老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

コロナ後の世界(新たなグローバル化)の予測!

2021-01-24 16:04:04 | 社会問題
🔶パンデミックとグローバル化の歴史的関係

人類の歴史の中でパンデミックとグローバル化は表裏の関係にある。

代表的なパンデミックと世界史上の大転換を素描すると以下のようになる。

(1)14世紀のペスト

モンゴル帝国によるユーラシア大陸の支配の拡大により、東西の交易の拡大、人物の移動が活発になった。それにより、中国の一地方にあったペストがヨーロッパに伝播。中世が終焉した。

当時、モンゴル帝国を源流とする元王朝が中国を支配。チャガタイ・ハン国が中央アジア、キプチャク・ハン国が北アジア、コーカサスや黒海北部、イル・ハン国が中東(イラン、イラク、アナトリア半島)を支配しており、パクス・モンゴリカ(モンゴルの平和)とも言うべき戦争がなく、東西交易が盛んだった。人・物の移動も活発だった。マルコ・ポーロやイブン・バトッウータなども、このモンゴルの平和により生まれた。

※イブン・バトッウータ ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%BC%E3%82%BF

※マルコ・ポーロ ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%BB%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AD

同時に、この平和(パクスモンゴリア)がペスト(黒死病)流行の最大要因になったのである。

(2)天然痘の大流行(16世紀)

天然痘は世界中で人間を苦しめてきた。古くは古代エジプトから流行したとされている。最も大きな犠牲者を出したのが、南北アメリカの先住民だった。

16世紀、コルテスやピサロに率いられたスペイン人たちは、1521年アステカ王国、1572年インカ帝国を崩壊させた。

最大の要因は、スペイン人によって持ち込まれた【天然痘】の蔓延だった。天然痘処女地だった南北アメリカの先住民たちは、天然痘に対する免疫がなく、あっというまに感染。膨大な死者を出した。例えば、インカ帝国では、人口の60~94%が死亡したと推計されている。

さらに天然痘は北米に持ち込まれ、多くの先住民を死亡させた。

コロンブスがアメリカ大陸を発見した時は、南北両大陸には約7200万の人口があったと推計されている。それが1620年には、約60万になっている。

この先住民の大激減が、アフリカ黒人たちを新大陸に運び、労働力として使ういわゆる【奴隷貿易】がはじまる大きな要因になった。

同時にアステカ文明など、中南米で栄えた豊かな文明も終焉を迎えた。

(3)19世紀初頭のコレラの蔓延

コレラはインドの一地方の感染症だったが、大英帝国の植民地政策により、世界中に広まった。特に、産業革命により、大都市に集中した都市労働者の劣悪な生活環境(貧民窟)が、流行に拍車をかけた。

コレラの流行は、多くの労働者の命を奪い、資本家にとっては貴重な労働力を失う結果を招いた。

これが、貧民窟のような劣悪な生活環境を克服する事が、コレラの蔓延を防ぎ、労働力の確保を保証する。それが、商品を生産する基盤になる。労働者の生活環境を整備する事が、結局は資本家の利益になる、という認識を齎した。
 
それが、現代では常識と言って良い【公衆衛生】という思想につながったのである。

(4)スペイン風邪

記録に残る最初の患者は、1918年に米陸軍ファンストン基地でアルバート・ギッチェル言う名の兵士だとされている。

ここから米軍兵士に伝染した。当時の米国は、第一次世界大戦に参戦中。その為、米軍基地を中心に米国国内およびヨーロッパに感染が拡大した。

スペイン風邪は、大きく3派に分かれて感染が拡大。全世界で5億人が感染したとされる。

死者は、推計5、000万人~1億人とされている。

※スペイン風邪 ウィキペディア 
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%8B%E3%81%9C

近代国家の戦争が国境を越えた世界的規模に拡大。それに伴い多くの兵士が国境を越えて移動。これが世界的パンデミックを齎したのである。

代表的なパンデミックを列挙してみたが、如何にパンデミックが世界のグローバル化と表裏一体の関係にあるのかが理解できる。

🔶コロナ禍の世界史的な意味

現在WHOが、コロナの発生源とされる中国武漢に研究者を派遣して、コロナ拡散の経路を明らかにしようとしている。

この目的は、米国がコロナ発生源としての中国、コロナ拡散に対する中国政府の責任を声高に叫び、WHOを脱退したことに大きな要因があることは間違いない。純粋な学問的研究というより、覇権国家同士の政治的思惑がほの見える。

当然ながら、中国当局は、発生源は中国ではないとか、中国のコロナ対策の徹底などを主張し、中国元凶論に対して強く反発している。

ここに見えるように、コロナ禍は、人もモノも金も情報も高速で移動する現代社会だからこそ、これだけの拡大をした。

実は、コロナ禍の本質はそこにある。人、モノ、金、情報の移動の高速化こそ、資本主義の本質。移動の拡大、高速化に伴い、ウイルスの移動も高速化する。

パンデミックの事例を見てもらえば一目瞭然だが、時代が下がるにつれてパンデミックの規模も被害も拡大している。

1980年代からの新自由主義的グローバリゼーションの一つの帰結が現在のコロナパンデミックと考えなければ、コロナ後の世界の構築から取り残される事は確実だろう。

2001年の米国同時多発テロの近未来的な映像を記憶されている方も多いだろう。わたしが見たのは報道ステーションだった。貿易センタービルに突っ込む飛行機の映像は、映画の世界そのものであり、現実の世界の出来事とは信じがたかった。

しかし、米国のグローバル化の餌食にされ、排除された人々の恨みが、テロリズムとして帰結したと考えれば、それはリアルな現実だった。

わたしたちが非現実的な出来事として感じざるを得なかった20年前のグローバル化のリアルな現実が、コロナパンデミックの悲惨な現実として今提示されていると考えなければ、時代を見誤る事になる。

同様な視点で2008年のリーマンショック、2016年の英国の欧州連合(EU)離脱、トランプ大統領の誕生を見れば、全て新自由主義的グローバリゼーションに対する反動だと理解できる。

コロナ禍はこのような新自由主義的世界の終焉を告げるもので、時代の転換点を告げるものである。

わたしたちは、コロナ禍を通じて、このような21世紀に対する俯瞰的な視点を獲得すべきであり、そこからのみ新たなコロナ後の世界を構築できる。

🔶トランプ的なるものを生み出した現代社会のリアリティの【虚構化】
 
【バーチャルリアリティ】(仮想現実)なる言葉が時代を席巻し始めてどれくらいになるのだろうか。ありとあらゆる情報が飛び交い、誰もが自由に発信できる時代になった。

溢れかえる情報の中でどの情報が真実か、が誰にも分からなくなった。どの情報も相対化し、何を信じてよいのか、たしかな事が言えなくなった。リアリティが完全に【虚構化】しているのである。

だからこそ誰もが信じられる【虚構のリアリティ】に縋りつきたくなる。Qアノンのようなトランプ支持者に多い「陰謀論」の信奉者は、この典型だろう。

そうなると当然そうでない人との間の亀裂【分断】が拡大する。さらに言えば、リアリティの【虚構化】の中で最もリアリティに満ちているのが【お金】。だからお金の信奉者がますます増える。その結果、社会の分断がますます加速する。

さらに悪いことに、【リアリティの虚構化】なるものを過度に考えすぎると、【科学】に対する信頼度が薄れる。

トランプ大統領がコロナ対策で科学者の意見を軽視したのもそれが原因。トランプ大統領が陥った【陥穽】は、日本の政治家が陥りやすい陥穽でもある。

それに加えて、米国の【一国覇権の後退】が混乱に拍車をかけた。以前から指摘しているように、覇権国家が覇権を降りなければならない移行期が最も危険。

コロナ後の数年間は、世界が最も危険な時期にさしかかると考えなければならない。

🔶三密から三粗の社会へ

【三密】が、昨年度の流行語大賞に選ばれている。「密集」・「密閉」・「密接」を避けよう、というコロナ対策の要諦だそうだ。

実は【三密】という言葉。仏教(真言宗、天台宗の密教系宗教)の教えの中核にある。

真言宗の開祖空海は、「密教」と「顕教」の違いを以下のように考えている。
★『悟り』にいたる考え方。
顕教⇒何代にもわたって生まれ変わり、気の遠くなるような時間を要する。
密教⇒今ある肉身のまま悟りにいたる事ができる。
      ↓
身体・言葉・心を仏と一体化する修行=【三密加持】
『三密』=真言密教の修行 『加持』=修行の目指すもの

空海の説くところ⇒生命現象は全て身(身体)・口(言葉)・意(心)から成り立っている。これを修行により、仏と一体化すれば、悟りにいたる事ができる、というのが、真言密教の思想。

顕教⇒身・口・心の働きは煩悩に覆われて汚れている。⇒三業(ごう)と呼ぶ。

★戦後日本の三密とは
仏教もそうだが、敗戦国日本の戦後復興の要諦も『三密』だった。
◎精密 ◎細密 ◎緻密

日本の工業製品が世界を席巻できたのは、上記の『三密』を徹底的に追及してきたからである。

『三密』を徹底的に排除すれば、その反対の世界が招来されるだろう。

おそらく、(密集)(密閉)(密接)などと言う具体的内容などどこかにすっ飛び、『三密』が駄目だという思想のみが残るに違いない。

そうなると、五木寛之が語るように、「密」の反対の世界『粗』の世界が招来されるに違いない。「粗末」「粗暴」「粗大」の「三粗」の世界がわたしたちの世界を席巻するだろう。

※五木寛之氏・年頭特別寄稿「夜明け前の夜は深い」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/283359
2021/01/01 日刊ゲンダイ

現に、トランプ大統領しかり、現在の日本の政治家しかり。それだけではない。『三密』の権化のような日本の官僚たちの現在は、コロナ対策が代表するように、見事なばかりの『三粗』の制度設計しかできない。医療崩壊ならぬ政治崩壊・官僚崩壊である。

新自由主義的発想の肝は、一切の無駄を排し、『効率性』を極限まで追求する姿勢である。その発想から零れ落ちるのが、人間を人間として尊重し、全てにおいて「精密・細密・緻密」を重視するありようである。

つまり、日本が日本として世界から一目も二目もおかれてきた戦後日本の復興の原点を捨て去ったのである。

これが、小泉政権登場以来の日本が推進してきたコンセプト。七年余りの安倍政権でその発想が日本国中を席巻し、今や日本と言う国の現在地は、先進国から後進国へと転落の一途だ。

例えば、コロナ第一波で明らかになったように、マスク一つ国内で生産できていない。医療器具(マスク・手袋・防護服など)も国内で自給できない。PCR検査機器は、メイドインジャパンの機器が各国で使用されているのに、日本国内ではほとんど使用されていなかった。世界各国からの注文が先行し、日本からの注文がなかった。

このありようは現在も続いている。ファイザー社のワクチンは、―75度で保存しなければならない。その為の冷蔵庫を確保するため、世界各国から日本の冷蔵庫メーカーに大量の注文が来ているが、日本国からの注文はまだないそうだ。さらにいえば、大量のドライアイスも必要になるが、それもかなり怪しい状態だそうだ。

例えば安倍政権下でどれだけ『安全保障』の必要性が叫ばれたか。北朝鮮のミサイルに対する防備だとして戦前を思わせる防空訓練まで行った。使えもしないイージスアショアにどれだけのお金を注ぎ込めば良いのか。ところが、肝心のコロナ対策はハチャメチャ。何が『安全保障』か。

◎精密 ◎細密 ◎緻密を忘れた安全保障論議など糞の役にも立たない。安倍政権以降の自民党政治の集大成が現在の日本の惨状を招いた、といって過言ではない。

コロナ後の日本を考える時、最も考えなければならない問題である。

「護憲+コラム」より
流水
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「日没」桐野夏生

2021-01-18 20:43:54 | 社会問題
何という小説を読んでしまったのだろう。足元からざわざわと立ち上がってくるこの不気味さ。現実に日本の社会で起きている沢山の問題とこの小説はクロスしている。

桐野夏生の「日没」はそんな小説である。

作家のマッツ夢井はある日一枚の手紙を受け取る。「あなたが書いた小説は悪い小説ですか、良い小説ですか」と書かれた「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの要請に従い出頭する。

連れて行かれたのは療養所。ここで「更正」するために療養生活を強いられる。彼女が書いた小説の何が「悪い小説」に相当するのか一切の説明は無い。

社会に適応した小説を書けと命じられ、逆らうと減点され入所期間が延びる。ついに4週間以上の入所を言い渡される。

同じ療養所仲間同士で相談して逆らえば、「共謀罪」が適用され退所はできなくなる。逆に密告すれば所長の覚えもめでたく、冷たいミネラルウォーター、美味しい食事等が与えられ、療養期間も短くなる。

マッツ夢井は「嫌なものは嫌、駄目なものは駄目」と真っ直ぐに主張し逆らうから、軟禁生活は更に苛酷なものになっていく。その姿に私は喝采を送り応援したくなる。

療養所の所長、職員は、マッツ夢井の自由を奪い尊厳を剥ぎ取っていく。酷い食事、飲物は土の臭いがする水だけ。生温い水道水、ご飯だけ沢山よそった茶碗に、味噌汁、お菜が一品の食生活は、私の母の世代の人達が食べていた物、あるいは予算が限られた国立病院で私が出産した時に出された食事風景と似ている。

その時看護師さんが優しく「病院はホテルじゃないんだから元気な赤ちゃん産んだら退院していくらでも好きな物たべて」と言われた言葉が忘れられない。

恐いけどさすが桐野夏生。ページをめくる手が止まらない。

現実の世界では、学術会議の任命拒否問題が起きた時、ある方がTwitterで、戦争体験者のご老人がご家族に「いいか、学者の口を塞ぐ事に成功したら、今度は国民の生活に手を突っ込んでくるぞ…」と話していたと書いておられた。

滝川事件:1933年(昭和8年)に京都帝国大学で発生した思想弾圧事件。
盧溝橋事件:1937年(昭和12年)7月7日に何者かに盧講橋が爆破されこの事件が中華民国との戦争への入り口だった。
・・・
そして現在のコロナ禍。

日本は陽性者数は海外に比べて少ないのに医療現場は何故こんなに逼迫しているのだろう。菅政権は更に、検査や入院を拒否した個人に罰則を与える法律を通そうとしている。医療機関にも適応すると。

ろくな手だてもせず罰則だけを決める。まさに「日没」の世界が現実のものとなってきた。

私達の生活は真綿を首に巻かれ、その真綿の中には小さな細かい針が沢山隠されている。締め上げるか未だ少し余裕を持たせるか、国民の支持率をチラチラ見ながら手綱を握るのは政権与党。

そんな事あるわけ無いと嗤う人もいるだろう。政治家は皆バカだから期待するだけ無理とか、政治は誰がやっても同じとか、自分一人が投票しても何も変わらないとか、投票行動を無力にさせる言葉を見掛けるけれど、私達は首に真綿を巻かれるのは嫌だと行動するしか無い。そして真綿を外す為に何が出来るか考えよう。

何故この小説のタイトルが「日没」なのか。ラストは夜が明け陽が昇り次第に周囲が明るくなっていく場面で終わる。

作者は最後の15行を雑誌連載から単行本化するに当たり書き足したという。この15行があるのと無いのでは全く正反対と言っていいほど違ってしまう。このラストは本当に救いが無い。

いつ収束するか分からないコロナ禍とクロスして、改めて「国家権力」の恐ろしさとこの国に生きる人々について考えさせられた小説だった。

「護憲+コラム」より
パンドラ
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日本の司法制度を根本から見直す

2021-01-16 15:59:47 | 民主主義・人権
本日、吉川元農水相が収賄容疑で「在宅起訴」という記事がトップニュースで飛び込んできた。

だが、待てよと一瞬思う。あの「桜を見る会」での来賓補填のお金の問題では、「秘書が勝手にやった」らしいとして、安倍首相は「不起訴」になっている。こんな来賓(安倍の地元山口県の支持者の団体)の出した金額の「不足分」を「補填」することを勝手に秘書がやるはずがない。私企業でもそんなことはありえない。

こうして、元首相は「不起訴」になるが、下っ端の大臣は起訴になる。こんな司法の判断はおかしくないか。恣意的な権力の行使ではないのか。

***

さて、今回のコラムのテーマは安倍元首相の「不起訴」という司法権力の恣意性を問うことではない。今回は、「袴田事件」を通して、日本で戦後から問題になっている「冤罪事件」の法律問題(注、単に法律ではなく、憲法と刑事訴訟法との齟齬に触れる)を対象に選んだ。

それと言うのも、「袴田事件」では、2020年12月22日に最高裁から高裁へ審理が差し戻されたが、一向に「再審」が行われず、袴田被告は拘禁を解かれたが「無罪」は確定していない。これはどうみても「おかしい」。日本の「司法」の欠陥がこの事件、つまり「袴田事件」に集約されているからである。

1.袴田事件とは
袴田事件を詳しく述べていると本題である「法律問題」を検証することができなくなるので、最小限にとどめるが、袴田事件とは、1966年(昭和41年)6月30日に静岡県清水市で発生した強盗殺人放火事件、及びその裁判で死刑が確定していた袴田巌元被告人が判決の冤罪を訴え、2014年3月27日に死刑及び拘留の執行停止並びに裁判の再審を命じる決定がなされた事件。それ以後の「経過」は前述した。(現在、審理中)日本弁護士会が支援する再審事件である。

2.何が問題になってきたのか
①元被告人の現況
袴田氏は30歳で逮捕されて以来、2014年3月27日まで45年以上にわたり東京拘置所に収監拘束された(これはギネスブックに一時認定された)。死刑確定後に、袴田氏は精神に異常を来したという。拘禁反応と言われている。氏は同年5月27日、48年ぶりに故郷の浜松市に帰り、市内の病院に転院した。拘禁反応については回復傾向にあり、糖尿病も深刻な状況ではないという。

②裁判の主な争点(〇自白は強要されたものか※ 〇任意性に関する争点と信用性)
※この自白の強要に関しては「拷問」ではないかと言われている。

他にも「争点」となることがあるが、ここでは、犯行着衣とされた「5点の衣類」は犯人である証拠か、警察の捏造か、につき問題にすると、弁護側は「サイズから見て被告人の着用は不可能」とする。検察は「1年間近く、みそ漬けになってサイズが縮んだ」と主張している。しかし、筆者は1年後にみそ樽から着衣が発見されるというのは、極めて不自然であると解釈して、これは初動捜査で見つからないはずはなく、警察の証拠の捏造であると考える。

袴田事件に関しては、以上のように「争点」が多いのであるが、本稿では被疑者の取り調べの「問題点」に関して、特に限定して言及する。なぜならば、「袴田事件」の一番の争点は「取り調べ・拷問について」が大きな司法制度上の問題点であると考えるからである。

袴田氏への取り調べは過酷をきわめ、炎天下で1日平均12時間、最長17時間に及んだ。さらに取り調べ室に便器を持ち込み、取調官の前で垂れ流しさせるなどした。睡眠時も酒浸りの泥酔者の隣の部屋にわざと収容させ、その泥酔者に大声を上げさせるなどして一切の安眠を妨げた。

そして拘留期間が迫ってくると取り調べはさらに過酷をきわめ、袴田氏は拘留期間3日前に自供した。取り調べの刑事たちも当初は3、4人だったのが、後に10人近くになっている。

これらの違法行為については、次々と冤罪を作りあげたことで知られている紅林麻雄警部の薫陶を受けた者たちが関わったとされている。

上記のような「取り調べ」が果たして、自白の任意性を肯定できるかどうかは、もはや言うまでもないであろう。憲法(刑事訴訟法も)が厳しく否定する「強制、拷問による」自白であると言ってよい。(憲法38条2項)

かくして、争点はなお多いが、この強制、拷問による袴田氏の自白だけで、証拠となるものもなく、1年後に「出てきた」着衣にはなんらの信憑性もない、明白な冤罪事件であることは憲法上でも否定できないのである。(憲法38条3項でダメ押し的に、自白だけでは「有罪」にならないと規定する。)

袴田事件の「再審無罪」は未だ司法によって出されていない。これは明確に憲法違反の「不作為」である。

3.冤罪を生む「刑事訴訟法」
袴田事件を典型的な冤罪事件として見てきたが、最後に、一体何故、日本の司法の下ではかくも冤罪が多いのであろうか、何が問題なのだろうかについて、筆者は次のように考えている。

まず、憲法の適正手続きの保障(憲法31以下の規定群)では、特に38条の「不利益な供述の強要の禁止規定」によれば、被疑者(被告人の場合も)の取り調べは「強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に」長く抑留もしくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない」と具体的、かつ詳細に定めている。

ところが、刑事訴訟法(「憲法の規定による法制化されたにもかかわらず)」では、この憲法の「原則」が大幅に「緩和」されているのである。

一応、憲法38条の規定と同じ規定はあるが、「出頭、及び取り調べ」の規定では「出頭に応じるかは」任意であるとしつつも、「いったん、出頭しても、ー逮捕または拘留されている場合は別としてーいつでも退去できる」と定める。

この「逮捕または拘留されている場合を除き」という「例外規定」が曲者であり、「強制による自白の禁止」という憲法規定、つまり「人身の自由」を潜脱する違憲、違法な規定であると解釈できるのである。

この刑事訴訟法の規定と実務が存在するからこその「冤罪事件」の多発であり、「密室での取り調べ」であり、世界から「人質司法」と揶揄されているのである。

この「例外規定」である刑事訴訟法の198条は明確な憲法違反の規定であり、袴田事件をはじめとして、冤罪事件の温床となっている。

速やかな198条の削除が必要であることは言うまでもないが、日本の刑事学は長期間にわたって沈黙してきたのである。その罪は重い。

「護憲+コラム」より
名無しの探偵
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コロナから、より多くの人命を救うには

2021-01-11 10:13:16 | 災害
皆様に新春のお慶びを申し上げます。
昨年はコロナ禍も、政治も、GoToコロナ拡大キャンペーンに象徴されるような酷い年でしたが、今年はより良い年になりますように願われます。

今あまり時間が無くて、きちんと書けないのですが「これって重要な考え!」と思ったのでご紹介しておきます。

朝日新聞のニュースレター、「アナザーノート」からの一部引用です。
――――――――――

【鬼滅とゲイツ、ワクチン。そしてオリンピック】 
      浜田陽太郎 @hamadayohtaro
―高齢ニッポンの行方を複眼的にとらえる―

(前略)
「世界人口で14%に過ぎない富裕国が、主要なワクチン候補の53%を買い占めている」「2021年末までに貧しい67カ国では10人中1人しか接種できない」
(中略)
米ノースイースタン大の試算によると、裕福な50カ国が世界のワクチンの3分の2を使うと死者数が33%減るのに対して、すべての国に人口に応じて配分すると61%減らせるというのです。

 さらに、ワクチンを平等に配ることが世界経済のためによい、という報告もあります。

 米国の国際政治学者、イアン・ブレマー氏が率いる調査会社「ユーラシア・グループ」は昨年末、リポートを発表しました。

 中低所得国を含め世界にワクチンが公平に行き渡ることによって、富裕な10カ国が受ける経済的な恩恵は、2025年までの5年間で4660億ドル(約48兆円)にのぼるというのです。

 「富裕な10カ国」には、もちろん日本も入っていて、5年間に1.4兆円の恩恵があるといいます。アジアを中心とした国々との輸出入が回復し、海外から観光客も戻ってくるからです。

 オリンピックのホスト国である日本が国内で感染の抑え込みに成功しても、世界で流行が続いていれば外国人客がウイルスを再輸入するだろう。だからこそ、ワクチンの平等な普及は、日本にとってリスクを最小化するカギを握っている――。」
(後略)
―――――――――――引用ここまで

多くの人が、コロナ禍で、「まずは自分の、家族の」安全を考えるのは当然だと思います。

それは「自国の安全」に直結、そしてともすると「自分・家族、そして自国さえ良ければ…」に陥りがちです。

もう少し広げて、世界や地球上の視野をもつことが、いかに大事かを気付かせてくれる記事であり、資料だと思います。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
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政治に真面目さを取り戻そう

2021-01-04 23:52:48 | 政治
2021年、新しい年があけました。

新年を迎え、改めて2020年を思い返すと、この困難な時に、自民党が政権を担い、不誠実・不真面目な「政治リーダー」達に国のかじ取りを任せるしかなかった私たち国民の不幸を痛感せずにはいられません。

モリ・カケ、サクラ、黒川検事長の定年延長など、安倍政権は、数々の疑惑を指摘されながら、平然と嘘を繰り返し、国権の最高機関である国会を空洞化させてきました。

年末には「サクラ前夜祭」を巡って東京地検が安倍氏の秘書を起訴し、安倍氏の国会での虚偽答弁が118回に及ぶことも明らかになりました。これを受けて安倍氏は記者会見と衆院議院運営委員会の場で「陳謝」しましたが、自身は起訴に至らなかったのを良いことに、「秘書が独断でやったこと、自分は全く関与していない」と言いつのり、この問題に終止符を打ったつもりになっています。

菅政権になってすぐに明るみに出た、日本学術会議の任命拒否問題では、菅首相は開き直りや矛盾した発言を繰り返し、「日本学術会議」の在り方に論点をずらすなどして、問題をあやふやにし、国民が忘れること=幕引き、という自民党の常套手段で問題を処理したように見えます。

こうして、検察の弱腰や風任せのマスコミ報道の助けもあって、様々な重要案件も、一見すると政権に決定的なダメージを与えることなく終わっているように見えます。

しかし、こうした不誠実な対応の積み重ねが、実は国民の間に政治に対する根深い不信感を生んでいることを、政府も国民自身ももっと真剣に受け止める必要があります。

そして何より、今国民の政治不信に追い打ちをかけているのが、政府のコロナ対応です。

感染拡大が明らかな中での「Go Toキャンペーン」の愚かさは言うまでもなく、国民に向けて会食の自粛要請をしたその日に総理自らが要請の要件に合わない会食に参加したり、そのことを指摘された閣僚たちが訳のわからならい開き直りの発言をしたり。そうかと思うと、多人数の忘年会で酔態を晒す大臣もいて、コロナの収束を目指す本気さが全く感じられません。

こうして、政府の無能ぶりにあきれ、あるいは彼らの言動に倣って、私たちもいつの間にか気が緩んだ行動をとり、その結果がコロナ感染第三波となって、医療崩壊の危機という不幸な形で跳ね返ってきているのかもしれません。

東京都と首都圏の知事らの強い要請を受けて、菅総理は今日、一都三県に緊急事態宣言を再発令する検討に入ることを表明しました。

ようやく事態の深刻さに向き合ったと評価したい一方で、コロナによって仕事や住まいを失った人たちや、今はギリギリ持ちこたえているけれど、もうこれ以上は無理という個人経営のバーや飲食店の悲鳴に似た訴えを、新聞やテレビ、ネット等で日々見聞きし続けているだけに、今回の緊急事態宣言によってこれら飲食店が被るであろう打撃の大きさに、心が痛みます。

ここまで状況を悪化させてきた政府の真剣さの欠如、後手後手の対応、説明不足に、それによって引き起こされている不信と不安の渦中にある国民の一人として、この政権にこれ以上日本のかじ取りを任せるわけにはいかない、の思いが強まります。

おかしいことはおかしいとその都度言い続け、年内に行われる衆議院選挙には、自民党政治と決別することが自分たちを守ることと思い定めて臨みたいと思います。

そして野党には、持てる力と存在感を国民にしっかりアピールし、また野党各党の持ち味を上手く融合して、自民党と対決できる態勢を確立することも、併せて強く望みたいと思います。

「護憲+コラム」より
笹井明子
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