老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

「大阪都構想」の今後

2011-11-30 11:36:26 | 選挙
西日本にあって大阪は、古くからその中心。その意味では、東の東京に比肩し得る相応の重みを持つ地域ではあろうが、残念ながら小生の生活圏とは接点を持たず、よって、古都京都の消長に寄せる関心に比べれば、何十分の一程度の存在である。

だから、そも、何某に続いてまたTVで顔を売った同類の知事が誕生したかぐらいの位置づけで過ぎてきた。知事になってからの府と市のいざこざやら、維新の会とかなんとか 時代がかったものをつくっての勢力拡大策なども、へえーぐらいのものであった。それは、地方のことは地方が、でいいじゃないかの思いが根底にあったからにほかならぬ。

だが、今回の知事を辞めて市長との同時選挙という成り行きと、その結果を見ての中央政界の周章狼狽と言っていいような動きに、はてな?と思う。
  
断片的にしか知らぬという断り書きを付ける事、それ自体申し訳ないことながら、大阪市不用論の一例として知事が申すは、府が大阪に作ったものと同種のものを市が作っていて、その一事を見ても税金の無駄遣いであり、よって、大阪市とその隣接市を含めて市制を廃止し、大阪都にすれば効率的であるという論法のようだ。

そのためには法律の改正を必要とするが、その方向で既成政党が動かなければ、国政を動かせる勢力を永田町に送り込むこともあるべしという。ここに「周章狼狽」の発端があるのだろうが、慌てる前にちょっと待って欲しいと申したい。

先ずは「住民自治」についてどのような考えを持っているのか。「住民(国民)」は、全ての基本であるという考えは無いのか。あるとすれば「都制」と「市町村制」とでは、どちらが「住民」に近い存在であり得ると思うのか。「平成の大合併」においてもなお、市町村政が「住民」から遠くなるという一事で合併に背を向け続ける自治体もある。これをどう評するのか。このような大事すら論じられることなく、「ご要望に向き合って」などの発言が軽々に飛び出すことに驚愕する。 
 
「都道府県制」の中二階をどうするかが、「道州制」検討の端緒であり、これを掘り下げることは絶対必要なのではないのか。市が設置できるものを、都道府県が設置することそのものが?なのであり、これは、都道府県等が設置できるものを国がつくること、これと同類の?であろう。

いずれにしろ、「圧勝」という「民意」の各般のレベルを含め、考えさせられる様々な課題が透かし見える「大阪都構想」の今後である。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
百山
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平松市長敗北と民主党の責任と今後の対策

2011-11-30 10:43:41 | 選挙
27日の大阪市長選で、前回は民主党の支持を得て当選した平松市長が、今回は大阪維新の会の橋下候補に大差で敗北した。前回の市長選の時はまだ民主党は政権についていなかったと思うが、今回は政権与党民主党、自民党、共産党の推薦を得ながらの大敗北である。

どうして平松市長は政権政党の推薦を得ながら惨敗したのか。その原因は、結局、民主党菅政権と野田首相が、「国民生活第一、09マニフェスト」の実現に愚直に取り組んで来なかったことに尽きる。逆にこれらの実現に取り組んでいれば、民主党の単独推薦だけでも橋下候補に十分対抗できたであろう。

例えば労働者派遣法を改正して非正規社員の発生を制限していれば、橋下候補が大阪市内で若者の集まるアメリカ村に行って投票を呼びかけたとしても、その演説を逆手に取り、「解雇されずに働けるようにしたのは民主党です。解雇されたら民主党大阪支部に相談に来て下さい。」とアピールできたはずである。それだけに民主党のマニフェスト裏切りは有権者を失望させ、その閉塞感の反動が稀有なアジテイターに率いられた大阪維新の会への期待となったことは否めない。

もう一つ今回の選挙で重要なことは、民主党と自民党が組んでも地方政党大阪維新の会に勝てなかった事であろう。即ち既成政党1+1=2にならず、1以下だったことである。それはメディアの出口調査で民主党と自民党の支持層の50%が橋下候補へ投票したと回答していることでも明らかである。この調査から民主党も自民党も支持者の半分から見限られていることが分かる。そして最多数を占める無党派層はより流動的に政党を選択するわけであるから、次の衆議院選では両党とも単独過半数は難しいと言える。その上、野田首相が消費税を増税すれば、民主党はさらに落選者が増え比較第一党も難しいであろう。

一方、この辺りの状況は既に小沢氏もお見通しのようで、最近しきりに地方講演で野田首相のTPP参加表明の在り方や消費税増税の批判を展開し、「このまま選挙になれば大半の民主党議員は国会に帰ってこられないだろう」と言ったと報じられている。さらに直近の鹿児島講演では、早ければ来年中に解散があるやも知れぬと言ったとも報じられている。一連の小沢講演を俯瞰すれば、このまま民主党に籠城して同志を失うわけにはいかないとの覚悟が感じられる。

今年も残すところ1ヶ月しかないが、しかし新党を結成し政党助成金を貰うには絶好の時期である。日柄はいつが良いか、12月8日は真珠湾攻撃で良くない、12月14日の赤穂浪士大石内蔵助討ち入り成功の日にあやかりたいものである。

「護憲+BBS」「政党ウォッチング」より
厚顔の美少年
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義務教育にも「優勝劣敗」原理?

2011-11-29 17:17:51 | 教育
別記事の11/25例会で三角さんがおっしゃった、TPPに対して「直感的にアブナイと感じる」こと。これは、今回の大阪ダブル選挙にも感じました。また、新自由主義や「優勝劣敗」というエリート思想は現在の義務教育にも感じています。

ウチの息子は現在、高校への受験生ですが、普段の授業で理解できない・授業についていけない部分は学習塾で補わせています。

30数年前の自分と比べ、「授業で先生の話をちゃんと聴いていれば、理解できるだろうに。息子はそんなにアホだったか」と思い、返却された期末テスト問題を見ると・・・えっ、こんなに難しいコトを教わってるの?30数年前の義務教育内容とは明らかに違うのです。

それは、全教科とも「広く、浅く」の内容、その中で国語・数学・英語は大学まで見据えた高度な内容。その結果、「理解するより覚えろ」という教育現場のように思えます。ゆとり教育の反動なのか、30数年かけて高等化したのか。こんな教育で勝ち残れるのは、アタマの良い子・記憶力の良い子・学習塾に通っている子でしょう。

ウチの息子など、学習塾へ通っていても理解できません。なにぶん思考ペースの遅いヤツだから、黒板を書き写すだけで終わってしまうのです。それにしても学習内容の絶対量が多すぎ、詰め込みすぎではないか、と。

それで、授業でわからない事を先生に質問したら「お前は塾に行っているんだろ?だったら、塾で教えてもらえ」との答え。ああ、中学校の先生もお忙しいから・・・おいおい、それは違うんじゃないの? ※全ての教師ではありません

義務教育って、生活や社会で最低限必要な知識を「理解させる」ものではないのですね。数学だけ、美術だけ、国語だけ、体育だけ得意な子は特定の高校しか行けないようです。つまり、一部の優秀な資質の人間を選別しながら磨き上げる機関のようです、現在は。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
猫家五六助
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「サロン・ド・朔」11月例会(『究極の新自由主義としてのTPP』)参加報告 

2011-11-29 17:04:17 | 安全・外交
「サロン・ド・朔」11/25例会へ出席しましたので、簡単にレポートさせていただきます。

今回はTPP(環太平洋経済連携協定)について、農業生産者でもある三角忠さんが「食の安全性を守る」立場でお話しされました。(私の主観が入っているかもしれません。おかしな部分はご指摘願います)

◎TPPは国内の規制緩和(米国の基準)を招く。その結果、

①様々な遺伝子組換え食品が輸入され、日本独自の食品安全基準が改悪される。

②米国発祥のLLC牛乳が輸入され、北海道を中心とする酪農家が苦境に陥る。
このLCC牛乳は遺伝子組換えされた牧草で育成されている。

③米国企業が特許を持つ農作物の種「F1」の輸入が増加する。F1は一度しか育成しない(種を生まない)ので、農家は毎年F1を買い続けなければならない。
【参考】種の品種改良 F1ってなに?
http://blog.goo.ne.jp/organic-life-circle/e/d1a71311c734c4152f99d53a6c8915e8
【参考】市場が生み出した野菜=「F1植物」の脅威
http://www.sizen-kankyo.net/bbs/bbs.php?i=200&c=400&m=207833
【参考】操られるいのち F1種子
http://blogs.yahoo.co.jp/goutobrue/5853505.html

④TPPで国内生産者が衰退すると食糧自給率がダウンする。また、安価な輸入品に対抗するため、国内生産者も遺伝子組換えした農作物を生産するようになる。

⑤TPPで生産者と消費者が引き裂かれる結果となるのに、日本の政治家の中には
「TPPで物価が下がれば、低所得者・非正規労働者が助かる」
とTPP推進を主張する者がいる。はたして、そうだろうか?

⑥TPPで外資系保険会社が日本へ進出すると、国民健康保険制度が崩壊する恐れがある。米国では医療保険の未加入者は救急車にさえ断られる。

⑦TPPは米国の「新自由主義」思想に関係している。つまり、
「1割のエリートがいればいい。他は愚直にエリートに従え」
「所得の低い弱者は自己責任で生きろ=優勝劣敗」
という考え方で福祉・医療が後退する。

以上です。私は2つ、三角さんへ質問しました。

(Q1)米国はTPPで相変わらず経済戦争を仕掛けているのでは?TPPには隠されたウラ事情や伏線がありますか?

(A1)ウラも臆面もなく「米国に世界経済の安定を任せろ」と、正々堂々と主張している。

(Q2)ある評論家は「TPPは輸入する義務はあるが、輸出する義務はない。米国に国内市場を席捲された後、輸出を渋られ値上げされないか」と心配していた。どう思いますか?

(A2)考え方は日米安保条約と同じ。米国は「軍事」「食糧」が日米安保だと考えている。

三角さんのお話で印象的だったのは、
「遺伝子組換え食品は安全だ、危ない根拠はないというが、私は直観的に『人為的なものは危ない』と感じる。この感性を大切にしたい」
という趣旨でした。

この「直感的にアブナイと感じる」ことは、今回の大阪ダブル選挙にも感じました。また、前述⑦のエリート思想「優勝劣敗」は現在の義務教育にも感じていますが、それは別記事にて書かせていただきます。

「護憲+BBS」「イベントの紹介」より
猫家五六助
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不気味な足音

2011-11-28 16:03:13 | 選挙
大坂のダブル選挙は維新の会の圧勝に終わりました。
「自民党をぶっ壊す!」という小泉氏のキャッチフレーズがばか受けしたように「大阪都構想」は既成政党に絶望した人々、とくに無党派層がほのかな希望を見出したのか投票率も大幅に増えています。
ナチスは当時ヨーロッパでもっとも先進的なワイマール憲法の下で台頭した。
年寄りの勝手な思い込みかもしれないけれど、「君が代を歌わない自由」を踏みにじった橋下氏の躍進に不気味なものを感じてなりません。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
成木清麿
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大阪維新の会の「夢=幻想」と「現実=失望」

2011-11-28 09:57:16 | 選挙
11月27日の大阪府知事と大阪市長のダブル選挙では、どちらも大阪維新の会の候補者が勝利した。勝利の直接要因は橋下候補の個性である。橋下氏は、選挙戦略・戦術として社会の不条理や不正義を市民に目覚めさせ、その解決策として、これまでの行政の在り方の常識を非常識と強烈にアッピール。小泉流に自民党(大阪市役所)を敵に見立て、ぶち壊すとアジテートして、大阪都構想で二重行政の無駄を削除できると府民・市民に夢を抱かせた。夢を見せられた選挙民は府知事と市長が大阪維新の会から当選すれば、直ぐにでも大阪都が実現するかのような幻想に取り付かれていたのではないかと想像させられる。

しかし大阪都を実現するには、現実には国会レベルの政治(法律改正)が必要となり、前途多難であろう。革命であれば直ぐにでも実現可能であるが、これから中央官僚や既成政党の反対も予想され、そのような長期戦を予想していない選挙民は1年後には失望させられるのではなかろうか。

その解決策として、大阪維新の会が次の衆議院選挙で「大阪都構想」のスローガンで大阪から立候補者を立て多数の当選者を出したとしても、国会で大阪都構想の法案成立を計ろうと思えば既成政党の協力が必要であり、今の国民新党が郵政再改革法案で四苦八苦している姿とダブルのである。かつて自民党政権時代に首都を東京から他へ遷都する案があったが、いつの間にか立ち消えてしまったように、抵抗勢力を排除するには相当な時間と力が必要ではあるまいか。一方、今回の選挙結果で、大阪維新の会の「ファシズム化」は一歩前進したと思われる。

「護憲+BBS」「政党ウォッチング」より
厚顔の美少年
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★原発国民投票の受任者に

2011-11-26 10:08:36 | 原発
「本気」で「脱原発」にしたいとお考えの、東京・大阪に選挙権のある方へのお願いです。

原発の今後くらいは、国民自身に決めさせてもらいたい。そう考えた人々が「原発国民投票」を推し進めています。

この12月から大阪・東京で、新たな署名活動を始めますが、その署名を集める「受任者」が不足しています。
今回の署名集めは、「受任者」登録をしないと集められないのです。


ぜひ★原発国民投票の「受任者」★になって下さい。

http://kokumintohyo.com/

家族の署名を集めるだけでも、大きな力になります。上記HPから、「受任者」になることができます。
なお、そこから開けると、詩人・谷川俊太郎さんの「ワクワクするなぁ」と、ステキな言葉があります。ぜひご覧ください。

ご一緒に自分たちの将来くらい、また、孫・子に贈る日本の形くらい、国民自身で決めませんか?
この投票が潰れたら…原発は稼働し続け、地震・津波が来るかもしれない。

もし地震が来なかったとしても、放射性廃棄物の山を、日本政府は子孫に押し付けることになることは確かです。
ご一緒に、「本気」で、原発を止める行動をしませんか?

「護憲+BBS」「脱原発の実現に向けて」より


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不的確・不正確な朝日の見出し

2011-11-25 15:56:28 | マスコミ報道
11月25日の朝日新聞朝刊とアサヒコムに、「小沢氏政党支部へ1億円寄付 旧新生党の政治団体から」との見出しで次のような記事がでている。

『「民主党の小沢一郎元代表が代表を務める党岩手県第4区総支部が、旧新生党の資金がプールされている政治団体「改革フォーラム21」から昨年中に1億円の寄付を受けていた。県選挙管理委員会が25日付で公表した2010年分の政治資金収支報告書の要旨で判明した。』以下は下記URL参照。

http://www.asahi.com/politics/update/1124/TKY201111240682.html

上記の記事の内容を正とすれば、見出しの文言は不的確、不正確な見出しである。この見出しからは民主党の岩手支部が小沢氏の個人的な支部になっているか、民主党の岩手支部を小沢氏が私物化しているように読者は錯覚させられる。これも朝日の小沢イメージ貶め操作の一環であろうが、正確が記せないのは、赤字経営(*)で広告媒体紙になりつつある朝日の「貧すれば鈍す」姿の一面であろう。

(*)http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/111121/ent11112118260018-n1.htm

正確な見出しは「民主党岩手支部へ1億円寄付 旧新生党の政治団体から」であろう。

「護憲+BBS」「マスコミ報道を批評する」より
厚顔の美少年
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これは外務大臣や外務省の外交努力ではない

2011-11-25 07:18:35 | 安全・外交
24日のNHKニュースと日経新聞ニュースは「公務中の米軍軍属 日本で刑事裁判」、「米軍属、日本で裁判も 地位協定見直し大筋合意」と報じている。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111124/k10014179491000.html

http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819481E0E6E2E0E48DE0E
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これは沖縄県民と歴代の知事及び仲井真現知事の抗議と努力の賜であろう。陰には法律家であるルース駐日大使の尽力もあったのでは?と想像できる。しかしながら是は独立国家として当然のことであり、普天間基地の辺野古移転とは全く別問題である。

「護憲+BBS」「政権ウォッチング」より
厚顔の美少年
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続・生存権の現在

2011-11-23 10:02:13 | 憲法
前回は主要な判例に触れたが、今回は最高裁が依拠する「抽象的規範説」を検討して、生存権の現在(その状況)を明らかにする。

まず、抽象的規範説は一応プログラム規定説とは異なり「権利性」を認めないわけではないとするが、前回挙げた判例を見れば分かるように、朝日訴訟ではそのあまりにも過酷な生活保護の給付額(しかも朝日茂さんの見つけ出した兄が仕送りした金額がほとんどであり、行政は600円しか渡していない)の内容をつぶさに検討すれば、生存権の規定する「健康で文化的な最低限度の生活」からかけ離れたものでしかなかった。

思うに、抽象的規範説のように「25条は国民に生活を保障する具体的権利を定めたものではなく、国家の立法の指針を示したにすぎない」というのではプログラム規定説の別バージョンと言えるのだ。さらに言うと、抽象的な権利を認めたものだという解釈であるが、権利に抽象的なものがあるとすれば、それは権利とは言えない。

権利は歴史的な発生過程をすべて辿っても、抽象的な権利という性格の権利は存在したためしがないのではないか。もしそういうものが存在するならば絵に描いた餅:画餅にすぎない。

このことから生存権が登場するまでの歴史をフォローしてみると、最初の起源はイギリスのエリザベス救貧法(エリザベス女王が定めた法令)にたどり着く。17世紀のことだ。1980年代に生活保護を申請して拒否された母親が餓死した事件があったが(重要な事件であるはずだ)、この時のある学者(御茶ノ水女子大の教授)の論文で「もし、17世紀のイギリスならばこの事件を引き起こした担当者は刑務所行きだったであろう」というコメントが今でも印象深い。

そして、現在であるが、周知のように生活保護を拒否された人々の餓死事件は後を絶たない。なぜか。最高裁の判例が暗黙の法となって生存権の権利性を制限しているため、生活保護の基準は行政(とその前段階としての立法裁量)にすべてお任せになっているからである。生活保護を「基準」に適合しないとして拒否された人が餓死しようが首をつろうがお構いなしというわけである。

ただ、この基準も区々であり、北九州市のように勝手に死んでくれという所もあれば、大阪市のように外国人にも保護を認めている所もある。このように基準がばらばらという結果であるが、生存権の権利性を剥奪している判例の解釈に問題の根源があることは意外と重要だ。

生活保護という制度は憲法の「具体的な」実現であり、権利の保障なのであるから、憲法次元で抽象的な権利にすぎないと言えば、法律であって法律ではなくなる。基準が抽象化しているため何でもありになり、法としての規範命題が限りなく形骸化して行政官はどのような解釈も可能になるからだ。これは法としてはざる法である。どんな抜け道もありうる。エリザベス救貧法以前に歴史が逆戻りしているかのようだ。

「護憲+コラム」より
名無しの探偵
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