行う必要がある。

ブータンは炭素排出がマイナスという世界でも稀な国の一つである。ブータンでは年間700万トン程のCO2が吸収され、一方で排出は200万トン程という。ブータンの実態を全て西欧富裕諸国にそのまま当てはめるのは妥当でないものの、彼の国の成功実態を検討することは必要なのではないか?

ということで少し、ブータンのことを調べてみました。
国土面積:38,332km2(3,833,200ha)内72%が森林      
人口:80万人程 
1972年以降有名なGross National Happiness (GNH)を、GDPの代わりに政策指標とする。
2009年に国土の森林カバー率が60%を下回ることのないように憲法を改正している。
そして輸出用森林伐採を禁止。
2010年に新森林政策が制定され、それまでの保全重視の政策から森林の持続的利用と保全のバランスを図る政策へと変更している。これにより政策の優先度は生産林の持続的管理、自然保全、流域管理、住民林業と民間林業を含む社会林業、木材産業に重点を置く方向になっている。
河川での水力発電を優先して、農村地域での煮炊き用薪の利用削減を目指して電力無料化を進めているという。
水力発電能力は最大で30,000MW。この内の5%分程の1500MWが開発済みで、その70%分はインド向け電力。2020年までに更に10,000MW分を追加してインドへ輸出する契約をしており、新たに10基のダムを建設中。
2020年までに100%オーガニック食品の生産化を目指し、2030年までに廃棄物ゼロ化とGHG排出をネットゼロに、を目標としている。
観光ビジネスには慎重な姿勢を取っており、観光客に1日200から250ドルの開発手数料を徴収してエコツーリズムと環境保護の両立を図っている。

因みに日本は、国土面積:373,100km2(37,310,000ha)ブータンのほぼ10倍、内森林面積は25,000,000haで森林カバー率は67%。
降水量の豊富さ等、地勢的には極めて類似点の多い国であると思います。
人口密度は平均値として15倍程大きいという違いはあるものの、限界集落やそれに近ずいている地域のことを思うと、事態はそれほど違わず、大いに真似られるというか真似なければいけない部分も大いにあると思うのですが?

***
今回は「グローバルサウスと世界秩序」プロジェクト(The Global South in the World Order Project)という機関の存在を示すことと、それがグローバルサウスの声を聞く良い媒体ということを紹介することを第一にしております。

BRICSも一面グローバルサウスの声の拡大化を重要目標に据えているグループといえます。BRICSの今回の会議については別の機会に取り上げてみます。

11月末のCOP28を見据えて、9月のインドで開催されるG20にModi首相はアフリカ連合を取りこむ発言が既に打ち出されており、アフリカを始めとするグローバルサウスを取り巻いての駆け引きが活発化する様相が出ております。

大切なことはグローバルサウスの使い勝手を中心に据えた金融構造の改革の話の方向が進展していくのか、西欧先進国が従来のGHG排出分の償いを意識した拠出金拡大を自律的に進めていくのか、そしてグローバルサウスの声が高まることを当然とする世界の方向になっていくのか、がポイントと思っております。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan
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続:戦後史の「謎」を再検証することの現在の意義

2023-08-27 20:06:14 | 戦争・平和
前回の「コラム投稿」では不十分なので、補足します。

【補足の論点】
山本義隆氏の論稿『近代日本一五〇年――科学技術総力戦体制の破綻』を読み、日本の「近代戦」の概念は音を立ててパラダイム転換を遂げました。「近代戦」とは、実際には、「第一次世界大戦」(日本はドイツが敵国だったのですが)の衝撃で、「総力戦体制」という政策転換を余儀なくされていく、日本の支配層(政治家、軍部、財閥など)の姿でした。

総力戦体制とは何か。それは結論的に言えば、①科学者の戦争動員と、②科学技術の産業構造の転換、の二つです。

科学者の戦争動員とは「何」か。
例えば、ドイツのハーバー(フリッツ・ハーバー)なる科学者は、チッソ固定法でチッソを空中から取り出し、化学農薬を発明すると同時に、爆薬の原料となる硝酸の大量生産を可能にし、毒ガス博士という異名の軍事科学者でもあったのです。「科学者」というのは正確ではなく、テクノクラートというべきです。ドイツなどでは、他にも、近代工業の担い手として、ダイムラーやベンツなどが「科学者;テクノクラート」として誕生し、戦争は彼らが「担う」総力戦体制に変貌を遂げたのです。

「科学技術の産業構造の転換」は、総力戦体制には、日本の産業がいままでの「機械工業」ではなく、「近代化学工業」に産業転換を遂げないと、総力戦体制にはならない、ということです。

山本義隆氏は、「3、総力戦体制をめざして」で次のように書いています。
「今後の戦争がこの意味での総力戦である限り、平時の産業生産能力は、とりもなおさず、潜在的軍事力であることを意味し、平時はその能力を高め、戦時においては、その国力のすべてをいかに有効に使うかが、戦争に勝つための条件になる。」

このようなパラダイム転換を歴史的に再考しなければ、現代世界の「諸問題」は解けないでしょう。

次回コラムでは、「マンハッタン計画」の歴史的な問題点なども再検証します。ここでは、科学者が世界大戦の帰趨を決した「最強の兵士」であると考えるべきです。映画「オッペンハイマー」はその視点で、鑑賞するべきでしょう。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
名無しの探偵
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戦後史の「謎」を再検証することの現在の意義

2023-08-26 21:00:07 | 政治
1,はじめに

初稿が整っている時点で、岸田首相主導の「処理水」の(IAFAの「安全」というお墨付きがあり?)海洋投棄が始まった、というニュースがあり、初稿の文章構成が影響を受け、精神状態が平静さを失っていた。日本における原発の導入が岸信介の指導で行われたと、山本義隆氏の「論稿」で知っていたからである。

だが、昨日、今日で、初稿の修正ができるはずもない。今回コラムは初稿のままで、書くことにする。その時のライトモチーフは、かなり前にコラム投稿した内容の問題意識から発展させた、現在の日本政治への疑問と提言になるものである。

以前の投稿は、
「日本の戦後政治で、なぜ、東条内閣の閣僚(実は東条政権の知恵袋は岸商工大臣だったと思う)が、55年体制の自民党を発足させ、アメリカの要請で第二次安保改定を決議させた「首相」になることができるのか。敗戦国、ドイツと比較しても、納得できる政治決定とは思えない。」
以上のような論稿であった。

しかし、それだけでは岸信介という「妖怪」と言われている政治家個人の問題で終わり、安倍晋三の祖父という特異な怪物首相のファミリー問題に還元されてしまい、国家の指導者グループなどの政党ぐるみの全体像は「カルト癒着問題のウヤムヤ」の目くらましに片づけられ、日本の憲法政治の危機はオフリミット(立ち入り禁止)で終わることになるだろう。

2,「なぜ、日本政府は憲法秩序を無視して、改憲へと突き進むことができるのか。」

現在の日本政治は安倍政権以降、菅政権、岸田政権と変わってきたが、怪物安倍晋三の敷いた憲法政治からの撤退(安倍は「戦後レジームからの脱却」と嘯く)をさらに前進させた、事実上の憲法規範の破壊工作と言ってよい政治決定となっている。

今回も、福島原発事故という未曽有の大事故の一つを国家自らが引き起こしているにもかかわらず、「処理水」の30年にも及ぶ「海洋投棄」となっている。これが、「唯一の被爆国」とのアリバイ証明:原子力の脅威は人類にとって危機である:を78年間も発言してきた政府の行為なのだろうか。

他にも、日本政治の問題点は多々あるが、これは次回に譲る。

なぜ、日本の戦後政治は岸信介が創設したという自民党政治の長期独走体制なのだろうか。現在の時点で、足踏みして、カルト癒着問題や、影の総理と言われている木原誠二副官房長官のスキャンダルにとどまっているなら、日本の権力構造の「謎」解きは永久に困難だ。

一体、何が問題だったのだろうか。紙幅も残っていないので、「結論」を述べる。

日本の占領改革の大きな目玉となった憲法制定が昭和22年から発布されたが、憲法学者などは、「憲法制定経過」の一悶着に大幅な頁を割いて、松本譲二の指導による日本の憲法改正案は、マッカーサー元帥の怒りを買い、これでは戦前の旧憲法の「焼き直し」であり、この際、わが国が憲法の草案を作ると言わしめた「事件」にかまけており、そのすったもんだの論争に終始している制定経過を書いているだけであった。

私が憲法テキストを読んだのは、法科の学生であり、「そうだったのか」とその時点では溜飲が下がった記憶があるが、現在では、この「連中」(東大学派の憲法学と言ってよい)は政治的な論点を(故意にか、過失からか)外しているな、と思っている、

占領の歴史に戻ると、その時の「日本の状況」はドイツなどと異なり、「間接統治」と言われていた。ところが、間接統治の具体的な中身はテキストには書かれていない。

ここが最大の問題点であるだろう。具体的に言えば、「公職追放」とかいうGHQの措置と戦争指導者を裁く「東京裁判」に目を奪われてしまい、肝心の「間接統治」の当局担当者である、政治家と官僚行政の担い手(官僚制度の担当者たち)は「不問」とされて、戦前、戦中の集団は「無問題」になっていることが理解される。

この階層秩序のトップが「妖怪、岸信介」であり、その下部には相当の人材群がひしめいているのだ。

この時点でのエピソードが「法学雑誌」の対談にあって、記憶しているが、現在の刑事訴訟法の起草段階での裏話が書かれていた。ある検察官曰く「團藤重光先生がまだ来ていないのです」と、ややあって、その検察官は「團藤先生が来ましたので、草案をどうするか話し合いましょうか」となっている。この検察官は私の友人の父親だった。その起草された「刑事訴訟法」には、憲法の「自白禁止条項」の肝心な部分を「例外規定」を置くことで、憲法の人権規定を骨抜きにしている法令となった。(詳細は次回で)

3,終わりに

結局、何を言いたいのか、具体的に明らかにしよう。

戦後の憲法学や政治学には、権力論、つまりパワーポリティクスが欠如していて、論理が詰められておらず、現在にまで続く自民党の憲法形骸化政治がなぜ続いてきたのか、謎が解明できない、使えない論理構成になっているということだ。

明言するならば、戦時と戦後で「権力の交代」がないまま、現在の日本政治があり、相変わらず、戦前の官僚集団の「成れの果て」たちが官僚行政を実行しているという悲惨な政治だということなのである。

今回は問題提起になったが、次回はこの問題提起を具体的な事件と裁判を引用しつつ、具体的に述べることにしたい。

「護憲+コラム」より
名無しの探偵
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「太平洋戦争の真実 そのとき、そこにいた人々は何を語ったか」

2023-08-15 21:36:11 | 戦争・平和
「カミカゼの幽霊: 人間爆弾をつくった父」と同じ著者が書いたものです。
その著書の要約文(抜粋)を転記します。こんなことで、こんな軍人のせいで日本人300万人以上が戦死したわけです。

◆太平洋戦争の真実 そのとき、そこにいた人々は何を語ったか( 2023/07/06発刊、神立尚紀著、講談社)

「戦争は壮大なゲームだと思わないかね」――終戦の直前、そううそぶいた高級参謀の言葉に、歴戦の飛行隊長は思わず拳銃を握りしめて激怒した。
「私はね、前の晩寝るまで『引き返せ』の命令があると思っていました」ーー艦上攻撃機搭乗員だった大淵大尉が真珠湾攻撃を振り返って。
「『思ヒ付キ』作戦ハ精鋭部隊ヲモミスミス徒死セシメルニ過ギズ」ーー戦艦大和水上特攻の数少ない生存者・清水芳人少佐が、戦艦大和戦闘詳報に記した言葉。
「安全地帯にいる人の言うことは聞くな、が大東亜戦争の大教訓」――大西中将の副官だった門司親徳主計少佐の言葉。
「私は『決戦』と『手柄を立てる』という言葉が大嫌いでした。決戦というのはこの一戦で雌雄を決するということなのに、決戦だ、決戦だとなんべんも。そんな掛け声で部下をどれほど失ったかわかりません」ーー零戦初空戦を飛行隊長として率い、終戦まで前線で戦い続けた進藤三郎少佐。
「戦後、GHQの占領政策を聞いたときにガッカリしました。なんだ、二・二六の青年将校がやろうとしていたことと同じじゃないかと」ーー日米開戦前に中国戦線からのベテラン搭乗員。二・二六事件の折は、予科練の生徒で鎮圧軍として出動した。角田和男中尉。
「日露戦争でロシア軍の捕虜になった人が、日本に帰れずにアメリカに渡って浄土真宗の僧侶になっていて、マッコイに会いに来たことがありました。立派な人でしたが、我々も日本がもし勝っていたら帰れなかったでしょうな。負けて、日本に軍隊がなくなったから帰ってこれたようなもんですよ」――戦中、捕虜となって米本土の収容所にいた中島三教飛曹長。

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B0C9TKXW7K/ref=dbs_a_def_rwt_hsch_vapi_tkin_p1_i1

「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
猫家五六助
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「カミカゼの幽霊: 人間爆弾をつくった父」 (神立 尚紀 著)

2023-08-15 21:22:13 | 戦争・平和
終戦記念日の今日、webでこの記事を読みました。ヒコーキ好きの私が長年、「特攻」や「桜花」について軍事・航空専門誌を読みつつ、「なぜ、こんな無謀な作戦が承認され、実機の製作に至ったのか」を補完してくれる内容です。

人間爆弾「桜花」と新幹線0系、その数奇な関係 殉職したはずの「発案者」、実は生きていた(筆者;神立 尚紀さん)

神風特攻隊を発案・実行した軍人は、みずから特攻したり自決したりしています。しかし、自分の命をもって償うなど、私は認めません。皇国・天皇を信奉して国民を兵器の部品にした時点で、無責任の極みなのです。

精神論でカッコイイことを主張し、安全圏にいるヤツほど無責任で、自分に死が迫るとトンズラする。戦時中の軍部・大本営然り。満州の関東軍、然り。戦後78年経っても彼らをかばい、検証してこなかった国粋主義者、それにブラ上がるネトウヨ、そして今の政治家も然り。

人間爆弾「桜花」を発案した男は戦後を生き延び、家族を持ち、布団の上で死んだそうです。その点を含め、神立さんがルポルタージュした書籍。即、amazonで発注しました。

カミカゼの幽霊: 人間爆弾をつくった父
(2023/6/30発刊、神立 尚紀 著、小学館、1,980円)


「護憲+BBS」「 明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
猫家五六助

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戦争の体験と平和への思いを語り継ぐ

2023-08-15 13:39:40 | 戦争・平和
「機銃掃射逃れ九十路(ここのそじ)の終戦忌」 藤原日出(90)

これは、戦後78年目の終戦の日の今日、「東京新聞」一面トップに掲載された「平和の俳句」です。

この俳句を読んで、私は、「護憲+」発足当初からのメンバーの一人が2009年に投稿した「東京大空襲」という記事を思い出しました。
https://blog.goo.ne.jp/rojinto_goken/e/f8b6123ff922586518f56ac795d1e841

『・・・1945年3月10日の東京大空襲から2、3日経って日暮里駅の橋の上から浅草方面を眺めると、見渡す限り廃墟となった街の向こうに、国際劇場の大きな白い壁だけがぽつんと残っていました。ここに住んでいた人々は、大切な物も思い出も、中には命まで失ってしまった。無念の情が当てもなくさまよっている気配に、私と友はしばし言葉もなく立ちすくむばかりでした。そして明日はわが身の不吉な予感も。
・・・
4月13日の夜、ラジオの「関東海面警戒警報発令」の報に飛び起きました。
・・・
案の定しばらくすると空襲警報が発令され、B29特有の不気味な爆音が響き始めると「逃げろ!」と声がかかり、あわてて近所の公園に。途中でぽんぽんと石でも落ちるように焼夷弾が降り注ぎ、肝を冷やしたもののなんとか無事でした。あの時防空壕を出るのが少しでも遅れたら、きっと蒸し焼きになっていただろうし、弾がちょっと外れたら頭が木っ端微塵になっていたに違いない。
・・・
燃えやすい木造の日本家屋に注目して、焼夷弾による冷酷非情な無差別爆撃を計画したカーチス・ルメイ少将は「この空襲が成功すれば、戦争は間もなく終結する。日本降伏を促す手段は火災しかなかった」。トルーマン大統領の原爆投下の理由も似たようなもの。戦争はすべてを正当化してしまうのです。』

「東京新聞」は、戦後70年以降、毎年8月に「平和の俳句」の募集・掲載を続けてきましたが、「平和の俳句」の選者の一人、夏井いつきさんは、今日の選者の言葉の中で、「誰もが希求するのは、三度三度のご飯が当たり前にいただける平穏な生活が続くこと。平和な風が吹き続けること」と言っています。本当にそのとおり!

「明け染める 天つ美空は 爽やかに」
この俳句は、終戦直後に生まれた私に母方の祖父が、「明子」の名前と共に贈ってくれたものです。

この句には、終戦の前年に学徒出陣にとられた長男(母の弟)が、フィリピンに向かう航空母艦の沈没で戦死するという喪失を経た祖父の、ようやく訪れた平和への希望と明るい未来への願いが込められています。

「護憲+」発足から20年が経ち、当初積極的に発言して下さっていた戦争を知る世代のメンバーは、皆さん掲示板から去り、残念ながらお話を聞く機会がなくなりましたが、祖父が俳句を通して私に託した思いを胸に、先輩たちの戦争の記憶と平和への意志を受け継ぎ、これからも語り継いでいきたいと思います。

「護憲+コラム」より
笹井明子
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平和憲法の下、人権の旗の下、結集しよう。人権、憲法軽視、無視の政治を廃棄しよう

2023-08-11 17:45:49 | 政治
近頃の流行り、
権力者側が特権、利権、人権蹂躙に走る中、我ら、個人、個人の尊重を実現する為、人権の砦が欲しいね。 しかし、砦を作るには、政権交代がなければならない。人権に熱心なそれ。 第一自民、第2自民など、論外! 個人の尊重、人権などお付き合い程度。なんせ、日本国憲法が、人権第一と謳っているのだから、政権党にも、完全無視はならない。下野すれば別だが、そんな潔さはないだろう。
 
話を変えるが、一人一票、平等要求に抗して、『地方の声を届ける』を声高にする場合がある。解散総選挙の場合、亦言うかも。1票の価値不平等を、不正な利益を守る為に。歪な選挙区、地盤、区割りを守る為… 勿論、最大限、1票の価値平等を追求せねばならぬが。

8月9日、TV番組『ベトドクちゃんを救え!立ち上がった日本人医師…』を見た…ご存じの通り、彼ら2人は、ベトナム戦争、枯葉剤<ダイオキシンを含む>大量散布のの犠牲者。&2人は、下半身を共有する(結合)双生児。…分離手術が課題だった… 藤本文朗教授が、ベトナムに派遣され… 最初の依頼は、2人専用の車椅子製作だった。
2人は、特注の日本製車イスに乗り、病院内を走り回ることが出来た。サッカーの練習も…

1986年5月22日、ベトちゃんが急性脳症を発症。治療薬がベトちゃんにも周り、副作用を招いた。現地では、治療が出来ず、分離手術の専門家、神奈川県の聖マリアンナ病院に相談…厚生省、日赤に相談…、6月19日羽田にランディング。…日赤に入院加療・CT撮影…分離手術も依頼…果たせず。帰国・・・

1988年6月、7歳になったベトとドク、元気だったが、初めにベトが衰弱、ドクにも副作用が顕れた… ベトナムでの分離手術を現地医療団が決断…
右左の足をどうするか、内臓を誰に与えるか、&一つしかない、腎臓は、誰に⁉ 幸いにも、腎臓は2つ(各1つ)と判明した=届いたCT写真で。 凄いね、こんな分離手術も出来るんだ。今では、何処まで行ったやら…

現在、ドク氏は、結婚し、2卵生双生児(男・女)を設け、4人ともに幸福そうに暮らしている。…べとちゃんは、早世した。いのちは、中々、タフなものと感じた。

ところで、現在進行中の、実質米ロ戦争、どう収まるやら。情報戦の側面もあろうし。しかし、これまでも少なからぬ犠牲者を出している!!汚染も、破壊も。枯葉剤を最初に本格使用したのも、原爆使用したのも米政府。どんな贖罪をしようと? 
ウクライナも、そろそろ、和解講和を考えるべきではないか。 一方的な成果が見通せないなら。

日本人も、しっかり自立しよう。平和憲法の下、人権の旗の下、結集しよう。人権、憲法軽視、無視の政治を廃棄しよう。今こそ!

☆添付
 山陰中央新報・論説 性加害巡り国連部会声明 人権感覚の欠如を批判 8/9
 https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/431075
 佐賀新聞・論説: 国民民主党代表選 対抗軸の明確化を図れ 8/8
 https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1086925
 
★人権の砦、確保するには、人権を毛嫌いする現政権を倒し、政権交代する他ない。本当の主権者となる為に。欲する政治福祉をするために。

「護憲+コラム」より
蔵龍隠士
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「ぼくたちの哲学教室」「世界のはしっこ、ちいさな教室」

2023-08-07 09:59:44 | 教育
「ぼくたちの哲学教室」
https://youngplato.jp/
https://www.youtube.com/watch?v=FfR1V7vYf4k&ab

アイルランド、ベルファスト、カトリック地区にある小学校。アイルランド紛争で、カトリックとプロテスタントの諍いが続いた地区にある。

校長先生は、子供たちに「他人に怒りをぶつけても良いか?」「ことが起きた後、どうするか?」などの問いを出して答えさせていく。

「殴られたら、殴り返せ」と親に教えられたという子供もいる。話し合っていくうちに「怒りはサンドバッグにぶつけよう」となる。

「同じものを見ても、人は違って受け取るものだ」「答えは分からないことを認めてもいい」等々、曖昧さを残す思考の大切さをも学ぶ。

好悪の感情を切り離して「考える」姿には驚く。大人でも難しい。思索には、感情を越えていく力があるのだとつくづく考えさせられた。


「世界のはしっこ、ちいさな教室」は、ブルキナファソ、バングラデシュ北部、シベリアの移動教室で教える女性教師3人。
https://hashikko-movie.com/
https://www.youtube.com/watch?v=6ggcztf61Y4&ab

5つの部族で言語が違って自分の使うフランス語が通じないことを初日に知る教師。船に乗って入り江の家を回って生徒を乗せて教える。雪原をトナカイの橇で遊牧民のキャンプを巡る教師。

3か所の厳しい条件のもとで、子供たちのために教育を与えようとする教師の姿。どんなに教育が大切かを教えられる映画です。

どちらも単館系なので、上映館は多くはないのですが、機会があれば是非ご覧になって下さい。

「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
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2023年7月28日に終了したインド開催のG20環境・気候変動相会合の報道に関する雑感

2023-08-01 15:18:19 | 環境問題
上記会合がインドのチェンナイで開催されていました。

この会合が気候変動に対するものであり、G20のこの課題に対する現在の状況を見定めるという視点から、その成果がどうであったかは興味があり、幾つかの報道機関の報道をもとに紹介する次第です。

また我がNHKがどう報じているのかも比較が出来る格好の機会でもあることから、かかる観点から、NHKがどこまで日本の市民のことを思って活動してくれているかの紹介もしたいと思っております。

では入手可能なネット情報を見ていきます。

1. ロイター配信
表題:G20環境相会合、排出削減で見解に溝 共同声明見送り

 G20は28日まで3日間の日程で、インド南部チェンナイで環境・気候相会合を開き、気候変動問題などについて協議したが、先進国と途上国との間の見解の相違が埋まらず、温暖化ガス排出削減の目標を巡り合意に至らなかった。インド政府当局者が明らかにした。
 当局者によると、先進国側は地球温暖化を抑制し、熱波・山火事・洪水の悪化を食い止めるために、2025年までにGHG排出量のピークを実現し、2030年までに排出量の絶対量を43%削減することを提案した。
 これに対し、途上国側はインフラ整備や成長能力が制限されるとして、この双方に反対した。2015年のCOP21パリ合意を順守するよう求めた。パリ合意は、各国がそれぞれの状況に応じた方法で、地球温暖化対策を進めることを認めている。
 欧州の代表団によると、中国とサウジアラビアはG20協議を通したコミットメントを拒否。
 欧州連合(EU)のシンケビチュウス欧州委員(環境・海洋・漁業担当)は、一部の国がこれまでの気候変動に関する公約を撤回しようとしていると非難し、「狭い国益に基づいて動いてはならない。最も動きの鈍い国により変化のペースが決められることがあってはならない」と述べた。
 G20議長国インドのブペンダル・ヤダブ環境・森林・気候変動相によると、全ての問題に関する加盟国の完全な合意が必要な共同コミュニケの代わりに、協議の成果をまとめた声明と議長総括が発表される。
 G20は先週インドのゴアでエネルギー相会合を開いたが、一部の国の反対により化石燃料の段階的削減で合意に至らず、4日間にわたった会合の最後に共同声明ではなく、成果声明と議長総括が発表された。

2. 共同通信2023年7月28日
表題:G20環境・気候相会合が閉幕

インドで開かれたG20環境・気候持続可能性相会合が閉幕した。
共同声明は採択できず、代わりに議長総括などを公表した。

3.Climate Home News  2023年7月28日
表題:G20気候変動協議は指導者の嘆願にもかかわらず排出削減を達成できず

 COP28議長のスルタン・アル・ジャベール氏と国連気候変動責任者のサイモン・スティエル氏は、G20各国に対し、リーダーシップを発揮し、野心的な排出削減を実現するよう呼び掛けた。
 インドのチェンナイの首脳会議で、先進国は地球温暖化を抑制するため、2025年までに排出量のピークを達成し、2035年までに排出量を、2019年の水準から60%削減するという約束を求めた。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によれば、これは地球温暖化を臨界値の1.5℃に抑えるためには必要とされる条件である。
 しかし途上国側はこの要求に反対し、各国はその置かれている状況により、それぞれ異なった方法で地球温暖化に対する対策を講じるというパリ合意に基づく方式の堅持を主張した、とロイターは報道している。
 この結果はCOP28議長のスルタン・アル・ジャベール氏と国連気候変動責任者のサイモン・スティエル氏とがG20に参加する各閣僚に対し求めていた要請、即ち的確な道筋を構築し、そして気候変動への対抗意志を明確に示した上で各閣僚はチェンナイから帰国してほしい、とすることに矛盾したものである。
 今回のG20会合は国連気候サミット(COP28)に先立ち、各目標に対するコンセンサスを得る重要なフォーラムの位置付けと見られている。G20各国は世界のGDPの85%と排出量の80%を占めている。「世界は各国の指導者らの団結と行動と救助活動を要請している。そしてその出発点がG20であって欲しい」とジャベール氏とスティエル氏は主張している。
 しかし数日の激しい討論の後、今回の会合も、先週のG20エネルギー相会合の結果と同様に合意には至らず、分裂状態で終えることになった。
 一部の欧州当局者は、少数の国が以前の気候公約に逆行する行動をしていると糾弾している。「我々は大胆な選択を求められており、そして勇気と実行約束とリーダーシップを発揮するよう求められている。我々は狭小な国益によって突き動かされるべきではないし、そして最も歩みの遅い国が規定する変革スピードに合わせるべきではない」と欧州環境委員のバージニジュス・シンケヴィチュウス氏は述べている。
 意見の相違により、会議終了時に共同文書を作成することが出来ず、代わりに結果発表と議長による要約が発表された。
 要約では、各国はエネルギー転換の問題とそれをこの文書にどのように反映するかについて異なる見解を持っていると述べている。
 チェンナイでの会談は、化石燃料の使用削減と再生可能エネルギーの目標設定の公約をめぐってG20のエネルギー相が先週土曜日に意見交換をした際の意見相違の再現だった。
 COP28の議長ジャベール氏の描く計画の柱は、今世紀半ばまでに化石燃料を段階的に削減し、2030年までに再生可能エネルギーを3倍化することである。
 オブザーバーらは、これまで幅広い合意が得られていたように思われた再生可能エネルギーの目標に関して、意見の対立が存在することに驚いているという。
 会談に詳しい2人の関係筋によると、先週の会合で各国政府は3つの陣営に分かれていたという。
 EUとドイツに支援を受けているG20議長国のインドは、再生可能エネルギーを3倍化するというより高い達成目標を支持していた。
 フランス・アメリカ・韓国を含むグループは、この公約の骨抜き化を目論み、再生可能という言葉を限定したり、焦点を絞りこむという考えを嫌って、原子力発電や二酸化炭素回収技術をも含む低炭素解決策を含める様な文言に拡張するよう求めている。
 ロシア、サウジアラビア、中国、南アフリカなどの強硬派は、いかなる形の再生可能エネルギーの目標を導入することにも反対していた。
 現在、アル・ジャベール氏率いるCOP28チームに注目が集まっている。11月のドバイ首脳会議に先立ち、ジャベール氏には意見の隔たりを解消し、何らかの合意形成を図る圧力が高まっている。
 「COP28議長国はあらゆる機会を通じて野心的であり、達成可能な目標を明確に約束するよう引き続きすべての関係者に呼び掛ける」と広報担当者は語っている。
 9月のG20首脳会談は、その目標達成に向けた進展を示す最後の機会の一つになるだろう。

4.The Indian Express 2023年7月29日
表題:G20気候変動会議、強化された行動に関する合意なく終了

 先進国が全員に緩和目標の強化を求める一方、途上国のグループは金融と技術に関する未だ実行されていない約束の履行を強調し、先進国に対し、更なる努力を要求した。
 G20環境・気候大臣会合では、気候変動対策の強化を示す如何なる文言についても合意に達することが出来ず、気候変動対策の強化を求める主要経済国の期待は空回りしたままだった。
 G20の環境・気候持続可能性作業部会の作業を終えた閣僚会合では、排出削減目標の引き上げや2025年までの世界排出量ピークの達成など、最も重要な問題について意見が分かれたままだった。
 先進国が全員に緩和目標の強化を求める一方、途上国グループは金融と技術に関する執行されていない約束の履行を強調し、先進国に対し更なる取り組みを求めた。これらの良く知られた溝は、気候変動会議でも野心的な意思決定を妨げてきていた。
 G20で採択された決定は気候変動会議で到達した合意に代わるものではないが、グループ内の国々の経済的・政治的影響力の故に、グローバルレベルで変動を誘因する可能性がある。
 チェンナイ会合では、一部の国が世界の排出量のピークを2025年までに達成するという約束にG20各国が合意することを望んだが、これは途上国にとっては同意できない内容だった。2035年までに世界全体で2019年の基準値から60%の排出量削減に取り組むという提案もあった。現時点での科学的なコンセンサスは、各国が1.5℃目標の達成に期待を持ち続けるためには、2030年までに2019年のレベルから排出量を約45%削減する必要があるということだ。
 G20の途上国グループは先進国に対し、ネットゼロ目標を10年前倒しし2040年までにカーボンニュートラルを達成することを約束するよう要求したが、これもまた全員が同意するものではなかった。
 世界の再生可能エネルギーの3倍化、化石燃料の継続的な段階的削減計画、メタンなどの非二酸化炭素温室効果ガス排出量の削減などが、合意が出来なかった他の問題の諸点であった。インドなどの途上国も、欧州で今年から施行される炭素国境調整メカニズムについて、偽装貿易障壁に当たるとして懸念を表明した。

5.Kuwait Times 2023年7月30日
表題:G20で気候危機に関する合意出来ず 2025年までに排出量のピーク化の合意ならず

 G20の環境大臣らは金曜日、インドで開かれた会合で、世界の排出量を2025年までにピークに達させること、再生可能エネルギー利用の3倍化等、世界の気候危機に対処するためのその他重要な問題について合意出来なかったと述べた。フランスの環境大臣クリストフ・べシュ氏は「特に石炭の段階的廃止や削減についても合意出来ず残念だ」と語った。そして、中国・サウジアラビアとの協議、ロシアとの協議は複雑だったと、べシュ氏は付け加えている。
 会議の議長を務めたインドのブーペンダ―・ヤダブ気候変動大臣は、「エネルギーに関するいくつかの問題といくつかの目標を定めている課題が存在していた」ことを認めている。
 今回のチェンナイでの会合は、世界のGDPならびにCO2排出量のそれぞれ80%以上と影響力の大きい国々のエネルギー担当相らがインドのゴアにおいて、世界の現在のエネルギーの各源泉から化石燃料を削減していくという工程作りに失敗した数日後に開催されたものであった。気候専門家らが洪水・暴風雨・熱波を引き起こしている要因が記録的な高温にあると指摘する中での、今回の合意作りの失敗は緩和努力に水を差すと見られる。
 石油産油国らは、厳しい緩和措置を講じることによる彼らの経済への影響を心配している。そしてゴアでの進展が無かった原因として、ロシアとサウジアラビアを非難した。
 運動家らは度重なる合意の失敗に落胆している。気候変動シンクタンクE3Gのアレックス・スコット氏は「欧州・北米は炎上中で、アジアは洪水に見舞われている。こんな中、G20気候大臣らは日に日に高進する気候危機を抑制する共通の方向性についての合意に失敗している」と述べ、サウジアラビアと中国の抵抗は、彼らが途上国の利害を擁護しているとする主張に反する、とも付け加えている。
 今年のCOP28気候変動会合の最高責任者のアドナン・アミン氏は「この金曜日の会合に参加した全員が、世界が直面している危機の重大性を理解している。だが、一種の政治的了解が働いていると思う。全ての国が先ず自国に直接に関わる利害をおもんばかる所から始めるのは明白なことだ」と指摘している。
 大半の参加国の代表は環境ならびに気候変動担当大臣で、一方米国はジョン・ケリー気候担当大統領特使が代表団を率いていた。そして11月下旬から始まるCOP28会議を主導する石油トップのスルタン・アル・ジャベール氏も出席していた。ジャベール氏は、彼がアブダビ国営石油会社のトップであり、地球温暖化の主要な原因と目されていることから、厳しい批判にさらされてきている。
 欧州連合環境委員のヴィルジニジュス・シンケヴィシウス氏は「壊滅的な気候事象の証拠が増えている。そして人々の暮らしが破壊されている。交渉の歩みは遅く、G20はウクライナ戦争で分極化し、重要な課題に対して明らかな意見の対立が起こっている。エネルギー調達等の望ましいシステム移行を資金面で支援する観点や、短期的に発生する打撃による影響を改善する観点の課題は、永らく途上国と富裕国との間で論争されてきている」と言う。
 インド等の主な途上国は、従来から主要排出国だった諸国が、貧困国側における緩和努力の費用をより多く負担する必要性を論じている。「先進国はどんなことを公約しようとも、それらは実行されなければならない」とヤダブ氏は言う。そして土地の劣化問題や海洋資源の持続可能な利用法等の幾つかの課題については合意に達したと付け加えている。

***

7月28日まで行われていたG20チェンナイ会合の状況を紹介する新聞や論説を紹介しました。チェンナイ会合の模様とその数日前に同じくインドのゴアで開催されていたエネルギー問題会合についても、ある程度の現状認識は得られるものと思います。

現在の気候危機の大半の原因を作り、そして今はその蓄積した資金力と技術力を背景に自国の気候危機への対応は充分に行っている状況にある先進国の優越的立場が一方にあり、そしてもう一方では責任を問われる必要のない国々でありながら、気候危機の惨状を甚大に被っている資金力に乏しい途上国が存在しているという構図を、先ずは絶えず議論の前提に置いておくべきでしょう。

そのような視点を意識した報道を我々は求めたいものです。そういう観点でG20チェンナイ及びゴアに対する世界の報道は全体を通して見ると、視野を広く取りバランスを考慮しており、一定の評価は出来るのではと思います。

***

では最後にNHKがチェンナイ会談をどう報じているかを見てみます。

6.NHK NEWS WEB 2023年7月29日
表題:G20環境と気候変動問題の閣僚会合 共同声明まとまらず

 インドで開かれたG20=主要20カ国の環境と気候変動問題の閣僚会合は、ロシアのウクライナ進攻をめぐる記述などで折り合えず、共同声明をまとめることができませんでした。
 インド南部のチェンナイで28日開かれたG20の環境と気候変動問題の閣僚会合では、気候変動への対応や海洋資源の保全などについて議論が交わされました。
 閉幕後の記者会見で議長国のインドは「持続可能で強じんな未来の実現のために、G20の閣僚は一致した立場を示した」と述べ、成果を強調しました。
 一方で、声明への具体的な記述をめぐり各国の立場に隔たりがあったとして、共同声明を見送ったことを明らかにしました。
 閉幕後に発表された議長総括によりますと、会合でロシアがウクライナ情勢や経済制裁などに関して、ほかの国とは異なる立場を表明したほか、中国は地政学的な内容を声明に盛り込むことに反対したとしていて、ウクライナ進攻などをめぐり、折り合いがつかなかったものとみられます。
 ことしインドで開かれているG20の閣僚会合では、欧米とロシアの対立が続くなか、共同声明がまとまらない事態が相次いでいます。

***

欧米とロシアの対立と言う記載やロシアのウクライナ進攻と言う文言を計4か所で使っていたり、中国が反対したことが折り合いをつけられなかった要因だとしている等、共同声明がまとまらない事態が相次いでいる原因はすべてロシアと中国のせいだと言っているようにうけとれるG20の紹介記事に仕上げております。

異常気象と言う困った課題の存在は認めるものの、極めて健全な国際社会の中での困った国、ロシア・中国、という構図を際だたせようとする悪意とも思える論説と言えます。そして日本を含めた健全な先進的欧米社会が提示する改革プログラムがベストとの意識が見え隠れしているようにも感じます。

今回G20の会合で目指した合意が達成できなかった根本理由は、次の点における先進国側と途上国側との間に大きな溝があり、今回も埋められなかったことが最大の要因でしょう。

即ち、「先進国は全員に緩和目標の強化を求める一方、途上国のグループは金融と技術に関する未だ実行されていない約束の履行を強調し、先進国に対し、更なる努力を要求している。」そして「エネルギー調達等の望ましいシステム移行を資金面で支援する観点や、短期的に発生する打撃による影響を緩和し改善する観点の課題は、永らく途上国と富裕国との間で論争されてきている。インド等の主な途上国は、従来から主要排出国だった諸国が、貧困国側における緩和努力の費用をより多く負担する必要性を論じている。」

NHKの報道姿勢には、現在の気候危機の大半の原因を作った日本も含まれる先進諸国の責任意識の希薄さが、そして自国の気候危機の軽減策もそのグローバルサウスから奪い取り蓄積した資金力と技術力を背景に講じることさえ整えればそれで良しとする、優越的な傲慢さが現れていると思います。

責任を問われる必要のない、ただただ気候危機の惨状に疲弊している途上国のことをおもんばかる眼差しの欠如を感じてしまう、極めて残念な報道姿勢と考えます。

そして先進国対途上国という構造に存在する格差問題を思わず、前提にして考える癖がついてしまい勝ちですが、先進国の中にも、そして途上国の中にも同じ格差問題がそれぞれ潜んでいるということも、議論の大前提に加えておく習慣を持つことも重要と思っております。

我々のまなざしを向けるべき先は非常に多く、そして見た目は極めて自然に見えてしまうものの、それでいて極めて力強く格差を強要する勢力が存在することに注意し続ける必要を感じます。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan
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