(1)問題の所在
わたしの好きな女優木村文乃主演のTVドラマに【蝶の力学 殺人分析班】という作品がある。
※連続ドラマW 蝶の力学 殺人分析班|オリジナルドラマ|WOWOW
蝶の力学とは、“ブラジルで羽ばたいた一匹の蝶の波動が、米国では大きな風のうねりになる”と言う話を指す。日本流に言うならば、“風が吹けば 桶屋が儲かる”と言う話に近い。要は、何でもないような出来事が、周囲に大きな影響をもたらす、という話にヒントを得たサスペンスドラマである。
実は、安倍暗殺は、暗殺事件そのものの政治的影響よりも、はるかに広範で深刻な影響を日本社会と日本国民の心に与えている。文字通り、蝶の羽の一振りが、様々なハレーションを起こし、日本を根底から揺さぶる大暴風になりつつある。
おそらく、後世の歴史家は、安倍暗殺事件を戦後史の転換点として評価するのではないかと想像する。
(2)安倍暗殺の意味
歴史的に見ても、政治家の暗殺は常になにがしかの歴史の転換点になる場合が多かった。それは、例えば、J・Fケネデイのように国民的人気が高い政治家の場合に顕著にみられた傾向である。
ところが、安倍晋三元首相はその範疇には入らない。それは、国葬反対の国民が多いことでよく分かる。
では、安倍暗殺が何故歴史の転換点になるのか。
第一に、暗殺者の動機が、統一教会に対する反発にあることに求められる。こうなると、暗殺者の動機の解明が不可欠の要因になる。
ところが、統一教会問題は、日本戦後史の暗部を直撃する問題。オーム真理教問題解決の後は、統一教会問題解決というのが常識だった。ところが、統一教会問題の解決はネグレクトされた。背後に政治の影があったことはほぼ常識と言ってよい。
有田芳生によれば、1990年代松本サリン事件や地下鉄サリン事件を起こし、社会を大混乱に陥れたオーム真理教事件の後、「次は統一教会をやる」と警察は明言していたそうだ。ところが、捜査も調査も家宅捜索も一切行われなかった。理由は、「政治の力で止められた」と警察幹部が語った、と証言した。(TV朝日モーニングショウ)
統一教会の創始者文鮮明と岸信介との関係は有名だが、統一教会とKCIA(韓国情報部)との関係、KCIAとCIA(米国中央情報部)との関係もささやかれている。日本からの献金でアメリカ政府高官との関係も深めている。特に共和党との関係は周知の事実と言ってよい。
韓国へ送金された日本からのお金(霊感商法、信者からの献金)は、どれだけの額になるのか。想像をはるかに上回る額が送られている。一説によれば年間数千億円にも上るともいわれている。文鮮明教祖の教えによれば、日本は朝鮮民族に多大の苦しみを与えたのだから、お金を出すことで罪を償わなければならない、というような理屈を立てているようだ。
霊感商法や献金などの実態をよく見てみると、日本が統一教会の政治活動や経済活動(米国・韓国など)の金庫番として利用されている実態が見えてくる。
しかも、そういう統一教会の活動に自民党安倍派を中心とした日本の政治家が多数利用されており、もはや「ずぶずぶの関係」と言ってよい状態にある。
よくよく考えてみれば、安倍派を中心とした自民党右派連中は、従軍慰安婦問題が象徴するように、口を開けば、韓国に対しての嫌悪感を表明してきた。従軍慰安婦問題を反省しようとする勢力に対して、どれだけの政治的攻撃をしてきたか。
こういう連中が、日本人の財産を収奪し、それを韓国や米国での政治活動や経済活動に使う統一教会と「ずぶずぶの関係」にある。ポンチ絵にもならない。まさに、笑うに笑えない関係である。
現在自民党右派連中が血道を挙げている【憲法改悪】問題だが、笹井さんが書かれているように、自民党憲法草案が統一教会の主張と極めて近い。「こども庁」の名称が、「こども家庭庁」に変更された背景にも統一教会の影響が囁かれている。
「美しい日本」を標榜し、日本国民の「愛国心」を強調して止まない勢力が、日本国民の財産を収奪し成長した統一教会と緊密な協力関係にあり、彼らこそまさに売国奴ではないかという実態が、白日の下にさらされたのである。山上容疑者の怒りもそこにある。
(3)戦後史のパンドラの箱が開けられた
では、何故統一教会はこのような活動ができたのだろうか。何故、岸信介は統一教会の発展に協力したのか。何故、自民党政権は統一教会と「ずぶずぶ」の癒着関係になったのか。
何故、安倍晋三が狙われたのか。(本当に山上容疑者の単独犯なのか。背後関係はないのか。)統一教会問題の核心はここにある。山上容疑者の凶行は、はからずもこの問題をあぶり絵のように日本国民の目にあぶりだした。
●占領国(米国)の占領統治の真の狙い⇒日本が二度と対米戦争を仕掛けることができないよう日本を弱体化する。⇒統一教会などを使い、国内世論を反共に誘導する。同時に、日本の富の収奪を図る。⇒権力に接近し、統一教会の理念の浸透を図る。同時に、反米思想を攻撃する。
これらの政治目的を達成するために、A級戦犯だった岸信介は、巣鴨プリズンから解放された。同時に、児玉誉士夫などが持っていた隠匿資金を使い、自民党が結成され、政権担当政党として戦後政治の大半を担当した。
このように、戦後史は、占領軍やCIAの関係を抜きにしては語れない。“統一教会問題”は、その一環として検証する必要がある。
現在の状況を見れば、体制派メディアの日本テレビ、フジテレビなどが、これでもか、と言わんばかりに統一教会問題を微にいり細いにいり徹底的に報道している。
そもそも、霊感商法・勝共連合・原理研・合同結婚などを中心とする【統一教会問題】は多くの人が知っていたし、多くの人が眉をひそめていた。ただ大手メディアが積極的に報道しなかっただけ、と言ってよい。何故、報道しなかったか、と言う点に日本の置かれている立場があった。そのタブーが安倍暗殺以降一斉に解禁されたようだ。
この背景には、占領軍(米国)の意志がある、と読まなければならない。日本の軍備増強を図り(軍事費をGDPの2倍⇒10兆円)、台湾問題に深くコミットし(台湾有事は日本の有事論)、中国包囲網に積極的に参加し、憲法改正を行って日本を戦争のできる国にする、という安倍元首相を中心とした自民党右派勢力に対しての米国権力機構内の警戒感が前面に出ているのではないか、と読める。
このように読むと、安倍暗殺の背景や安倍暗殺の疑問点など占領軍の機微に触れる問題を語らざるを得なくなる。日本のメディアにそんな事はできない。だから、問題を「統一教会問題」に集約し、その問題の追及を通じて自民党右派の問題点をあぶりだしているのが、現在の状況だと読むのが筋だと思う。
この結果が政界や日本社会にどのようなハレーションを起こすか。注意深く見守っていかなければならない。
「護憲+コラム」より
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